濃くなり始めるのはヤツが出てから。
呪術高専京都校にて
「最近はどうじゃ?」
「普通だよ。楽しく学校生活を送ってる。…まさかそれ聞くためだけに呼んだんじゃないよね、お爺ちゃん?」
現在俺は呼び出し人である京都校学長、楽巌寺嘉伸と話をしている。
この人には京都に訓練しに行くたびにお世話になっている。だから恩みたいなものはあるのだが、この人含めた上層部全体が五条先生と仲が悪く俺自身の立場も関わってくるので、会うと結構な頻度でピリピリした雰囲気になってしまう。
「久しぶりにあったのじゃから近況報告は当たり前じゃろ。…まぁよい、本題に入るとしようかの。御主の相手はどうじゃった?」
「…話に聞いていた通りだよ。手強すぎる。第一にとてつもなく速い、第二にどんな能力を隠し持っているのか内容どころか数も不明、第三に知識量、経験値が多過ぎる。この3つ目が普通の呪いと大きく違うわ。」
「…御主1人でいけるかの?」
「まぁいけるんじゃないの?1つ目は見極めきれないことはないし、2つ目は俺側に関しても同じことが言える。後2,3ヶ月程様子を見てこっちのアドバンテージを確立できれば祓える。」
「…『八咫鴉』の力は、使うのか?」
「多分使うね。見切れると言っても追いつけるわけではない。祓うためなら使える手は全て使うつもり。」
「暴走した場合は…分かってるな。」
「もちろん分かってるし、そもそもしないよ。最後に暴走したの何年前だと思ってんの。」
「…ならいいがな。」
それを聞いて俺は部屋から出て行こうとする。
「…あまり御主は祓いたくはないのじゃがな。」
学長が何かを呟いたが気にせず出ていく。
午後2時
割と腹が空いていたから食堂で飯を食っていった。昼飯って時間でもないけど。
さて、意図して来たわけじゃないがせっかくなんだし挨拶くらいしていくか。そう思った時
「あれ、奏君じゃん。」
「久しぶりだな。帰って来てたのか。」
「あ、憲紀さん、桃さん。お久しぶりです。」
京都校の二年生、目閉じの加茂憲紀さんと魔女みたいな人、西宮桃さんに早速あった。
憲紀さんは京都校のまとめ役みたいな人で、常に冷静な参謀。桃さんは呪術師の中でも比較的温厚な人で、京都校の中だと最も話し合いが楽だ。
「また特訓しに来たのか?」
「いや、こっちの学長に呼ばれて渋々来ただけです。本当は修学旅行中なので。」
「修学旅行?奏君、今潜入捜査中なの?」
「ええ、3月に月が蒸発した事件あったじゃないですか。その犯人が潜入中のクラスの担任をやってて、そいつを暗殺する任務中です。」
「あの事件か…呪いが原因かとは思えないが…」
「ってかなんで担任なんかやってるのよ…」
「がっつり一般人に見えるんですけどね、実際。ただ上が特級って指定したらしいですよ。ちなみにこれがそのターゲットです。」
俺が2人に殺せんせーの写真を見せると、2人とも硬直した。
「…これは…なんというか…」
「あれ…可愛いじゃん。」
「まあゆるキャラみたいですよね。」
「実際どんな感じなんだ?」
「とてつもなく速いです。マッハ20が最高速度って言ってますし。他にも回避能力が高すぎますね。」
「規格外だね〜…」
「呪術はもう使ったのか?」
「いや、まだっす。半分以上の確率で勝てると思った時に全部出し切るつもりです。」
「ふうん、まあ頑張りなよ」
「ええ。あ、そうだ憲紀さん、また補充させて貰えませんか?」
「構わないが…そんなに使うのか?」
「まあ借りてるのだと一番相性が良いですからね。」
「なるほどな…」
そんな世間話をしつつ憲紀さんから補充をしてもらう。最低でもこの人と棘、真依さんのくらいは対殺せんせー戦において使うはずだから、しっかり準備しておきたい。
そこから真依さんと思い、あの人とメカ丸と葵さんはまだ見てないなと思う。
真依さんは東京校の真希の妹で、かなり良い性格をしていらっしゃる。少し嫌味を込めて一年の中で唯一さん付けをしてる。メカ丸は名前の通りメカ。術式事情があって操縦者が外に出られないとのことらしく、俺も本体には会ったことがない。ただちょっぴり俺と境遇が似てるからか親友として見てくれてるらしい。葵さんの説明は…まあ後でいいか。
「…ところで他の人たちは?」
「真依ちゃんとメカ丸は実習で歌姫先生と一緒、東堂君は道場で特訓中。霞ちゃんは…」
「…奏くぅ〜〜〜〜ん‼︎」
「…今来たみたいだな。」
後ろから聞こえてきた声に気付き、俺は回避態勢に入る。声の主は一直線に突っ込んで来る。俺はその人が抱きつく前にいなす。声の主は勢いあまって壁にぶつかる。
「…久しぶりだね、霞姉。」
「うう…酷いですよ、奏君。久しぶりの再会なのに…」
「出会い頭に抱きついてきたら避けるって。」
