学校へ行き、授業を受け、帰宅した。
単調な生活だ。しかし、退屈な日々があるからこそ、今日のような死に近づく日がたまらなく感じる。
自室で黙々と今日やるべき仕事をこなしていると寒気が走った。
『お知らせ』だ。私はスーツを持ち帰らない派の人間なのでそのまま待機する。やがて古いオーディオから流れるようなノイズ音とともに俺の体は消えていった。
◇
原作GANTZのミッションは中継され、世界の大富豪、俳優、政治家たちの中で誰が生き残るか、何分で星人が討伐されるのか、ギャンブルが行われていた。
そう、大富豪だ。そこに鈴科が含まれていないなどあるはずもない。
幼少期から源十郎が一部のものを引き連れて仕事のスケジュールがない日に何処かへ行っているのは確認していた。
そして俺が中学に入学すると同時にGANTZに参加する許可をとりにいった。
その頃にはもう継承権は一位間近といったところだったし、資産もバカみたいな額があったが、仮にも保護者なので一応許可を取りに行った。
さぞ源十郎は驚いたことだろう。
源十郎にしてみれば教えた覚えのないGANTZミッションを娘(年齢的には祖父と孫レベルだが、戸籍上は娘)がなぜか知っていて、しかも観戦したい、ではなく参加したいとかほざき始めたのだ。
控えめに行って混乱の嵐だろう。
能力を見込んで引き取ったとはいえ、一応は娘。それなりに愛されている自覚もある。
それでも驚愕を表に出さず5秒ほどの一時停止だけで脳内を整理したのは流石当主と言えるだろう。
再起動の後、当然源十郎はなぜブラックボールのことを知っているのか、どこまで知っているのか、なぜ参加したいのかを問うてきた。
それに対して俺はこれまでの経緯を語った。
と言っても難しい話ではない。原作知識を持っていて、金があれば誰でもできる事だ。
まずはGANTZを作ったドイツの企業を探し出す。これについては簡単だった。娘が寝たきりで経営が芳しく無い企業をドイツ国内に限り調べるだけだ。
時系列がずれていることも考えられたが、そんなことを考えていたら何もできないのでとりあえずスルー。
一週間もせずに見つかったという報告がきた。
財閥の名前はマイエルバッハ。会長はハインツ・ベルンシュタイン。
会社は傾きかけで、現在世界中から暗号解読のプロフェッショナルを集めて何かさせようとしている。
タイミング的にはもっと早く見つけたかったが仕方がない。すぐに接触して融資の話を切り出す。
言語が解読されればGANTZウェポンを作り莫大な財を築き上げるハインツだが、現在は傾きかけの会社の会長。
GANTZウェポンを作るのだって金が必要だろうし、作り上げるまでは本当にできるか半信半疑、いや、疑いの方が大きいはずだ。藁にもすがる思いなのだろう。
条件はこの件を鈴科を主とした他の誰にも話さないこと。怪しいが美味しい話ではあるし、ここで受けなければ会社に未来はない。
すぐにハインツはこの話に飛びついた。
そして言語の解読に成功したハインツはすぐにGANTZウェポンの製造に成功したというわけだ。
全てを正直に話すわけにはいかないので、以前からマイエルバッハと繋がりはあったこと、ずっとGANTZの存在は知っていたことを嘘を交えながら話し、参加するのならば自分でマイエルバッハに話を通すことと、ミッションに参加している間は当主にはならないという契約で俺は戦いの場へと足を踏み入れた。
◇
ジジ…ジジジ…
(また来た!)
