俺達は神社で夕焼けを見たあと、旅館に戻ってきていた。
今から夕飯である。
「優磨~、夕飯何出てくるのかなぁ~。」
モカが俺の背中に抱きつきながら言ってくる。
確かに俺も夕飯の内容がかなり気になる。
「お待たせしました。しゃぶしゃぶでございます。」
「よかったな兄さん、兄さんの大好きな肉だぞ。」
「マジかよ!肉~。」
「優磨、よだれ出てる。」
蘭の指摘でよだれが出ていることに気付いた。
肉って見てるだけで腹減るよなぁ。
俺は何でも基本的に好きだが中でも特に好きなのが肉だ。
肉ってやっぱり最高だ。
こうして俺達はしゃぶしゃぶを食べ始める。
モカが俺のすぐ真横に寄ってきた。
「優磨~、あーん。」
モカに肉をあーんされる。
うん、旨い。
この肉って凄くいい肉じゃないか?
「優磨~、美味しい?」
「ああ。最高だ。」
この牛肉は口に入った瞬間にとろける。
さらに甘い。
肉の甘さが一気に襲ってくる。
某グルメ漫画だとおはだけしているレベルだ。
そして皆しゃぶしゃぶを食べ終えた。
「布団敷こうか。」
つぐみが布団を敷き始める。
布団は6枚綺麗に横に並べられていて、皆各自に好きなところをとっていく。
俺はとりあえず一番端の布団を取った。
モカが俺の隣を取る。
なんかいろいろ察したんだが。
「お風呂にしないか?温泉旅館なんだし。」
「「「「「賛成!」」」」」
ついに念願のお風呂タイム。
温泉旅館なんだしお風呂に入らないと損だ。
こうして俺達は風呂に向かった。
「じゃあ、また後で。」
「優磨も一緒に入らないの~?」
「入るわけねーだろ!犯罪だろ。」
「じょーだんじょーだん、モカちゃんジョーク~。」
「シャレになってねぇよ。」
モカにからかわれたが俺は男湯に入る。
時間帯的には少し早く、人がいない。
俺は早々に体を洗って露天風呂に向かう。
露天風呂の風が涼しくて気持ちいい。
体が癒されてる。
体は暖かいのに頭は涼しい。不思議な感覚だ。
すると、壁を挟んだ向こう側の女湯から声が聞こえてきた。
「ひーちゃん、ちょっと食べ過ぎじゃない~?」
「モカ!触らないでよ~。」
ああ、いつも通りか。
まったく、あいつらはいつもブレないなぁ。
そんなあいつらが羨ましい。
毎日を楽しそうに生きてるよ。
さて、これ以上浸かっているとのぼせそうだ。
上がろう。
俺は脱衣場で服を着て、男湯を出る。
髪は別に乾かさなくても、短いのでもう乾いている。
少しミルクティーを飲んでいると、皆が女湯から出てきた。
「優磨君、ここでもミルクティー?」
「ああ、ミルクティーってどんなときでも旨いよなぁ。」
「兄さんは相変わらずだなぁ。家でも風呂上がりにミルクティー飲んでるし。」
「あ~、ミルクティーって美味しいね~、優磨~。」
「だろ?わかってもらえて嬉しいぜ。」
どうやらモカも風呂上がりのミルクティーの良さを分かってくれた見たいだな。
さて、あとは部屋でいろいろするだけ、と。
俺達は部屋に戻った。
「こういうときにする事と言えばやっぱり恋バナだよね!」
「やっぱりそうだよな!」
「そうだね。」
さてと、俺は携帯でも弄ってるか。
さっき湊から猫の写真送られて来てたんだよなぁ。
「もちろん優磨君も参加だからね?」
嘘だろ!?
