でんこと行く「美し国、日本」   作:アベノ ミサキ

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【地下鉄に乗って京都を巡るっ】イベント参加時のメモリー。(2017/11/23~25)


萌と行く「地下鉄に乗って京都を巡るっ」(1)

『マスターさん、ようこそ京都へ!』

 京都駅に着いたマスターの前で歓迎の挨拶をしたのは檸檬色のジャケットに、胸元に赤いリボンが特徴的な制服を着た【太秦萌】。およそ1年前に京都で出会った女子高生。

 ただし、宙に浮いていることと、フィギュアサイズである、つまり【でんこ】であることを除いては。

 

 

 ルナなんよ。およそ1年前、マスターとウチらは協会のミッションを達成するために京都へ向かったんよ。その時は一日で指定駅を周るという、マスターお得意の弾丸ぶりを発揮したんよ。

 でもその時、マスターもウチらもそのミッションに疑問を感じたんよ。【地下鉄東西線】と【地下鉄烏丸線】を巡るだけの味気ない内容に。結果的に地元の女子高生【太秦萌】ちゃん達と知り合えたのは良かったんやけど…

 後日、イベント達成報酬として【京都まんきつきっぷ】なるものが1枚届いたんよ。調べてみたけど特に意味のない、いわゆる記念品的なものだろうとういことで落ち着いたんよ。ところが先日、自宅で次の旅行先について話し合っていると……

『……?マスター、鞄の中を見るんよ』

 鞄といっても、ウチらでんこが言うのはマスターの端末内にある所持品リスト。ここには大まかに言って【使うと効果があるもの】【持っているだけで効果を発揮するもの】【特に意味のないもの】が格納されているんよ。

 使うと効果があるものはマスターが使用申請することによってアクティベートされ、協会の未来の科学力によって発現するんよ。

 マスターはリストをスクロールすると気づいたみたいなんよ。確か、特に意味のないものに分類されていた【京都まんきつきっぷ】が【使うと効果があるもの】になっていたんよ。

「どういうことだろう?」

『おそらく……今まで使えなかったものが使えるようになったということはプレゼントの準備ができたかだと思うんよ。』

でもそれは半分しか当たっていなかったんよ。

 

 京都まんきつきっぷに触れるマスター。使用を確認されたきっぷは鞄から消える…

『ぴんぽーん』

 何が起こるか、と期待していた空気に突然鳴り響くインターホン。タイミング的にドキッとしたマスターだったが、続けて『お届け物でーす』の声に「何だろ、配達か。尼かな? でも何も注文してなかったよな…」などとつぶやきながら玄関に向かう。扉を開けるとそこに人影はなく、足元にダンボール箱が置いてあるだけだった。

「このパターンはあれだよな……」箱を見つめるマスター。

 ウチらでんこは、ミッションの報酬などで手に入る【プレミアムガチャチケット】を使用することによって、おおよそランダムで新しいでんこがマスターのもとへ協会から派遣されるんよ。でも今回はガチャチケットではないのにでんこが派遣されてくるパターンに似てるんよ。ということは【特定のでんこ】である可能性が高いんよ。

 部屋に持ち帰り外箱を開封するマスター。でんこであれば中はパッケージングされた化粧箱にでんこが入っていて、開封すると起動する仕組みなんよ。

「やっぱりでんこだったね……あれ?このでんこ、見覚えが……」

 化粧箱から見えた姿は、いつか京都で出会った女子高生のものだったんよ。

 

 

※※※

 ははっ、彼、相当驚いている頃だろうね! ああ、そうそう、でんこのデザインの話だったね。

 でんこのデザインにはモデルが有るのは知っているだろう? 主に最初から着ているラッピングや装飾品、パンタグラフなどは元となった車両。名前はやはりモデル車両や駅名なんかから持ってきている。じゃあでんこ……ええと、ボディのことだ。むしろ一番目立つ部分だろう。別に彼女たちは協会員やデザイナーの趣味で作っているわけではない。話の流れからわかるように彼女たちにもモデルは居る。では誰か?

