さぁ、復讐を始めよう 作:ぷーある
して下さった方の書いてるものを最近自分も読んでいまして、1人で高ぶってました笑
なんというか世間というかハーメルン内は狭いな、と思った瞬間でした。
今回は状況確認というか自己嫌悪するよっていうお話
「ここは私の心の中でパレスと呼ばれる異世界……本当にあったんだ」
「あぁその通りだ。ちょいと裏技で連れてこさせて貰ったぜ。お前にゃしっかりと向き合って貰わないといけないからな」
「…………うぅ」
「安心しろ。俺が付いている」
「……うん」
認知やら異世界やら、理解して飲む込むのにさほど時間は掛からなかった。というより少女のお母さんがこの異世界の事、つまり認知訶学の研究者だったらしい。それで納得がいった。そりゃ殺されるわな、と。
まだ明らかになっていない事が多いこの異世界。何をしてもバレない異世界を使って現実を好き勝手出来るのであればそれを認めない異分子が殺されたのは言っちゃ悪いが当然の帰結とも言える。
黒幕、恐らく調べれば直ぐにわかる事だろうがこの認知世界を利用して良からぬ事を考えて利用している奴なんてそうそういるはずもない。だからヒットすればそいつが黒幕って事になる。というか認知世界を使ってる奴なら知っている。ほぼ間違いなく実行犯だろう。まぁ黒幕は別だろうが。
にしても天才と言っても年若い少女、本心はまだ迷宮から盗めていないが恋心はしっかりと盗めたみたいだ。その証拠に繋がれた手を離そうとせず警戒心を微塵も感じさせない。
無垢な少女の恋心なんて盗むのは容易い。惚れさせる?あんなので惚れる奴なんかちょろ甘で現実を見ていないメンヘラ野郎か相当まいってる奴だけだ。それだけ見ればこの少女も当て嵌るのだろうが流石にそれはないだろう。
普通は盗めない?普通じゃない?
何を言うか。俺は怪盗だ、盗めぬモノなど存在しない。
「名前、教えてくれよ」
「……双葉。一色双葉」
「いい名前だ。ちなみに俺は怪盗アダム、名前はない……嘘だ。だからそんな目をキラキラさせるな……名前はな、一身上の都合で捨てたんだ。だから怪盗としている時はアダム、リアルじゃギンって呼んでくれ」
「ん、ギン」
「なんだ?」
「呼んだ……だけだ」
「そうか」
そう言って頭を撫でてやると目を細めてほんの少し頬が赤くなる。こういう所は年相応だなぁ、なんて思ったり。それより早めに風呂に入れてやらなければならない。何より臭うし女の子なんだからそういう所を気にしてるかも知れない。だがそれよりも先に。
「さて、行くか」
「い、行くのか?少し待て、あと3分時間をくれっ!」
「それさっきも聞いたぞ。ほら、乗れ。まずはオタカラをさっさと頂くぞ」
「う、うん」
少女、双葉を背中に背負い跳ぶように駆け出す。背中で慌てる双葉を他所にピラミッド内へと侵入する。入って早々にどデカい扉が立ち塞がった。どうやら普通には開きそうにない。このパレスのギミックを使わないと開かない仕組みだろう。しかし俺には関係がない。
だからと言って壊すとかそういう物騒な真似はしない。何より怪盗というのはスリルと華麗さが求められるロマンあるモノであって破壊なんて優雅さにかける真似はしないのだ。
オタカラまで隠密しオタカラの目の前で姿を晒し迫り来る刺客を欺き悠々と華麗に逃げ遂せる。それが怪盗というものだ。
「開かない?じゃあ取り敢えず帰ろう、UFOを食べよう」
「お前さっきまで死ぬ死ぬ言ってたのにいきなりよく喋るようになったな」
やれやれ、と呆れた声を出すギン。しかしどことなく双葉の表情は先程とは違って真面目な顔をしている。
「正直まだ辛い、けどギンが盗んでくれるんだろ?現に私は大事なモノと一緒に心を盗まれた、これは責任を取ってもらわないといけないな」
「なんだか話の雲行きが怪しいんだが」
「だから責任取れ。そして私と添い遂げろ、以上」
「なんかやけくそになってないですか?」
責任って辞めてくれよ。急に息苦しいわ。確かに結婚は1度はしたいとは思う。だが俺は不特定多数の女の子と遊んでる方が幸せなんだ。まぁ盗んじまった手前、面倒は精一杯見るつもりではあるが。顔を真っ赤にしてそう細々と語る双葉に流石に顔が引き攣る。女が言う責任という言葉ほど重くのしかかってくる言葉があるだろうか。
「分かっているんだ。もしかしたら私はちょろ甘でコロッと持ってかれたのかも知れないけど、それだけじゃないっていうのは」
「へぇ、流石だな。けどそれを分かっていながら何でまた」
確かに俺は恋心を盗んだ。言わばこれは一種の洗脳行為に近い。何故ならその好意は純粋なものではなく盗み出し彫り込んだものだから。しかしそれを知り理解しながら責任を取れ、と背中に負われている双葉は言う。
「まず私には生きるのに理由が必要だった。何でもいい、この世界を生き抜くには引きこもりで死にたがりの私じゃ無理。だからギンがいる。そして……えっと、……強引に奪われるのも……なんかこう心臓がドキドキした」
徐々に萎んでいく声に顔を見なくとも真っ赤になっている事は想像出来た。間違いなくこの少女は強い、自分を利用しようとする俺を逆に利用して生きる力にしようとしている。間違いなく良い拾い物だ。けど、けれども。確かに恋心を盗んだ。だがこれは割と真剣にガチで惚れられたかも知れない。いやはやこれは困った、まぁ今はそれは置いておくとして。
