俺が美優にプロポーズするまで   作:(TADA)

8 / 39
今回は花火大会編!!

プロポーズチャンスだぞ周介くん!!


花火大会

 「相変わらず兄ちゃんの店は閑古鳥やなぁ」

 「お前は俺のことをディスらないと喋れないのか?」

八月も末になったある日の夜。今日も仕事終わりの周子が俺の店でタダ飯を食らった後の俺の店ディスりである。

 「お前はもうちょっと兄に対しての敬意とか持ったほうがいい」

 「ふぅぅ、アホやなぁ兄ちゃんは」

 「なんだと?」

心底俺のことをバカにした目つきで見ながらの発言に流石の俺もイラっとする。

 「例えば、や。兄ちゃん。私が急に兄ちゃんに対して『流石ですお兄様!』とか言い出したらどないする?」

 「頭の病気だから病院に連れて行くな」

 「そう言うことや」

なんと言う説得力。完全論破されてしまった。

 「でも今日の花火大会もこのお店から見えるやないか。もうちょっと商売っ気出したらええやん」

 「忙しいのは昼だけで充分。夜はゆっくりやらせてくれ」

 「本当に兄ちゃんは料理の腕前だけで他は残念やねぇ」

 「本当になんなのお前!?」

世の中の兄という生き物はこうも妹に虐げられる存在なのであろうか。

 「こんばんは〜。店長、やってる〜?」

 「こんばんは」

 「おや、川島さんに高垣さん。いらっしゃいませ」

そこにやって来たのは浴衣姿の川島さんと高垣さん。

 「今日は浴衣姿なんですね」

 「そうなのよ。仕事で着る機会があってね〜。この格好で事務所に戻ったらテンション上がっちゃったから二人にも着せちゃった」

テンション高めの川島さん。だが、はて。二人とは?

 「お一人は高垣さんでしょうけど、もう一人の方は?」

 「え? あ!! もうなんで扉に隠れているのよ!! どうせ浴衣姿なんて何度も見せているんでしょ!!」

 「い、いえ。それはそうなんですけど。恥ずかしいことに変わりはないといいますか……」

こ、この話の流れはまさか……!!

