呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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2年ほど前
奏と東堂が初めて会った時in京都校

「漣だったな…お前の好きな女のタイプを言え。」
「…え?」
「性癖にはソイツの全てが反映される。女の趣味がつまらん奴はソイツ自身もつまらんし、そんな男は俺は嫌いだ。さぁ答えろ。」
「…え〜と、そもそも女のタイプ?性癖?って何ですか?」

その瞬間、東堂の脳内にまだ見たことのない未来の映像(妄想)が流れ出した。

「…そうか、お前は俺の弟子になるべき男だったのだな…。」
「⁉︎⁉︎」

この時以来、奏は武術以外の接近戦を東堂から教わることになった。


第12話:救出の時間

廃墟となったパチンコ店、そこに誘拐された女子達は集められていた。

 

「…神崎さん、そういえばちょっと意外。さっきの写真、真面目な神崎さんもああいう時期あったんだね。」

「写真?」

 

茅野の言葉に意味がわからない1班のメンバーが首を傾げる。

男達は少し離れたところでバカ騒ぎしている。

 

「…うん。うちは父親が厳しくてね。良い学歴、良い職業、良い肩書きばかり求めてくるの。そんな肩書き生活から離れたくて、名門の制服も脱ぎたくて、知ってる人がいない場所で格好も変えて遊んでいたの。…バカだよね。遊んだ結果得た肩書きは『エンドのE組』。もう自分の居場所が分からないよ。」

「…じゃあ一緒に作ろうよ。」

「…倉橋さん?」

「E組に来た理由はみんな違うよ。けどここにいるみんなは同じ境遇だもん。みんなで仲良く暗殺して勉強すれば、有希子ちゃんの居場所もきっと作れるよ!」

「なんでそう言えるの…?」

「昔ね、今の有希子ちゃんみたいに居場所が分からない子に会ったことがあるんだ。その子は自分の居場所は分からなくても、一人で自分のやることを見つけ出して、居場所まで作っちゃった。彼みたいに一人で出来なくても今の私達は仲間がいっぱいいるし、やることもある。居場所を見つけるのもすぐそこだよ!」

「……」

「おーおー、いい話だねぇ。けどよ、そんな面倒いことするよりもっと早く見つける方法があるぜ。俺等と同類(ナカマ)になりゃいーんだよ。」

 

倉橋が神崎にそう言った時、リーダー格の男リュウキが近寄ってきた。

 

「俺等もよ、肩書きとか死ね!って主義でさ。エリートぶってる奴等を台無しにしてよ。…なんてーか、自然体に戻してやる?みたいな。良いスーツ着てるサラリーマンには女使って痴漢の罪を着せて、勝ち組みてーな勝気な女にはこんな風に攫って心と体に二度と消えない傷を刻んだり。俺等そういう教育(あそび)沢山してきたからよ、台無しの伝道師って呼んでくれよ。」

「…サイッテー」

 

茅野のつぶやきにキレたリュウキが茅野の首を絞めつける。

 

「カエデちゃん‼︎」

「何エリート気取りで見下してんだ、あァ⁉︎お前もすぐに同じレベルまで墜としてやんよ。」

 

ソファに投げ出された茅野は苦しそうに咳き込む。

 

「いいか、今から俺等20人ちょいを夜まで相手してもらうがな、宿舎に戻ったら涼しい顔でこう言え。『楽しくカラオケしてただけです。』ってな。そうすりゃだ〜れも傷つかねぇ。東京に戻ったらまたみんなで遊ぼうぜ。楽しく旅行の記念写真でも見ながらなぁ…」

 

その言葉に皆恐怖する。片岡や岡野は睨みつけてはいるが体は震えているし、倉橋と矢田はすでに涙目だ。

その時入口の戸が開いた。

 

「お、来た来た。うちの撮影スタッフがご到着だぜ…⁉︎」

 

中に入って来たのはリュウキも倉橋達も予想していなかった者達だった。

 

 

「まさか一発目から当たるとはな…幸運だ。」

 

上半身裸の大男とスーツ姿の女性、そして単独行動していたはずのクラスメイトの奏がいた。

 

「な…テメェらいったい何もんだ⁉︎どうしてここが分かった⁉︎」

「アンタらが拉致った娘達のクラスメイトだよ。ここに辿り着けたのはこれのおかげ。」

「…?なんだそりゃあ…辞書?」

「修学旅行のしおりだよ、うちの担任手作りのな。これに載ってる『班員が拉致された場合』に則って行動しただけだ。」

「「「「いやねーよ、そんなしおり‼︎」」」」

 

彼らのツッコミはもっともである。

 

