宇田川家の長男はいつも大変   作:深き森のペンギン

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第21話 花火とモカ

「モカ、あとどれくらい出店ある?」

 

「見た感じまだまだだね~」

 

「マジかよ……コイツはちょっとだけキツそうだぜ」

 

神社の境内だけじゃなく、階段を降りた先にも出店が出ている。

これらをコンプリートするのはちょっとだけキツそうだ。

まあ、向こうのチームと比べると人数こそ少ないが食べる量で言えば勝負にならないレベルでこっちが勝っている。

 

勝負事には絶対に負けられない。

負けることは何よりも嫌いだ。

 

「おじいちゃん、大丈夫?」

 

何やら小さい女の子が祖父と祭りに来ているようだ。

射的の所で肩を押さえているおじいさんがいた。

 

「すまんのう、純香。あのぬいぐるみを取ってやれなくて……」

 

今にも泣き出しそうな女の子を見てだんだん耐えられなくなってきた。

 

「悪い、モカ。ちょっと射的行ってくる」

 

「いいよ~」

 

こうして俺達は射的の所に向かった。

 

「じいさん、ちょっといいか?」

 

「すまんのう。今退くから」

 

「おじさん、俺やります」

 

俺は百円玉を射的のおじさんに渡す。

 

「3発撃てるからね。それじゃあ、頑張って」

 

「オーケーですよ」

 

俺は銃に弾を込めてぬいぐるみに狙いを定める。

まず一発。

感覚を確かめるためにあまり狙いすぎず撃つ。

 

弾はぬいぐるみに当たり、そのまま一発でぬいぐるみを取ることができた。

俺はぬいぐるみを持って女の子に近づく。

 

「君にこれ、やるよ」

 

「え、いいの?お兄ちゃん!」

 

「本当にいいのかい?頂いても……」

 

「俺はいいぜ!このぬいぐるみも俺よりも君に貰ってくれた方が喜ぶだろ」

 

俺はそういって女の子にぬいぐるみを渡す。

すると先程まで泣きそうになっていた女の子の表情が笑顔に変わった。

 

「優磨~、まさか射的ってこのためだったの~?」

 

「そうだぜ……なんだ?ニヤニヤして」

 

「いや~、優磨もたまにはいいことするなぁ~って思って~」

 

ヤバいこれ後から絶対からかわれる奴じゃん。

口封じするか。

 

「モカ、射的で欲しいものあるか?」

 

「う~ん、じゃああのペアリングかなぁ~」

 

「了解。じゃあこれで黙っててくれよ?」

 

「わかった~」

 

さて、少々難しいがペアリングで口封じができるなら安いものだろう。

俺は残りの二発でペアリングを取る。

 

そしてモカに渡す。

 

「モカ、そのペアリングどうするんだ?蘭あたりと半分ずつか?」

 

「違うよ~」

 

ますますわからなくなってきた。

モカの俺にペアリングを取らせた意図が。

 

「じゃあどうするんだ?」

 

「まだ秘密~」

 

まだ、ということは後から教えてくれるのだろうか。

 

「じゃあ、気を取り直して出店めぐり再開するか!」

 

こうして俺達は出店めぐりを再開した。

 

「次はたこ焼きか。たこ焼きと言えばショッピングモールにもたこ焼き屋あるよなぁ」

 

「そうだね~。また今度二人で行く~?」

 

「そうだな」

 

たこ焼き屋で少し並んでしまったが、たこ焼きを購入することができた。

 

「たこ焼き一つサービスしといたよ!」

 

「どうしてですか?」

 

「カップルはサービスするもんだろう?」

 

「ありがとーございます~」

 

前と同じ失敗はしない。

俺は失敗は繰り返さない男だ。

 

ここは素直に流れに乗っておくべきだろう。

あとさっき足踏まれた時めちゃくちゃ痛かったし。

 

「優磨~、あーん」

 

モカがたこ焼きを俺の口に運んでくる。

俺が口を開けるとモカはたこ焼きを自分の口に入れて悪戯っぽく微笑む。

 

