『師匠! 見えてきたぞ! 燃えてきたぁぁぁ!!』
フェリーのデッキから港を望むマスターとでんこ達。煙を吐くフェリーの煙突に感化されたのか、コタンはいつも以上に暑苦しい。
時刻は間もなく11時。仙台港発フェリー【きたかみ】は、間もなく北海道は海の玄関口【苫小牧港】に入港する。天気は曇りがちで日差しが少ないけど、真夏であることを考えればメリットもあるといえる。
『試される大地北海道……主殿、今度の旅で拙者共々一回り大きくなって凱旋しようではないか』
『広い北海道は本領発揮できるよ! さいかにまかしてね!』
『北海道はなかなか来られないからなー、うまく頭を使ってメモリーを集めるんだぞー』
『zzz……』
初の北海道でもあるので、縁のあるでんこ達で編成してみたけど……あらためて見ると個性的すぎるな……共通性は【直情】ってとこか。歯に衣着せぬ物言いをするでんこばかりだな。まあやる気があるのはいいことだ。
イムラじゃないが、この旅で俺と【相棒】とでんこ達で試される大地、北海道に挑むのだ。
普通自動二輪免許を取って数年経ち、転勤のため初代相棒は置いてきてしまった。ある日なんとなく近場のバイクショップを覗いたときに見つけたバイクに一目惚れしてすぐに大型自動二輪免許の教習を申し込み、バイクの購入をしたのが初夏。
慣らしも兼ねて東北のツーリングスポットを巡ったけど、大型バイクに乗ったからには北海道! と短絡的思考に行き着く。ちょうど仙台港からフェリーも出てるし。
札幌にはちょうど知り合いもいるので相談に乗ってもらい、夏休みの調整をしてスケジュールを立てる。待ち遠しい夏休みがやってきて、船上の人となった。
定刻通り11時に到着。フェリーを降りると、苫小牧港にはバイク乗り達がたまっている。出発前の最終調整やツーリング仲間を待っているんだろうか。友人が最寄りの、北海道の覇権コンビニ【セイコーマート】、通称セコマで待っていてくれるのですぐに港を出発する。
友人と合流し【道央自動車道】を北上、札幌市へ向かう。高速道路からはよく見えなかったけど、右には千歳空港を望んだり、自衛隊の演習場を二つも通過したりしたらしい。
札幌市到着後は昼食をとり、そのまま更に北にツーリング。渋滞回避で内陸を通り【道の駅石狩「あいろーど厚田」】まで。途中で、ある理由によりガソリンスタンドに寄る。
あいろーど厚田に到着。【あいロード夕日の丘】ってのが有名らしい。【にしん街道】なんて碑が立ってたけど、その時はまだ北海道とにしんの歴史を知らなかったのだ。帰りは海沿いのオロロンラインを通って札幌に戻ってその日は終了。友人宅にお世話になることにする。
『マスター早く! さいかにまかしてね!』
さいかが駅のアクセスを急かしてくる。仙台港から札幌まで移動したのでさいかのやる気は最高潮! 当然さいかで札幌市内の駅にレーダーを惜しみなくアクセスする。なぜ焦っているかといえばそろそろ18時になってしまうからだ。そうなるとレーノが主張してくるのは目に見えている。
『マスター、明日の夜は寝かさないからね……』
レーノが怖い!
