雄英体育祭当日。出場予定の生徒達は各クラスに分けられた部屋に待機して、入場時刻を待っていた。頼光のクラスA組の面々は各々、柔軟体操をして体をほぐしたり、張を抑えようと深呼吸を繰り返していたり、いつも通り友達と話したりと過ごしていた。
「コスチューム着たかったなー」
「公平を期す為、着用不可なんだよ」
そう、雄英体育祭ではコスチュームの着用は認められていないのだ。例外としてサポート科は自分で制作したコスチュームとアイテムは持ち込みが認められている。
頼光は椅子に座り音楽をイヤホンでながしながら目を瞑っていた。体育祭までの時間は頼光にとって、そこそこ有意義な時間だった。この体育祭で遅れをとるつもりなど毛頭ないし、寧ろ上を目指している。力を振るうことが出来るのが楽しみのと、クラスの連中や他のクラスの連中と戦う機会があると思うと、テンションが上がってくるというものだ。
入場時間まで残り僅かとなったところで、轟が緑谷に話しかけに言った。
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」
「へ!?うっうん……」
びくっとなりながらも話しを聞く。轟は、続ける
「おまえ、オールマイトに、目ぇかけられてるよな、別にそこ詮索つもりはねぇが……お前には勝つぞ」
轟は緑谷に対して宣戦布告をする。それを見たクラスはざわつき出す
「おぉ!?轟が緑谷に宣戦布告!!?」
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって……」
「仲良しごっこじゃねぇんだ何だっていいだろ」
止めに来た切島の腕を振り払う轟。緑谷は俯きながら
「轟くんが、何を思って勝つって言ってんのか……はわからないけど……そりゃ君の方が上だよ……実力なんて大半の人に敵わないと思う。客観的に見ても」
「緑谷もそーゆーネガティブな事言わねぇほうが……」
「でも……!!皆…他の科の人も本気でトップを狙っているんだ。僕だって…遅れをとるわけにはいかないんだ。僕も本気で獲り行く!!」
緑谷も覚悟を決めたように、轟を見据えて獲るといい、轟の宣戦布告を受けた。
「お前もだ、豊穣」
「あ?」
緑谷と轟のやり取りが気になって、イヤホンを外していた頼光にも宣戦布告をする。頼光はA組最強候補の一人であり、最初の実技授業で轟を倒している。氷結の個性のみで下し、雄英体育祭の優勝を手に入れて、父を否定する事が轟の目的。そしてその最大の障害になりうる人物が豊穣頼光と轟焦凍は捉えていた。
「お前にも、俺は勝つ」
頼光は何となく前回のやりとりで、轟の目的はわからなくもない、だが頼光からしたら、どうでもいい話だ。ただ、強敵が態々宣戦布告をしてきたのだ、頼光からしたら応えないわけには行かない。
「ああ、イイぜ!!俺も負けるつもりなんてねぇ、本気で来いよ轟ちゃん!!」
馴れ馴れしくちゃん付で言う頼光。轟は頼光を睨みつけ、踵を返して元の場所へと戻っていった。そんな轟を爆豪が睨み付けている。頼光はi〇odを片付けて、軽くストレッチをする。そして時間が来た。
『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせテメーらアレだろ、こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!』
通路からも聞こえる歓声と実況。そして入口で一度止まり、そして会場に入る
『ヒーロー科!1年A組だろぉぉ!!?』
入場と共に大きな歓声が上がった。会場360度からの歓声が放たれる。
「わあああ……人がすごい……」
「逆に少なかったらやべぇだろ。むしろ上がってくるだろ!!」
緊張している緑谷の背中を叩きながら頼光は笑い飛ばす。
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるのか、これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」
そして会場の中心に集まり、各クラス事に整列し開会式が始まる。
「選手宣誓!」
1年生が揃うと、ミッドナイトがムチを鳴らして壇上に上がった。またも観客から歓声が上がる。
「18禁なのに高校にいていいものか」
「別に行動とか発言は18禁じゃねえしいいじゃねぇの?」
「いい!!」
常闇がいいのかと呟き、頼光は別に言動に問題ないしいいじゃない?と言い、峰田は即答で"いい"と答えた。そんなこんなで騒がしい生徒を静かにさせるためにムチを一度鳴らし、黙らせ、選手代表の名を読み上げた。
「選手代表!1年A組、爆豪勝己!」
「え!?かっちゃんなの!?」
「あいつ一応入試一位通過だったからな」
爆豪は呼ばれ、ミッドナイトのいる台まで歩いていく。両手をズボンのポケットに入れながら歩く。一段一段上がり、マイクの前に立ち
「せんせー俺が一位になる」
『絶対やると思った!!!』
A組メンバーは嫌な予感はしていたが、その通りにやらかした。他のクラスのブーイングが嵐のように降り注ぐ。そんな中頼光は腹を抱えて大笑いする。
「ダメ……あんなの耐えらんねぇよ!!ギャハハハ!!!」
「豊穣君!笑い事じゃないぞ!!」
ツボに入ったのか分からないが、馬鹿みたいに大笑いをする頼光がここに居た。そしてそれを注意する飯田
「どんだけ自信過剰だよ!!この俺が潰したるわ!!」
B組の一人のそのセリフを聞く頃には、頼光は笑い終え、ふーっと呼吸を整えて
「(中学の頃ならああいうのは笑って言うのにな……真剣じゃねぇの。自分を追い込んでいるな)」
「さーてそれじゃあ、早速第一種目行きましょう!いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!さて運命の第一種目!今年は……障害物競走コレ!!」
「障害物競走……!」
「小学校の時走ったよな、バットで十回回って平均台の上歩いたり、そんな類か?」
「雄英の事だからそんなんじゃないと思うよ?」
スクリーンにデカデカと『障害物競走』の文字を見ながら、頼光は緑谷と話しながら見る。頼光はいよいよ始まるんだなと、静かに闘志を燃やしている。
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約4km!我が校は自由さが売り文句!コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さあさあ、位置につきまくりなさい……」
スタジアムのゲートの一つが音を立てて開かれていく。11クラスがスタート位置に並ぶ。
「頼光!いよいよ始まるね」
移動の最中に耳郎が話しかけてきた。
「おう!そうだな。いよいよだ、早く始まんねぇかワクワクしてたんだよな!!轟の宣戦布告、爆豪の選手宣誓、やべぇな!!早く始めたくてうずうずしてくるぜ!!」
「はは、何か頼光らしいよ。ウチだっ負けるつもりなんてない!全力で挑むよ頼光に!」
そういい、耳郎は前の方に行く。その言葉を聞いて頼光は口角を吊り上げ
「いいねいいね、やっぱり祭りはこうじゃねぇとな……」
頼光は後方に陣取り、準備体操をする。
生徒全員が位置についたところで、スタートシグナルの明りが音を立てて、一つ消えた。残りは2つ。
脱力し、左手をズボンのポケットに入れ、右手をぷらぷらと揺らし体をほぐし、目を瞑る。また明りが一つ消えた。残り一つ。スタート位置のざわめきは消え失せる。各々がスタートの合図に身構え、その時を待っているのだ。そしてその時が、来る
スタートのシグナルは最後の光を消し、そのタイミングと共に
『スタート!!』
その合図で生徒達が、いっせいに走り出した。頼光は静かに目を開けて個性を発動させる。バチバチと音を立て、そして黄色い光を雷を纏い左手も出して準備完了。"雷神"が今動き出す。