ヤンデレの病弱妹に死ぬほど愛されているお兄ちゃんは蒼星石のマスター!   作:雨あられ

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第5話

「な、なんでめぐがここに……」

 

病院にいるはずの、青いパジャマを来ためぐが、玄関に立っていた。

 

「うふふ、水銀燈がね、連れてきてくれたの。nのフィールドっていうのかな。あれを通って」

 

あ、あぁ、なんてこった。

 

「お兄様のお家……お兄様の暮らしている匂い、お兄様の部屋の酸素、お兄様の抜け毛、お兄様が、お兄様に!!!!」

 

ぞくぞくぞくっと顔を光悦させて、頬に手を当ててうっとりしているめぐ。水銀燈。それにしてもアポなしでめぐをつれてくるなんてなんてことを……!そんなどこでもドア聞いてないぞ!

パンツや靴下はもちろん、食器や歯ブラシ、果てはお宝本まで無くなるからあまりめぐは家に呼びたくない。どこに隠しても、お宝本は全て病弱な妹ものに入れ替わっているのがまた恐ろしい。呼ぶなら色々と対策を練る必要があったのに。って今更言ってもしょうがないか。……そ、そうだ!蒼星石!蒼星石は無事なのか!?ぽいぽいっと靴を脱いで、めぐの隣を通り抜けようとしたとき、ガシャン!と点滴を前に出され、道をふさがれる。

 

「…………お兄様?何を探しているの?」

 

「え!?それは……」

 

ニコリと微笑んださわやかな笑顔。内なる怒りを秘めたその笑顔。点滴を持つ手に力が入りすぎて、硬い鉄の棒が、みしみしといっている。

 

「おかしいよね?今、私とお話してるんだよ?

   なんでこっちを見てくれないの?」

 

「いや、それは」

 

「おかしいよね?

     『ただいま』も言わないなんて!」

 

「ああ、ただい…」

 

「おかしいよねっっ!!お兄様ッ!!!

私に隠し事するなんて!っっっごほごほ」

 

「めぐ!」

 

少しずつ咳をしながら俺に近づいてくるめぐ。背中をさすり、息を整えさせてあげる、ぎゅっと俺の手を掴むと、そのままはぁはぁと息を整え始めた。

 

「めぐ、大丈夫か?」

 

「いや!お兄様を他の人に取られるなんていや!いやいやイヤ嫌!お兄様は、私の。お兄様は……」

 

「めぐ、大丈夫。俺は、めぐのお兄ちゃんだから」

 

「お兄様……嘘、嘘嘘。だって。ごほ、ごほ」

 

泣きそうな顔をしているめぐをぎゅうっと抱きしめる。そのまま、後ろに回した右手で背中を撫でる。

 

「本当さ、俺はめぐだけのお兄ちゃんだよ。大丈夫。大丈夫だ」

 

「……おにいさま……っふ、ふふ。こほこほ」

 

ぎゅうっとくっついてくるめぐ…!?ぴょんと飛んで、足で俺の腰元をホールドして離れなくなった。コアラのように俺にぴったりとくっつき、痛いほど胸板に顔をこすり付けてくるめぐ。てか結構元気じゃない……いたたたた!

 

めぐが変になった時の最終手段。お兄ちゃんはここにいる!作戦だ。迷子になった子供のようにおろおろとするめぐの近くにいてあげると、段々と落ち着きを取り戻すのだ。全く、いつまでたっても兄離れしてないというか、はやく病気もブラコンも治してくれると良いのだけれど……。

そのままの姿勢でかばんを置きめぐを抱えてやる。めぐは本当に、軽い。

 

「あ、お帰りなさいマスター。そろそろ帰ってくる頃だと思ってお鍋を作っておきました」

 

「蒼星石!」

 

