Fate/imitation grail   作:ビリオン

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『注意喚起』

※オリジナル聖杯戦争ものです。
※オリジナルサーヴァント、オリジナルキャラクターのみしか出ません。
※原作との僅かな矛盾があります。独自設定です。

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プロローグ
始まりの始まり


 代わり映えしない砂漠。車が起こす砂煙。砂漠を見る為に来た観光客であれば楽しめるだろう。だが、そうではない――移動手段の一つとしてのみの人間はとてもつまらない光景に違いない。

 その車の中に数人。高級な服を着た少年とメイドが数人だ。

 リムジンか何かにでも乗っていれば、別段違和感は無いのであろう。だが少なくとも、砂漠を走るというこの状況においては珍妙な組み合わせに思えてならなかった。

 もちろん、この一団にも砂漠を走る理由はある。その理由とは――。

 

「オータムサンドだっけ? 開催場所として作らせた街」

「はい。その名前で間違いございません」

「楽しみだね」

「楽しみにされているのはご主人様だけかと思われますが」

「そうかな?」

「はい」

 

 主従というにはあまりに気安く、友人というには上下関係がしっかりとしている。会話を分析するならば、そんな所であろう。

 主人である金髪の少年は、「楽しみ」と言うのが嘘で無いと証明するように興奮している。逆にメイドの少女は感情が抜け落ちたように冷静だ。

 

「やっぱり楽しみだなぁ。()()()()

「楽しみにするほど、明るいものでは無いと記憶しております」

「英雄を見れて、他の魔術師もいる。こんな良い場所他にないよ!」

 

 聖杯戦争。

 かつては、極東の都市で起こった儀式の名前である。

 七つのクラスを与えられた英霊を駒として用い、万能の願望機たる聖杯を奪い合う争い。

 その為に彼らは砂漠の中を移動しているのだ。

 

「それに、家の悲願も叶うかもしれないからね」

「そうなれば、とても喜ばしいことです」

「早く見たいなー。()()()()

 

 少年の名はブラッドフォード・オルグレン。主人と話すメイドの名はソランジュ・バルビゼ。

 彼らはただの参加者ではない。

 

 これより、この広大な砂漠の一角で起こる聖杯戦争の主催者である。

 

 

 

 

 ***

 

 オルグレンという魔術師の家系は特殊なものであると言える。

 歴とした魔術協会に属する魔術師でありながら、協会のほぼ全ての魔術師に嫌われているのだ。

 当然、歴史が浅いと見下されているわけではない。数百年程度の歴史を持つ家である。

 ただただ嫌われ、(はい)され、避けられる。

 オルグレンと仲良くする魔術師など皆無と言って良いだろう。もはや村八分と言っても良い。

 だが、それにも理由がある。オルグレンの魔術特性にして魔術そのもの。

 

 ――模倣。

 

 他者の魔術を真似る魔術。見たものを即座に再現するようなズルい(チートな)ものではないが、何割もしくは何分もしくは何(りん)かの技術を確実に吸収するものである。

 他の魔術師にしてみれば、自分たちの大事な研究成果を横から()(さら)われるようなものである。それは到底、容認できるものではない。

 

 故にオルグレンは協会の魔術師でありながら、別勢力に近い。下手をすれば、ただ利用されて終わるだけであるからだ。

 オルグレンは多くの分家を作り、模倣した魔術を与えた。薄く、広く、そして何より模倣者(本家)がいなければ立ち行かないように。

 

 ――そしてオルグレンは根源を目指す。

 

 ――他人の創った階段を並べながら。

 

 ――他人の創った道具を使いながら。

 

 ――自分で創る必要は無い。

 

 ――他人のものを盗めば良い。

 

 それが、オルグレンという家だ。

 

 

 

 ***

 