 「兄ちゃん兄ちゃん!! この話の流れはひょっとするとひょっとするかもしれんで!!」

 「待て慌てるな。これは周子の罠だ」

 「横山司馬懿ネタやめい」

周子に頭をバシっと叩かれるが、俺の視線は美優(の声がする方向)から離れない。

川島さんに引っ張られるのを必死になって抵抗する美優。川島さんだけに集中しているせいで伏兵には気づいていないようである。

 「えい」

 「楓さん!?」

そう高垣さんの存在である。後ろに回り込んだ高垣さんによって強制的に美優はお店の中に入ってくる。

そして俺は絶句した。

美優の雰囲気に似合った黒を基調とした浴衣。髪の毛も浴衣に合わせるようにあげて結われている。

 「どうかしら店長。見惚れちゃった?」

 「お」

 「「「お?」」」

 「おォォォォォォォォォォ!!!!!」

 「「「五体投地!?」」」

美優を見た俺の体は自然と五体投地をしていた。美優と川島さんと高垣さんが焦った声を出している気がするが俺の耳には入らない。

 「女神はここにいた……!!」

 「あの周介さん、恥ずかしいのでやめてください……!!」

美優の言葉にとりあえず五体投地をやめて立ち上がる。

 「それで店長。美優ちゃんに浴衣を着せた私に何かご褒美はないの?」

 「みなさん今日は俺の奢りです」

 「「ゴチになりま〜す!!」」

川島さんの言葉に俺が言い放つと楽しそうに返してくる川島さんと高垣さん。すると美優がそろそろと近づいてくる。

 「あの……本当に大丈夫ですか?」

 「大丈夫だよ。それに久しぶりに美優の綺麗な浴衣姿が見れたんだ。それに比べたら安いもんだよ」

俺の発言に真っ赤になる美優。そして割と恥ずかしいことを言ったことを自覚した俺も真っ赤になる。

 「Hey!! そこの中学生カップル!! 自爆しとらんで注文はよ!!」

 「周子は本当に空気を読まないなぁ……!!」

とりあえず周子に煽られたので大人しく注文を取りに行く。

 「それじゃあ私は獺祭で」

 「私はレミー・マルタン」

 「高垣さんも川島さんもここぞとばかりに高い酒を要求しましたね」

 「周介さん、本当に大丈夫ですか?」

 「おうとも……美優のためだったら喜んで自腹切ってやるよ……!!」

そう、全ては愛だから

とりあえず俺は注文されたお酒を用意して、おつまみの作成に入る。すでに川島さん達は出来上がりつつあった。

俺の立つ厨房のカウンター席にはニヤニヤと笑っている周子。

 「……なんだ?」

 「いや、兄ちゃんは今日こそプロポーズせぇへんのかなって思ってな」

 「有りだと思うか?」

 「今日は花火大会やからな。花火をバックに指輪をプレゼントして結婚してください。有りやないか?」

 「すまん、周子。俺、ちょっと二階に行ってくる」

 「行ってらっさ〜い」

ヒラヒラと手のひらを振ってくる周子を尻目に俺は二階の自室に入る。

そして机の上に置いてある指輪の入ったケースをポケットに入れる。

 「今日こそ……決める……!!」

そう、これは覚悟。決して引かないという覚悟だ。

俺は下に戻っておつまみの準備をしたり、周子と漫才をしているうちに花火の打ち上がる音が聞こえる。

 「あら、花火大会だったのね」

 「川島さん、実はこのお店の前から見えるんですよ」

 「あらそうなの。じゃあせっかくだから見に行きましょうよ」

お酒を置いて外に出て行く川島さんと高垣さんと周子。周子は一瞬だけ俺を見てウィンクをしてきたところを見るとアシストのつもりらしい。

くそ!! こういう時だけいい妹ムーヴしやがって!! 明日はお前の好物をいっぱい作ってやるからな!!

 「それじゃあ美優も行くか」

 「あ、はい」

俺が出した手を自然と握ってくれる美優。そのまま二人でお店の外に出る。ビルとビルの間から大きな花火が上がっている。

 「綺麗ですね……」

 「あ、ああ」

正直美優の横顔に見惚れて花火どころではなかったのだが、必死に冷静になりながらポケットに入っている指輪を握る。

そして意を決して美優に声をかけようと思った時に視界に入る物がある。

どこか期待した眼差しの川島さん。ワクワクした表情を隠そうともしない高垣さん。そしてスマホでカメラを回している周子。

 「……できるかぁ!!」

 「え!? どうしたんですか!?」

 「ああ!! いや、違うんだ!! 気にしないでくれ、美優!!」

思わず怒鳴ってしまい、慌てる美優を宥める。すると周子と視線が合う。

 『今がその時だ』

 『絶対に違う』

以上が兄と妹の心温まるアイコンタクトである。

この後、片桐さんと柊さんも合流したことで益々プロポーズできなくなるのであった。

 




塩見周介
人前ではプロポーズはできない系

三船美優
恋人と一緒に花火が見れて幸せ。さらに浴衣も似合っていると言ってくれたので幸せ倍増

川島瑞樹 高垣楓
アシストをしたつもりが完全にお邪魔プヨ

塩見周子
両親から言われて兄のプロポーズの決定的瞬間をカメラに捉えようとする。自分の趣味でもある。




こんな感じで花火大会編でした。今までの中でもトップクラスに出来が悪い気がします。まぁ、最初から出来が悪いから気にするのはやめましょう!!

困ったことに今回もプロポーズを空ぶってくれた周介くん。本当にいつになったらお前はプロポーズしてくれるんだ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。