「さてと…さっさとその娘ら解放しな。今解放すれば全員半殺しで済ませてやる。」

「…はっ、意気がりやがって。そっちは3人、こっちは10人で更にこれから10人ほど友達(ツレ)が来る。こっちの方が圧倒的に有利なんだよ。ヤっちまえ!」

 

リュウキの合図で一番前にいた3人が俺らに殴りかかってくるが、

 

「「「…遅い」」」

 

三輪が木刀で胴を決め、東堂が顔面にストレートを放ち、奏が相手の顔を押さえつけての膝蹴りをやる。奏と三輪に反撃された2人はその場に倒れ、東堂に殴られた男は女子達より後ろの壁にめり込んだ。

 

「…霞姉は左3人、葵さんは右3人をお願い。俺は真ん中のリーダーどもをボコる。」

「「分かりました(分かった)」」

 

三輪が任された男達は、それぞれ鉄パイプや空き瓶を持ち三輪の周りを囲む。先程の木刀には驚いたが、所詮女だと思い一斉に飛びかかる。しかし彼らの認識は甘かった。

 

『シン・陰流 簡易領域』

 

彼らが飛びかかる前、三輪は抜刀の構えをして領域を広げる。この領域は右足を中心とした半径2.21m内の円の中に侵入したものをオートで反撃する術式。そんなことなど知るわけない男達は同時に切り捨てられ、何が起こったのかわからないまま意識を失った。

 

三輪の方は一瞬で終わったが、奏と東堂の方は一方的だった。

 

「お前らみたいな奴等には、女の趣味を聞くまでもない。」

 

東堂は襲いかかってくる不良達を殴り、蹴り、投げ飛ばしていく。近接戦において学園最強の実力を誇る東堂にそこいらの不良が傷をつけることなど不可能に近い。

 

そしてその東堂に鍛えられた奏もまた然りである。しかしこちらの方はより容赦なくエゲツない。近寄ってきた者たちの手首を捻り上げに顔面や腹部など一発決めるだけで気絶させられるのだが、ガチギレ中の奏は容赦なく死体蹴りをする始末だ。

 

そして3分もかからないくらいでリュウキを残して全滅した。

リュウキはこちらに向かってくる奏に怯むが、ドアが開いたのを見て援軍が到着したのかと思い笑う。

例え援軍が来てもこの3人には勝てないのだが、入ってきたのはまたもや予想していなかった者だった。

 

「遅いですよ…殺せんせー。」

「いやぁ、すいませんねぇ漣君。君たちが適切な連絡を取ってくれたのでここと渚君たちの方を後回しにして、他の可能性がありそうな所をしらみつぶしに探してました。」

「そうですか…ところでその触手の坊主達はともかく、その顔隠し何ですか?」

「暴力沙汰なので、この顔が暴力教師と覚えられるのが怖いのです。」

「…チキンめ。」

 

殺せんせーの登場でより形成は傾いた。女子達は顔を明るくし、リュウキは更に焦る。なにせ不良仲間が如何にも優等生らしい姿に手入れされていたのだから。

 

「く…エリートどもは先公まで特別性かよ。テメーも肩書きで見下してんだろ?バカ高校と思ってナメやがって。」

「エリートではありませんよ。確かに彼等は名門校の生徒ですが、学校内では落ちこぼれ呼ばわりされクラスの仲間は差別の対象になっています。ですが彼等はそこで様々な事(・・・・)に実に前向きに取り組んでいます。君たちのように他人を水の底に引っ張るようなマネはしません。学校や肩書きなど関係ない。清流に棲もうがドブ川に棲もうが、前に泳げば魚は美しく育つのです。」

 

(ほんっと殺すのが惜しいなぁ、この先生。)

 

奏は殺せんせーの言葉にそう感じる。

一方でリュウキはヤケになりナイフを取り出して倉橋の首に近づける。

 

「偉そうに説教しやがって…これ以上近づいたらこいつがどうなるか分かってんのかぁ‼︎」

「ひっ…!」

「倉橋さん‼︎」

 

再び涙目になる倉橋。

殺せんせーのスピードなら当然無傷で倉橋を助け出せる。女子達はテンパっていたがすぐにその事を思い出す。

 

だが三輪はこの状況に焦り、東堂も身を震わせる。

別に何も人質になってる倉橋が心配なのではなく、むしろ絶対無事だという保障があった。

2人が心配しているのは、「仲間を人質に取られ、怒りが最高潮に達した奏」の方、更に言えばその奏によって半殺しじゃ済まなくなるリュウキだった。

 

奏は隠す事なく怒気を放っている。その恐ろしさは真っ黒顔の殺せんせーの比にはならないくらいどころか、殺せんせーからも大量の汗が流れている。

 