正直こうなった皆のテンションに着いていける自信がない。
「まずは誰から行く?」
「じゃあ蘭からかな~。」
「なんであたしから!?」
「じゃあ蘭、最近どうなの?」
「どうって言われてもうちの学校の男子ってろくな男子いないじゃん。皆…幼いって言うか。」
「確かに男子でも同級生にはいい人居ないなぁ。」
もう着いていけてない。
何このテンション。
この中でも基本的に落ち着いてる蘭でさえこのテンションだ。
「次はモカ…はいいとして次はつぐ!」
「私は……生徒会の副会長の先輩がちょっと気になってるんだ。」
マジかよ。
生徒会の副会長って言ったらうちのクラスに居る奴じゃん。
中間テストで3位だったあいつ、名前なんだっけ?
思い出した思い出した。
竜胆だ。
竜胆和弘だ。
いかにも真面目そうなメガネ。
そういえばあいつ彼女居なかったか?
和人から聞いたけど。
「どんな人なの?」
「凄く真面目でカッコいい人だよ。」
「さて、次は巴の番!」
「アタシは好きな人居ないぞ?」
「なんで?」
「だって兄さん以上の人が居ないから……」
巴……嬉しいじゃないか。
俺の魅力がわかる巴は将来いい女になるぜ!
「巴も実際結構なブラコンだよね。優磨のシスコンに隠れてるけど。」
「そ、そんなことないぞ?別に、兄さんは好きだけどブラコンってレベルじゃ……」
「十分ブラコンだよ、巴。」
「ブラコンじゃないからぁ……」
巴が枕に顔を埋めてしまった。
かわいい。これは永久保存版だわ。
過去最高クラスに破壊力が高い。
こうしてかなり話し込んでいると、もう遅い時間になっていた。
そして寝ることになった。
俺の後ろに誰か、といってもモカなんだけど。
がっちりと抱きついている。
いろいろ柔らかくてヤバい。
耐えろ、俺。
といっても瞬間で眠ってしまうのが俺という男なのであった。
「優磨、もう寝ちゃった~。でも、優磨って寝顔かわいいよね~。我慢できなくなってきた。ちょっとなら、バレないよね?」
モカは優磨にそっと口付けした。
結局モカも眠気には抗えず、優磨の上で眠ってしまった。
俺は目が覚めた。
時間を確認するとまだ5時だった。
二度寝しようにも目がバッチリ覚めていたので、風呂にでも入ろう、そう思って風呂に向かった。
俺が風呂に入ると、思いがけない人物がいた。
モカがなぜか男湯の露天風呂にいた。
「モカ、お前それやばくね?」
「優磨と入りたかったんだ~。」
「俺が来なかったらどうするつもりだったんだ?」
「大丈夫だよ~。優磨は絶対来るから~。」
「でもバレたらヤバイからなるべく早く出ようぜ。誰か来る前に。」
「そうだね~。」
一応俺達はタオルの一枚もない状態なので、背中合わせで座っている。
「優磨~、やっぱり優磨の背中って暖かいね~。」
「そうなのか?まあ俺体温は高いけどさ。」
「ううん、そういう感じじゃなくて、優磨の優しさが感じられるなぁって思って。」
「俺の優しさ?」
「うん。優磨の包み込んでくれる、そういう優しさ~。それは小さい頃からまったく変わってないんだ~。」
「そういえばモカって小さい頃から俺の背中に引っ付いてたよな。」
「覚えててくれたの~?」
「ああ。当たり前だろ?小さい頃からの沢山の思い出を、俺は忘れてないぜ。だって、どれも皆大事なかけがえのない思い出だからな。」
「やっぱり優磨は優しいね~。あたし先に出るね~。」
「ああ、また後で。」
モカは先に上がって行った。
「優磨のそんな所が好きなんだけどな~。」
モカの呟きは、優磨の耳には届かなかった。
「でもビックリしたな~。モカがいきなり男湯にいたなんて。」
この時、なぜか俺の鼓動が速いのを、いつバレるかというスリルのせいだと思っていた。