絆の軌跡   作:悪役

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特別実習 ノルドⅡ

蒼穹の空の下でレイは空を仰いだ。

今日は雲一つさえない能天気(意味不明)。

実に晴れやかなノルドの村落で

 

俺とユーシスは洗濯物を畳んでいた。

 

「ふふふ……ユーシス。実に平和的光景だな……この素晴らしい刹那がマジで愛おしい、とお前も思わないかね?」

 

「確かに平和なのは上等なのだが、士官学院の生徒からはかなりずれた光景な気がするが……というか何故俺がお前と居残らなければいけないのだ……」

 

「それは単純にユーシスのじゃんけんが弱いからだろ」

 

解せぬと言うユーシスに俺はのんびりと洗濯物を畳んでいた。

───実に簡単な結果であった。

俺は馬に乗れない。

それはつまり、ノルド高原での移動手段が俺には無いという事だ。

実に残念な事である。

確かにサラ教官はチーム分けに失敗したとも言える。

これでは俺は何も出来ないのである。

だから、仕方がないから居残り組を作る事になり、じゃあ俺はお留守番ーーと元気溌剌なのに周りは俺を一人で残すとトラブルを生むからもう一人残そうとか言う。

信頼関係に拳が震えそうだ。

それでじゃんけんに負けたユーシスとただいるだけでは申し訳ないので家事手伝いをしていたのだが、それも今、終わった。

 

「これで手伝える案件は無限体力の子供の遊びに付き合うか、昼餉の手伝いをするかリィンに対してのトラップを張るかのどれかしかないな……」

 

「最後のはノルドの民の邪魔になるから止めろ。そして他、二つもそれではそれでいいのか」

 

「でも、他やるとするなら……村の近くにいる魔獣でもやるか?」

 

「……まぁ、その方が実習的にも村にも役に立つだろう」

 

ユーシスが剣を手に取ったので、俺もガントレットを着けて外に出る。

この高原に相応しい民族的なテントで暮らしている村落の風景を見、蒼穹の青空が視覚を刺激する。

結局、昨日はほぼ村の近くまで行って、ようやく迎えが来たのだ。

流石にガイウスやガイウスの父は驚きの顔は隠せなかった。

ゼンガー門からノルドの村落までがどれだけの距離かを知っているからこその反応だ。

一緒に迎えに来たリィンはすっごい笑顔で舌打ちをしたので躊躇わずにドロップキックをかましてそこからの互いのクロスカウンターで俺の疲労はピークになった。

最後の決め台詞は何れマルガリータをテメェにぶつけてやるぅ! だったはず。

己ー! と叫ぶリィンの姿を心底嘲笑って、そこで気絶した。

ふふふ、ノルドから帰ったら早速適当な理由を使ってやらなければ。

下手をしたら俺も死ぬがその時はその時よ。

その時はⅦ組はおろか。クロウも巻き込んで死んでやる。約束だとも。

 

「おい、お前。その邪悪な顔は止めろ。子供に悪影響を与える」

 

「それは不味いな。子供の為にジャスティススマイルを作っておかなければ……」

 

「どっちにしろ子供の怖がられるキャラだったなお前は。なら、正義の味方に負けた時の口上の練習をしておけ」

 

どうでもいい風に言うが、会話に付き合う所がユーシス様お人好し伝説である。

何だかんだでⅦ組お人好しランキングに入り込んでいる男である。

ちなみに俺の脳内では俺以外全員入っている。

その中で素直系、巻き込まれ系、クール系、真面目系とより取り見取りである。

何ていうクラスだ。

まぁ、何はともあれさぁ、行こうかとした所で

 

「おや……どこか行くのかね?」

 

聞きなれた声に似ているようで少し違う大人の男の人の声が聞こえ、二人揃って振り返る。

そこにいるのはやはり同級生に似ている……じゃなくて同級生が似ているが正しいか。

同級生……ガイウスが大人になればこうなるんじゃないかなと思えるノルドの民族衣装を着た人───ラカン・ウォーゼルさんが笑顔で俺達の方を見ていた。

 