「最後に一度だけ警告してやる…その娘を離しな。今ならまだ助かるぞ。」

「ウルセェ‼︎こっちには人質がいるんだぞ⁈大人しく俺に従え‼︎」

「そうか…警告を無視するんだな…

 

 

 

 

 

ならば死ね。」

 

 

 

 

 

そう言うと奏の姿が消える。リュウキは驚くがすぐに倉橋にナイフを誘うとする。しかしそこには倉橋がいなかった。どこに行ったと振り向いて探そうとすると、顔面に激痛が襲いかかってくる。態勢を整える間も無く腹や胸板、手足に何度も痛みが入り最後に再び顔面に蹴りが決まる。

意識が途切れる前にリュウキが見たのは、倉橋をお姫様抱っこしながら回し蹴りを放つ奏の姿だった。

 

 

「えーと奏君、ホントに死んでませんよね?」

「まさか。全治1ヶ月くらいに抑えておいたよ。」

「それもそれで…。」

「クラスメイトを怖がらせたんだから、ぬるすぎるくらいだよ。…さてと倉橋さん、ギリギリ助け出せたと思ったけど大丈夫?」

「う…う…うわぁぁぁぁん!怖かったよぉぉぉ‼︎」

「え、ちょっ、えっ⁉︎ご、ごめん‼︎もっと早く見つけられたらよかったね!いやそもそもこんな目に合わせてごめん‼︎」

「ううん…ナミ君のせいなわけないし、助けに来てくれて嬉しかった…。けど…怖かった…。うっうっ…」

 

その後みんな解放され、10分程倉橋は奏の胸で泣き続けていた。

殺せんせーは顔をピンクにし、三輪はすごく羨ましそうな目で見てた。

 

「落ち着いた?」

「…うん、ありがと。」

「ん、よし。後はとりあえず磯貝たちに連絡しとくか。」

「それなら既に先生が済ませておきました。今こちらに向かっているそうです。それより漣君、この2人はどなたですか?」

「あぁそうだね。こっちの女の人は三輪霞さん。俺の姉貴分で京都の姉妹校の人で剣道の達人。でこっちの男の人が東堂葵さん。俺に喧嘩とかの戦い方を仕込んでくれた師匠。霞姉は1つ、葵さんは2つ歳上。班から離れて動いていた時会って、みんなが誘拐されたのを聞いて手伝ってくれた。」

「そうなのですね。三輪さん、東堂君、ありがとうございます。私は殺せんせー、漣君の担任をしています。」

「あ、ご丁寧にどうも。奏君がお世話になってます。…ホントにタコみたいな姿ですね。」

「にゅ?まるで私の事を知っていたみたいですね。」

「うちの学園では有名なんです。マイナーな分、政治の要人が多くて貴方のような存在を知る機会が多いんです。今回奏君がそっちに行ったのもあなたがどんな人なのか知る為だったんです。」

「奏君は暴力沙汰を起こして来たのでは?」

「それもあるけど、どっちかって言うと後付けかな〜。ここに来た以上暗殺を頼まれてはいるけど、本当はそれ以外の道も探してみろって言う実習なんだよね。」

「なるほど。だから奏君は単独での暗殺が少なかったのですね。」

「そゆこと〜。それでも今はアサシンなんだから、絶対殺さないって訳じゃないからね〜。」

「ええもちろんです。殺さないと思いますけどねぇ。」

 

流れるように嘘を吐くが予定通りである。

そうしないといけないのだから。

 

「ところで神崎さん、何かありましたか?」

「え…?」

「ひどい災難に遭ったので混乱しててもおかしくないのに、何か逆に…迷いが吹っ切れた顔をしてます。」

「…特に何も、殺せんせー。ありがとうございました。」

「いえいえ。ヌルフフフフ、それでは旅を続けますかねぇ。」

 

「霞姉と葵さんもありがとう。助かったよ」

「何、気にするな。それより例の約束忘れるなよ。」

「もちろん。高田ちゃんの東京ライブが当たる度に宿を貸す、当たらなかった時は何かグッズを1つ送る、でしょ?」

「ああ」

「奏君!私との約束も忘れてませんよね⁈」

「ハイハイ、おいで。」

「ハゥゥ…癒されます…」

 

 

ここに来る前に奏は東堂の手を借りる代わりに上の約束をしていた。そして三輪はそれに便乗し、奏からのハグとお泊まり権一回分を約束させていたのだった。

 

 

この後奏は2人と別れ、女子達と共に無事に救出班と合流した




ガバいかなぁ流れ。…ガバくない?
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