『マスターちゃん、忘れ物はない? ハンカチとティッシュは持った?』
俺の周りをふわふわと漂いながらボディチェックをしてくる世話焼きな【ひびき】。
『マスター、夜が暇そうだからってゲームばっかり持ってっちゃダメよ。まあ、どうしてもと言うならわたしが相手……スマホゲーム……そう……』
ゲーム好きなの隠しておくんじゃなかったのか? 人前ではしっかり者の【いずな】。
『マスター、服装は大丈夫ですか? 走行時はもちろん、昼夜の寒暖の差、北国の気候、天気の急変……』
服装に気を使ってくれるのは服飾が得意な【みこと】。俺としてはか弱いみことの方が心配だが……
『マスター、ほんとにウチがお弁当作らなくてだいじょうぶなん? コンビニ弁当ばっかりは体に良くないんよ?』
食事に気を使ってくれるのは料理が得意な【らら】。
『マスター、バイクの調子は大丈夫ですか~? わたしがチェックしておきましょうか~?』
それだけは、それだけはやめてくれ。バイクが爆発物に変わってしまうぞ、【セリア】。
バイク用の大容量シートバッグに荷物を詰め込んでいく。バッグの中身はテントなどキャンプ用品。明日から3泊4日の【東北太平洋ルートキャンプツーリング】に出発するのだ。が、果たしてこの【ダメマスター製造編成】から無事に真人間として帰ってこれるのだろうか……
俺は常に【バイク+なにか】という、ツーリングに付加価値を付けた楽しみ方を模索していたが、オーソドックスなところで【フィッシング、キャンプ】あたりかなー、などと考えていた。
すると2018年、某アニメにより【キャンプブーム】が到来した。そして渡りに船とばかりに俺もブームに乗っかってキャンプ道具一式を揃えてしまったのだった。
『マスターすぐ感化されるんだから。でもその行動力、ありすにも見習ってほしいわね……』
いずなが頬に手を当ててため息をつく。苦労人お姉さんのポーズだ。
『マスターは道具から入るタイプなんやね。まあ料理も道具がいいと楽しいしな~』
道具から揃えるのは、モチベーションアップの他に退路を断つという意味もあるが、昔、別のアウトドアレジャーで『初心者だから安いものを……』と安物を買って苦労したことがあるのだ。
道具を揃えたら次に目的地を決める。【バイク乗りは端っこが好き】という持論があるが、東北には【本州最北端、最東端】がある。
最北端はマグロで有名な【大間崎】。そして今回調べてみて初めてて知ったのだが、最東端は宮古市の南東にある【
あとは……弘前市では【桜まつり】が開催中らしい。寄ってみたいが厳しいかもしれない。ちょっと保留しよう。
次にキャンプ地を決める。今回は【3泊4日】なので3箇所決める必要がある。東北のツーリングキャンプに特化した便利なサイトがあったので意外と楽に調べられた。
宮古市のすぐ北東【姉ヶ崎オートキャンプ場】、ここの評価はいいみたいだぞ。予約必須のようなので早速電話を……いっぱいらしい。無念。流石にゴールデンウィークは人気のようだ。
次点で宮古市と久慈市の中間にある田野畑村【
二日目のキャンプ地として目をつけたのは下北半島にある【
三日目は……まあ近くにいくつかキャンプ場もあるし、その時決めよう。ゴールデンウィークで混雑する中、このフレキシブルさもキャンプの利点だと気づく。
経路は仙台~八戸までは通称【三陸道】を使うことにする。現在工事中であり、途中ぶつ切りになっている。2020年のオリンピックまでには全線開通予定だそうだが、現在は何度か下道を経由することになる。しかし高速道路であり、なによりこの道路、無料なのだ。使わない手はない(なお開通後も無料という話だ)。
4月29日、出発当日、天気は晴れ。気温も24度まで上がるそうで絶好のツーリング日和である。
『マスターちゃん、荷物のチェックはしておきましたからね。特にキャンプ用品と防寒用具には気をつけないとね』
荷物の点検はひびきと一緒にしたので大丈夫だろう。
『モバイルバッテリー、ケーブル、LEDランタン……電気周りはバッチリよ』
スマホを含む電気周りは命綱だ。助かるよ、いずな。
『マスター、天気はいいみたいですけど、体温の調整がしやすいようにバッグの取り出しやすいところにインナーやアウター、着替えを入れておきましたからね』
服装の心配はみことがしてくれるようだ。みことには自分自身のことも心配してほしいが。
『マスター、朝ごはん食べてないんやろ? ちゃんと途中でコンビニに寄って食べるんやで?』
食事の心配はららがしてくれる。今回は自慢の料理の腕を振るう機会が無い分、食事管理を見てくれるようだ。
『マスター、やっぱりバイクの点検はわたしが~』
せ、セリアには疲れたときに肩を揉んでもらおうかな~
今回キャンプツーリングをするに当たり、合わせてメモリー集めをすることになったのだが、この五人のでんこが立候補してきた。見事に【姉属性】のでんこたちである。
妹がいるでんこの他に、妹は居ないが世話焼きお姉さんタイプのでんこもいるので姉(属性)である。キャンプ地を決めているときに突然立候補してきた。なにか興味を引く物があったのだろうか?
