弟と神話と愛   作:シュオウ・麗翅

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一万年と二千年前から愛してる
八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった
一億と二千年前から愛してる
君を知ったその日から
僕の地獄に音楽は絶えない

ーーー創聖のアクエリオンより


修行1日目、力の獸

「はぁ……はぁ……」

 

走る走る。ただ走る。

逃げる逃げる。ただ逃げる。

 

自分は獲物だと錯覚させられる。認識させられてしまう。

たまたま狩りをしている獅子に見つかった草食獣の様に、ひたすら逃げる。

 

「おい、この程度かよ。シラケるぜ……」

 

ーーー目の前の、捕食者からーーー。

 

 

 

〜先日〜

 

 

「じゃあ、飯も食い終わったし明日の授業内容を説明するぞ〜」

 

ふぁぁ……と、眠そうに欠伸をしながら退屈そうに言うヴェイル。

忙しい身で、悪友であるクロセルからの依頼。それを無下にする訳には行かなかったが、いざ目のあたりにするとそれはそれで堪えてしまう。

 

「うん、とりあえずアマグラと戦え。話はそれからだ」

 

「おいヴェイル!!なんで俺が!!」

 

「なんでって……お前が勝手に着いてきたんだろうが」

 

ヴェイルにつっかかるアマグラ。

彼曰く、「着いてきたんなら俺の負担を減らせ」との事らしい。

毎回毎回このようなやり取りをしていると思うと、少しだけふふっ……と思ってしまう。

 

「まっ、あのバカ2人はほっときましょ♪」

 

そう言って指さした後、楽しそうにクッキーを食べるジウス。

あのようなやり取りをしているが、自分達なんかよりも遥かに上の存在。上級堕天使と呼ばれる者達が今目の前にいる。

 

ーーー天使は下級、中級、上級の3つの階級に分けられるが、その区分でもさらに3つに分けられる。

私は下の中位の堕天使……名称はアルヒカンゲロイに分類される。

対して、ミッテルトとカラワーナはアンゲロイに分類される。

 

……正直言って、格が違いすぎる。

前に戦ったクロセルというアンドロイド。どう考えても手加減されていたのは直ぐにわかった。

そこから修行もした。カラワーナに至っては2つも新技まで開発した。

だが、それだけで上級悪魔に対抗できるどころか、手も足も出なかったのだ。

それだけではない。悪魔になりたての兵藤一誠にすら負けたのだ。

ーーー彼の神器。ロンギヌスと呼ばれる、喉から手が出るほど欲しいシロモノ。

かつて、3大勢力が戦ってズタボロになりながらも漸く封印した2天龍の片割れ。それが封じられている神器。

 

ーーー何故、私じゃないのだと。

その瞬間、自身の無力さと嫉妬によって、憎悪が爆発した。

憎い。殺してやる。コロシテヤ……

 

「……レイ……お姉ちゃん……?どうしたの……?」

 

……ピクニックの日から感じていた違和感が、この子の顔を見ていると一気に吹き飛んだようにハッ!!となる。

上目遣いで、心配そうに見つめている最愛の義弟。

ミッテルトとカラワーナの話によれば、電撃姫はこの子に執着していたようだったが、どういう事なのかよく分からない。

あの悪魔とこの子になんの接点があるのか検討もつかない。

 

「……と、こんな所だ。分かったかそこ!!」

 

指揮棒を私に向け、授業内容を聞いてない生徒に質問する教師のように言うヴェイル様。

不味い、全然話を聞いていなかった……

思わずミッテルトとカラワーナの方に視線を向けるが、その瞬間にジウス様の威圧が感じられ、2人は顔を背けてしまう。

 

「き……聞いてませんでした……」

 

「はぁ〜……」

 

蛇に睨まれた蛙とはこのことを言うのだろうか?

『はい』か『いいえ』、この二択しか言えないようなこの空気。

私の答えに、ヴェイル様は呆れたようにため息を吐いて言った。

 

「このアルヒカンゲロイが聞いていなかったからもう一度言うぞ。お前らは未完成だ。正直言って、アマグラどころか中級悪魔にも勝てないだろう」

 

「おい!!俺どころかってなんだよ!!」

 

ーーーその言葉に、私は思わず顔を俯けてしまう。

でも

 

「だが、お前らはただの未完成じゃない。『全力で未完成』だ。クロセルのじゃれ合いから熱心に鍛錬は積んだんだろう。その繰り返しがいつ芽吹くかは分からんが、その一瞬こそ全てだ」

 

……なんだろうか?ヴェイル様が神々しく感じてしまう。

まるで、救いの神を見ているかのような錯覚。

 

「あっ、飯はミカゲが作るからな。いやぁ〜ココ最近携帯食糧か現地調達物しか食ってないから、漸くまともな飯にありつけるぜ」

 

……やっぱり、ただの見間違いかもしれなかった。

 

 

そして現在。

 

「ちっ……うざってぇな……」

 

ヴェイル様!!こんなの修行じゃありません!!ただ狩りに放り込まれただけです!!