 

 

 

 

「……? 何だ? 村がやけに騒がしいな……」

 

ガイウスは午前の依頼を終え、レイとユーシスを除いたパーティでノルドに昼餉と午後の依頼を受け取りに戻ったら村がやけに騒がしく感じた。

ただ悪い雰囲気を感じさせる様な騒がしさではないので急ぎはしなかったが気にはなるという事で他の皆と考えを一致させ、村の入り口で馬から降り、そして歩いて村の広場……という名称はないがとりあえず村で一番広く、そして今、喧騒が集まっている場所に向かう。

すると途中で

 

「あ! あんちゃんお帰り」

 

「トーマ。この騒ぎはどうしたんだ?」

 

うちの家族の次男のしっかり者が自分達を発見してくれたので理解がしやすくなる。

うん、とトーマも返事をして

 

「ええと……簡潔に話すと父さんがレイさんとユーシスさんと模擬戦をしているんだよ」

 

「……模擬戦?」

 

何故そうなったのかと逆に思う。

周りのメンバーもその疑問には同意したので、トーマに説明を要求すると

 

「何でも折角、ノルドまで来たのに我が家の家事手伝いをしているのではこちらが申し訳ないから、私なりに教えられる物と言えば(これ)と馬くらいだろうって事らしいんです」

 

「成程……」

 

つまり、父は馬に乗れないレイに対して折角、実習で来たのに何かを培わなければ可哀想だと思い、槍を使ったという事か。

 

「模擬戦……という事はやっぱりラカンさんの獲物は……」

 

「ああ。俺と同じで騎馬戦術にも使える槍術だ。俺の槍も元はと言えば父から教わったものだしな。技量も今のノルドの民で一番の実力者だ」

 

全員が驚いてくれるから父を余計に誇り高いと思える。

すると恐らく戦っている場所から一際甲高い音と声援が聞こえたから、俺達も見に行こうという流れになり周りの人に謝罪をしながら最前線に向かうと予想通りに槍を持って父が悠々と立っており、その対面にユーシスが膝を着いて、レイは……何故か何時ものごみ箱に詰まっているように地面に埋まっているレイがいた。

何故そうなる。

 

「……おい、レイ。何を悠長なギャグをかましている。何度も同じネタを繰り返しても笑いが取れるわけではないのだぞ馬鹿が」

 

「おいおいおいユーシス。俺が好きでこんな格好になっていると思っているのか? だとしたら悲しい誤解だぜ……俺はこんなにも窮屈だというのに!?」

 

「知るか馬鹿」

 

ユーシスが息を荒げながら立ち上がり、レイは立ち上がろうとしても立ち上がれず揺れるだけ。

父さんは微妙に困った様子で

 

「……そういえば先日、リリが遊びで落とし穴を作る、と言っていたが……」

 

「成程、お子さんは素晴らしい穴作りの名人ですね。その調子で例えば俺の同級生で黒髪で歯の浮く台詞制作名人の馬鹿も落として頂きたいですなっ」

 

リィンが飛び出して斬りかかろうかと悩んでいたが、委員長とアリサが止めたので一安心だ。

とりあえずユーシスが嫌々ながらもレイを引っこ抜き、レイは土埃を叩き落としながら父を見ながら

 

「うん、しかしこれはあれだな。大体の能力で負けているな俺達」

 

「……確かにな。基本能力と経験、技量における何もかもが負けている。勝てるのがあるとすれば手数とアーツとリンクによる協力と馬鹿の馬鹿プレイくらいか」

 

「最後は無視するが、それくらいだろうな。ま、それだけあればお釣り貰えるが」

 

「……策でもあるのか?」

 

「策はないが戦術を変えてみるかね」

 