ちなみにチコなんかも妹がいるが、圧巻の姉属性でんこたちのまえに尻込みをしていたようだ(どちらかと言うと世話焼きは妹のマコの方であるし)。
『こ、こんなに他のでんこたちが居たら優秀なチコの足を引っ張られかねないからパスするわ!』
なんて言っていた。『お姉さまが行くならわたしも行くぞ! ……おいマスター、連結器が無いぞ、どこへ隠した!』
連結器はでんこたちを編成するために必要なアイテムである。あと一つあったはずだが……どこへやった?
くにはみことの説得で渋々お留守番することになったが、実際のところ口うるさいくにが残ってくれるのは内心ホッとしている。すまん、くに。
初日は太平洋に面した三陸道をひたすら北上する。天気がよく風も爽やかで気持ちがいい。ツーリングにおいて走っていて気持ちがいい以上に望むものもないな。
でんこたちは俺やバイクの何処かに腰掛けたりして、思い思いに風景を楽しんでいるようだ。
『風が気持ちいいですね、マスター』
ウェアのフードから肩越しに声をかけてくるみこと。俺の相棒はツアラータイプでウィンドスクリーンがあり、走行風をある程度防いでくれるので肩のあたりに当たる風はマイルドだ。
『この視点だとなんだかバイクレースしてるみたいで楽しいわね!』
いずなはウィンドスクリーンのすぐ裏に陣取り、走行視点を楽しんでいるようだ。まあゲーム好きないずならしいポジションだ。
『マスター、そろそろ休憩したほうがええんちゃう? さっきからコンビニ寄ってもコーヒーばっかり飲んですぐ出発してるやん。心配やわ』
俺のお腹の辺りに座っているららは心配そうにこちらを見上げる。
実は前日、先輩に誘われて日帰り登山をしたため疲労があり、出発は正午近くになってしまったのだ。そのためキャンプ場への到着時刻がタイトなので途中のコンビニ休憩の時間をあまり長く取っていない。
『そうですよマスターちゃん、疲れて事故なんてしたら元も子もないですからね。少し遅れてもいいからちょっと休憩しましょう。お姉ちゃんも心配だわ』
ほとんど母性に近いひびき、ちょっと甘やかされすぎな気もするが、もっともなのでしばらく休憩することにしよう。
次に立ち寄ったコンビニで長めの休憩をとる。もう少しすると魹ヶ崎のある半島だが、三陸道に並走する【国道45号】は半島の側面を通過するだけだ。
なんでも魹ヶ崎は駐車場から徒歩で1時間程度の険し目の道でしか行けないらしい。景色はいいらしいが今回はそのような余裕もない。
『マスタ~、それじゃマッサージしますね~♪』
ベンチに腰掛けているとセリアが背中のあたりに触れてくる。
バイクというのは同じ姿勢を取り続けるので筋肉が凝り固まりやすい。相棒はツアラータイプなので長時間走行向きであり、それほど窮屈な姿勢ではないが流石に長時間走行で疲れは出る。素直にセリアのマッサージを受けよう。
あ、腕時計とかスマホには触らないでね……
休憩を終え出発、次の目的地は【宮古駅】だ。宮古駅は以前、北岩手イベントで立ち寄ったことがある。
ところで本州最東端の魹ヶ崎だが、行ったところで【到達証明書】の発行する場所は無い。ではどこで発行しているかと言うといくつかあるのだが、アクセスしやすいところで宮古駅にある観光案内所で発行しているらしいのだ。
知っていれば前回訪れたときに発行してもらえたが、知らなかったものは仕方ない。まあ今回の通り道であるわけだし結果オーライである。だが……
『マスターちゃん、あのね、多分間に合うけど、宮古駅の観光案内所、18時までみたい……でも時間より安全運転でお願いよ』
休憩を長めに取るように勧めた負い目があるのか、ひびきが申し訳なさそうに言ってきた。ナビを見ると宮古駅到着は17時半になっている。まあ、時間ギリギリになるのは仕方がない。それよりひびきを心配させないように安全運転で行こう。
定刻通りに宮古駅に到着し、予定通り【本州最東端到達証明書】を入手した。ひびきもホッとした顔をしている。ううむ、ひびきにあんな顔をさせてはいけないな。今後気をつけねば。