無事で良かった!という言葉を飲み込む。

とててと歩いてくる白いフリルのエプロンを着た蒼星石。……どうやら無事だったようだ。ほっと息をつく。そのまま蒼星石の方へと歩いて行くと、めぐをくっつけたままイスに腰を下ろす。よく見たらソファに水銀燈もいる。なにやら熱心にマンガを読んでいるようだが。それよりも、蒼星石が無事でよかった。てっきり怒り狂って何かされると思っていたが……無事で何よりだ。

 

「あぁ、蒼星石こいつは…」

 

「はい、水銀燈のマスターで。マスターの妹のめぐさんですね。今日はお料理も手伝っていただきました」

 

ということは、蒼星石の存在を知ってなお、めぐは蒼星石に対して何もアクションを取らなかったということになる。それどころか。仲良くなってくれたということだろう。下を見ると、上目遣いにこちらを見上げるめぐと目があった。えへぇ~と言う擬音が付きそうなほど幸せそうなその笑顔は先ほどまでと違ってかなり柔らかいものだった。めぐも成長したということだろうか。いや、してないのか…とりあえず、蒼星石について言い訳を…

 

「めぐ、その、蒼星石は」

 

「蒼星石は私とお兄様の結婚指輪をくれたお人形さん…そして!水銀燈の妹なのでしょう?本当、水銀燈は素敵な子……」

 

にこにこと笑みを浮かべ続けるめぐ。……結婚指輪云々の理由は兎も角、話がよじれなくて良かった。もうすぐできるからね。という蒼星石の言葉を聞き、やっと俺は張り詰めていた緊張の糸がほぐれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めぐはご飯を一緒に食べ終えると、俺の私物をいくつか盗んで水銀燈と一緒に帰って行った。これからもちょくちょく遊びに来ます。などと言っているのだからたまったものではない。いつか俺の家が病室になっていそうだ。……ありえるのが嫌になる。お宝本はきっちり病弱妹ものになっていた。

 

食器を洗い終えた蒼星石がタオルで手を拭いてソファーの方へとやってくる。手にはティーセットを持っている。俺の至福の一時、癒しタイムだ。ちゃぶだいにお茶を載せると、蒼星石はぴょんと俺の隣に腰かけた。

 

「蒼」

 

「え!?」

 

蒼星石にそうやって呼びかけると、びっくりしたように振り向いた。

 

「いや、蒼星石って長いから。蒼。って呼んでみようかと思って。」

 

「え、ええっと、その、うん。僕は何でも良いよ。マスター。」

 

照れて、被っているシルクハットを口元まで持ってきて喋る蒼星石。こうやって蒼星石の入れてくれたお茶を飲みながら、蒼星石と話をするだけで心も体も癒されるようであった。

 

「蒼」

 

「あ、うん。ま、マスター」

 

「蒼」

 

「ぁう」

 

かあっと顔を赤くしてもぞもぞとかぶっているシルクハットをずらして、顔をうずめる蒼星石。なんという破壊力だ……。蒼星石がシルクハットを口元にあて、チラっと顔を覗かせたので再び、蒼。と呟くと、また真っ赤にして、なぁに。マスター。とシルクハットに顔を埋めて尋ねてきた。やばい。これはやばい。よばれなれて無くて…と言って手をシルクハット越しに顔にくっつける蒼星石、まじでやばい。

 

「めぐはどんな感じだった?」

 

「めぐさんですか?」

 

シルクハットに顔を埋めたまま篭った声で答える蒼星石。うーんと少し悩むとすぽっとシルクハットをかぶりなおして口を開いた。

 

「そうですね。彼女は……水銀燈のマスターらしい、といった感じのするマスターでしたね。僕に初めて会った時はよくわからないことを言いながら問い詰められました。怒ったときの水銀燈に少し似ているかな」

 

淡々と下を向いて喋る蒼星石。け、結局問い詰めてたのか。めぐのやつ。

 

「ですが、マスターのドールであることや水銀燈の一応。妹であることを告げると人が変わったように機嫌が良くなって。穏やかな言葉と笑顔で料理や家事を手伝ってくれました。僕は。彼女の心の樹にもいつか行かなければならないと思っています。そのためにも、翠星石。君がいないと……。」

