宇田川家の長男はいつも大変   作:深き森のペンギン

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第20話 助っ人と焼肉定食

「優磨~、どう?似合ってる~?」

 

モカが自分の着ている服をくるくると回って見せつけてくる。

モカが今着ているのは浴衣だ。

 

「ああ、スゲー似合ってるぜ」

 

「えへへ~、ありがと~」

 

「よかったな、モカ。兄さんに誉めてもらえて」

 

俺達は今旅館で貸し出されている浴衣のサイズを確かめている。

そして今はモカの浴衣のサイズを合わせている。

 

すると一人の少女が旅館に駆け込んできた。

少女はかなり息を切らしている。

 

「あ、あの!Afterglowの宇田川巴さんですよね?」

 

「え、そう…だけど。どうしたんだ?いきなり」

 

「今日のお祭りで、太鼓をやってくれませんか?」

 

「「「「「「ええ!?」」」」」」

 

少女の突然の発言に俺達全員が驚く。

 

「ええっと、どう言うことなんだ?詳しく聞かせてくれ」

 

巴が少女に詳細を尋ねる。

すると少女は少しオドオドして話し始めた。

 

「今日のお祭りで、私の姉が本来太鼓をする予定だったんですけど、今日突然倒れちゃって…それで今うちの旅館にAfterglowの皆さんが泊まってるって気づいて、それで依頼しようかと…」

 

つまり俺達が泊まってる旅館の娘さんが、皆に気づいて依頼してきたってわけだ。

巴はこう頼まれると断れないタイプだ。

そこは俺も、だけどな。

 

「そんなことなら是非協力するぜ!」

 

「いいんですか?ありがとうございます!では今から大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ。大丈夫だけど」

 

「じゃあこっちに来てください!」

 

巴が連れて行かれた。

それにしても最初のオドオドはなんだったんだ?

 

「今日のお祭りは巴抜きか~」

 

「まあまあ、巴ちゃんの太鼓が見れるんだし」

 

「そうだね!さて、お昼ご飯お昼ご飯!」

 

「飯だー!」

 

「ご飯~!」

 

「皆すごい食欲…」

 

蘭が皆の食欲に呆れる。

こうして俺達は皆でランチタイムとなった。

 

「俺焼肉定食一つお願いします!」

 

俺達が昼食の場所に選んだのは定食屋だった。

 

「このお肉美味しい~。これならいくらでもいけるよ!」

 

「確かに、このお肉美味しいね。」

 

俺達は全員焼肉定食を注文した。

この焼肉定食、肉が柔らかくて凄く甘い。

肉の旨味がしっかりと味わえる至高の一品だ。

只の定食屋だと思って侮っていた。

 

「ふぅ~。お肉食べ過ぎちゃった。でもこんなに美味しかったんだし別にいいよね!」

 

「おいひまり、それ言い訳にしてたら帰ったあと…」

 

「それ以上言わないで!」

 

ひまりに言ってる俺も人のこと言えないんだけどな。

俺も焼肉定食食べ過ぎたし。

あの焼肉定食、おかわり自由で食べ放題だったんだ。

あんなに旨い肉をいくらでも食べられるなんて、夢みたいだ。

さらに価格も良心的だ。

 

この温泉街、温泉以外にもグルメで売れるんじゃないか?

例えば最初に食べたクリームパンしかり、蕎麦もしゃぶしゃぶも、この焼肉定食も。

 

それと特産品のみかんも。

 

あぁ、早く祭りの時間にならないかなぁ。

 

それとこの焼肉定食、巴にも食わしてやりたいな。

 

一方その頃。

巴は少女、改め悠花に連れられて来た神社で最終確認を行っていた。

 

「おぉ~。本物の巴ちゃんを生でみられるなんて…感激だよ~」

 

「アタシのこと知ってるのか?」

 

「私、巴ちゃんのファンなんです!ライブがある度にライブハウスまで電車に乗って行ってます」

 

「そうなのか、ありがとな。でもファンって目の前で言われると嬉しいなぁ」

 

「悠花~、お昼ご飯届けにきたぜ!」

 

「かっちゃん、いつもありがとね~。かっちゃん家の焼肉定食私大好きなんだ~」

 

かっちゃんと呼ばれた少年が焼肉定食を持ってやってきた。

悠花は頬を少し赤らめている。

そしてさりげなくかっちゃんの側に寄っている。

 

分かりやすいなぁ~。

巴はそう思った。

 

「姉ちゃんも食えよ、ウチの焼肉定食は旨いぜ!また友達連れてウチの店頼むよ!」

 

「ありがとな。じゃあ食べるとするか!」

 

巴は焼肉定食を食べる。

 

 

(なんだこれ、スゲー旨い。兄さんにも食わしてやりたいな。)

 

さすが兄妹、考えることが同じである。

 

「優磨~、カッコいいね~。やっぱりイケメンはなに着てもイケメンですなぁ~」

 

「イケメンじゃねー!」

 

俺は今浴衣のサイズを合わせている。

俺の浴衣は紺色を基調として白い模様が入っている。

 

「優磨、着方逆。あんた死んでるよ。直してあげるからこっち来て」

 

「そうなのか!?頼む。直してくれ」

 

俺は浴衣を蘭に直して貰った。

これで祭り用の浴衣も決まったし、そろそろ祭り行くか。

 

「皆~、そろそろ祭り行こうぜ」

 

「いいね~、出店も混まないうちに行った方がいいしね~」

 

そして俺達は神社に出発した。

神社の境内には結構の人だかりができている。

 

子供から老人まで沢山の人々で賑わっている。

 

「優磨~、あそこたこ焼きあるから一緒に行こ~」

 

「いいぜ。出店全部コンプリートしようぜ!」

 

「いいね~、賛成!じゃあ勝負しようよ!どっちが先に出店全部コンプリート出来るか。」

 

こうして、俺とモカ対ひまり、つぐみ、蘭での勝負が始まった。

 

「よーし、モカと優磨君くっつけよう大作戦、開始~!」

 

「これでモカがどうするか、だよね」

 

この展開は優磨以外のメンバーでの予想通りの展開だった。

勝負事好きの優磨の性格を逆手にとってさりげなくモカを優磨と二人っきりにする。

そして全部の出店のコンプリートという時間のかかる内容にしてモカに時間を作る。

そういった作戦だった。

 

そんなことを疑うそぶりも見せない優磨はモカと二人っきりで祭りを楽しんでいた。

 

「モカ、チョコバナナがあるぞ!」

 

「優磨~、チョコバナナいいね~」

 

俺達は今、出店をコンプリートするために出店をめぐっている。

チョコバナナを二つ購入して二人でチョコバナナを食べながら歩いている。

 

「旨いな、このチョコバナナ」

 

「そうだね~」

 

「モカ、あっちに唐揚げあるぞ!」

 

俺はモカの手を引いて唐揚げ店に走る。

そしてついてから唐揚げを注文する。

 

通常よりも少し多かったので、店主に尋ねてみる。

 

「カップルにはサービスしなきゃねぇ」

 

「カップルじゃな…ッ!」

 

カップルじゃない、そう言おうとしたときモカに足を踏まれた。

そしてモカは俺の腕に抱きついてきた。

 

「ありがとーございまーす~、優磨~、いこ~?」

 

「お、おう。そうだな」

 

「あっちに綿菓子あるよ~」

 

今度はモカに手を引かれて綿菓子店に向かう。

いつしか、勝負のことなど忘れてモカとの祭りを楽しんでいる自分がいることには、まだ気づいていなかった。

 

そしてこの日は俺にとってとても大切な日になることを、俺はまだ知らない。

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