俺が美優にプロポーズするまで   作:(TADA)

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前回のあとがきの花火回ではなく、急遽周介くんの誕生日回です


周介くんの誕生日

三船美優は困っていた。

恋人である塩見周介の仲? いやいや、周介の妹である周子ちゃんが砂糖を吐きそうなほど二人はラブラブだ。

だったら周介がプロポーズをしてくれないこと? いやいや、人の良い美優は「周介さんのタイミングがありますから」と微笑んで余裕の構えだ。

だったら何故困っているか。

 「周介さんの誕生日プレゼントはどうしましょう……」

そう、恋人の誕生日プレゼントである。未だに周介くんがヘタレてプロポーズはされていないが、二人の付き合いは中学生時代からだ。それだけ長く付き合っていると流石に誕生日プレゼントのネタもなくなってくる

 「あら、美優ちゃんじゃない」

 「美優さんも休憩ですか?」

 「あ、瑞樹さんに楓さん」

そこにやって来たのは周介のお店の常連客であり、大人気アイドルの川島瑞樹と高垣楓の二人組だった。

二人は美優と同じベンチに座って世間話の態勢になる。だが、三人の会話は自然と周介のお店のことになる。

 「それで美優さん。店長さんのメンチカツが食べたいんですけど、次にメニューに乗るのはいつになるんですか?」

 「楓ちゃん、前から言ってるわよね。店長のメンチカツは絶品だって。そんなに美味しいの?」

瑞樹の問いに楓は力強く頷く。

 「とっても美味しいです。瑞樹さんも一度は食べてみるべきですよ」

 「楓ちゃんがそこまで言うのは珍しいわね」

 「本当に美味しんですよ。一緒に日本酒も飲んだら幸せになれます」

 「そこまでなの……どうなの美優ちゃん。店長がメンチカツを作る日とかわからない?」

瑞樹の言葉に美優は苦笑する。

 「メンチカツは周介さんのお店でも人気メニューですから。だいたいお昼で売り切れちゃうんです。食べたいのならランチタイムに行くか、売れ残るのを願うしかないです」

 「またまたぁ、美優ちゃんが頼めばあの店長だったら残しておいてくれるんじゃないの?」

 「それがですなぁ、瑞樹さん」

 「「「キャア!!!」」」

瑞樹の言葉割り込んできたのは気配もなく三人の座るベンチの後ろから現れた周子であった。

 「しゅ、周子ちゃん。驚かせないで!!」

 「すみませんねぇ」

瑞樹の言葉にイイ笑顔を浮かべて謝罪する周子。その笑顔には謝る気など1ミクロンも存在していない笑みであった。

 「ちなみに料理の取り置きとかは兄ちゃんやってくれませんよ。『他の常連のお客さんに悪いから』って言うのが理由です。一人を贔屓にしちゃうと他のお客さんに示しがつきませんからね。こればっかりは美優さんの頼みでも血涙を流しながら断るかと」

 「血の涙を流すのね……」

 「流しますね」

瑞樹の軽くドン引きした言葉に周子は力強く頷く。美優も苦笑しながら否定しない。実際に美優のデビューステージを見にこれなかった時に血の涙を流して悔しがったからだ。

 「そ・れ・よ・り」

周子が目をキュピーンと光らせながら視線が美優をロックオンする。この視線で美優はある意味諦めた。周子のあの視線は美優と周介の仲を茶化してくる時の視線だ。

 「美優さんは兄ちゃんへの誕生日プレゼント決まりました?」

 「え、と。まだですけど……」

 「あら、店長さん誕生日だったんですね」

 「私達も何かあげましょうか」

最初は事務所にいる時とキャラが違う周子に面食らっていた楓と瑞樹であったが、何度も周介と周子の兄妹漫才に、美優に対する周介弄りを見慣れてしまったので普通に対応できる。

美優の返答を満足そうに頷く周子。

 「チキンでヘタレで料理しか才能のない兄ちゃんの恋人である美優さんに、未来の義妹である周子ちゃんが兄ちゃんへの誕生日プレゼントのアドバイスをしてあげようと思って来ました!! はい、拍手!!」

周子が美優と周介弄りモードになったら話しを聞かなくなることを知っている三人は黙って拍手をする。瑞樹と楓は楽しそうだが、美優は困っている。高確率で恥ずかしい提案をされるからだ。

 「ちなみに周子ちゃんはお兄さんに何をあげるんですか?」

 「サメ映画ブルーレイ10本セットや。特にシャークプリズン鮫地獄女囚大脱獄なんか一押しやで。兄ちゃんはサメ映画をあんまり見ないからな!! 妹である周子ちゃんが一肌脱いでやろうと思ってな!!」