宮古駅を出ると、そろそろ暗くなってきた。
暫く行くと【田野畑村】の案内が出てくる。目的地の明戸キャンプ場はもうすぐだ。
海岸線のアップダウンを越え、キャンプ場に到着。どうやらゴルフ場に併設したテントサイトのようだ。先客のテントは大1、小1。
小さい方のテントはもう寝静まっているようだ。おそらくサイクリングかトレッキングの人だろう。大きい方のテントは子供の声が聞こえる。ファミリーだろうか。
時刻は間もなく19時。流石に暗くなってきたのでいそいそとバッグからテントを取り出す……ん? 入れた覚えのない荷物が出てきた。荷物と言うかこれは
『あ、おはよー、マスター』
悪びれずにそう言うのはでんこ【つむぎ】だった。今回の編成に組み込んだ覚えはないのだが……ああ、連結器が1つ見当たらなかったのはそういうことか。
『あ、ほら、こんなチャンス滅多に……あ、いや、キャンプのことだよ?』
つむぎってアウトドアとか好きだっけ? まあ編成枠は余ってたからいいけど、素直に着いていきたいって言ってくれれば良かったのに。
気を取り直してテントを建て始める。このテントでキャンプをするのは初めてだが、道具をいきなり実践で使うのは愚の骨頂なので事前練習はしてきた。おかげで難なく建てることができた。
『マスターちゃん、お上手よ、練習してきた甲斐があったわね!』
ひびきからお褒めの言葉をいただく。練習してきてよかった。
『ダメよひびき、甘やかしてばかりじゃ。うちのありすみたいになったら目も当てられないわよ……』
しっかりもののいずなは、いつも家の中でゴロゴロしている妹のありすに対する経験上の苦労からか、それほど甘やかすタイプではないようだ。まあ家の中でゲームしてるときは仲のいい新居浜姉妹ではある。
テントを建て終わったら次は入浴だ。事前の調べによると、途中通過したホテルの入浴施設が使えるようだ。まずはそこでひとっ風呂浴びるとしよう。
その後は食事だ。まあお湯を注ぐだけだが。テントの前にテーブルを広げ、コッヘルでお湯を沸かして……ん? カップラーメンがないぞ?
『えっ、確かにわたしが入れたのを確認したはず……いいえ、マスターちゃん、わたしの確認不足だったわ、ごめんなさい』
ひびきが大変申し訳無さそうな顔でこちらを見る。
「いや、ひびきのせいじゃないから! 俺が最後に確認しなかったのが悪かったんだ! せっかくだしお菓子とか明日の朝のパンも買いたかったし!」
確かに入れたと思ったんだが、入れ忘れたなどと言ったらひびきが責任を感じてしまうだろう。
すると、バツが悪そうな様子でつむぎが
『ごめんマスター、あたしが入るスペースがなかったから、カップラーメン出してきちゃった……』
そういうことか……確かに初キャンプツーリングってことで荷物をパンパンに詰めたからな。まあ無いものは仕方ない。明日の朝食も無いし、買い出しには行こう。
『せやな、お昼から何も食べてないし、いっぱい買ってこような~』
ひびきとつむぎをフォローしてか、ららがそう言ってくれる。
調べたところ、最寄りのコンビニは戻る道らしい。しかし最後に見かけたのは結構遠かったような……
「う~ん、じゃあ内緒で着いてきたバツとして、つむぎだけついてきてくれるかな。あとのみんなは先にゆっくりしておいてくれ」
やっと人心地ついたでんこ達を連れて行くのは申し訳無いので、つむぎをダシにして休んでいてもらおうことにした。
すっかり暗くなってしまったので来たときより少し気をつけながらコンビニまでの道を戻る。
『ごめんねマスター、でもどうしても着いてきたくて……ひびきちゃんには悪いことしたな~』
流石に悪いと思ってか、ひびきのことを気にかけているようだ。まあ今回の編成で一番責任感を感じそうなのはひびきかもな~。あとでフォローしておこう。
『ところでマスターは今回の子たちで誰が一番タイプなの?』
ブフォ! 突然何を言い出すんだ!