 

一応、水銀燈の妹に当たるといった時の語気はかなり強かった。そんなに嫌なのか蒼星石。しかし、気になる単語が一つある、

 

「心の樹?」

 

「はい。僕は庭師ですから。」

 

 

 

 

 

何でも蒼星石の話では、人々の心の樹、と呼ばれる記憶や気持ちを表した樹を世話をすることが蒼星石と翠星石には出来るとかなんとか。一人ではあの金色の大きな庭師の鋏で、成長の妨げとなっていた雑草を取り除くことしか出来ないらしい。姉の翠星石の力があれば、さらに心の樹を成長させることも出来ると言っているが。

 

「何だか、二人で一つの能力みたいだな」

 

「……そうですね。本当に……ですが。今回は僕しかいない。だから、めぐさんやマスターの心の樹を成長させてあげることは……」

 

しゅんとネガティブモードになりかけている蒼星石。

 

「何言ってるんだよ。俺は、蒼星石のお陰で毎日楽しいぞ?それに、めぐだって、水銀燈に出会ってから随分元気になった。俺はそれで十分だよ。」

 

「ですが」

 

「どうしても、って言うなら、翠星石を見つけた後に、二人で世話をしてくれれば、それで。」

 

「ぁ…………はい。マスター。」

 

ナデナデ、と頭を軽く撫でると、目を細めて蒼星石は穏やかな笑みを浮かべた。やっぱり、蒼星石の笑った顔が一番癒される。

 

「じゃあ、蒼星石は花の世話とかが得意なのか?」

 

「はい。ある程度、現実の花や植物のお世話も得意な方だと思います。」

 

「そうかそうか。…うーん、でもそうなると花の種を買いにいく服がいるなぁ。その服じゃ目立つし……しょうがない、あいつのところに行くか。蒼。」

 

「え?どこかへ行くんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、俺はバイトを終えた夕方に、蒼星石を赤いリュックに入れて、灰色の落ちてきそうな曇り空の歩道を歩いていた。

 

「寒くないか?蒼。」

 

「ううん、平気だよ。マスターが2枚もマフラーを入れてくれたから。」

 

「そっか」

 

そう言って蒼星石がリュックから少し顔を出す。ぶうんっと排気ガスを撒き散らす車が道路を横切っている。歩道橋を上って、ずんずんと歩いて行く。時間的に、まだ開いていると思うが…

 

「マスター。今日は何処へ向かっているの?」

 

「今日は、ちと知り合いの人形師に会いに行く。」

 

「人形師?マスター。そんな知り合いが居たの?」

 

歩道を曲がって色々な家が立ち並ぶ住宅街を歩く。猫が塀の上でくつろいでいた。

 

「うん。まぁ、なんだ。喧嘩別れみたいになったんだけど、蒼の服を作れそうなのはあいつくらいだしな。…はぁ、でも槐さんは居ないほうがありがたいかな…」

 

「その人は、何故マスターと喧嘩を?」

 

「んー。いや、喧嘩してるかはよく考えたらわからない。何か、ある日突然避けられ始めて。それから疎遠になった。」

 

「…マスターその人にあって大丈夫なのですか?僕は、この服さえあれば。」

 

「それはだめだ、蒼ともたまには外をどうどうと歩きたいし、それに、人形の服を作るのに、あいつのところに行かないなんて、俺には考えられないから。」

 

「…あ、ありがとう。マスター。」

 

そう言って蒼星石はリュックの中へと戻っていった。

 

「まぁ、作ってもらえるかわかんないけどな。と、ついたぞ。」

 

住宅街を抜けて、大きな階段を上りきると、一軒の店が見えてきた。立て看板に張られた人形のポスターや、展示してあるドールの服。そして、デカデカと書かれたドールショップ槐の赤い看板。カランコロンとドアを鳴らして中に入る。

