アンノウン・エネミー   作:連合兵

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Age0 002 テロリズム

 

 

「ケビン!」

聞き覚えのある声に、スパイサーは振り返った。

「タリン!久しぶりだなぁ」

 

タリン・イブラヒム。木星のハッサン首相の主任警護官である。

「CTUから連絡は?」

「ああ。共有してる。ヘンダーソンはやり手だな。」

スパイサーは、タリンの歓心に曖昧に同意した。

対立はあるが、ヘンダーソンの能力や実績にも一定認めなければならない部分があった。

窓の外では、慌しく人が動いている。

 

「言葉より行動がモノを言う、、、か。」

「そう言うな、君らは立場が違う。しかし、信じられるか?ザフトやジオンがなんて」「情報は確からしい。厄介だよ。」

 

 

 

そしてエンジェルで1番大きな総合病院の産婦人科のある一室では新たな命が生まれようとしていた。

マリナ・アスノの手を、亭主であるアルフレッド・アスノが握る。

彼女はこの時代にあって、太陽系でもっとも裕福なアスノ家に生まれてなお、自分のお腹を痛めて新たな命を授かろうとしている。

 

そして、日付が変わった瞬間。

小さなだが、確かな産声が響いた。

 

「元気な男の子です」

助産師が満面の笑みでマリナに産まれたばかりの赤ん坊を抱かせる。

この夫婦は本当に温かい眼差しを持っている。

年配の助産師はそう思った。

マリナも満面の笑みで赤ん坊に語りかける。

 

「よろしくね。フリット。」第2話 「奇襲」

 

 

「なんか映ったか?」

「レーダーが不調だ、古いミノフスキー粒子かな?」

「機材の故障かもしれん。テロの可能性もある。デレクに伝えろ」

 

 

港湾管理局のデレク・アンダサバは、椅子に腰掛けながら情報を処理し、指示を出していた。

「索敵班から警告が来た。警戒を強めてほしい」

「了解した。待機中のレクテン2チームをまわす。CTUのヘンダーソンにも連絡してくれ」

CTUに全面協力するようにお達しを受けていたので、港湾地区に控えさせていたモビルセキュリティであるレクテンを発進させる。 MS用のハンドガンと警棒であるスタンスティックで武装している。連邦の許可なくモビルスーツを武装させることは条約や連邦法で固く禁じられている。

実はこのような出撃はこの数日で何度かあり、今回も問題ないだろうとレクテンのパイロット達は考えていた。数十分後、彼らはその油断のツケを自分の命で支払うことになる。

 

 

一方その頃、エンジェルのドック近くの会見場では記者向けのプレスリリースが続いていた。

ニックスに石頭と呼ばれた整備長は得意顔で、カメラの前に出ていた。

 

「結局最後の作業は、人間の手でやります。モビルスーツではない。」

 

部下からの評価は分かれる男だが、この場ではヒーローの1人であった。

少なくともカメラの前でもあまり物怖じする様子はない。

 

エンジェル全体では、盛大なセレモニーの準備が行われており主催のOISエンターテイメントは太陽系最大のイベント会社の威信をかけて人員を総動員していた。

パビリオンでは、アナハイムやアラサカなどの巨大企業をはじめとしたブースがあり、観光客で賑わっていた。

警備はセキュリティ会社大手のPMCや、地元警察、連邦安全保障局の治安維持部隊まで動員されていた。

 

中央司令室の開設されセキュリティ情報は集約されていた。

 

「L5中域に不審機!」

「部隊を出せ!」

 

ヘンダーソンはオペレーターに喝を飛ばす。彼らは優秀だが、こういった深刻な有事を経験しついるものはいなかった。平和な時代が1000年続いたのだ。

太陽系中を探しても見つかりはしないかもしれない。

 

「近くに動ける艦艇は?」

「ヴァージニア級が急行中。サラミス2隻が3分で着きます。」

「艦隊司令部に連絡しろ!コードレッドだ!」

 

ヴァージニア級武装輸送艦「 ディケンズ」のブリッジでは艦長が檄を飛ばしていた。ヴァージニア級は連邦が運用している中では最大の艦艇の1つだ。旧ユニオンの艦艇だが、水素エンジン動力のモビルスーツを12機運用することができる。その能力は銀の杯条約で兵器の新規建造が禁止されている中では強力で、より強力な核融合炉動力機こそ整備できないが、水素エンジン機でも同時に12機襲いかかれば大抵の反連邦組織は撃破できる。ムサイ級巡洋艦を運用するジオン残党でも警戒していると言われるくらいだ。

ディケンズは同じくユニオン系のモビルスーツであるユニオンリアルドの宇宙型を6機と、支援用の戦闘ポットであるボールを6機搭載していた。

「モビルスーツ隊を先行させろ!ボールの第1小隊のも続け!第2小隊は艦の直衛につけ!」

艦長は前方の戦闘の光を見やりながら、モビルスーツ隊を先行させたヴァージニア級は戦闘艦艇としての能力は高くなく、敵が巡洋艦や駆逐艦だと分が悪い。対艦戦はモビルスーツや急行しているサラミスに任せるのが良いのだ。

 

 

 

「追跡できてるか!クリス!」

「見失いました!」

 

「テロ対策ユニットから連絡が入った!コードレッドだ!」

艦隊司令部のパウル少佐は有能な男で、次々と指示を出していく。

ただ、長く続いた平和な時代に全体としての連邦軍の練度は低かった。

 

 