 ブラッドフォード――ブラッドが街に入るのは二度目である。

 街の名はオータムサンド。聖杯戦争をする為にオルグレン家が作ったものだ。

 この街の特徴などは後に回すべきであろう。

 まずは、ブラッドの道筋を追うこととする。

 

「ようこそお越しくださいました。本家オルグレンの当主――ブラッドフォード・オルグレン様」

「こんにちは、クリフトン。出迎えありがとう」

「いえいえ、本家あってこその我ら分家。特に此度の儀式――聖杯戦争においては我ら結界魔術を預かる分家が一つ。アーマスト家にお任せを」

「あー、はいはい。で、部屋はどこ?」

 

 恭しくブラッドに話しかけるのは、恰幅《かっぷく》のいい男。名を、クリフトン・アーマストという。

 会話の中で明白ではあろうが、アーマストとという家はオルグレン家の分家の一つである。

 クリフトン自身はブラッドの心象を良くしようという()()()()のつもりなのだろう。まるで効果は見込めないが。

 ブラッドはクリフトンを半分無視しながら使用人の一人に話しかける。面倒臭いと思っているのだろう。事実、見目の悪いクリフトンを好く者は少ない。見た目だけが原因ではないが。

 そして大多数の一人として、ブラッドはクリフトンを苦手としていた。もっとも、苦手な人間にそう感じさせないというのも、ブラッドの才能の一つであるのだが。

 

「では、こちらの屋敷をお使いください」

 

 クリフトンと共に車に乗せられ、一等地にある屋敷へと案内された。

 この街、砂漠の中にあるというのにどこぞの都会と見間違わんばかりのビル群が埋め尽くしている。

 その中で、屋敷である。西洋屋敷を基としているのだろう。木製で、どこかの森林の一角にあるかのような建物だ。

 だが、ここは砂漠の一角で、周りはビルとビルにビルだ。見渡す限りビルしかない。

 はっきり言おう。途轍(とてつ)もなく浮いている。勿論、雰囲気的に。

 さも、魔術師がいますとでも言いたげな建物。

 この為に用意されたのはわかる。中には魔術的な罠を含めたいくつもの仕掛けがあるのだろう。

 だが――

 

「却下」

 

 ブラッドは一刀両断する。

 

「……は? え、いや、な、何故でしょうか……?」

「目立つから。勿体無いなら、クリフトン使いなよ。あ! もしかして聖杯ここに入れてないよね?」

「そ、それは……」

「――勿論、そのようなことはございません」

 

 クリフトンが言うべきことを、その部下――ベネディクト・アップルビーが答えた。

 墓穴を掘るしかないクリフトンを見るに見かねたらしい。でも、クリフトンは怒っている。台詞を取られたのだから、(クリフトンにとっては)当然といえよう。ベネディクトは英断である。

 

「じゃあ、別の場所――どこかのビルの一角でも用意してよ」

「勿論、ご用意しております。お車へお戻りを」

 

 ベネディクトは仕事のできる人であった。ここまでの運転手も、これからの運転手もベネディクトである。ベネディクトは有能。執事服と白手袋がますますカッコいい。

 

「と、ところでご当主様。サーヴァントの召喚はいつ頃行いますか?」

 

 クリフトンが聞いた。また墓穴を掘るかと、ベネディクトが聞き耳をたてる。クリフトンがベネディクトと同じ白手袋をしているのが不思議なほどである。()()()()()()()()()()

 そして、ブラッドは右手の赤い紋様に目を落とした。

 

「今夜、召喚を行おう」

 

 赤い紋様――令呪は聖杯戦争の参加資格であり、サーヴァントへの絶対命令権。

 詳しいことは、また後に。サーヴァントが召喚されてからのこととしよう。




【予告(プロローグ)】

――私は見返してやる――ッ!



――其方は何故杯を求める?



――命令だ。



――中々見所のあるマスターであるな!



――……()()()



――カメラを回せ!



――令呪をもって命じる。



――やはり、()()()()()かの。
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