「よぉっし!じゃあ扉開けるぞぉー!」
「お、おい!私に恥ずかしい事言わせるだけ言わせて無視は酷いだろ!ギンは、その……私のカレシなんだからな!」
『カレシ』だなんて言ってる間はまだまだ可愛いものだ。目先の問題を先延ばしにして、ばしばしと頭をしばかれながら扉を見詰める。
この程度ならなんの問題もなく盗めるな。おもむろに扉に手を当てる。ピッキング?今世代の怪盗はそんなもの必要ないのさ。開け、と軽く念じると。
するとゴゴゴ、と音を立てて何事もなく扉が開く。
「ほいっと。いっちょあがり」
「っておお!開いた、というかチートか?明らかに工程を無視してないかそれ?」
「ん?あぁ、鍵開けなんて怪盗の基本だろ?出来て当たり前だ」
「マジか、リアルチートかよ。かっけぇ」
これぐらいは容易い。何かを盗むのもこうして怪盗がやる事であれば自分に出来ぬ事なんてない。そもそも自分が出来ると思えば何だって出来るのだから当然と言えば当然なのだ。
目をキラキラさせながらリアルチートだ、と騒ぐ双葉。けど俺はこんな力、望んで手に入れた訳じゃない。というより俺のこれは不完全な力で肝心のペルソナは欠陥品だ。強引に引き出されたこの力は言わば副作用的に扱える力であって本筋ではない。
奴にこの世界から消された事で扱えるこの力が奴の息の根を止めれるのであれば何だって使ってやる。騒ぎ立てる双葉に悪戯っぽく笑いかけて、
「惚れたか?」
「っ!?うるさい!ばーか!」
ははは、と高笑いしながら進んでいく。双葉が元気になって何より。そうじゃないとこれから向き合う現実と対峙するなんて出来ないからな。
立ち塞がる扉を適当に開けながら突き進んで行く。双葉を背負って走らず歩きながら気ままに階段の真ん中を進む。こんな進み方怪盗としては愚の骨頂だがこれでいい。
ほらアッチからやって来た。
「……何をしに来た」
「え、私か!?」
「やっと来たか」
何もない所から突然姿を現したのは背負っている双葉と瓜二つの女の子。違うのは向こうは古代エジプト時代の女王のような格好をしている事ぐらいか。いやまだあったな、この鼻が曲がりそうな悪臭がするかしないか。言ったら煩そうだから絶対に言わないが。言わずもがな目の前の少女こそがこのパレスの持ち主である双葉のシャドウでありオタカラである。困惑気味の双葉本人を他所にずいっと前に出る。
「んなもん決まってるだろ……お前を戴きに来たのさっ!」
「ふぇ?……きゃっ」
流れるような手付きで目の前のシャドウ双葉を持ち上げて攫う。横抱き、いわゆるお姫様抱っこで持ち上げられたシャドウ双葉は目が点になっており暫くして状況を把握したのか心なしか頬を少し朱に染めながら抗議の声を上げた。
「お、おい離せ!何をする!」
「そ、そうだ離せ!ズルい……じゃなくて浮気は駄目だぞ!」
「あーあー、聞こえねぇな」
じたばたともがいて抵抗するシャドウ双葉。そして背中ではべしばしと先程から割と強めに叩いてくる双葉本人。ギャーギャーと無駄に息のあった2人の動き、そして文句を言う2人を無視してギンは進んでいく。しかし全く大人しくならない2人、というかそろそろ叩かれる頭も暴れている奴を支えてる腕もしんどくなってきた。ふむ、と走りながら少し考えて一旦止まる。
急に止まったので何事かと首を傾げているシャドウ双葉を持ち上げる。そしてそのまま唇を奪った。時間にして数秒にも満たないのだが何が起こったのか理解出来ていないシャドウ双葉は固まっている。唇を離し銀の架け橋が掛かる。また騒がれると厄介なので口を耳元に近付けて囁いた。
「あの時、お前も見てたんだろ?安心しろよ、お前も俺のモンだ。責任持ってお前丸ごと貰ってやるよ」
「……ぁ」
こくん、と頷いてきゅっと抱き付く。小動物の様にすっかり自分の胸の中で丸くなり大人しくなったシャドウ双葉が満足げに笑う。
「な、なななななっ!」
「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもっ、はうっ!?あ、んっ……なにして……」
「んー?」
抗議の声を上げようとした双葉だが不意に耳を甘噛みされて年若い少女とは思えない女を感じさせる色っぽい声が出る。そんな自分ですら聞いた事もない声と湧き上がってくる快楽に困惑し身体を捩る。されるがままに耳を蹂躙され吐き出す息も色っぽくなってきた。何度もびくん、と身体を跳ねさせていた双葉だが己の中でこれまで以上の波が来るのを感じ身体を強ばらせると突然耳からギンの口が離れ押し寄せていた快楽は嘘のように引っ込んでいく。
「……ゃぁ」
普段の双葉本人が聞いたなら笑いこけて吐いたかも知れない。そんな甘く男に甘える声を出す双葉に優しく笑いかけて耳元で囁いた。
「可愛い声だったよ。けど今はこれだけ。終わったら続き、してやるよ。いいな?」
「……うん」
「良い子だ」
女の1人や2人思うように出来ない様では怪盗は名乗れない。昔から人の心を思うように動かすのは得意だった。やはりそういう所は血筋なのかも知れないと自虐的に笑う。自分を信頼し切った双葉の年相応の笑顔を見てバキ、と自分の中で嫌な音がする。いつもそうだ自分は都合の良い様にしか他人の心を動かせない。それでも自分はやるんだ、奴を殺す為なら目の前の少女だって利用する。
今度こそ復讐するんだ、この世界に。