日本語のおもしろおかしい部分なんなんスが、これ自体は一種の市民権を得ていて、完全に間違いではないんスよ。でも、今回の「火炎放射」と表現した後に「炎が前方に放射される」というのは、ただ言い回しが回りくどくなってしまうだけになってしまうっス。
カッコつけようと二つ名っぽく、『暴君タイラント』など横文字と日本語の意味が一緒のものを混ぜてを言ってしまうと、『母なるマザー』って言ってるのと同じようなものなんス。」
オトハには、何が起こっているのかが分からなかった。否、何が起こっているのかを信じられなかった。
……ミカゲは、なんでこんなことをするのか?
……なんでミカゲはあの堕天使共を『お姉ちゃん』と呼ぶのか?
……なんでミカゲは……ワタシに刃を向けているのか……?
「くっ……!!」
速い。一撃一撃が……残像を相手にするように速い。目で追うのにも一苦労だ。
それに……あの剣。あの王冠。あの鎧……。
どこからどう見ても、『王』という風貌にしか見えない。
(エクスカリバー……?いや、それ以上の聖なる力を感じる……)
あの剣を見た悠斗がピクリと反応したのに気づくはずもなく、ただただ目の前にいるミカゲにのみ視線が集中していた。
「堕天使ミッテルト、あれはなんなの?」
「アレって言っても、神器としか言えないっスよ……頼むから殺すのだけは勘弁して欲しいっス……」
「さぁ、どうかしら……?」
(心臓に悪すぎるっス……頼むから早く離れて〜!!)
ミカゲが大剣を地面に突き刺した。
剣先から地を這う大蛇のように、凄まじい衝撃波がオトハに向かっていく。
「……っ!!」
オトハの額から冷や汗が窓についている霜のように流れる。
どうして、どうしてと。そのような考えが、思いが頭の中をグルグルと回っていく。
「撃って!!セイクリッド・クラウン!!」
ミカゲの号令が響き渡った瞬間、巨大な王冠が紅く光った。
きゅいーん……と音がしたと思ったら、王冠からレーザーが空高く発射されていく。
ドカドカドカと、地面がレーザーによって抉れ、空はまるで花火が打たれたかのように幻想的な風景を作り出しているようだ。
「っ……!!電撃拳(スパークナックル!!)」
流星のように迫り来るレーザーをギリギリで避け、オトハは拳を握って電撃を纏わせる。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
勿論、手加減はするつもりだ。
自分よりも数段弱い子が神器を装備していると言っても、自分に勝てるはずがない。
史上最年少で1番早く中級悪魔になったとはいえ、自分が負けるはずがない。
あるのは、絶対的自信。リアス・グレモリーの眷属である、姫島朱乃よりも鋭く、破壊力のある電撃。
バチバチッ!!ボゴォォォォォォン!!
「むきゃっ!?」
まるで荒れ狂う嵐を正面から受けたような、暴風。
雷の荒れ狂うような凄まじい音、すべてを巻き上げるような煙。
それは、4人が住んでいる教会でさえも、ビニール袋のように飛ばしてしまいそうな程だ。
……現に今、ミッテルトが倒れた。
「……なっ!?」
オトハの中で、シンジラレナイという言葉が脳内を回った。
高圧電流を纏ったオトハの拳は、確かにミカゲの顔面を捉えている。
ーーーーだが、ミカゲはケロっとしているのだ。
錯覚でも幻覚でもなく。
「……」
ミカゲは、無機質な瞳でオトハを見上げている。
暗く、闇の底を覗いているような、深海のような青の瞳と血のように赤い瞳でーーーー
「……聖冠よ」
ミカゲは、そう呟いた。
その言葉に反応した巨大な王冠、セイクリッド・クラウン。聖なる冠はオトハの頭上、遥か上空へ向かった。
「やれ」
ミカゲの言葉に呼応するように、セイクリッド・クラウンが天使のような輪っかをゆっくりと下ろしていく。
キラキラと光る星のように綺麗な円はオトハの元へ吸い込まれるように向かっていきーーー
「な……なによ、何も無いじゃないの」
通過しただけで、何も起こらなかった。
オトハはコケ脅しだと思ったのか、額に汗を垂らしながらホットする。
ーーー直後、大きな揺れが起こり始めた。
教会が振動をあげるほどの振動、街にも聞こえているであろう轟音。
まるで、大地が悲鳴をあげているようなーーー地球全体が揺れているような錯覚。その中央には、オトハがいた。
「……え?」
ゆっくりーーー確実に、カメのようにゆっくりな速度だが、徐々に地面から柱が生えたように、オトハのいる地面の部分のみが丸く浮き出ていく。
「あぐっ……!!う……」
「はァァァァァァァっ!!」
浮き上がった地面は丸い岩となってオトハを閉じ込め、コールブランドの刃で岩をぶった切った。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!?」
急所は外れ、切断されなかったものの、ぶしゃぶしゃと血を吹き出してドサリと倒れる。
オトハは苦しそうに腕を砂を掴むように動かし、
「み……かっ……だて……よ……く……」
ハイライトを失った目で、うつ伏せになって気を失った。
その目線の先には、ミカゲではなくミッテルトを恨めしそうに見据えていたのは、誰も知るよしもなかったことだ。
ーーーザァザァと雨が降る中、倒れたオトハをなんとも言えない顔で見下ろしていたミカゲは、逃げるようにミッテルト達の傍に行くのだった。
ミッテルト「じゃあ、横文字と日本語を組み合わせた重言を言ってみましょう!!じゃあウチから。『美しきビューティ!!』」
レイナーレ「『殺人鬼マーダー』」
カラワーナ「『天使エンジェル』」
ミカゲ「『狂気の……マッド……サイエンティスト……?』」