翌日。友人にお礼を言って別れ、いよいよ今日から本格的に北海道を攻める。
まず経路説明の前に個人的ミッションがある。それは【ホクレンフラッグ】の入手。それは北海道ツアラーを応援するキャンペーンとして、北海道を4つのカラーエリアに分けたそれぞれのガソリンスタンド【ホクレン】で給油すると購入できるノベルティで、北海道をイメージした、バイクのシートバッグなんかにちょうど付けやすい旗である。毎年デザインが変わるのでコレクションするのは大変である。おおよそ道南、道央、道北、道東のエリアに分かれているので【わたしは今年このくらい北海道を回りましたよ。】というアピールになるらしいのだ。早速札幌で道南【イエローエリア】のフラッグを手に入れている。
これを踏まえ、今回のコースは【札幌から大雪山を横断、根室方面へ向かい折り返して釧路へ。その後は帯広を通って札幌へ】である。まずは初日のコースの詳細は札幌から旭川を経由して大雪山を通り北見という流れ。
札幌より大雪山へ向かうには、札幌市から旭川市へ高速道路である道央自動車道が走っているが、まずは下道で行く。北海道を感じたいという理由もあるけど、一応目的地もある。
『主殿、このあたりからでござる』
【
最長ではないが【最高な】直線道路というのは実は北海道にもいくつかある。今回の計画には入っていないけどいつか行ってみたいものだ。
直線道路の終点から道は徐々に北東に向かう。次の中継地旭川へ向かう道だ。でもその前に寄るところがある。
『……』
いつもはでんこ一暑苦しいコタンが神妙な顔をしている。ここは旭川市の西、石狩川の両岸に位置する【
川そばの駐車場に停め、川向うにある旧駅舎に向かうため石狩川に架かる吊橋に向かう。吊橋は川より少し高い位置であり、見下ろす河原は洗濯板のようにゴツゴツしている。
吊橋の名は【かむいおおはし】とあり、看板には『一度に100人以上渡れません』と書いてある。観光客はまばらで、まず100人以上同時に渡ることは……概算6トンくらいか?
『ますt』
ここには商売の匂いはしないぞ。地面にめり込むような重さの荷物を背負ったでんこは絶対に出てこないはずだ。いいね?
橋を渡ると左手には機関車、右手には駅舎が見える。まずは機関車へ。看板を見ると【29638】(通称キュウロク)【C57】【D51】とある。あまり鉄道に詳しくなくてもD51、通称デコイチは聞いたことがある。C57は201/201のラストナンバー車だそうだ。
『うおお! なんてかっこいいんだ、コタンも偉大な先輩達のようにがんばります!』
先程の神妙さはどこへやら。SLを見ていつも以上に熱くなるコタン。北海道開拓に寄与したSLはたしかに偉大だな。きっとコタンにもその意志は受け継がれているのだろう。寒い北海道ではあの熱さもわかるというものだ。
駅舎に向かうと【旧神居古潭駅舎】と書かれた綺麗な金属製の碑が立っていて、駅舎自体もきれいに手入れされている。元々線路があったところは今は歩道兼サイクリングロードになっているようだ。一段高いところにホーム跡があり【かむいこたん】と、錆びた駅名表示板が立っている。旧国鉄時代の駅は協会の対象外になっているが、記念にチェックインしておく。(このあとおよそ1年後、協会のはからいで神居古潭駅はチェックイン対象になる)
駅舎周辺は緑深く、石狩川のせせらぎ……ではないな。川の水は茶色く、流れは荒々しい。川の両岸は手入れされていない自然のままの緑。自然は決して癒やしだけを与えてくれるわけでは無く、神の荒々しい部分を見せつけられているのだろう。
ところでツーリングだとマスター的に問題がある。運転中はチェックインが出来ず、いちいち停まらないとできないことだ。ところが協会の新兵器【ルートビューン】を使えば……よし、函館本線の駅にチェックイン。ダメージは通らないので新駅ボーナスだけ欲しいでんこに任せられるのも長所かな? 一応最終チェックインしてからの時間制限があるので注意しなくてはいけないが。これさえあれば北海道のメモリー取得の任務を果たせるはずだ。
このあとは旭川市街に向かい昼食。もちろんラーメン好きな俺としては【旭川ラーメン】は外せないな!
下調べに時間がかかって『そこは勢いだぞマスター!』結構時間をロスしてしまったが『優柔不断はダメだなマスター』コタンうるさい。若干時間を外しているせいかまあまあ評判がよく、並んでない店を発見。
当然旭川ラーメンは初めてである。いただきます。熱い! 『熱いなマスター!』コタンのせいで余計熱い!
旭川ラーメンは厳密な制約はないものの、【スープは魚介類と、豚骨・鶏ガラ・野菜で出汁をとったWスープで、比較的醤油ダレベース】らしい。それと【ラードを入れるのが特徴】とのこと。ラードの油膜でスープに蓋をすることで冷めにくくしている、零下30度を下回ることもある旭川の工夫らしい。
本州でもラードが入ったラーメンは食べたことがあったので熱く冷めにくい事は知っていたけど、旭川のは特に熱い。北海道とはいえこれを夏に食べれば汗も吹き出るというものだ『汗だくだぞマスター』わかったから近寄らないで!