するとレイには何か策があるのかゴキゴキと首を鳴らしてユーシスよりも前に出る。

父と完全な対面。

真っ向勝負を挑むつもりなのか父がほぅ? と興味深げに笑い、レイはそれに答えず何時ものファイティングポーズを……いや違う。

何時もとポーズが違う。

右手を地面に突き出すような構えをし、左手をまるで槍を放つかのように後ろに引いたポージング。

少なくともガイウスが初めて見るレイの戦闘態勢であった。

だが、どういった意味があるポージングなのかは恐らく理解出来た。

父も同じように思ったのか、一度目を細め

 

「……右で防御を行い、左で攻撃かね? 実にシンプルだな」

 

「生憎とそこまで器用な戦い方が出来ない器でして」

 

よく言うものだ。

Ⅶ組一番の多芸人間なのに。

だが、まぁ、そうは言ってもレイ以外の人間もかなり多芸なのがⅦ組たる所以なのかもしれない。

一番、芸を持ってないのはそれこそ自分ではないだろうか。

だが、それはともかくレイの見覚えのないスタイルがどんな物か。

そして父がどう出るか。

気になるな、と思い、若干、興奮して自分のその騒ぎの一員として楽しむ事にした。

ユーシスは二人の対峙を見ながら若干、父の視界から外れようとしている。

そして、それに気付かない父ではないが───口を笑みの形にしたのを見ると受けて立つという事らしい。

さて、どうなる? とガイウスは自分も期待の笑みを浮かべてその光景を見守った。

 

 

 

 

 

 

レイはもう集中に集中していた。

他の情報を受け取る力を極限にまで減らし、我が専心をラカンさんに向けた。

ラカンさんの利き腕はどっちかは分からないが、左の手に槍を持っている。

だから、集中力の大半は左手に集約しそうなのを静止して、ラカンさんの全身に集中する。

呼吸、視線、その他諸々を読み取る内に自分と相手との境界線が甘くなりそうなのを必死に自粛して───

 

「ぐぉぅ……!」

 

一つ槍を裏拳で弾き、続いて返される腿への突きを拳で迎撃し、三つ目の薙ぎ払いをアッパーで弾く。

冷や汗たっぷりの三連撃である。

恐ろしい事に三つ合わせてようやく6,7秒レベルの突きと薙ぎ払いであり、返せたのは全部奇跡と運と培ってきた実力である。

当然、手を抜かれての結果である。

何せ更に恐ろしい事実がある。

今の三連撃が左手だけで生まれた物という恐怖の事実が。

この人も間違いなくサラ教官やゼンダー門で出会った中将やうちの親の領域に入っている。

だが、そういった相手にやべぇ、とか思ってネガティブを考えてはいけないと経験上知っている。

盾一辺倒の右腕が凄い痺れているが平気であると言わんばかりに叫んでおく。

 

「どうしました!? これじゃあガイウスに近い内に競り負けますよ!?」

 

「ふむ」

 

楽しそうに笑いながら、脈絡もなく背後に石突きの方を突出し、背後から攻めかけていたユーシスを後退させる。

ええい。奇襲も駄目か。

挑発は……受けているというよりいいだろう、受け入れているといった方が正しい。

いいだろう、と子供の強がりを微笑んでいる大人の顔である。

そうして、ラカンさんは槍を片手で持つのではなく右手も添えてきた。

冷や汗だらだらである。

左手だけでこれなのに右手も加わればどうなるなんて自明の理だ。

どうする?

