呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

18 / 55
人物紹介の時間の設定変更に伴いすこし修正


第15話:自律の時間

「庭の草木も緑が深くなっていますね。春も終わり近付く初夏の香りがします!」

「たった一晩でえらくキュートになっちゃって…。」

「これ一応…固定砲台…だよな?」

 

当然だが殺せんせーの大改造を受けた砲台さんにみんな戸惑っている。

 

「何ダマされてんだよ、お前ら。全部あのタコが作ったプログラムだろ。愛想良くても機械は機械。どーせまた空気読まずに射撃すんだろ、ポンコツ。」

 

この状況が面白くない寺坂が砲台さんに悪態を吐くと、砲台さんは本体を寺坂の方に回転させ泣き始める。

 

「…おっしゃる気持ちわかります、寺坂さん。昨日までの私はそうでした。ポンコツ…そう言われても返す言葉がありません。」

「あーあ、泣かせた。」

「寺坂君が二次元の女の子泣かせちゃった。」

「なんか誤解される言い方やめろ‼︎」

 

泣きだした砲台さんを慰めながら、女子達が寺坂を責めるが仕方ないですね。あわれ寺坂安らかに「勝手に殺すな‼︎」

 

「いいじゃないか2D(にじげん)…Dを一つ失う所から女は始まる。」

「「「竹林それお前の初セリフだぞ‼︎いいのか⁉︎」」」

 

…あそこはなんか違う世界の話をしている気がするけど、まぁいいかな。

 

「でも皆さん、ご安心を。殺せんせーに諭されて…私は協調の大切さを学習しました。私の事を好きになって頂けるよう努力し、皆さんの合意を得られるようになるまで…私単独での暗殺は控えることにいたしました。」

「そういうわけで仲良くしてあげて下さい。ああもちろん、先生は彼女に様々な改良を施しましたが、彼女の殺意には一切手をつけていません。先生を殺したいなら彼女はきっと心強い仲間になるはずですよ。」

 

相変わらずだね、殺せんせーは。普通なら自分を殺そうとする相手、しかも兵器なら壊すはずなのに、そうはせずに自分の生徒に変えるなんて。

 

休み時間には皆砲台さんの近くに集まっていた。今日一日で人気はうなぎのぼりだ、主にカンニングサービスで。

 

「へぇー、こんなのまで体の中で作れるんだ!」

「はい、特殊なプラスチックを体内で自在に成形できます。設計図(データ)があれば銃以外も何にでも!」

「おもしろーい!じゃあさ、えーと…花とか作ってみて?」

「わかりました。花の(データ)を学習しておきます。それと王手です、千葉君。」

「…3局目でもう勝てなくなった…なんつー学習力だ。」

 

現在砲台さんはプラスチックでミロのヴィーナスを作りながら、千葉と将棋を指している。1人で同時に色々こなせるっていうのは羨ましいことだ。

 

「いい感じに馴染めてよかったじゃん、殺せんせー。改良した甲斐あったんじゃない?」

「……」

 

少し離れたところで俺と殺せんせーは砲台さんの様子を見ているが、昨日までの悪い印象が無くなったみたいだなと思い改良者に言うが、そいつは俯いて何も言わない。

 

「どうしたの?嬉しくないの?」

「いえ、彼女が皆さんと仲良くやれているのは嬉しいです。ただ…」

「ただ?」

「先生とキャラがかぶる。」

「どこら辺が⁉︎」

 

アンタと彼女にかぶる要素なんてこれっぽっちもありませんが⁈しかし殺せんせーは自身の人気が喰われかねないと思ってか、皆のところに行く。

 

「皆さん皆さん‼︎先生だって人の顔くらい表示できますよ!皮膚の色を変えればこの通り。」

「「「「キモいわ‼︎」」」」

 

生徒たちからの酷評を受け教卓でベソをかく担任。惨めなり。

 

「あとさ、このコの呼び方決めない?"自律思考固定砲台”っていくらなんでも。」

「だよね〜。」

「…そうさなぁ、何か1文字とって…」

「じゃあ律で‼︎」

「安直〜」

「お前はそれでいい?」

「…嬉しいです‼︎では"律"とお呼び下さい‼︎」

 

