文豪HAZARD   作:魂魄せんむ

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プロローグ

 事の発端は軍警に届いた1通の手紙だった。どこから、また誰から送られてきたかも分からない。

 そこに書かれていたのは、「2日後にポートマフィアの幹部が集まる秘密会合が開かれる」というもので、丁寧(ていねい)にその場所を(しる)した地図まで同封されていた。

 手紙の内容に信憑性(しんぴょうせい)は無いが、事実だとすれば軍警にとって絶好の機会であった。

 軍警は「突入作戦」を計画し、ポートマフィアを一網打尽にしようと画策した。部隊の医療班には武装探偵社の専属女医、与謝野(よさの)晶子(あきこ)抜擢(ばってき)された。

 しかし、部隊と与謝野を乗せたヘリコプターは離陸した後しばらくして通信が途絶え、消息不明となった。

 状況を軍警から聞かされた探偵社は急遽社員を集め、緊急会議を開いた。

 会議室に集まったのは、社員の太宰(だざい)(おさむ)国木田(くにきだ)独歩(どっぽ)江戸川(えどがわ)乱歩(らんぽ)谷崎(たにざき)潤一郎(じゅんいちろう)宮沢(みやざわ)賢治(けんじ)中島(なかじま)(あつし)(いずみ)鏡花(きょうか)、そして社長の福沢(ふくざわ)諭吉(ゆきち)であった。

 突然の召集ということで、皆の顔には緊張の色が表れていた。駄菓子を食べている乱歩1人を除いては。

 

「揃ったか」

 

 福沢は全員の顔を確認すると、重々しくこう言った。

 

「与謝野君を乗せた軍警のヘリが消息を絶った。依然としてヘリの消息は不明。与謝野君の安否も分からぬ」

 

 社長の言葉に、社員の顔が険しくなる。

 

「そこで、皆から意見を聞きたい」

 

 福沢は皆の顔を見渡し言った。

 

「ヘリコプターの捜索を軍警に一任するか否か、だ」

 

 しばし沈黙の時間が流れた。そしてその沈黙を破るように、駄菓子を頬張っていた乱歩が発した。

 

「軍警に任せるべきじゃないね」

 

「乱歩、それはなぜだ?」

 

「きっと軍警の手に負えない」

 

 乱歩は頬に付いた食べカスを手で拭うと、真剣な面持ちで言った。

 

「僕の推理で分かったことは、軍警に送られてきた『手紙』は明らかにポートマフィアが仕掛けた『罠』だということだけだ。今回は内容が内容だけに、軍警は必ず動く。軍警がポートマフィアを一網打尽にしたいように、ポートマフィアもまた同じ考えってわけ」

 

「なるほど。実に合理だね」

 

 太宰が口を開いた。

 

「だけど、確証は無いんですよね?」

 

 賢治が聞く。

 

「そうだ。これはあくまでも憶測に過ぎない」

 

 乱歩がそう答える。すると、黙っていた敦が口を開いた。

 

「僕が窮地に陥ったとき、皆さんは僕を仲間として助けてくれました。与謝野医師(せんせい)も僕たちの仲間です。与謝野医師がピンチなら、僕は助けに行きたいです」

 

「僕もそう思うよ」

 

 谷崎も言う。

 

「私も同感」

 

 鏡花も静かに2人に同意した。

 

「国木田はどうだ?」

 

「そうですね…」

 

 社長の言葉に国木田はしばし考えて、

 

「仲間の窮地となれば、やはりここは我々が動くべきかと」

 

 と意見した。

 

「なるほど…」

 

 社長は立った目を瞑り、そして開くと意を決したように言った。

 

「皆、支度をせよ」

 

 福沢の言葉に、どよめきが起こった。

 

「只今から現在の業務を全て凍結とする。必ず与謝野君を無事に社へ連れ戻せ。捜索にあたるメンバーの選択は任せる」

 

 社長の言葉で、皆一斉に立ち上がった。

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