左も防御に加えるか。

いや、駄目だ。

こちらが防御しか出来ないなんてレベルなら囮になる価値がない。

囮というのは邪魔という概念が詰まっていないと無視される産物だ。

だから、何時でも左でカウンターをするという姿勢を崩すのは不可能。

全て右の腕で弾くしかない。

内心で顔を引き攣りながらも、自分は余裕だぞというポーカーフェイスだけは崩さない。

ここまで来たらこんがりうんちだぜ。

つまり

 

「ヤケクソってかぁ……!」

 

言葉通りにヤケクソにラカンさんに自分から向かった。

 

 

 

 

 

槍の間合いに入った瞬間に先程よりも早い突きが見舞われる。

残像すら見えかねない槍を右の裏拳で再び弾き、そのままもう一歩近付こうとすると逆からの薙ぎ払いが来る。

何でだよ! と嘆きたいがこのレベルの武人だと常識は覆されるものなので嘆きはしても驚かずに頭を下げる事で対処。

そして間髪入れずにやや斜めに打ち込まれた槍を横にずれて躱し、地面に突き刺さる前に止まると判断して槍に足を乗せて武器封じ。

周りがおぉ、という歓声を出すが無視してようやくの左のフックをかます。

こちらの反撃はいとも簡単に槍を手放された事によって後ろにスライドする事で躱され、そのまま逆立ちにまで移行したかと思うと下からの蹴撃に気付く間もなく顎を思いっきり吹っ飛ばされた。

 

「あ……ご……?」

 

グラリ、とマジで視界が揺れる。

脳震盪だ、と理性が告げるが、揺れている頭じゃあ体が追い付かない。

このまま無様に後ろに倒れこもうとして───視界に苛立たせる黒髪の馬鹿が目に映った。

 

「───」

 

脳の処理よりも早く体が反応する。

理性とか理屈とか通り越してここで無様だけを見せる終わりは許せない。

別に誰かに負けるのはいい。

誰も彼もに勝ち続ける事が生き方とかは流石に思っていない。

だからこそ、これは単なる意地であり意味が分からない理屈での行動であった。

 

「───ふん!」

 

脳が揺れている中で唯一動くもの───ARCUSによって発生する稲妻を押さえてだが自分に放った。

 

「おぶぅ……!」

 

結構な感じに痺れた体が反射で力が籠らない体でも立ち上がる。

流石にこの対応は想定していなかったのか。ラカンさんの体が少し硬直するのをARCUSを通じて相手に伝わり

 

「そこだ……!」

 

ARCUSの真価ここに在り。

互いの攻撃によって生まれた隙に自然と意識と体が合うリンク能力。

ユーシスはラカンさんの右手側から返礼と言わんばかりに脇に突きを入れていた。

右手も構えに入れたとはいえ、それでも中心に持っているのは左の手である。

更にはラカンさんは逆立ちから二本足に移行した直後である。

常識的には取ったと思いたいのだが……既に左の槍がユーシスの方角に向けようとしているミラクル。

これだから超人はと思いつつ───最後の策を悪辣とした顔を浮かべながら脳震盪からやっとちょっと復帰した体に鞭打って今まで防御に利用していた右の手に握っていた物を親指の動きだけでラカンさんの顔面に発射する。

 

 

「……!」

 

ようやくその笑顔を打ち崩す事に成功し、反射の動きか。

咄嗟に槍で飛んだ物を弾き飛ばし……そこでようやく飛んで来た物を知覚する。

 

「飴……!?」

 

指弾で飛ばした物は武器とかではなく店に入ったら普通に置いてあるような飴玉。

全くもって武器として使うには余りにもおかしく意図が不明な攻撃方法。

故にそれは隙を生んでくれてユーシスの剣はちゃんと寸止めで止まった。

 

 

 

 

 

 

「……し、辛勝……と言ってもかなり手を抜かれての辛勝……」

 

「……同感だ。勝った気など全然ないな……」

 

俺は地面にぶっ倒れ、ユーシスが膝を着きながら息を整えている。

勝った、と一応、口では言ったものの互いにとてもじゃないが勝ったとは思えない。

最初の方は俺とユーシスの波状攻撃。

次にユーシスとラカンさんが戦っている間に俺がヒット&アウェイ戦法。

最後にユーシスと俺が役目を変えての最終決戦。

隙を狙えはしたけど、とてもじゃないが勝ちとは思えない。

何せ、最後の最後まで右腕を使っていないし、こっちが息絶え絶えでもラカンさんは最初から最後まで息を切らせていない。

完全な余裕の態度である。

最後の最後だってやった事は小細工だし───多分、あそこからだって本気を出せばラカンさんはこちらを止めることなぞ簡単に出来たと思われる。

世の中上には上がい過ぎなのである。

 

