そういうところが嫌い   作:蒼い鳥

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第5話

最近なんだか騒がしい。

そう感じたのはクラスの人間が私に構うようになったからだ。

今まで一人の時間が多かったのに朝から声を掛けられたり昼食を一緒に取りに行こうだとか、そんな些細な会話から始まって今じゃ放課後遊びに行こうなんて言われるようになった。

でも私は全部断ることにしてる。

一人が好きだから。

 

正直こんなことになってる理由の原因は分かってる。

学生議会長、竹井久のせいだ。

 

あいつがところ構わず私に声を掛けるせいで自然と私にも注目が集まる。

それで単純に私に興味を持つ奴、私を通じて竹井久と仲を深めようと画策する奴、もしくはまた別の理由。

どうだっていい。

でも私に関わるのはやめてほしかった。

 

どんな理由でもいい、私から遠ざけるだけの何かが必要だった。

だから私は無視するか、露骨な態度で嫌悪感を剥き出しにした。

それだけで普通の人間なら離れていく。

でもそうはならない奴らが複数人存在する。

 

竹井久を筆頭に、染谷まこ、原村和、片岡優希、須賀京太郎。

 

麻雀部の部員達。

 

私をどうにか麻雀部の部室に連れていこうとする。

 

私は部活には出ないし、干渉するなと言ったはずだ。

でもその約束が守られることはなかった。

どうして上に立つ人間が約束を破るのか。

答えは簡単、ハナから守る気なんてなかったからだ。

 

私との約束は、最初から反故にすること前提でされていた。

ならば私も反故にしてやればいい。

 

そっちがその気なら、私は大会に出ない。

麻雀なんて続けるつもりもなかったし、丁度いいからこの学校での関係を全て断ち切った方がいい。

 

そう思った私はすぐに行動を起こした。

副会長の眼鏡に手紙を渡し、私は家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜になってから、私は家の外を歩いた。

家にいてもつまらないし、今日は月が綺麗だったから。

雲ひとつ無い真夜中の暗い空に浮かぶ煌々と輝く満月が世界を照らしている。

優しい光が、私には眩しい。

 

家から結構離れてしまった、無意識に歩いていたとはいえ帰るのはちょっと面倒だなぁ…。

 

 

「そこの」

 

 

何処かから声がした。

声からしてかなり幼い…小学生くらいの声音。

周りを見ても姿は無い、もしかしたら幽霊?

 

 

「こっちだ」

 

 

声の主を探して歩き回っていたら今度は上の方から声がした。

見上げてみると…兎の耳みたいなカチューシャ?を付けた小さい女の子が高い建物の屋根に座っていた。

 

 

「…子供?」

「子供ではない、衣だ」

「はぁ…衣…」

「うむ…お前の名は」

「咲…」

「そうか…あぁ、言っておくが衣は高校二年生だぞ」

 

 

歳上だったんだ…まあどんな見た目でもそういう人もいるよね。

高校生に見えない人なんてたくさん。

 

 

「こんな時間になにしてるの?」

「それは衣のセリフでもあるのだが…まあ良い」

 

 

そう言うと屋根から飛び降りて軽やかに着地。

間近で見ると余計に小ささが際立つ。

これで高校二年生か…言葉使いは変だし、ちょっと偉そうだけど…でも不思議とあの麻雀部の人間程嫌悪感は無かった。

 

 

「咲はひとりなのか」

「そうだよ…私はずっと独り」

「…そうか…衣と同じだな、衣もずっとひとりぼっちだ」

 

 

少し寂しそうな笑い顔が印象的に映る。

この人も独りなんだ…少し親近感が湧いた。

 

 

「咲は衣と同じ感じがするな」

「同じひとりぼっちならそうかもね…」

「そうではなく…凡百な言葉では表せない、心根から、生まれながらの根底から同族だと思った」

「…なんでだと思う?」

「咲は麻雀を打つだろう」

「打つ…ううん、打ってたが正しいかも。もうやめちゃったんだ、最近少しだけ機会はあったけど」

「何故それ程の能力を持っていて道を絶ったのだ」

「同じなのに分からないの?」

 

 

少しでも歩み寄ろうと思ったのは間違いだったかもしれない。

この人もまた人の事が考えられないのか、それ惚けているだけか。

同じ様な能力があれば人から遠ざけられたはずなのに。

 

 

「…孤独か…衣も昨年の今頃は咲と同じ考えをしていたよ。咲と違うのは、衣にはそれを受け入れてくれた友がいた。家族がいた」

「………だからなに?それを私に言うってことは当て付けか何かなのかな。私にはそれを受け入れてくれる友達も家族もいないって…そう言いたいの?」

「果たしてそう言いきれるのか…咲、咲は受け入れてくれる友や家族を自分から遠ざけただけなのではないのか?」

「…家族から散々なことされて、それでも自分から受け入れる様な大きな器を持ってるわけじゃなかったんだよ。誰でもそれが出来ると思ったら大間違い」

「衣の両親は死に、親戚からも厄介者扱いをされ、漸く留まった場所でも閉鎖的な扱いを受けた。だがな咲…衣はそこで新しい家族を得た。友を得た。衣や咲の様な人間は衣達から歩み寄ることをしなければならないのではないか?」

「嫌だよ、面倒臭い。それで割を食うのはこっちだって散々知ったし、それで何かを得た試しなんて無い。独りは楽だから、関わらなければ最低限、私が不幸になることはない。人と人の繋がりは…ただの拘束具だよ」

「しかしっ」

「煩い、黙れ、死ね」

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