『やっぱり才色兼備のパーフェクトないずなちゃん? ちょっと高嶺の花っぽいけど、マスターはゲーム好きだし一緒に遊んでくれそうじゃない? ああもちろんいずなちゃんがゲーム好きなの隠してるのはリサーチ済みだよ~、にしし! でもありすちゃんと合わせてずっと引きこもってしまうかもしれないね。たまに隙を見せてしっかりものの部分を引き出してあげればうまくいくと思うよ~』
なんか恋愛指南が始まったぞ……まあ確かにクラスに一人はいる人気者の女子っぽいいずなは魅力的だ……いやいやまてまて! 納得しそうになってしまったではないか!
『癒し系お姉さんのセリアちゃんはどお? 仕事から帰ってセリアちゃんが居るおうち。癒やされちゃうよね~。でも機械モノをいっぱい持ってるマスターとしては心配かな? 爆弾だらけになっちゃうかも……悪気はないんだろうけど。だからこれを期にスピリチュアル方面で行ったらどう? 健康に気を使ってくれるし、セリアちゃんとなら長生きできそうだよ!』
ライフプランまで織り込んできたぞ……でも確かにセリアのマッサージは最高なのは認めざるを得ない。
『それともマスターを立ててくれるタイプのみことちゃんとかが好み? マスター亭主関白ぽいし。服選びもみことちゃんに任せておけば間違いないしね! まあ妹のくにが曲者だけど……』
ファッションセンスについて追求されるとぐうの音も出ない。それとみことは儚げで庇護欲を掻き立てる。守ってあげたいでんこナンバーワンではなかろうか。
『ららちゃんもいいよね。料理得意だし、食べるの好きなマスターにぴったりだよね。心身共に包容力もあるし。ちょっと大雑把だけど、逆にお互い気を使わなくていいんじゃない?』
ららの料理はとても美味い。妹分たちもららの料理が大好きだ。毎日ららが料理を作ってくれたらと思うと、それは大変魅力的な未来である。
『でもやっぱり本命は甘やかしてくれるひびきちゃん? 尽くすタイプだし。ちょっとドジなところもあるけど、そこもかわいいよね! マスターもちょっと抜けてるし、案外いい組み合わせだと思うよ~』
姉属性でんこの中でも、特に強烈なのがひびきだ。高身長でスタイルもよく、まるでモデルだが性格はおっとりしており、包容力がある。みんなのお姉ちゃんポジションを自負しており無限に甘やかしてくるでんこである。しかしドジっ子属性も持ち合わせており放っておけない。ひびき沼である。
実のところでんこたちは美人ぞろいだし個性的で魅力的だ。しかし造られた存在であり、任務のパートナーでしかないという認識で接している。
確かにこんな子達が実際のパートナーだったらどんなに嬉しいことか。しかし相手はでんこである。
『そんな難しく考えなくてもいいんじゃない? でんこたちはメモリー集めが任務だけど、同じくらいマスターの役に立つことが好きだし、頼られれば嬉しいものよ。特別な感情を向けられて悪い気がしないどころの話じゃないよ!』
ニコニコと、しかし意味深な笑みでそう言ってくる。
『まああんまり特定のでんこに入れ込みすぎると不和を生むかもしれないけど……特に独占欲の強い子もいるしね~。でもある程度わきまえてれば多少は特別な感情を持ってもいいと思うよ?』
そっちから焚き付けてきた割には釘を差してくる。まあこれもつむぎ流恋愛術ってことなのだろうか。的確すぎるアドバイスに、しかし言われっぱなしも癪なので少しからかってやろう。
「ところでつむぎは? どんなでんこで、どこらへんが俺に合うかな?」
一人だけ外野からというのはズルイので巻き込んでやる。
『え、あ、あたし? あたしはいいよ~、自分のことより他の誰かの相談に乗ってあげたりする方が好きなんだよね! あとやればできる子を応援するのも好きだよ! もちろん恋愛方面でもね!』
しどろもどろだが、自分のことを除外したいばかりに自分の説明をしているぞ。これはしてやったり。
『む~、とにかくマスターにはあたしのことより他のでんこたちを幸せにしてほしいんだよぉ』
ぷーっと頬を膨らませてジト目て睨んでくる。ははっ、多少溜飲は下がったかな。おっとそろそろコンビニに着くぞ。