「お前でもそう思うのか」

 

「誰でもそう思うの間違いだな。上限突破したような人間でない限り誰でもそう思うだろうよ」

 

例えば、ラウラの父のような。

例えば、リベールにいる剣聖のように理に至った者とか。

例えば、真逆の道の修羅になった者とか。

そんなレベルの人でもまだ上を目指そうとしているのだろうか。

ラウラの様子を見る限り、ラウラの父はそんな感じの様に思えるが。

 

「まぁ、ユーシスも覚悟するといい。世の中格下と戦う方が何故か少ないものなのさ」

 

「それはお前の運が悪いだけではないか?」

 

ははははは、と笑ってお茶を濁す。

そうは言われてもⅦ組のトラブルメーカーレベルは遊撃士にも勝るとも劣らずレベルである。

恐らく次辺りに自分達は何か大きな事に巻き込まれるのではと嫌な予感がばりばりしている。

だが、そんな確信の無い事を言ってもしゃあないのでとりあえず青空でも見ておく。

実に爽快である。

この調子だと昨日見れなかった星空をじっくり見れる事だろう。

折角、素晴らしそうな星空を見れるというのに逃す理由はない。

徹夜する覚悟は万全だ。

わざとカメラを持ってないからこの目に刻む……いや脳に刻むつもり満々である。

その野望を前にしては特別実習なぞ屁でもない。邪魔をするのならば実習ですら打ち崩そう。意味が分からんが。

 

「二人とも。大丈夫か?」

 

「うん?」

 

「む……」

 

そうやって疲れを癒していると他の実習メンバーが駆け寄ってきた。

とりあえず、俺は適当に掌をひらひらさせて大丈夫だと伝えるが、笑顔で顔面にキックかまそうとする馬鹿が来たので躊躇わずに俺はガントレットを装備した腕で的確にキックしようとした足の小指を狙う。

うぉぉぉぉぉぉ!? と呻く馬鹿を無視して欠伸でもかましておく。

ざくっと顔の横で何かが刺さった音がする。

リィンの刀であった。

 

「……野郎。死んでも俺を祟るつもりか」

 

「……最早、友情というより執念みたいになっていますね……」

 

エマの引き攣った表情にうむ、と俺も答えておき、とりあえずやれやれと立ち上がり小指を抱えているリィンに

 

「さぁ? お前はどこまで耐えられる? まずは一万だ!」

 

「おぶぅぁ!? あばっぶ……お、おおおおおまままままええええええええええええええ!!!?」

 

自然豊かな村落の中心で雷撃拷問。

うーーーん、悲鳴が実に美味しい。

ご褒美に電圧を五万に挙げてようではないか。

ふはははははははははは。

 

「ちょっとレイ。魔王ごっことその拷問ごっこは止めなさい。子供に悪い影響が残るでしょ」

 

「……む。確かに。未来ある子供にこんなゲテモノを見せるわけにはいかないな」

 

「……俺達には未来はないのか?」

 

ガイウスの鋭いツッコミは顔をアリサと一緒に逸らす事でスルー。

未来が亡くなったと思われるリィン某の死体はとりあえず放置しておく。

 

「その様子だと午前の実習は終わったのか」

 

「ええ。時間がかかったけど無事終わらせたからお昼ご飯を貰いに来たというわけ」

 

「む……もうそんな時間か」

 

時間間隔が分からなくなってしまうレベルののどかな光景故に油断した。

とりあえず、ユーシス共々ガイウスの家に向かう。

 

「とは言っても昼の実習も俺は関われそうにないからなぁ」

 