 その前に、彼女たちの使命は過去に渡り、滅びる前の駅からメモリーを集めることだが、実は彼女たちのモデルは各時代に居た実在の人物なんだ。そしてその選抜理由は【およそその駅、車両などに縁の深いこと】だ。何故かそういった人物をモデルにしたでんこはメモリー収集能力が高いことがわかっている。

 次のミッションにはどうしても彼女の力が必要なのでね。開発に1年かかってしまったが、マスターくんと彼女ならきっと達成してくれるだろう。

 

 

※※※

『はじめましてマスター!私、太秦萌。マスターと一緒にメモリーを集めるために派遣されました!』

 驚きを隠せないマスター。それもそうなんよ。だって彼女はどう見ても去年京都で会った人間の女の子、【太秦萌】そのもの。そして【このタイミング】なので協会の目的も予想はつくんよ。

『実は私、次のミッションに適したでんこと言うことと、ついでにメッセンジャーとして派遣されました!』

 萌が持ってきたミッションは予想通り再び京都なんよ。これで納得いったんよ。去年の京都ミッションは【二つの】意味があったのが推理できるんよ。一つは京都地下鉄にマスターを慣らしておくこと。もう一つは太秦萌のデータを収集すること。

 今度は駅の他に著名なスポットが追加されてるんよ。日数次第では難易度の高いミッションになりそうなんよ。なので京都に適したでんこが必要であること。それだけ次のミッションにかける期待と規模が大きいことが想像できるんよ。

 そしてタイミングというのは……先日、マスターはインターネットで流れてきた【とある写真】にとても感動してたんよ。案の定ミーハーなマスターは渡りに船とばかりこのミッションに乗り気で、慌てて計画を練り始めたんよ。協会にばっちりリサーチされてるんよ……

 

 

 というわけで改めて京都駅前なんよ。(でんこの)萌の歓迎を受けていざ、京都観光! ミッション名【地下鉄に乗って京都を巡るっ】

 ……ところでマスター、すごく眠そうなんよ……というのも、京都までの経路は仙台駅からおよそ20時出発の高速バスで日本海ルート、京都到着は8時……つまり12時間の乗車だったんよ。

 高速バスなので寝てればいいのに(マスターは環境耐性が高くてどこでも眠れるらしいんよ)、行きが日本海ルートをいいことに「これは赤新駅大量取得のチャンス!」なんて言って殆ど寝てないんよ。そして徹夜の強行軍の犠牲になったでんこは……

『すや~、なの……』

 編成に経験値を与えることのできる【なより】が一人で頑張ってたんよ。マスターはハイテンションで元気みたいだけど、いつ居眠りして電車を乗り過ごさないか心配なんよ……

 

 

 萌です!今回はわたしがマスターの京都案内をさせてもらうね。ミッションスポットの他にもいくつかマスターの希望を含めて計画を立てたよ! 高速バスから降りて早速出発! マスターは大丈夫って言うけどほぼ徹夜したので体調には気をつけて……

 まずは京都駅から南北縦断する【地下鉄烏丸線】に乗車して北上、7分ほどで着く【丸太町駅】を降りるよ。眼の前に見えるのは【京都御苑】!

 ここでは京都御苑の紅葉も綺麗だけど、目当ては中にあるマスター希望のスポット【仙洞御所】の予約制のツアーガイド。インターネットで予約抽選できるんだけど、見事落選……でも諦めるのはまだ早い、当日申し込み(先着順)ができるんだ!

 南側の【堺町御門】から入場、御苑は紅葉真っ盛り、赤や黄色に色づいた木々が鮮やか!

 砂利敷、白壁の道を少し北上して東へ。仙洞御所の予約列を様子見。受付は11時からなので流石にほとんど並んでる人は居ないね。そのまま北上して【京都御所】へ。京都御所の鬼門の方向にある【猿ヶ辻】の屋根下に木彫りの猿があるのは有名だね。

 さて、予約列は10時半くらいにくればいいかな。それまではどこで時間を潰そうかな……このあたりだと、御苑のすぐ南にお茶の先生も利用する【一保堂茶舗京都本店】があるね! 早速行ってみよう!

 

 徒歩数分で一保堂茶舗京都本店に到着! お店の造りは手前でお茶の販売、奥は喫茶室になっているね。店員さんの勧めでまずは玉露を試飲。マスター、玉露は初体験。高級なお茶とはどういうものかと…飲んでびっくり! そうなんだよね。玉露は【とても甘い】飲み物。それは煎茶とは別次元。これはお土産に……と思ったみたいだけど、かなりお高いんだよね。それでもリーズナブルなセットを購入。

