暗雲の兆し
「教師としてのオールマイトはどんな感じですか?」
オールマイトが雄英高校の教師に就任した事は大きな話題となった。連日朝雄英の正門の周りには多くの報道陣が押し寄せる騒ぎになっていた。
「あ?そうだな、見た感じ新米教師って感じでした」
「はい、ありがとう」
頼光は適当に答えマスコミをやり過ごし中に入る。マスコミはまた別の生徒を見つけそっちに行く。
「流石はナンバーワンヒーローだな。凄いことになってるな」
そんなことを呟きながら玄関口に向かう。すると後ろから声が掛かる
「豊穣おはよう」
「おっ?耳郎か、おはよう。外凄いことになってるな」
「そうだよね、ウチもオールマイトについて聞かれたよ」
「俺もだ、取り敢えず話しながら教室に行こうぜ」
「いいよ」
二人は他愛のない話をしながら教室に向かった。そしてホームルームにて
「昨日の戦闘訓練お疲れ。ブイと成績見させてもらった。爆豪、お前もうガキみたいなマネするな。能力あるんだから」
「……分かってる」
「で緑谷、腕壊して一件落着か。個性の制御が出来ないから仕方ないじゃ通さねえぞ。俺は同じ事言うのが嫌いだ。それさえ出来ればやれる事は多い。焦れよ緑谷」
「はい!」
爆豪への行動の注意と緑谷の個性制御の注意を言う。爆豪は俯きながら、緑谷ははっきりと返事をした。
「さて、ホームルームの本題だが…急で悪いが今日は君らに…」
担任の言葉にまたテストではないかと大半の生徒は身構える。が
「学級委員長を決めてもらう」
『学校っぽいのキター!!』
そう、まだこのクラスには学級委員長が居ないのだ。
「委員長やりたいですソレ俺!!」
「ウチもやりたいス」
「リーダーやるやるー!!」
普通科なら雑務というイメージがある学級委員長だが、ヒーロー科では集団を導くと言うトップヒーローの素地を鍛えられる役割でもある。
「静粛にしたまえ!"多"をけん引する責任重大な仕事だぞ…!『やりたい者』がやれるものではないだろう!!」
彼の案は民主主義に則った投票にしようということだった。だがその手は明らかにそびえ立っていた。担任の相澤先生は時間内に決まれば何でもいいと言うということで生徒達に任せた。結果は緑谷に三票獲得で委員長で八百万は二票獲得で副委員長となった。
「い、一票入っている…!」
飯田は自分に一票が入っていることに驚いていた。そして時間が流れお昼。緑谷達に誘われ今回は学食を食べる頼光だが
「意外や、豊穣君あんま食べへんのや」
「そうか?」
頼光が食べているのはサンドイッチと珈琲と言う軽食である。
「まぁ、昼からヒーロー基礎学だからな、満腹にしたら意識が飛ぶからな」
「つまり寝るんだね、豊穣君」
「うん。中学校時代もお昼を食べた場合ほとんど寝てたからね」
「学校は寝るところじゃないぞ豊穣君!」
「だから少なくしているんだろ?」
「ムムそうか」
何だかんだ混ざりながらお昼を食べていた。そして緑谷は委員長になった事に不安をこぼす。飯田はそれを励ましていた。その際に飯田の一人称が「俺」では無く「僕」になったのを三人は聞き逃さなかった。そして飯田の家は代々ヒーローをやっており、ターボヒーローインゲニウムは飯田の兄だと言う。緑谷にとってのオールマイトは飯田のインゲニウムということなのだろう。その時警報音が鳴り響いた
「警報!?」
《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください》
と言うアナウンスが放送された。
「セキュリティ3て何ですか?」
「校舎内に誰かが侵入してきたってことだよ!三年間で初めてだ!君達も早く!」
雄英生徒はパニックに陥り、後ろから後ろからと人が流れていく。頼光は人の流れに流され出口付近まで来ていた。
「いったいどういうことだ」
遠い目をしながら壁に押し付けられている。そんな時
「皆さん…大丈ー夫!!タダのマスコミです!何もパニックになる事はありません大丈ー夫!ここは雄英!!最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!!」
