「やぁどうも、僕の名前は______。見たまんまの人間さ」
これが僕の自己紹介。
人間は第一印象を外見で判断するらしいから、その第一印象まんまの人間だと思ってもらう為に見たまんまの人間だとわざわざ言っている訳だ。
因みに、小学生の頃からやっている。変えた事は一度も無い。面白い自己紹介だと思うのだが、ウケた事も一切無い。何故だ。
さて、それを転校したこのクラスでもやった。
この、句読点と記号を含めたった一行で済むような、文字の羅列によって作られた言葉を一言一句間違えずに言い放ったのだ。
何時もの通り、流されて終わる。
筈だった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
何故か凝視されている。
体に穴が空きそうな勢いだ。それは何というレーザービームか? それともブラフマーストラか? 真の何たらは目で殺すのだろうか。
中には目が紅色に光っている人もいる。
ーーーーってちょっと待て!?
(目が紅色に光っている!? 魔眼か!? 厨二なのか!? 目にLEDでも突っ込んでいるのか!?)
どっかりと椅子に座り込んだ魔王っぽい雰囲気を出す少年の片方の目が、紅く光り輝いている。というかスパークしているように見える。
君の目は本当に発光物でも搭載しているのかい!? 若しくは放電する物体でも目に入れたのか!?
そして、この気まずい視線から一体何時になれば解放されるんだ?
いや、え。何なのだろうこれは。僕は一体何をしたのだろうか? まず何も変な事はしていないし言っていない筈なのだが。
ヘルプを求め、隣にいるだろう僕より背が低い、まるで子供のような身長で童顔の先生にこの状況について問う。
「先生。僕は何故此処まで凝視されているのでしょうか」
「・・・・・・(じぃ~)」
そしてギュルンッ!! と全力で目と顔を逸らす。
いや、上目遣いでこちらを見る教師と思わず目があってしまったら顔を逸らすに決まっているだろう!? なまじっか美少女な見た目だから目のやり場に困るっ!
結局、朝のホームルームが終わる五分前まで、僕はずっと凝視されっぱなしであった。
怪光線でも飛んできそうな視線に体中を突き刺され、僕の胃に穴が空きそうだった。
もしかしたら入り用になるだろうか、と思い持ってきた手作りのケースから胃薬を取り出し、口の中へほうり込む。うん、胃のヒットポイントが三割まで回復した。
まだ頑張れるだろう。
・・・・・・いや、頑張らなければならない。今、二年の夏休みが過ぎ去った頃だからもう後一年半、卒業までこのクラスの人間と付き合う事になるのだ。
それまでの間に、何度、胃潰瘍になるだろうか。
これからの事を思い、ため息を一つ。
また幸せが一つ減った。
だが、何はともあれ。無事に自己紹介は出来た。
仲良くしたいが、上手く行くかとても心配であった。
*
時は過ぎ去り、四時間目が終了した、その後のこと。
教科担当の先生が前方の扉から出て行くと同時、入れ代わるようにしてバアンッ!と後方の扉が空き、すわ何事かと思えば、
「おーねーえーさーまー!」
恐らくは後輩であろう少女が僕に向かって、いや、正確には僕の隣の席に座っている、ポニーテール美少女に向かって飛び掛かっていた。
・・・・・・いや、うん。どういう状況なんだいこれは?
進路上にいる僕は巻き込まれそうになりつつも、考える。
他の皆が、ああ、またかという視線でこちらを見ている事から、何時もの事なのだろう。
ということは、止めずにそのまま進路を避けて流した方が良いのだろう。
例え、僕の隣の席のポニーテール少女が犠牲となったとしても。
例え、この後、必ず面倒事が巻き起こるとわかっていても。
例え、僕の斜め前の席の、先ほど目がスパークしていた少年が、後輩らしき少女に対して銃を抜きはなっていたとしても。
例え、その周囲に波紋が出来、拘束具らしきものがその波紋から飛び出すと同時に、後輩ちゃんに向かって射出されたとしても。
______んん? おかしくはないだろうか? 得に後半二つ。
「いや、ちょっと待ったぁ______!?!?」
音速を超えて飛び掛かってきていた後輩ちゃんの首根っこを引っつかみ瞬時に抱き留めて回収、拘束具らしきものを廻し蹴りで蹴り飛ばし、発射された、恐らくゴム弾であろうものをギリギリ躱わす。
「いや、なんでいきなり銃を抜きはなって少女に対して発砲しているんだ君は!?」
「俺の女に手を出そうとしたからだ。反省も後悔もしていない」
「いやしろッ! 君はするべきだ! 後悔は役に立たないからすべきでないが反省はすべきだッ。というか皆もこの状況がおかしいとはおもわないのか!?」
首筋ギリギリをかすっていった何発かの銃弾(ピリッとしたから恐らくスタン弾)に脅えつつ、少年に突っ込む。
が、この後。ピストルを持っている事に追及たかったが、この後更に衝撃の発言が後半らしき少女から飛んできて、そのことについて更に突っ込みをせざるをえなくなってしまった。
「流石、リアルハーレム形成している浮気男は心が狭いですね。私が愛するお姉様に抱き着こうとしただけで発砲するなんてッ!」
「抱き着くだけなら良いがてめぇはそのあとにセクハラかますだろうが。忘れてねぇからな? この前雫の下着盗もうとしたのとか、大会後に雫に渡したスポーツドリンクに睡眠薬と媚薬と痺れ薬が入ってた事とか」
「ちょっと待ってハジメ君それ初耳」
「いや君も何をやっているんだッ!? このさい何又かけているか解らないリアルハーレムはどうでも良いとして、いやどうでもよくないが、それより早々に君を助けた事を後悔し始めたぞ僕は!?」
「あ、そういえば救っていただいて有難うございます。後程菓子折り持ってお礼に行きますので」
「そして面の皮が厚いな君は! 僕の目の前で惚れ惚れするようなルパンダイブを決め込んだ後にその真面目キャラは通らないぞ!?」
「そうですか。・・・・・・っち」
「そして目の前で舌打ち! 清々しい程の手の平ドリルだ素晴らしい褒めてあげるよ! 因みに褒めてないからなこれは。ただの皮肉だからな!?」
昼休みも序盤、たった一○分の出来事でこれである。
ツッコミには事欠かないが、まずその突っ込まざるを得ない場面が異常過ぎる。
此処に来て約四時間強。どうやらこのクラス、思ったよりも魔境なようである。
僕の胃と幸せは、ストレスと溜め息のお陰で今日一日で尽きるのではないだろうか。そう思わせるような転校初日は、この後もこのような調子で過ぎ去っていった。
正直に言おう。喉が枯れた。ツッコミ過多で。
*
翌日、何故か僕のあだ名が「
次回。
修学旅行編。