弟と神話と愛   作:シュオウ・麗翅

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眠れねぇわ……


思惑、決意、覚悟、疑念

「失礼するわ」

 

オカルト研究部の扉を開いたのは1人の女性だ。

黒に近い緑色のウェーブのかかった髪に黄色の瞳。鋭くも、ほんの少しだけ幼さが垣間見得る整った顔。

そして身体付きは出るところは出て、引っ込むところはキチッと引っ込んでいる。胸も尻も、リアス・グレモリーと同じくらいあるだろう。現に一誠も彼女が入った瞬間バッ!!と顔を向けたのだから。

 

「オトハ、何かわかったの?」

 

リアス・グレモリー。彼女は魔王ルシファーの妹にして駒王学園3年生の生徒。学園の2大お姉様として男子、女子生徒の憧れの存在。

 

「ええ、一誠さんを殺そうとした堕天使。その潜伏先が」

 

淡々と告げるオトハに対し、「そう……」と返す。

仲間……眷属に対して人一倍の愛情を注ぐ彼女にとって一誠を殺そうとした事は許せるものでは無い……が、何処か引っかかる。

 

「一誠、あの堕天使レイナーレは貴方を殺そうとした時に言ってたらしいじゃない。【あの子の教育に悪い】って」

 

ゆっくりと、落ち着いた口調で、子供に優しく問いかけるように。

その言葉に対し、一誠はこう返す。

 

「はい、確かにそう言っていました」

 

確認を取ったリアスは指を顎に当てて考える。

 

(私の領土で好き勝手にはさせないけど……あの子?誰なの……?)

 

長考するリアスを他所に、一誠はもう一度告げる。

 

「アーシア……フリードが攫った女の子と一緒にいた時、バケモノに襲われたんです。それを倒した着物の子供……ミカゲって言っていました」

 

この言葉に、心臓を打たれたかのように持っていたペットボトルを落とすオトハ。

 

「ねぇ!!ミカゲって!!今ミカゲって言った!?」

 

鬼気迫る様子で一誠に詰め寄った。鼻と鼻がぶつかっている程の距離まで近づいている。

 

「ねぇ!!ミカゲって言った!?言ったよねぇ!?」

 

そして一誠の肩を掴んでぐわんぐわんと前後に揺らしていく。オトハの様子は浮気現場を目撃して彼氏に詰め寄る女そのものだ。

 

「落ち着きなさいオトハ」

 

頭に血が上っているオトハを宥め、朱乃に紅茶を入れるように指示した。

慣れた手つきで紅茶をティーカップに入れ、直ぐに机にことりと音を立てて置いた。

 

「どうぞ、オトハさん」

 

ニッコリと微笑むその姿はまさに板に着いたメイドのようだった。仕草、淹れ方、どれも非の打ち所のないものだった。

それをオトハはひったくるように取る。紅茶がこぼれるなど気にする様子もなく、貪るように一気飲みする。

 

「私の実弟(おとうと)……!!生きていたのね……!!」

 

ふぅ……と一息ついたあと、何かに取り憑かれたように一目散にダッシュした。

 

「え?ちょっと!?」

 

リアスがオトハの後を追い、一誠もそれに続いた。

扉がバタン!!と乱雑に閉まった時、嵐が収まったようにあたりがシーンとなった。

 

ーーーーーーーー

 

「じゃあ……ミッテルト、カラワーナ。手筈通りに」

 

レイナーレは協会の地下でアーシアを連れて2人に命じた。

ーーー彼女の聖母の微笑みを手に入れれば、至高の堕天使へ1歩近づく……なんて事はどうでもいい。今更あんな所に戻ってやるものか。私達は4人で生きていく。私たちを守れるのは……あの子を守れるのは……私達しか居ないのだから。

 

「レイナーレ姉様……」

 

「何かしら?ミッテルト」

 

ミッテルトが言おうとするが、レイナーレは4枚の羽を広げて威圧するようにミッテルトを見据える。

 

(……レイナーレ様……私達は変われたのでは無かったのか……?)

 

(こんな強引な方法を使わずとも……ウチらはひっそりと……)

 

カラワーナもミッテルトも何処か納得しない様子だった。自分たちの居場所。心地良き居場所。

堕天使界では爪弾き物、見下される側だった自分たちが今では拾った子どもを【義弟(おとうと)】と呼んで一緒に笑い合い、一緒に過ごした。

 

「ミカゲを巻き込むわけにはいかないわ。万が一、最悪の事態にあった時のため、あの子にはなにがなんでも生き延びてもらって、幸せになってほしいの」

 

たった数ヶ月でも、楽しかった。今日までの日があっという間に感じた。

 

(嗚呼……ありがとうっス……ミカゲ……ウチらは、既に手に入れてたんスね……)

 

ーーー自分たちの、本当の居場所を。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

「……ボブ吉くん、今日はもう上がるよ。何だか胸騒ぎがするんだ」

 

事務所の控え室にいたマーモは忙しない様子で荷物をまとめた後、タイヤをキュルキュル言わせて扉を閉める。

あまりの突拍子もないような出来事に呆然とするマネージャー。

 

「ボス……いつになく真面目っすね……」

 

控え室にはボブ吉の小さな声が、外の風と共に消えていくのを感じた。

 

ーーーーーーーー

 

 

何時ものスーパーに行ってパーティー用の焼肉セットに、予約していたケーキを買いに来たミカゲ。

(……おねえ……ちゃん……今日は……なんの用事が……あったっけ……?)

 

会計が終わっているのに声をかけられるまで気づかずに固まってしまう。

焼肉セットを慌てて乱雑に袋に入れた後、ケーキの入った袋と一緒に帰路に着いた。

 

 

ーーーーこれから始まる。混ざり物と堕天使と悪魔の物語。平和か破滅か。SAVEかRESETか……はたまたDELETEか。

生き残るか死に絶えるか。それぞれがどのルートを歩むのか……?

 

悲しみ、忍耐、判断、拒絶、虚栄心、反骨心

愛情、好奇心、夢、虚無、欲望、矛盾。

 

様々な感情が入り交じる。

様々な思惑がかき乱す。

 

ーーー神話の果て、その中に何を見出すーーーーーーーー?




( ¯꒳¯ )眠…。
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