その体制は非常口を連想させるものだが、それは短く端的に、目立っていた。それは皆が落ち着く要因になる。そして学級委員長の緑谷はその任を辞退し、新たな委員長として飯田を指名した。非常口飯田の名前はクラス内で使われるだろう。頼光は外を見ながら考えていた。
「(ただのマスコミがどうやって、ここに侵入するんだろうな……こりゃ何かあるだろうな)」
そして次の日、昼からのヒーロー基礎学の時間。
「俺とオールマイト、そしてもう一人に三人体制で見ることになった。」
「(なった?特例なのかな?)」
なったと言う言葉は緑谷は少し疑問に思った。
「ハーイ!何するんですか!?」
緑谷の隣の瀬呂が手を挙げ質問する。相澤先生はレスキューと書かれたカードを出し
「災害水難なんでもござれ、人命救助訓練だ!!」
「レスキュー……今回も大変そうだな」
「ねー!」
「バカおめーこれこそヒーローの本分だぜ!?鳴るぜ腕が!」
「水難なら私の独壇場ケロケロ」
「おいまだ途中」
相澤先生は睨みつけ、騒がしくなっているのを注意する。手に持つリモコンを操作し生徒のコスチュームを出す。
「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れたバスに乗っていく。以上だ、準備開始だ」
各々が自分のコスチュームを手に取り着替える。そしてバスに乗るため駐車場に向かう
「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!」
準備を済ませてバスが待機している場所へ行くと、飯田がキビキビとした動きでクラスメイトを並ばせていたのだが、いざ乗り込んでみるとバスの席は対面するタイプだったので意味は無く飯田は落ち込む。
「こういうタイプだったくそう!!!」
「イミなかったなー」
バス内では緑谷の個性がオールマイトに似ているという話になり緑谷は凄く取り乱していた。話の間に爆豪がキレて人気が出ないという話になって騒がしくなり、話がそれて行った。到着した場所の訓練場はまるでテーマパークのようなものだった。
「すっげーー!!USJかよ!!?」
「水難事故、土砂災害、火事etc。あらゆる事故や災害を想定し僕がつくった演習場ですその名も……ウソの災害や事故ルーム!!」
その説明をしてくれたのはプロヒーローの一人スペースヒーロー13号。宇宙服に似たコスチュームを着ていて素顔は見えないが、災害救助の場でめざましい活躍をしており、紳士的なヒーローとしても人気が高い人物である。
「えー、訓練を始める前に、お小言を一つ二つ…三つ……四つ……」
『増えている……』
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は"ブラックホール"どんなものでも吸い込んでチリにします」
「その個性でどんな災害からでも人をすくい上げるんですよね」
「ええ……しかし簡単に人を殺せる力です皆の中にもそういう個性いるでしょう。超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。ですが一歩間違えれば容易に人を殺せる"いきすぎた個性"を個々が持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したと思います。この授業では心機一転、人命のために"個性"をどのように活用するかを学んでいきましょう。君達の力は人を傷つけるためにあるのではない。救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」
『(……13号カッコイイ)』
13号の話を聞いて大半の生徒は同じ事を考えた。
「以上!ご清聴ありがとうございました」
「そんじゃあ、まずは…。……?」
授業を開始しようとした瞬間相澤先生はなにかに気づいた。広場の噴水前の空間に黒いモヤが現れ徐々に大きくなっていく。それは渦を巻き大きな穴へと姿を変え、中から悪意に満ちた瞳が現れる。
「一固まりになって動くな!13号、生徒を守れ!」
さらにモヤが大きくなり、悪趣味な服装した集団が姿を現す。刃物を持った者もいる。見るからに普通じゃない。
「動くな!あれは敵だ!」
そう、敵が襲撃してきたのだ。