……てかなんなのあれ!!

身の丈以上のバトルアックスを振り回す!匂いで隠れているところがバレる!!獣のような動きをしたら俊敏さと鋭さが増してめちゃくちゃ強くなる!!

オマケにバトルアックスでハリケーンと来たわ!!一体何がどうなってるの!?説明してちょうだい!!

 

「そこだっ!!」

 

バトルアックスの柄を向け、それを銃のように扱う。

アマグラのバトルアックスから放たれたビームは、光の槍を創り出したばかりのレイナーレにまっすぐ向かっていく。

 

「くっ……!!」

 

ビームをスレスレで避け、直ぐに持っていた槍をぶん投げた。

なりふり構ってはいられない。ここで反撃しなければただ攻撃を受けるのみ。

 

 

「しゃらくせぇ!!」

 

光の槍をバトルアックスで強引に粉砕し、木の枝を忍者のように飛び移って直ぐに頭上まで来た。

 

「オラァっ!!」

 

「きゃああああっ!?」

 

咄嗟のことで判断が追いつかず、そのままバトルアックスの側面でぶん殴られ、勢いよく落下するレイナーレ。

ドォォォォォン!!と、爆発したような音が鳴り響く。

スタッ!!と、綺麗に着地するアマグラと、よろよろと立ち上がるレイナーレ。

 

「まだやんの?」

 

淡々と並べられたたった5文字。

戦闘開始と同時に声の衝撃波で後ろに吹き飛ばされ、竜巻のようなものをカラワーナとミッテルトに放つことで分断。

初手でやられた。まさかここまでしてくるとは思わなかった。

だが、今となっては単なる言い訳に過ぎない。

 

実戦では、誰も容赦しないのだから。

 

「も……勿論よ!!」

 

肺を吐き出しそうな程の震え。

吐血しそうな程の痛み。

肉食獣に睨まれるような感覚。

 

ーーーでも、私は

 

「あの子を守るためなら、なんだってやるわ!!」

 

自分の、精一杯の虚勢と叫び。

たとえ実力が伴わなくても、あの子を……最愛の義弟を守るためならなんだってする……

 

「……そうか……なら、この一週間で俺の膝をつかせるくらいはしないとなぁっ!!」

 

勢いよく大地を蹴る。

砂煙がアマグラの後ろに舞い散るなか、私は集中してイメージを作る。

手に持つのは、槍なんて言うちゃちなものなんかじゃない。

作るのは強靭な武器。イメージするのは常に最強の自分。

私にとっての、最強はーーー

 

「ドゥラララララっ!!」

 

4足で走る姿はまさに獣。

自身に狙いをつけ、喉笛を噛みちぎろうとしている獣だ。

 

「……出来たっ!!」

 

イメージが掴めた。あとはそれを創り出すだけ。

徐々にそれが形になっていく。

 

青を主体とした、柄が天使のはねのような長剣。

黒を主体とした、堕天使のはねのような盾。

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

「……っ!!」

 

剣で斬ろうとしたその一瞬。

アマグラは器用に逆立ちするようにして手を地面に当て、バク宙の要領で華麗にかわした。

その際に髪の先がカットされ、腰にはあと数センチ届かずに後ろで体制を立て直す。

 

「こうでなくっちゃなぁ!!喰らいがいがあるってもんだぜ!!」

 

アマグラはゆっくりと立ち上がり、光の武器を構えたレイナーレを見据える。

 

「モード・スパーダ……勝負はここからよ!!」

 

「へっ、だったら俺が絶体絶命浴びせてやんよ」

 

再び対峙するレイナーレとアマグラ。

ケモノと堕天使の第2ラウンドが始まるのだった。




あぁもうめちゃくちゃだよ
ただ歌詞ネタ入れたかっただけ定期(´・ω・`)

3人の階級についてはただの妄想です。
ただレイナーレがカラワーナとミッテルトの1つ上かなぁと……ドーナツくんは知らない。
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