「馬車をするのが最終手段だが……馬に負担がかかるからな。自習を手早くするにはこうするしかなくてな。レイには暇にさせて申し訳ないが」

 

「うんにゃ。ガイウスの責任ではないさ。俺も俺で村落で色々とさせてもらうさ」

 

はっはっはっ、と青春の会話をしながら昼に向かう。

当然、黒焦げたリィンは放置だ。

 

 

 

 

 

 

擬音で例えるとドンガラガッシャーーン! という感じだろうか。

今度はエマと一緒に夕日が沈んでいく風景の中、子供と本気の鬼ごっこをしている最中にそんな騒音が起きた。

ちなみに子供の遊びと思って油断してはいけない。

ノルドはご覧の通りに遊牧民。

遊ぶと言ってもする事と言えば都会のように家の中で遊ぶなどという事はほとんどない。

外での全力疾走だ。

最初の脱落者はやはりエマであり、その隙を悪餓鬼がスカートを捲った時にズームで見つめた俺を責められる男子はいるだろうか。

その後にエマの腰が入った平手が首をゴキリ、と鳴らしたが何一つ後悔ない人生であった。

そのエロい下着を見て後悔をする思春期学生などいない。

アセラスを使ってもらって復活出来たから良しとする。

とりあえず、そういう風にノルドの子供達に帝都の事やら都会にはどんな物があるかや鬼ごっこの鬼役として遠慮なく走り回ったりと青春の汗を流している最中の轟音であった。

 

「新手の変態だな」

 

「そ、そんなわけ……」

 

ないと言い切れないエマを尻目にとりあえず子供達を家に戻るように伝えてから俺とエマは騒ぎが起きた場所に急いで向かった。

そうして急いでそこに向かうと

 

「うむ?」

 

「あ……」

 

何やら導力車が事故っている現場であった。

 

「これまた手酷く……石にでもタイヤを取られたか?」

 

とりあえず近くに向かってみるとアムルさんという俺以外のメンバーが午前の依頼で関わった人が車から出てきていた。

あの様子だと怪我はしていないみたいだ。

とりあえずエマに怪我がないかを見て貰う事を頼み、俺は件の車の方に向かった。

 

「……むぅ」

 

とは言っても俺には車の内部構造を読み取れる知識と技能は少ししかない。

モクモクと黒煙を出している内部構造をとりあえず俺の浅い知識で分かればいいがと思い、中身を見てみる。

 

「……ううむ」

 

機械には別段、強くも弱くもないのでとりあえず一通り見てみる。

見たところエンジン回りの結晶回路の接触不良な気がする。

聞いてみると安全運転を心掛けてはいたが途中でハンドルが重くなって思うように動かせなくなったらしい。

恐らく十中八九ビンゴの答え。

ビンゴだが……そこで手詰まり。

多少の心得はあっても緊急でない限り素人ではなくちゃんとした技術者に見て貰った方がいい。

後からタイミングよくこちらに集まった他のメンバー……というよりアリサの意見により技術者を呼ぶべきとなり、そこで長老とラカンさんが現れ、ゼンダー門にいる技術者よりもラクリマ湖にいる御老体を連れてきてくれという事になり、その事はリィン達に任せて俺とエマは車をとりあえず押して邪魔にならないところに置くのを手伝い、また空を見る。

まだ明るい……が既に時間が時間である。

恐らく皆が返ってくる頃には夕日が照り輝いているような時間になるはずだ。

そしてどうやら御老体と先程リィン達が連れて帰ってきたノートンさんも含めて宴会をする準備が始まったらしい。

いい人ばかりだなぁ、と思いつつ、ただ一つ思った。

 

 

───もう直ぐ、夜が、星が輝く、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はほんのちょっとオリジナルを入れての次回こそが星空回~

───ヒロインをここで輝かせずにいてどうする!?

というわけで次回を楽しみに!

感想と評価をお願いします! 初めての人でも普通に書くだけでいいので書いて頂ければ原動力になるので!
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