君死にたまふ事なかれ   作:愛染 晴翔

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始まりの教室
プロローグ


気がつくと教室にいた。

と言っても、俺の通っている都内の小綺麗な私立高校の教室ではなく、東京から出るつもりがなくインドア派の俺では、ともすれば一生見ることはなかったであろう窓から山々の覗く古びた教室だ。どこだここは。俺はいつも通りに学校から帰ってきてから昼寝をするためにベッドに入ったはずだ。

陽が落ちかけ、オレンジ色に染まる教室。人の気配はなく、周囲を見渡しても私物らしきものは見当たらない中で異彩を放つものが一つ。

教卓の上に白い立方体が置かれていた。

 

「…抽選箱、だよな?…ッ!?」

 

近づいた瞬間、黒板に文字が浮かび上がった。いや、浮かび上がったと言う言い方には語弊がある。黒板は最初から視界に入っていた。入っていたのに何か書いてあることに全く気づくことができなかった。つまり、最初からあったのだ、この文字は。

黒板にはこう書かれていた。

 

『残り3人。一方通行

未元物質

超電磁砲

原子崩し

心理掌握

????

解析不能

くじを引き次第転移。【鍵】を帰還する人数分回収せよ。』

 

未元物質、超電磁砲、????、解析不能には横線が入っている。

文字を認識できなくさせる意味はなかった。恐らくこのふざけた内容の文字を鼻で笑わせ無いようにこんなことをしたのだろう。この四文字熟語の羅列は恐らく、というかまず間違いなく「とある魔術の禁書目録」に出てくる能力名だろう。

文脈から察するにくじで引いた能力を与えられ、どこかへ転移した後【鍵】とやらを回収するのが元いた世界に帰るための条件なのだろう。

流石にターゲットがこの7人でこいつらが鍵を持っています、とかは考えたく無い。

と、ここまで考えたところで転移とか能力とか真剣に考えている自分に気づき、苦笑する。

 

「一度冷静になるか。とは言っても文字が認識できなかったのは事実なんだよなー…」

 

箱から離れウロチョロと教室中を歩き回って見る。机の中は全て空、後ろにおいてある掃除用具入れも空。窓に触れようとしても鍵には何故か触れない。出入り口も同様。叩き割って見るか、と椅子を持ち上げ窓に叩きつけると跳ね返されて手を痛めた。

「引くしか無いか、怪しさ全開だけど。」

 

箱に手を突っ込み、ふと思う。これ、二つ引いたら能力増えたりしないかな、と。実行。

 

「まあそんなうまい話はないか」

 

窓に触れた時と同様になぜか2枚目に触れることができなかった。

手を引き抜き、確認する。

 

『一方通行』

 

「よしきたぁぁぁああ!!」

 

最高の引きだ。人数分の鍵と書いてある以上くじを引いたものたちは同じ場所に転移するのだろう。鍵が全員分あるとは限らない以上争うことだってあるかもしれない。争いを想定するのならば、およそ戦闘において万能と言える一方通行の能力が一番いいに決まっている。レベル5は割と相性であっさりと決着がつくこともある。心理掌握対原子崩しなんてカードになったら恐らく1秒かからずに原子崩しが敗北するだろう。その点一方通行には相性の悪い相手がいないし、幻想殺しも木原神拳もない以上最強だろう。まあ行く世界にもよるが。

 

そんなことを考えているうちに転移が始まった。ジジ、ジジジジ、というノイズのような音が走り、手の先、胴体の真ん中から消えて行き、その過程でグロテスクな内臓の断面が見える。

 

「GANTZっぽいなぁ…」

 

ほぼ確信している呟きを残し、俺の意識は暗転した。

 

 

 

 

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