少し薄暗い店内に、独特のほこりっぽいような匂いがした。

 

「…はい。え、えっと何かごよう…」

 

「久しぶりだな。三葉」

 

「っ、し、忍!?あ、あなた本物!?」

 

中から出てきたのは金色の長いストレートな髪をポニーテールにして、青いシャツと緑の作業エプロンを着た、結菱三葉(ゆいびしみつは)。…俺の幼稚園からの幼馴染だ。上ずった声で次にこう叫んだ。

 

「え、とま、待っていて。店を閉めるから!」

 

「え?あ、あぁいや、そこまでしなくても」

 

そう言って、いそいそとドアを出て、OPENの看板をClosedに裏返す三葉。…かなり、想像していたのと違う対応だ。

 

「マスター。本当に彼女とは喧嘩をしたの?なんだか好意的に感じられたけど。」

 

「ああ。俺も、今すぐ帰れって言われると思ってたんだけど。」

 

ひそひそと蒼星石と話をする。本当に、怒っていないようだ。看板までしまってふぅ、と息を漏らす三葉。俺のほうへと近づくと、少し小さい背で俺を見上げる。

 

「久しぶり、三葉」

 

「…久しぶり。忍。」

 

大学に入ってから、いや、高校3年の時には既に疎遠だった。会っても避けられて、メールをしても返ってこなかったので、てっきり怒っているのだと思った。そして、受験もあったことで会う機会は一気に減り、そのままわけの分からないまま疎遠に……

 

「その、白崎さんと槐さんは?」

 

「今日は、人形の材料を調達するとかでヨーロッパの方に…」

 

「そっか…」

 

 

 

 

そう言って、二人の間にはしばらく沈黙が流れる。たくさんの人形の瞳が、何だか俺を責めているようにも感じられた。

 

 

 

 

「三葉。ごめん。」

 

「!どうしてあやまるの?」

 

「わからない。けど、俺が三葉に嫌われるようなことをしたから、三葉が俺を避けるのかと」

 

「!!!ち、違うわよ!そ、そんなんじゃなくて、そんなんじゃ…」

 

そういってうつむいてしまう三葉。しかし、なら何故、俺は避けられていたのだろう。ますますわからない。

 

「三葉、とりあえず、過去のことは水に流して。話がしたい。」

 

そういうと、三葉は顔を上げて。少し、少しだが微笑み。

 

「…ええ、いいわよ。それで、その、今日はどうして来てくれたの?も、もしかしてわ、私に会いに来てくれ…」

 

「人形のな、服を作ってほしいんだ」

 

 

そういった瞬間三葉の青い目は点になって、体は石のように固まった。

 

 

 

「あなたに期待した、私が馬鹿だったわ」

 

はぁっと大きなため息をついて、肩を落としたままボスっとイスに座りこむ三葉。一体、何を期待していたのか、いや、今はそれよりも。

 

「なぁ、こんなことを頼めるのは三葉しかいないと思ったんだ。」

 

「!わ、私だけ?」

 

がたっとイスから立ちあがりこちらを見る三葉。

 

「ああ。他の店とか、別の職人に頼むのは、なんかちがうなっておもって。」

 

「ふぅうん。そう。そうなの。…それで、どんな服がいいの?」

 

「それなんだけど、蒼星石。出てきていいぞ。」

 

後ろのバッグの中からもぞもぞ、っとシルクハットだけ出てきた蒼星石。

その姿を見た三葉は目を白黒させて驚いている。

 

「忍!?この子は…」

 

「マスター、その。」

 

「大丈夫、三葉は、信頼できるから。」

 

そういうとこくりとうなずき、ぴょんとリュックから飛び降りて、三葉のほうへ向き直ると綺麗なお辞儀をする蒼星石。

 

「はじめまして。僕はローゼンメイデンの第4ドール。蒼星石です。」

 

「!!これって。」

 

「それで、この蒼星石に合う現代風の服を…」

 