火照った体を冷やすにはもちろんバイク。相棒は股下が大火事になるようなタイプではないので快適である。しかし天気は下り坂。ラーメン屋選びに時間がかかったのは失敗だったか。
ところで旭川はすでにホクレンフラッグのレッドエリア。大雪山に入るまでにはレッドフラッグをゲットしておきたい。
『ふむ、拙者のルーツもここまででござるか。懐の広さ、見習いたいものでござる。』
イムラのルーツである美唄駅を含む函館本線は【旭川駅】で終点。旭川駅はなんと【函館本線】【富良野本線】【宗谷本線】、そしてこのあと並走する【石北本線】の起点終点駅であり、日本最北の友人高架駅(モノレールでおなじみ)である。今回は通過するだけだったけど、いつか見てみたいものだ。
ところで残りのでんこ達のルーツを路線別で確認すると、ふぶは【(宗谷本線)
さらに言えばさいかのルーツ【
ちなみに今まで通ってきた国道12号は【神居国道】という名で、それも旭川市街地まで。接続するのは【国道39号】、その名も【大雪国道】であり、大雪山を超え本日の宿のある北見市まで続く道だ。
旭川を出発し大雪山の手前、愛別にあるSSでレッドフラッグゲット! ついでに給油をしていると……来ました。大雨。一応雨対策の装備は準備してあるものの、濡れると片付けが面倒なので雨宿りすることにする。
しばらくして雲行きはまだ怪しいがとりあえず雨も上がり、出発することにする。
『マスター、この先はあまりワインディングは無いけど雨上がりだし気をつけて進むんだぞー』ふぶが注意を促してくれる。
しばらく石北本線と並走し、遠軽に迂回する線路と別れを告げ、南東方向にある大雪山へ向かう。
正確には大雪国道は大雪山を北へ迂回しながら東へ抜ける道路であり、超越する道路ではない。このあたりは【層雲峡】といい、断崖絶壁の続く谷間を通る道路だ。
天気が安定せず小雨に打たれつつ大雪国道を進めば、両側は森や山一色であるが、時折断崖が見える。『車が少ないからってあまりよそ見するなー』おっと、はいはい。
ところでライダーは目的地としてダムを設定することが多い。ここ、層雲峡の中央付近には【大雪湖】そして【大雪ダム】がある。そしてダムと言えば【ダムカード】。俺はそれほど熱心に集めてる方でもないけど、なかなか来ないダムともなれば是非ともゲットしておきたい。
【大雪湖】と看板が見えたので駐車場へバイクを停め、管理事務所へ向かう。幸いダム入り口に置いてあったので難なくゲット。
此処から先、石北峠へ登っていく。降雨のためか霧が濃く、先程まで遠くに見えていた山を隠している。慎重に行かねば。
やや進むとパーキングエリア。【
『マスター、時間大丈夫かー?ちょっとまずいと思うぞー』
この時点でちょうど17時。いくら夏場とはいえそろそろ日照がまずい。しかし北見側はヘアピンカーブもいくつかあるようなので慌てるのは禁物だ。
山を下るとほぼ緩急のない直線道路であり、山の合間は田畑で開けている。1時間ほどして、山攻めの緊張感と焦りから若干疲労が出てきたので、目についた道の駅にて小休止。【道の駅 おんねゆ温泉】とある。屋台売店のお兄さんは、「もう半値でいいよ~」などとお客さんへ声をかけている。
そこから更に真っ直ぐな道を1時間。ほんと北海道は直線道路が多いね……本日のお宿のある【北見市】に到着。ビジネスホテルなのと、わざわざ飲食店を探すのも面倒なのでやはりセコマで買い込むのであった……
さて、本日の走行距離は……ジャスト300km。北海道は地図で見ると計画内に収まる気がするんだけど、縮尺に対する感覚が狂ってプランオーバーしてしまうのを身をもって実感するのだった……さて、ルートビューンとレーダーを『ま・す・た・ぁ(はぁと)』
あっ……
先代相棒:CBR250R(MC41)
現在相棒:MT-09 TRACER(2017)
今回は京都編に引きずられてマスター視点になってしまったせいで、でんこの出番が少ないように見える……