「えへへ~、あげないよ~」

 

不覚にもドキッとしてしまったのは気のせいだろうか。

普段見慣れない浴衣姿とモカの黙っていれば超絶美少女という容姿も相まって、やってることはいつものモカなのに不意な仕草にドキッとしてしまう。

 

「モカ、そういえばもうすぐ花火じゃないか?」

 

力強い太鼓の音が聞こえて来る。

祭りもかなり盛り上がってきたようだ。

 

俺達は花火がよく見えるような場所を探している。

途中で見つかった出店はすかさずすべて購入している。

 

今モカの手にはフランクフルトが、俺は今チョコバナナを食べている。

うん、チョコバナナ旨い。

 

チョコの甘さとバナナの味が絶妙に合わさっている。

思わずミルクティーが欲しくなって、出店で買ったミルクティーを一口飲む。

 

うん、甘いものにはやっぱりミルクティーだなぁ。

甘さがより引き立つ。

 

「優磨~、あそこ抜けたらいいんじゃない?」

 

「行ってみるか!」

 

モカがちょうどよさそうな場所を見つけてくれた。

こうして俺達は藪に入って、その藪を抜けると開けた場所に出た。

 

花火は麓にあるみかん畑から打ち上げられるみたいで、みかん畑に係の人が集まっているのがよく見える。

 

どうやらそろそろ打ち上げられるようだ。

 

花火がヒューっと音をたてながら空へと舞い上がる。

そして刹那、空に大きな花が咲いた。

 

「綺麗だなぁ。モカ、どうした?」

 

モカが急にペアリングを片方自分の手に付け始めた。

そして俺の手がとられる。

モカはもう片方のペアリングを俺の指にはめ込んだ。

 

「優磨、好き。付き合って」

 

え?

俺は一瞬自分の耳を疑った。

でもなんだろう。告白なら一度日菜にもされたがその時とは全く俺の中でなにかが違う。

 

俺はその感情が何か分からなかった。

そして、こうも思った。

 

この感情の正体が分からなかったら、きっと付き合っても全くいいことがない。

この感情について分からなかったら、きっとモカを傷付けてしまう。

それは嫌だった。

 

だから、今は待ってほしい。

ズルい考え方かも知れないが、このままでは俺が納得できない。

 

「モカ、少しだけ、待ってくれないか?」

 

「どうして~?」

 

「なんか自分が変なんだ。このまま付き合っても、知らないうちにモカを傷付けてしまうかも知れねぇ。だから、今は待ってほしい……」

 

「わかった。でも、条件をだすよ~」

 

「なんだ?」

 

「今度の夏祭りで、返事聞かせてね~?」

 

「わかった。約束する。夏祭りには必ず応えるから」

 

このあと、俺達は花火を十分に堪能して出店めぐりを再開した。

そしてようやくすべての出店をコンプリートできた。

 

そして旅館にて。

 

俺達が部屋に入ると、皆がいた。

 

「お帰り、兄さん」

 

「優磨君、勝負はどうやら私達が勝ったみたいだね!」

 

「そうだった……」

 

忘れてた。

そういえば勝負してたんだ……

マジかよ。負けちまったじゃねえか。

 

「しょうがねぇな。今日は負けにしといてやる。でも、夏祭りでは絶対に勝つ!」

 

「次も返り討ちにしちゃうぞ~!」

 

「絶対負けねーからな!」

 

こうして、俺は次回の夏祭りでのリベンジを宣言するのであった。

 

あぁ~、散々歩いた後はやっぱり風呂だなぁ。

疲れがどんどん消えていく。

 

ヤバい、このまま風呂で眠ってしまう所だった。

さて、俺はどうすればいいのだろうか。

結局、あのモヤモヤの正体はなんだったのだろう。

夏祭りまでには正体を確かめて見せる!

そう心に誓って、風呂を上がって、風呂上がりのミルクティーを堪能するのであった。




結構間が空いてしまい、すみませんでした。
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