「ま、ままま、待ちなさい!まず、色々と説明しなさいよ!ああ、頭の中がこんがらがって来たわ。全く、どうしてあなたはそう勝手なの。」

 

「ごめん。」

 

「…!ご、ごめんなさい、言いすぎたわ。」

 

そう言ってシュンと後ろの尻尾が垂れ下がった。変わってないようで、安心した。

 

「いや、俺ももっと早く来ていれば…」

 

「ストップ。やめにしたんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子が言っていたことは本当なのかしら?…いえ、本当なのでしょうね。」

 

「え、あ、あの。そんなにじろじろ見られると…」

 

蒼星石の話を聞き終わると、興奮して様子でしゃがみ込み。毛穴まで見ようとしてるんじゃないかと言うくらい、蒼星石を見回す三葉。人形のことになると直ぐこれだ。

 

「っは、ごめんなさい。自己紹介が遅れたわね。私は、結菱三葉。そこの忍の幼馴染よ。よろしくね、蒼星石。」

 

「はい、よろしくお願いします。三葉さん。」

 

そう言って握手を交わす二人。やっぱり、すんなり受け入れてくれたか。

 

「それにしても、本当に驚いたわ…まさか、ローゼンメイデンが実在したなんて……」

 

「え?ローゼンメイデンのこと、知ってたのか、三葉。」

 

「当たり前よ。師匠は自称ローゼンさんの弟子だもの。」

 

「槐さんが?ふぅむ確かに昔そんなこと言っていたような。」

 

槐さんに会ったのは随分前のことなので、はっきりとは覚えていない。あの人はなんていうか、苦手なのだ。白崎さんはコミカルで面白いのだけれど。まぁどっちにしても二人ともかなり胡散臭くて苦手だ。

 

「でも、本当に居たなんて…すごい作り、服も、間接球体も自然。本当に人間のようだけれど人形らしさは別に残っていて……というか、どうしていままで黙っていたのよ!」

 

「黙っているも何も、俺たち…まぁ、いいだろ。それで、服を作ってほしいんだけど。」

 

今まで疎遠になっていたことまで忘れて俺を怒鳴る三葉。もう忘れたならそれで良いか。目はきらきらと輝き。昔に戻ったような気分になった。しかし、避けられた理由とやらだけはいまだに気になる。

 

「僕からもお願いします。三葉さん。」

 

「ええ、もちろん作るつもりよ蒼星石。た、ただし、忍。あなたに一つ条件があるわ。」

 

「ああ。出来る範囲でなら。」

 

三葉は大きく息を吸い込むと、。

 

「お金はいいから、あ、明日!私の家に来なさい!おじちゃんも会いたがっていたし…良い?」

 

「なんだ、そんなことか。もちろんいいぞ。」

 

そういうと、三葉の顔がこれでもかというくらい輝き。満足そうに笑って頷いた。蒼星石のほうを見ると、ん?何故か。服を作ってもらえるというのに、不機嫌と言うか、暗いネガティブ石というか。そんな感じにうつむいている。遠いのでナデナデは出来ない。

 

「そ、そう。じゃあ、蒼星石。服のサイズを測るから、向こうの部屋にいらっしゃい、忍!覗いちゃだめよ!」

 

「わかってるよ。」

 

「よろしくお願いします。三葉さん」

 

蒼星石はとことこと三葉につれられていく。途中、ふっと俺のほうを見たので笑い返してやると。いくらか元気な蒼星石に戻った。

しっかし、なんか、この部屋前より汚いような気がするな。立てかけられたドールも、確かに精巧な作りだけれど、蒼星石を見慣れているせいか、あまり生きているようには見えない。いや、違うか。普通はこれが正しいのだ。人形は何も返してくれない、いや返せない。白崎さんがそう言っていた。自分の感覚がおかしくなり始めていることを改めて実感しながら、俺はイスに座って二人の測定が終わるのを待った。暗くなった外で、街灯が一斉についたのを見れて、なんとなく得した気分になった。

 

 

 

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