コンビニで晩飯と朝飯、お菓子を買い込む。お腹が減っていたせいでちょっと買いすぎただろうか? 再びキャンプ場へ向け出発。
『あっ、見て見てマスター! 月が大きいよ~!』
肩越しにそう言ってくるつむぎの言う通り、キャンプ場近くの岬にさしかかると、海上に出た大きな月が目に飛び込んでくる。海のないところでの生活が長かったため、海面に映る月というシーンを見るのは初めてかもしれない。コンビニに買い出しに行ってなかったら見れなかったので怪我の功名といえるだろうか。
「こんな景色、初めて見たかもしれないな。もしつむぎが着いてきてくれなければ見れなかったかもな。ありがとう、ひびき」
まさかお礼を言われると思ってなかったのか、ちょっと顔を赤くしてぷいっとそっぽを向いてしまう。さっき本人が言っていたとおり、あまり自分に感情を向けられ慣れてないのかもしれないな。そう言うところは素直に可愛いと思ってしまう。
キャンプ場に再び到着。早速テントで晩飯の準備をする。と言ってもお湯を沸かす程度だが。
このテントは前室付きの二人用(荷物があるので実質一人用だが)タイプだ。前室にテーブルを展開し、ガスバーナーでお湯を沸かす。
お湯が湧いたらあとはカップラーメンにお湯を注ぐだけ……ソロキャンプツーリングに凝った料理なんかを求めてはいけないぞ!
俺が食べてる間はでんこたちにコンビニスイーツを振る舞っておく。つむぎのアドバイスだ。
『あら、マスター気が利くじゃない。ポイント高いわよ~』
いずなを始め、みな喜んでくれているようだ。
食事を終え、やっと人心地ついた気がする。コーヒーを飲むために再度お湯を沸かす。
月も高く上り静かな夜だ。明日30日は満月とのことなのでかなり明るい。椅子に腰掛け背中を預ける。本当なら焚き火がしたいところだけど、ここは雑木林も無く薪が拾えないので今日はお預けだ。
海が近いため、潮騒が聞こえてくる。夜なので遠くまで届くようだ。
『なんかこういうの、ロマンチックでいいわね、うふふ』
セリアがテーブルの端に座り、月を眺めてそう言う。その佇まいはまさに癒し系お姉さん。しかし頼むからガスバーナーには近づかないでくれよ。爆発したらタダでは済まない……
みことはやはり少し寒いのか、俺の肩に腰掛け寄り添い、目を瞑って潮騒に耳を傾けているようだ。物静かなみことのその姿はなかなか絵になるんじゃないだろうか。一体何を思っているのだろうか。
『マスター、お湯が沸いたで~』
ららがカップにコーヒーを注いでくれる。でんこたちには俺がそれぞれカップに注ぐ。
まだ肌寒い4月末の夜。香ばしいコーヒーが体に沁みる。
『ありがとうマスター。コーヒー、美味しいわね』
椅子の肘掛けに腰掛け、コーヒーを飲むいずな。大人のお姉さんの夜のひととき、と言った感じだ。
最後にひびきにコーヒーを渡そうとしたが姿が見当たらない。キョロキョロと辺りを探していると、歌声が聞こえてくる。そちらに目を向けると月明かりの下、ひびきが歌っているようだ。彼女は歌が得意で、特に子守唄の威力は抜群であっという間に眠りに誘われてしまう。
なにか視線を感じると思い顔を向けると、ひびきが生暖かい目でこちらを見ている気がするぞ……先程の話を思い出してしまい、なんとなくでんこたちを意識してしまう。本当にみんな、俺にはもったいないくらいいい子たちだ。
「今日はありがとうみんな。おかげで楽しい旅になりそうだよ」
そう感謝を伝えると皆こちらを向き、笑顔を返してくれた。今回はいい旅になりそうだ。
【本日の移動距離:334km】
「キャンプ地は……姉ヶ崎かなぁ」
『姉』『が』『先』『!』『?』ガタガタッ!!
つむぎ(! これは面白くなるわ……)
でんこを知らない人のための説明(独自解釈)
※なぎさは2018年10月実装だったのでこのときはまだミオは姉ではなかった。
※ディフェンダー3人にみこと、セリアは編成的に見てもバランスが良いように感じますね。パッシブスキル多めなのでつむぎだけ噛み合っていない……