同じころ、コロニー内では、たくみに隠されたカモフラージュから、ジオンのシンボルでもある、るモビルスーツ、ザクが起動していた。武装はザクマシンガンにヒートホーク、頭にツノのようなアンテナのあるこの機体以外にも、周辺にはアンテナのない丸い頭の何機かが起動して立ち上がっている。その足元から走り去っていく人影は、このモビルスーツ部隊を極秘に持ち込み今日まで隠していた工作員達だろう。実はこの時期の連邦政府の支持率は地に落ちていた。官僚システムの性か、連日の汚職の報道を始め、都市部では反連邦のデモが鳴り止まなかったりする。

 

 

ツノつきのザクに搭乗しているリーダー格の男は、部下に発破をかけた。

 

「連邦政府は嘘つきばかりだ!我々は今日、世界に嘘を暴く!」

破滅の使者は飛び出した。

4機のザクによって、コロニー内の連邦の部隊は、たちまち混乱に陥った。

 

「なんだ事故か?」

式典ドックで警戒についていたノップン・ポップ中佐はボケた顔で、言った。

副官のマーガレット大尉は、この馬鹿そうな上官などほっぽいて叫ぶ。

「違うあれを見ろ!」

テレビ中継がコロニー内の戦闘を映している。マーガレットは次々と各部署に連絡を始めた。

ノップンは一瞬鋭い眼光を見せたかと思うと、すぐに元に戻りそれをぼんやりと眺めるようにして何かを考えていた。こいつは仕事しなくていいのか?

 

エンジェル内部の警備部隊は慌て迎撃態勢を取ったが、敵は効果的なポイントに出現し、攻撃をしていた。明らかに訓練された軍隊の動きだ。

 

 

その情報を得たヘンダーソンはある可能性に至った。

 

「手引きした人間がいる。」

 

突然の発言に報告した部下は疑問符を浮かべる。

ヘンダーソンは苛立ったように声を荒げた。

 

「内通者がいる。それも政府の要人だ!」

 

 

 

「連邦の戦闘機風情が!やりやがる!」

トリアーエズの小隊が交互に連携しながら機関砲で攻撃してくる。一機が突撃する際は必ず残りの2機が支援して、背後を狙われないようにする。

 

順調に進軍していた。ザク4機だが、ここに来て進撃を鈍らせいた。

今まで、蹴散らしていた部隊とは、明らかに格の違う高い技量を持った部隊の反撃を受けていたのだ。

おそらく要人の護衛の為にわざわざ呼び寄せられた精鋭部隊だろう。今は、2機が空中にいて、もう2機が地上車両を叩いている。

 

だが四方から押し寄せるモビルスーツ隊を前に、通常兵器主体の守備隊は劣勢を強いられている。

 

「連携が取れてない!味方は素人ばっかかよ」

 

7

 

航宙機トリアーエズの編隊がなんとか時間を稼ごうと接敵する。

「こちらスパロー1!所属不明機はエリアC3へ進行。足止めできそうにない!」

「CTUから、スパロー小隊へ。なんとか踏ん張ってくれ!ミサイルの使用も許可する。」

「簡単に言ってくれるな」

スパロー小隊の隊長バーモント大尉は通信を切ったあと、悪態をついた。

しかし、それで敵が消えるわけではない。

すでに周囲の部隊は後退を始めており、このままでは突出してしまうだろう。

 

 

エンジェルの市街では、異変に気付き始めた人々もいた。

振動が立て続けに起き、爆発音もする。

 

「なんか様子が変だぞ。」

オフィスビルの部屋の中で、伝票の整理をしていると

「あぁ、連中慌ただしいな。」

 

すると

ノクトンは、建物の高いところに登って、全体を見ようとした。

 

「おい、あれなんだ!」

観るとコロニーの中で戦闘の光が見えた。

 

次の瞬間、戦闘ヘリコプターであるファンファンが、撃墜されて地上に落ちてくる。

そんな光景がエンジェルのいたるところに見られ市民はパニックに陥っていた。

コロニーの守備隊は戦闘車両や武装パワーローダーまで投入したが、ジオンのザクⅠの前には、かなりの劣勢を強いられ続ける。何より、展開もまばらで連携が取れず、後手に回っていた。

 

大統領の控え室で、ジャックは有線電話の呼び出しを受けていた。画面の向こうには渋面のヘンダーソンがいた。

 

「大統領、避難してください!」

ジャック・バウアーはロナウドに詰め寄っていた。

本来なら、無礼にあたる行為なのだが、他の護衛官達も同じ思いなのだろう。

バウアーを咎めるものはいなかった。

 

ロナウドは暫し沈黙していた。コロニーの揺れが、響く。

その振動が、彼が生涯をかけた平和活動の結果を示していた。

ロナウドは、苦渋を胸の内いっぱいに飲み込み、バウアーの目を見返し頷いた。

 

しばらくして、式典会場を武装した兵士達が制圧していた。中には超人的な身体能力を持つものもいるようで、少数の連邦兵をまたたくまに蹴散らした。しかし、式典会場はもぬけのからだった。大統領がここにいたのは確認済みで今は包囲下にある。となると逃げた先は、

 

「式典ドッグへ向かうぞ!奴はあそこだ!」

リーダー格の男がそう言うと、完全武装した男たちがドッグへ走り出した。

 

 

「くそう!街が燃えてるぞ!」

黒煙が人工の大地を覆っている。

 

 

「司令部がやられた!」

軍曹が言う。

 

「ヘンダーソンは?」

「絶望的でしょう。」

ジャックは大統領をどうすれば逃がせるかについて考えていた。

 

敵はかなりの戦力で四方から迫ってきており、逃げるにしてもここは太陽系最果ての地だ。その辺のシャトルでは燃料切れで漂流するだけだろう。

 

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