ありふれてたまるかッ!   作:千点数

4 / 6
短いです。

※少々内容を変更。(3/20)

更に内容変更。4/9


修学旅行編/前途多難

 目の前をナイフが舞っている。

 比喩などでは無い。本当に、抜き身の、本物のナイフが両手の指の数と同じ数、宙を舞っているのだ。

 それはクルクルと優雅に弧を描き、まるで意思を持っているかのように少女の手元へと戻ってゆく。

 更に少女はナイフを数本、目に見えぬ場所で追加し、どんどんアクロバティックにナイフを宙に舞わせていく。

 時折、赤い火の粉が散っていたりするのは僕の、目の病気か何かで幻影が見えているのだと・・・・・・そう、信じる。いや、信じたい。

 

「(今頃の女子高生って、ナイフでジャグリングをするのが普通なのかい!?)」

 

 ナイフを舞わせていた少女・・・・・・園部ちゃんがナイフを全て指の隙間でキャッチし、何処かにしまう。

 何処か、見えなかった。もしかして何処かの英霊が如く出したり消したり出来るのか?これも、女子高生必須スキルなのかい? 後で僕の親友に聞こう。リアル女子高生の彼女なら解るはずだ。

 

 オイオイオイ、そこの男子。園部ちゃんにもっとやれと言ってやるんじゃあない。園部ちゃんはもう限界だろうし・・・・・・え?天井気にしなかったらもう何本かイケる?

 嘘だろう!?

 あ、バスガイドさんが園部さんを絶賛し褒めたたえつつ頬が引き攣った笑みを浮かべている・・・・・・。後で、心が休まる甘いものでも差し入れる事としよう。女性は甘いモノが大好物だろうし。僕のバックパックの中に何かあったかなぁ、と。

 

 あったあった。練乳入りコーヒー。罰ゲームレベルに甘いモノではなく、程よい甘さと味わいが人気の一品だ。これを後で、今バスガイドさんが説明している場所に着いたら差し入れてあげるとしよう。

 

 ・・・・・・へぇ、魔王が降臨した神社、か。

 なるほどなるほど。バスガイドさん流石。さっき京都出身だと言っていた程はあるなぁ。そういう裏話を知っているとは。物知りだなぁ。流石はバスガイドさんだ。

 

「うん? 先程から皆何故南雲くんの方向を?」

 

 ーーーーと、思っていると何故か皆、ある一点を見ている事に気がついた時には既に遅く。

 目を閉じていた南雲くんがカッと目を赤雷と共に見開くと同時に、

 

「どうもっ、魔王です!」

「くあwせfgkもがjskghd!?」

 

 何やらうすら寒い何かを感じた。

 ・・・・・・あ、バスガイドさんが気絶した。

 

 

 *

 

「ハジメ、メッ」

「ちょっとやり過ぎた感はある」

 

 バスガイドさんには、何かお詫びを送っていこう。そう、心に決めた。

 

「・・・・・・でも、あのバスガイドさん、精神力が半端じゃない」

「嘘だろう?」

「ヒロはもっと」

「・・・・・・気絶、してなかったしな」

 

 神言も、一瞬ではあるが効かない兆しがあったという。本当に一般人かと疑い、家を調べさせて貰ったが至って普通。

 異常性、魔力に対しても何の関係も無い、それに何かの武術に特化しているという訳でもない。

 神代魔法、新たに生み出した概念魔法をふんだんに使った調査アーティファクトを使い調べ上げたのだから間違いない。

 

 本当に。

 

「一般人って何なんだろうな、ユエ」

「・・・・・・日本って不思議」

 

 それは日本に対する風評被害だ。

 

 *

 

 神社で重要な文化財が危うく破損一歩手前といったアクシデントが少々あったものの、無事にホテルへと泊まりに行く事が出来た。

 現在ホテルのロビー。お土産屋の近く。

 僕はそこに、ある人物と二人でいた。

 甘い飲み物を差し入れて印象が良くなったのか、一般人と共通点があるのが救いだったのか。

 

「ありがとうございます。これでまだ少し持ちそう・・・・・・本当にこのクラス、何なんですかね?」

「僕もそれは疑問に思っています」

 

 何やら親しげに話しかけてくるのだ。

 

「・・・・・・それにしても、貴方がいて良かったです。私、あのままだとSAN値がなくなって廃人になっていたかもしれません」

「そうならないように自分がいますから」

 

 バスガイドさんが。

 

「ふふ、可愛らしい見た目でも、頼もしいですね」

「いえ、まぁこれでも男なので」

 

 何故か遺伝の過程で父親の方が仕事をせず、母親の方を色濃く受け継いだ僕は中性的だ。体つきも、胸のない女性のような、そんな感じ。

 だが、僕は男なのだ。バスガイドさんは僕がまも______

 

 ドッパァンッ!!!! ダパァアンッ!!

「覗きは何処だぁああああああ!」

 

 ______あのクソ魔王がぁああああああああ!

 

「すみません。少々席を外します。僕は今から、死地へと向かわなければなりません」

「」

「ああ、胃薬はこちらに」

「」

 

 ああ、バスガイドさんが放心状態だ。

 これでバスガイドさんは、昼間に起こった神社での騒動で胃薬を二つ飲んだから、今日だけで計三つ。

 今日でもう後幾つ消費するのだろうか。多めに持ってきておいて良かった。

 僕はこの先を憂い、ため息をつく。

 

 そしてまた、自分も胃薬を飲んだ。




※主人公はガチの一般人です。
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