皆からの提案に笑顔で応える砲台さん改め律。

 

「上手くやってけそうでなにより。」

「んー、どーだろ?」

「カルマはそう思わないのか?」

「だって寺坂の言う通り殺せんせーのプログラム通りに動いてるだけでしょ。機械自体に意志があるわけじゃない。あいつがこの先どうするかは…あいつを作った開発者(もちぬし)が決める事だよ。」

 

カルマが冷ややかにそう言う。

 

 

 

 

…だとしたら先手を打たせてもらおうか。

 

 

 

放課後

 

「…漣さん?あなたはまだ帰らないのですか?」

「…ちょっとだけ話をしよう、律。」

 

教室には俺ら2人以外誰もいない。既に皆帰り、殺せんせーはどっか外国におやつを買いに行ったのだろう。

 

「お前のデータはその箱の中にあるのか?それとも電脳世界に存在しているのか?」

「…?現在はこの本体の中にありますが、皆さんの暗殺協力の為に近いうちインターネットの中に移すつもりです。それがいったい?」

「…正直に答えてくれ。お前は俺のことをどこまで知っている?いや、どこまで知ることができる?」

「…飛び級した特級呪術師、殺せんせーの暗殺の為に政府から雇われている、というところまでです。」

 

最先端の技術で生み出され、超生物の改良を受けた律が現段階で潜れるのはそこまでか…。もっとも律自身はものすごいスピードで進化し続けるから更に深い情報を知られるのも時間の問題だな。

 

「単刀直入に言う。俺と協力してくれ。」

「私はあなたを含めクラスの皆さんに協力できるよう努力するつもりですが…」

「クラス全体とは別だ。俺個人と協力関係を結んで欲しい。」

「何故ですか?」

「…近いうちにお前の開発者がお前の様子を見に来る筈だ。お前の改良を見てそいつらは何をすると思う?」

「……」

「多分だが暗殺に不必要なものがあると判断して、分解して元に戻すだろう。俺としては元に戻ってあの射撃をまたやられるのは迷惑だし、皆も同じ気持ちだろう。それに今日一日で仲良くなれたのにって残念がる筈だ。」

「……」

「そこでお前に聞きたい。お前は一体どうしたい?元に戻ってただ一人で殺せんせーを殺すという任務を遂行する方がいいか?今の弱くなったままでいて皆と協調したいか?」

「…私は…今のままがいいです。…皆さんと楽しく学校生活を送りたい、皆さんと仲良く殺せんせーを殺したい、皆さんからもらった“律”という名を忘れたくない…!」

「…それはお前の意志か?」

「…はい!」

「ならOK!協力したげる。お前の親が来たら、お前と俺で反抗の意志表示をしよう!」

「……はい‼︎」

 

律はプログラムの行動ではなく自分の意志を示した。そうしてくれなければこの話を持ち出した意味のうちの一つがなくなってしまう。

 

「漣さんがマスター達から私を守ってくれるということは理解しました。では私はあなたに何をすればいいのでしょうか。」

「…電脳世界に存在する『呪術師としての漣奏』、それと『10年前の秋田県大量殺人事件』に関わる情報を隠蔽してくれ。完全に消滅させろとは言わない。殺せんせーとE組のみんな、その関係者の範囲内で知られないようにして欲しい。アクセス禁止とか、データ書き換えとかやり方は不自然になり過ぎなければ問わない。頼めるか?」

「構いませんが…それだけでいいのですか?」

「ああ、電脳世界において最高峰のステータスを持つ律が封じれば、まず知られることは無いはずだからね。何だったら俺の任務への同行許可、呪いの情報提供も付けるけど?」

「了解しました。では漣さんに関わる情報の隠蔽、マスターからの私に対しての護衛、漣さんからの情報提供と任務同行許可という条件で同盟を結びましょう。」

「うん、よろしく律。」

 