「なんでですか⁉︎昔はよくしてたじゃないですか⁉︎」
「それを受けないために武術の腕前を上げたんだよなぁ…」
「ブラコンここに極まれり、だね。」
「しかもその結果、奏は今では皆伝とはな。」
俺に抱きつこうとしてきた人、三輪霞…通称霞姉は額を赤くし、少し涙を浮かべつつ文句を言ってくる。
俺と霞姉は実の姉弟じゃないが、初めて京都に来たときから何故かずっと気にかけられていて面倒を見てもらっている。最初は霞さんと呼んでいたが、いつからか「お姉ちゃんと呼んでください!」と頼まれ今の呼び方になった。それ以降だんだん過保護というか、今みたいなスキンシップが多くなった。俺が武術の腕前を上げた理由の4割ほどが、今言ったように霞姉のスキンシップを回避するためだ。何故か危機感を感じ始めたからね、スキンシップに。
ちなみに霞姉は実際に俺より年下の弟が2人いて、俺のことを兄さんと慕ってくれてる。
「そもそも!来るなら前もって連絡して下さい!」
「そもそも来るつもり無かったんだよ。」
「潜入中の学校の修学旅行で来たとのことらしいぞ。」
「そうなんですか…はっ、まさか奏君、その高校で彼女が出来たりしてませんよね⁉︎お姉ちゃん、認めませんよ‼︎」
「何言ってんの?そもそも高校じゃなくて中学だし…」
「「「中学⁉︎」」」
「…そういえば奏はまだ14歳で飛び級だったな。」
ナチュラルに忘れられてたわ。
その時電話がかかる。磯貝からだ。
「悪い、電話でるね。もしもし、どうした磯貝?八ツ橋は抹茶味が個人的におススメだぞ。」
『漣、大変だ‼︎女子達が誘拐された‼︎』
「…は?どういうことだ⁉︎」
『人通りの少ないところに入ったら、学生服の男たちに襲われたんだ。俺達男子が気絶させられて、その間に女子達が連れてかれて…、しかも渚達の4班も茅野と神崎も連れてかれたみたいなんだ‼︎』
…なるほどね、恐らくどっちも同じグループだ。その程度の輩ならボコるのは楽だが、見つけ出すのに時間がかかって手遅れになる。しかも多人数を誘拐してるんだ。車、しかも盗車だろう。この広い京都の地だと余計に手間がかかる。…いや、待てよ。
「磯貝、殺せんせー作のしおりは持ってるか?」
『え、あぁ、あるけど…』
「じゃあまずしおりの1243ページを開いて。」
『おう…『班員が何者かに拉致られた時の対処法』?』
「『犯人の手がかりが無い場合、まず会話の内容や訛りから地元の者かそうでないかを判断しましょう。地元民ではなく、更に学生服を着ていた場合1244ページへ』」
『『考えられるのは相手も修学旅行生で、旅先でオイタをする輩です。』』
「『土地勘のないその手の輩は拉致した後遠くへは逃げない。近場で人目につかない場所を探すでしょう。その場合は付録134へ。先生がマッハ20で下見した…拉致実行犯潜伏対策マップが役に立つでしょう。』」
「「「『『『いやいやいやいや』』』」」」
あ、見事に全員の声がハモった。
「何ですか奏君、そのしおりは⁉︎」
「さっき説明したうちの担任お手製のしおり。」
「普通無いわよ、そんなしおり‼︎」
「予想を超えた規格外だな…」
『怖いくらい完璧な拉致対策だな。』
まあ言いたいことは分かる。俺は昨日一昨日で軽く読み終えたのだが全く同じことを思った。何手先まで想定しているのやら。
「だがお陰でちゃんと手が打てる。磯貝達は今どこにいる?」
『平安神宮の近くだ。4班は祇園にいる。』
「なら4班と合流しつつ、ポイント2のところから向かってくれ。俺は殺せんせーと烏間先生に連絡してから合流する。」
『は⁉︎合流って⁉︎』
「ちょうどこういう時に役に立つ知り合いがいるんだよ。それに俺も最低一発はやってやらないと気が済まない。」
『そうか。じゃあこっちは任せろ!」
「おう、頼んだ!」
「…せっかくの再会なのにドタバタして悪いっすね。」
「いや、私達は気にしないが…」
「手、貸そうか?」
憲紀さんと桃さんが名乗り出てくれるが、俺は断った。
「いや、有難いですが大丈夫です。そんなに手ェかかる奴らな訳無いし、呪術師バレしてないのに戦闘慣れしてる人達何人も連れてきたら怪しまれるので。…ただ1人借りてきますね。」
「ああ、構わない。」
そして俺と霞姉は道場に向かう。
「あれ…何で霞姉付いてきてんの?」
「私も手伝います。奏君が何と言おうとも手伝いますよー!」
「…サンキュ」
道場に着き、目当ての人に話しかける。
「ん?おお奏か、久しいな。」
「お久しぶりです。急にこんなこといのもアレですけど力を貸してくれませんか、葵さん?」
本編よりも更にポンコツ度が増している三輪ちゃん
というか全体的にキャラ崩壊気味ですね。