少し前に来た裸の女の子は夢だと思ってらのか息を荒げながら床に横たわっている。
やはり皆同じ来かたをするのか、頭、つま先から徐々にグロテスクな面を晒しながら体が出来ていく。
(おいおい、まじかよ…)
一瞬、絵画の世界に迷い込んでしまったのかと思った。
それほどまでにその現れた少女は幻想的な見た目をしていた。
身長は160センチほどで、女にしてはそこそこ高いだろう。
老人のそれとは違い、輝くようなツヤを持ったサラサラの銀髪、欲望を向けるのがためらわれるくらいに芸術的なまでに整ったスタイル。
これが黄金比だと言わんばかりの顔の造形の中に輝く、吸い込まれるような真紅の瞳。
この子も死にかけたのだろうか、驚きの表情が顔に浮かんでいる。
裸の女の子が転送されてきた時は騒がしかった室内もいつのまにか静まり返っている。
「…本編が始まり出したか。」
すぐに無表情になった少女はボソリと呟いた。
近くにいた玄野と加藤にしか聞こえないくらいの声量だ。
一拍おいて小学校の教師と女顔の不良が騒ぎ出した。
「鈴科百合子だ!そうだ思い出した!どっかで見たことあると思ったんだよ!こいつ鈴科百合子だぜ!」
「ほ、本当だ!僕もニュースで見たことあります!ミレニアム懸賞問題を全て解いた天才だって!やっぱりTV番組なんじゃないか!」
ヤクザたちは我関せずといった様子だ。よく見れば冷や汗をかいている。
(誰だよ…俺ニュースなんか見ないから知らないぞ)
少女は何も言わずに黙って立っている。
玄野が少女の素性を問おうとしたその時、
『あーた〜〜らし〜〜〜い
あ〜さがきた きぼーうのあーさーが
そ〜れ いっちに〜さん!!』
唐突に音楽が流れ出した。
黒い玉から流れているようなのでひとまず皆んな集まった。
『 てめえ達の命は、
無くなりました。
新しい命をどう使おうと
私の勝手です。
という理屈なわけだす。 』
黒い玉の表面に裏返ったり口語が混じったりと適当な文章が浮かびあがる。
「何が言いたいんだコレ…「り」と「す」が逆だ」
「なんだこりゃ、ハハハ」
「これウケねらってんじゃん、やっぱ電波少年かもな」
それぞれが勝手に所感を述べていく。
そしてさらに表面の文字が変化し、画像と文字が現れる。
『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい
ねぎ星人 特徴 つよい
くさい
好きなもの
ねぎ、友情
口ぐせ ねぎだけでじゅうぶんですよ! 』
「なんじゃコイツ気色悪〜」
「ねぎ星人〜〜?弱そ〜」
(電波少年?催眠術?納得いかね〜〜。じゃあ何なのかっつったらてんでわかんねーけど…)
ねぎ星人の情報を皆が見て感想をいう中、玄野は納得がいかず黒い玉を調べていた。
(てゆーかいつのまにかあの超美人の子どっか消えてるし、裸の子は加藤の学ランもらって着てるし、何なんだよ、もう)
顔が超タイプなので裸の子とはお近づきになりたかったし、美人と親しくなりたかったのに、少し目を離した隙に片方は消え、片方は加藤にとられてしまった。
「たくよー、何なんだよ!……おわっ!」
八つ当たりに玉の後部を蹴ろうとしたした瞬間、ガコンという音とともに玉の三方向が開いた。当然玄野はバランスを崩した。怒る気にもならずに微妙な顔をしている。
心を落ち着け、開いたところを見てみると、後部にはスーツケースが人数分、左右にはおもちゃのショットガンと拳銃のようなものが入っていた。全て黒塗りだ。
「かっこえ〜〜っ、本物くせ〜〜重〜〜」
不良がショットガンで遊んだり、中に人間がいるとか教師が騒いだりしている中、スーツケースを取り出しているとひとつだけ白のスーツケースがあることに気づく。
取り出してみる。
「『ろりこんれず』?なんだこれ、誰のことだ?」
「渡してください」
「おわっ!」
文字に首を傾げていると、すぐ後ろから澄み切った脳に浸透するような声がした。
びくりと体を震わして後ろに振り向くと先ほどの白い少女がいた。
「あ、あぁ…」
「ありがとうございます。……それと、私はロリコンではありませんからね」
「え?あ、うん…」
スーツケースを渡すと、弁解しながら去っていき、奥の個室に入った。
(なんで入れるんだ?さっきは扉にさわれなかったぞ)
「おい、畑中ァ〜〜ッ畑中…おい…」
追いかけようか迷っていると、ヤクザの片割れが大声を出したのでそちらをみる。すると来た時と同じように体が消えていくヤクザが見えた。
そしてもうひとつ視界入る。中坊が服の下に
おかしい、皆開けてはいたがスーツを着ているやつはいなかった。
あいつは最初から着ていたのか?あのスーツには何かあるのか?
あの白い少女もスーツを渡せと言ってきた。
スーツがなんなのかはわからないが着ないとまずい、そんな予感がする。すぐにスーツをケースから出し、着替えようとするが、サイズがちょうどすぎて着られない。
服を脱いでいると玄野の転送が始まった。
「ちょ、まってまって、やばいっ、」
『 行って下ちい 00:58:41 』