 「……周介さんが言ってましたけど、サメ映画は地雷が多いからでは?」

美優の言葉に真剣な表情になる周子。

 「ええですか美優さ…いや、義姉さん。サメ映画を見るのは日本人の責務や」

 「その発想はおかしくないですか?」

美優のツッコミも周子は当然のようにスルー。すぐに笑顔になった。

 「だったら義姉さんも兄ちゃんと一緒に見てや。きっとサメ映画の虜になるはずや」

 「は、はぁ」

押しの弱い美優は周子の言葉を受け入れてしまう。ここに周介がいたら笑顔で受け取り拒否する代物を見せられる美優さんの未来に合掌。

 「それじゃあ、本題に入りましょうか」

 「あ、忘れてくれなかったんですね」

 「ははは、話しを逸らして本題を忘れさせようなんて甘いですよ、美優さん」

笑顔で美優の退路を断つ周子。これで美優は逃げ道を失った。ちなみに瑞樹と楓は楽しそうに二人のやりとりを見ている。

 「まず、美優さんには服を脱いでもらいます」

 「「「待って」」」

 「も〜、何ですか。まだ周子ちゃんのターンは始まったばっかりですよ」

思わず突っ込んでしまった三人の言葉に周子ちゃんは不満そうだ。だが仕方ない。正気を疑うような発言を周子ちゃんがかましたのだから。

美優は疲れたように目頭を押さえながら口を開く。

 「あの、周子ちゃん。信じられない発言が聞こえた気がするんですが……」

 「嫌やなぁ、美優さん。私が信じられない発言するわけないやないですか

兄ちゃんじゃあるまいし」

遠回しに兄をディスる周子ちゃん。長い付き合いである美優からしてみても塩見兄妹の会話は異次元になることが多い。

 「ええですか、美優さん。まず美優さんには服を脱いでもらいま…おおっと!! 待ってや美優さん、とりあえず私の提案は最後まで聞いてや」

逃げ出そうとした美優の肩をガッチリと掴む周子。瑞樹と楓は完全に対岸の火事なので笑いながら二人のやりとりを見ている。

 「服を脱いだ後に美優さんにはリボンで裸体をラッピングします。ちなみにリボンはまゆちゃんに頼んだら協力してくれることになりました」

 「まゆちゃん……!!」

何故か美優の脳裏には「まゆは恋する乙女の味方なんです」とハイライトの消えた瞳で呟く佐久間まゆを幻視した。

 「そして美優さんには次に巨大な箱に入ってもらい。その箱を私と瑞樹さんと楓さんで運搬します。そして兄ちゃんがその箱を開けたら美優さんは一言『プレゼントはワ・タ・シ♡』。これぞパーフェクトプランですよ!!」

 「いえ、やりませんよ」

 「「「え?」」」

 「なんで周子ちゃんだけじゃなくて瑞樹さんと楓さんも信じられない目で私を見るんですか!?」

まさかの二人の裏切りに驚愕する美優。

 「でもこれはある意味お決まりよね」

 「そうですね。誕生日に『プレゼントは私』ってよくあるじゃないですか」

 「瑞樹さんと楓さんは話が早い!! そんなわけで美優さん。これぞ完璧な兄ちゃんへの誕生日プレゼントですよ」

周子の言葉に頭の片隅で「え? そうなのかな」と考え始めてしまう美優。いい人すぎて将来詐欺に合わないか心配である。

 「ん? どうしますか? 美優さん。このプレゼントだったら100%兄ちゃんは喜んでくれますよ? それに美優さんだってどうせあげるんだったら兄ちゃんに喜んでほしいやろ? これは貴女にとっても悪い取引ではないと思いますが?」

完全に口調が詐欺師のようになる周子。

そして『周介が喜ぶ』という美優特攻の言葉でついつい頷いてしまう美優。

その頷きを見て愉悦の笑顔を浮かべる周子。

 「それじゃあ、早速準備に行きましょか!!」

そして周子は楽しそうに美優を連行していくのであった。

 

 

 「兄ちゃん兄ちゃん!! 昨晩はお楽しみでしたね」

 「周子。お前はまた美優を騙しやがって。可哀想だと思わないのか」

 「バッチリ美優さんを美味しくいただいた人のセリフじゃないな。嫌だったん?」

 「周子、これから一週間は食事した後にデザートをつけてやる」

 「やっぱり嬉しかったんやん」

 




三船美優
恋人の誕生日プレゼントで悩んでいた結果、周子に見事に騙される。

川島瑞樹 高垣楓
周介くんのお店の常連。今回のプレゼントに一役買ったことでメンチカツを食べることができた模様。

塩見周介
最初はびっくりしたけど、そこは塩見の血。速攻で正気に戻って普通に襲った。

塩見周子
純粋な兄嫁(仮)を騙すことに喜びを見出し始めた。



こんな感じで花火回だったのを急遽変更して周介くんの誕生日回でした。
それと言うのもどっかの話で周介くんの誕生日を7月に設定していたのを思い出し、美優さんに『プレゼントは私』をやってほしいと言う作者の欲望のため。ある意味で作者の欲望に忠実に従ってくれる周子ちゃん。
と言うか普通に周子ちゃんがレギュラーになってることに驚愕を隠しきれない作者です。
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