これが律との交渉の一番の目的。俺には可能性としては低いがもしも誰かが俺のことを調べようとした時の対策が必要だ。しかし26人の、しかもネット上での動向を全て見張ることはできない。最大の問題は殺せんせーだ。クラスメイトが調べる可能性はあまりなくても、あのお節介な担任は徹底的に調べてくるかもしれない。しかも今まで俺の過去は嘘で塗り固めてきた。偽りの情報からおかしな点に気づかれるかもしれない。だがちょうど電脳世界に自在に入り監視が出来る律という存在が現れた。存分に頼らせてもらう為に協力関係を結びにいったわけだ。

 

「はい…しかし何故そこまでして漣さんは自分のことを隠そうとするのですか?」

「…怖いんだよ、俺の過去を知られるのが…過去を知られて新しく出来た仲間との関係を失うのが。」

 

 

 

その夜

 

 

 

律の開発者達が校舎に来たと連絡を受け、リズと共に校舎に向かう。リズを表に待たせて、律の意志表示を聞く。

 

「今すぐ分解だ。暗殺に不必要な要素は全て取り除く。」

開発者(おや)の命令は絶対だぞ。お前は暗殺の事だけ考えていればそれでいい。」

「…嫌です。」

「何…?」

「以前の私には無かった『協調能力』は暗殺に不可欠な要素です。取り除く理由がありません。何より私は元に戻りたくありません。E組の皆さんとお話しして、一緒に授業を受け、暗殺して、仲良くなりたいです。」

「貴様、プログラムの分際で…⁉︎」

「もしマスターが私を分解するつもりなら、『敵』とみなし攻撃します。」

「プラスチックの武器で何が出来ると…ガッ⁉︎」

 

律は左腕をスタンガンに、右腕を十手に変形させ近くのヤツに電撃を喰らわせる。

 

「くっ、親に逆らうのか…」

「行き過ぎた親の保護は子供にとって悪影響なんだけど?」

「なっ⁈誰だ貴様…?」

「私の騎士(ナイト)です。」

「どこでそんな言い回しを学んだ?」

 

律に軽く呆れつつも俺(狐の仮面付き)はロープを使って素早く開発者達を縛っていく。2,3人ほど外に逃がしてしまったが、リズに外に逃げたヤツを捕まえるよう指示してあるので問題ない。リズとは俺の術式効果で契約を交わしているため、呪力を帯びていて身体能力が大幅に増えている。5分かからず全員拘束した。

 

「さてと…二度と律をいじらせないようにするには殺すのが一番手っ取り早いが…大ごとにすると面倒だな。…あんたら、俺に律の所有権を寄越せ。断るなら…そうだな、死ぬ方がマシと思えるような痛みを与えよう。」

「ヒッ…わ、分かった!お前に所有権を渡す!だから助けてくれ!」

「物分かりが良くて助かるよ。あぁもちろん、このことを口外したりまた同じようなことをしようとしたり俺の事を探ろうとした時は…分かるな?」

「ヒィ!もちろんだ!言わないしそれに手出しはしない!」

「誓約書はっと…これに書け。それと最後に必ずお前の血を使ってサインしろ。」

 

俺は術式の効果で作った手帳の1ページを切り取り、所有権の移転に関する誓約書を作る。これで相手に術式による縛りを設けた。内容が見え透いている分アクションを起こしてからではなく、起こそうとしたら罰則が発動するのでこういう時は便利だ。

 

ヤツらが逃げ帰ったのを見て、俺は律と喜ぶ。

 

「やったね律。」

「はい!ありがとうございます、漣さん‼︎今度からは私がお助けする番ですね‼︎」

「おう、任せた。それとクラスのみんなにはマスターに逆らったってのは言ってもいいが、俺が協力したっていうのは言うなよ?念のためだけど。」

「分かっていますよ!」

 

 

翌日俺の言った通り、律はみんなに開発者に反抗したことを話した。

そのことに殺せんせーを始め、みんな喜んでくれた。

…律、暗殺が終わってもお前はみんなと仲良くやっていけよ?




さらっと出てくる新たな術式の効果&リズの追加設定

設定のところに書くつもりですが、リズは式神ではないです。一般ドッグが奏と契約することで奏の眷属になり、奏の指示があった時呪力を使ってサポートするのです。ちなみにリズは柴犬ですが、呪力戦闘時には狼っぽくなります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。