 その後は奥の喫茶室へ。抹茶を注文…すると店員さんに「薄茶と濃茶、どちらになさいますか?」と。マスターは違いがわからないよね。ざっくりいうと【薄茶はサラッとしていて一人でそのまま飲みきり、濃茶はドロっとしていて、数人で廻し飲みする】って感じかな?ここでは濃茶も一人で飲むけどね。

 マスターは薄茶を注文し、『これが抹茶か……』なんて、わかったようなわからないような顔やったね。

 

 そろそろ時間なので再び仙洞御所へ。予約列はまあまあ並んでるね。そのまま列で待機。並んでいる人たちの雑談に耳を傾けていると11時になったので整理券を配布し始めたよ。マスターは13時半の回になったみたい。そうするとお昼ご飯を食べてからだね。このあたりだと……御苑の南東の角すぐにある中華料理屋【マダム紅蘭】が有名だね。

 早速向かうも、すでに予約でいっぱい。さすが有名店。それなら……マスターはラーメンが食べたいっていうので、御苑の南にあるつけ麺屋さんへ。京風ラーメンではなく、流行りの豚骨魚介つけ麺だったけどマスターは満足したみたい。

 

 間もなく時間なので再度仙洞御所へ。ツアー参加者はガイドさんの案内で御所内へ入場。

 まず目に入った【大宮御所】の説明を受け、その先へ歩みを進めると…【北池】を囲む鮮やかな紅葉がお出迎え! 水面にも映る濃い朱。最初からクライマックスだね!

 続いて北池をぐるっと回り【南池】へ。ここは池際が河原のようになっているのが特徴だね。更に南に進み、南池の南端にある茶室【醒花亭】へ。ここは仙洞御所に残る数少ない建築物だね。醒花亭という名は中国の詩人、李白の詩からとったんだって。

 再び北池に向かうと西側にある茶室は【又新亭】。実は仙洞御所は火災で建物が消失して、庭園と茶室だけが残っているんだって。でもそのシンプルさが仙洞御所の良さかもしれないね。

 

 ツアーを終え、仙洞御所をあとに。再び御苑内を北上し、西の【乾御門】から出てすぐそばの地下鉄烏丸線【今出川駅】から乗車。北上し、去年も来た終点【国際会館駅】へ。

 今回は駅を降り、南側に広がるミッションスポット【宝が池公園】へ。宝が池公園は高台になっていて、宝ヶ池を囲むように緑が茂る造りで、池はあまり大きくないものの一応ボートもあるね。馬のモニュメントなどを眺めながら公園を散歩しつつ下り宝が池公園をチェックイン。流石に年末差し迫っているので寒い公園に人はまばら。でもマスターは歩くのが好きなので人混みがないほうがいいみたい。次のミッションは公園と京都御苑の中間にあるよ。公園の南側からバスが出ているね。

 バスに乗って次のミッションスポット【下鴨神社】に到着! 朱と白が眩しい門を潜り境内へ。ねえ見てマスター! 虹が出てるよ! 古来虹は不吉の象徴と言われていたこともあるけど、なんだか縁起がいい気がしない?

 ところでここ、下鴨神社はとある有名な和菓子の発祥の地なんだって。それは【みたらし団子】! 境内(糺の森)のみたらし池に湧き出す水の泡を形取って作られたと言われているんだって。

 

 下鴨神社からバスで京都駅へ。17時も過ぎ日も沈みあたりは暗く。今日はここまで……というには気が早いよね! 近鉄京都線に乗り込み【東寺駅】へ。目的地もそのまま【東寺】だね。すっかり暗くなっているのにお寺へ何しに……と思うなかれ。この時期、京都のあちこちでは寺社仏閣の【紅葉ライトアップ】が盛んなんよだね。もちろん有名な東寺でも。

 入場待ちは外壁沿いに大行列! 東側から入場して中に入ってもしばらく列は続くけど、早速湖面に映る【五重塔】が! フォトジェニックだね! ライトアップはそこから五重塔辺りまでの開放で、広場では湖面に映る紅葉と大柳が幻想的だね。

 

 その後はバスで、予約していた【西院駅】付近のホテルへ。ここは明日の最初の目的に近いんだって。

 とりあえず初日は大成功かな?明日の予定もなかなかハードだからゆっくり休んでね。

 また明日も楽しもうね、マスター!

 




マダム紅蘭:【京風中華】とも呼ばれる、四川料理をベースにしながらも辛さを抑えた優しい味わいの中華料理。コストパフォーマンスにも優れる。(次こそは……)

本来の萌は京言葉なのですがそこはご勘弁…
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