ヘリの捜索にあたり、救出チームが探偵社員によって構成された。
捜索にあたるのはリーダーの
谷崎が操縦するヘリは、消息を絶ったヘリとの通信記録を頼りに、ヨコハマから数十キロ離れた山中を飛んでいた。
すっかり陽は落ち、暗闇に包まれた森をサーチライトで照らしながら低空飛行する。
しばらく探すと、谷崎が声を上げた。
「あそこにヘリらしきものが!」
サーチライトに照らされた先には、不時着したヘリらしきものが見えた。
「よし、この辺りにヘリを降ろしてくれ」
国木田の命令で谷崎はヘリを巧みに操り、木々の広く空いた隙間にヘリを着陸させる。
「谷崎はヘリを見ててくれ」
谷崎が
先程、谷崎が見つけたのは、やはり軍警のヘリだった。どうやら不時着したようで、ぐしゃぐしゃになったコックピットではパイロットが死んでいた。しかし、それ以外に人影は見られなかった。襲撃された跡も無い。
「ヘリに居ないということは、与謝野
4人は周辺を注意深く探した。
「与謝野せんせーい!与謝野せんせーい!」
敦が目一杯名前を叫ぶが返事は無い。
「やっぱり、居ないのかな…」
敦が諦めかけたその時だった。後方の
「誰かいるんですか?」
敦が叢に近寄ろうとすると、腕はボトリと落ちた。腕は食い千切られたようであり、見るに堪えない様であった。
人の代わりに叢から出てきたのは犬だった。しかし、犬の様子は明らかにおかしかった。片耳は無く、皮もところどころ剥けて肉が露わになっている。そして、地面に落ちた人の腕を貪るように喰っていた。その姿はまるで
その光景に、敦はただ呆然と突っ立っていた。
不意に、犬が敦を見た。そして
敦は押し倒されて地面に伏した。
「やめろ!離れろ…!」
敦が思っていた以上に怪物は狂暴で、執拗に喉を狙ってくる。人の急所を知っているようだ。
敦も必死に抵抗する。犬は荒々しく涎を垂らしながら、敦に襲いかかる。
騒ぎを聞きつけ、誰かが敦のところへ駆けつけた。銃声がしたかと思うと、怪物は悲鳴をあげて敦の上から退いた。
「大丈夫か?」
駆けつけた国木田が敦の腕を掴んで起こす。
「はい、なんとか…」
敦はフラフラになりながらも、なんとか身体を支えて立ち上がる。
「しかし、これは一体…?」
国木田がそう言いかけたときだった。国木田に撃たれたはずの犬が、唸り声をあげながら立ち上がった。気がつくと、辺りには様子の似た犬たちが2人を囲んでいた。
「異能力!『
国木田はそう叫ぶと、愛用の手帖を懐から取り出し、その中の1枚を破った。すると、「
「逃げるぞ敦!」
閃光が炸裂し、犬たちは視界を奪われる。その隙に2人は走り出す。
国木田の異能力「独歩吟客」は、手帖の頁に書かれたあらゆるものを具現化することが出来る。ただし、大きさは概ね手帖サイズまで、さらに国木田本人が形と機能を理解しているものに限られる。
2人は急いでヘリに向かう。それと同時に、ヘリコプターのプロペラが回る音がする。
「待て!谷崎!!」
国木田がそう叫んだときには、ヘリは宙に浮いていた。
「何をしてるんだ!早く戻ってこい!!」
しかし、国木田の叫びは虚しく轟音に掻き消される。
「くそ…!」
国木田は立ち止まり、膝を付いた。息を整えながらそう呟いた。
敦が振り返ると、まだ怪物たちは追ってきていた。
(まずい…!)
そう思ったとき、銃声が響いた。
「2人とも、走れ!」
声がした方を見ると、太宰と鏡花が同じ怪物と交戦中だった。
国木田は拳銃のマガジンを入れ替えると、敦の腕を掴んで再び走り出した。鏡花と太宰も続いて走る。
時折、後ろの怪物たちに発砲しながら、ひたすら森の中を走る。
すると、前方にうっすらと明かりが漏れている建物を見つけた。
「あの建物まで走るんだ!」
太宰が息を弾ませながら叫ぶ。
4人は無我夢中で走り続け、建物の中に入った。
玄関に鍵が掛かっていなかったことが、不幸中の幸いだった。
最後に入った太宰が玄関のドアを閉めた。
「これで一安心だ」
4人が逃げ込んだのは古い洋館だった。
玄関は大広間のように広く、中央に大階段がある。壁には油絵が飾られているが、どれも不気味な絵ばかりだ。全体的に手入れはあまりされておらず、大階段脇に置かれたタイプライターには
「しかし、人が居ないように静かだな」
国木田が辺りを見回しながら言う。
「不気味な館…」
鏡花は怖いのか、敦の隣に駆け寄る。
「ここは一体、誰の館なんでしょうか?」
敦が当然の疑問を口にしたときだった。
館の西側から、銃声のような乾いた音がした。
「なんだ?」
国木田は
「銃声だね…」
太宰はそう言うと少し思案すると、
「国木田君、様子を見てきてくれない?」
と付け加えた。国木田は眉をひそめる。
「なんで俺が…」
「あれー?もしかして…」
太宰がニヤリと笑うと国木田は、
「別に怖いとかそんなんじゃないからな!」
と、早口でまくしたてた。
「まだ何も言ってないよ」
「
いつものように太宰の襟首を掴む国木田。太宰は襟首を掴まれても笑顔だ。
「だったら、僕もついて行きますよ」
敦がそう言うと、国木田は太宰の襟首を掴んでいた手を放した。
「良かったね国木田君!」
「お前なぁ…!」
国木田は太宰への怒りを隠せないでいる。
「じゃあ、2人とも頼むよ」
太宰は軽い調子でそう言った。