呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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第20話:野球の時間

梅雨が明け、暑さで夏が近づくのを感じる今日この頃。

クラスでは近々行われる行事について話し合ってる。

 

「クラス対抗球技大会…ですか。健康な心身をスポーツで養う。大いに結構!…ただ、トーナメント表にE組が無いのはどうしてです?」

「E組は本戦にはエントリーされないんだ。1チーム余るって素敵な理由で。」

「じゃあ今話し合うことってあんの?」

「代わりにエキシビションに出なきゃならないんだよ。っても要は見世物なんだけどな。」

「全校生徒が見ている前で男子は野球部、女子は女子バスケ部の選抜メンバーと戦らされんだ。一般生徒のための大会だから部の連中も本戦には出れない。だからここで…皆に力を示す場を設けたわけ。」

「トーナメントで負けたクラスもE組がボコボコに負けるのを見てスッキリ終われるし、E組に落ちたらこんな恥かきますよって警告にもなる。」

「「なるほど、いつもの(・・・・)やつか〜(ですか)」

 

毎度の事だけどホントにクズの揃い踏みだな。そんな見てて楽しいのか?

 

「でも心配しないで、殺せんせー。暗殺で基礎体力ついてるし、良い試合して全校生徒を盛り下がるよ。ねー皆。」

 

片岡さんの掛け声に女子達がやる気充分な返事を返す。

 

「お任せを、片岡さん。ゴール率100%のボール射出機を製作しました。」

「あ…いや、律はコートに出るにはちょーっと四角いかな…」

「…クスン。漣さん、私戦力外通告を出されてしまいました。」

「…ドンマイ。まあマネージャーとして頑張りなよ、ハッキングとかハッキングとか。」

「律、頑張ってハッキングしてきます‼︎」

「「「「いや待て‼︎」」」」

 

ダメみたいです。戦を制すにはまず情報からでしょう?

 

「俺ら晒し者とか勘弁だわ。お前らで適当にやっといてくれや。」

「寺坂!…ったく。」

 

一方で自ら戦力外通告をしていく寺坂組。まぁほっといていいでしょう。男子は最低9人いればいいわけだし。

 

「野球となりゃ頼らんのは杉野だけど、なんか勝つ秘策ねーの?」

「…無理だよ。最低でも3年間野球してきたあいつらと…ほとんどが野球未経験のE組(おれら)。勝つどころか勝負にもならねー。それにさかなり強ぇーんだ、うちの野球部。とくに今の主将の進藤。豪速球で高校からも注目されてる。…俺からエースの座を奪った奴なんだけどさ。勉強もスポーツも一流とか不公平だよな、人間って。」

 

以前聞いたところ杉野は部活での調子が悪くなり、それに引きずられるように成績も落ちてE組に来たらしく、悔しそうに野球部のことを話す。

だけどそれは決して勝負をハナから諦めているわけではないらしい。

 

「だけどさ…だけど(・・・)勝ちたいんだ、殺せんせー。善戦じゃなくて勝ちたい。好きな野球で負けたくない。野球部追い出されてE組に来て、むしろその思いが強くなった。…E組(こいつら)とチーム組んで勝ちたい‼︎…まぁでも、やっぱ無理かな殺せんせー。」

 

すると殺せんせーはいつのまにかユニフォームに着替えていた。ボールやバット、グローブに何故か野球盤や竹刀を持ち、顔の模様は野球ボールのと同じである。…うん、殺せんせーもやりたいのね、野球。

 

「ヌルフフフ、先生一度スポ根ものの熱血コーチをやりたかったんです。殴ったりはできないのでちゃぶ台返しで代用します。」

「「「用意が良すぎだろ‼︎」」」

「最近の君達は目的意識をはっきりと口にするようになりました。殺りたい、勝ちたい、どんな困難な目標に対しても揺るがずに。その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう‼︎」

 

 

……ん〜、確かに俺も勝ちたいけど、大丈夫かな?

あぁ、相手がどうこうってわけじゃないよ。殺監督のトレーニングのこと。

 

 

 

 

球技大会当日

 

女子達はバスケ部との試合をしに体育館へ。

俺たち男子は野球部との試合をしに野球場に行く。

 

ルールは3イニング制でハンデとしてE組は守備と打撃を分担できる。杉野曰く向こうは俺らをナメてはいるものの、コールド勝ちが当たり前で最低圧勝が義務のため、容赦はしてこないらしい。まあ全然構わないけどね。

しかし肝心の殺監督の姿が見えない。

 

「我らが殺監督はどこにいんの?指揮するんじゃなかったっけ?」

「あそこだよ。烏間先生に目立つなって言われてるから。」

 

俺の疑問に渚が答え、コートの端を指差す。そこにはボールが3つあるだけ…いや、奥の1つが帽子被ってるな。あれが監督か。

 

「遠近法でボールに紛れてる。顔色とかでサイン出すんだって。」

「…なるほど。早速変わったけど、顔色。どゆ意味?」

「えーと、青緑→紫→黄土色だから…『殺す気で勝て』ってさ。」

「細かくないか、その指示?」

「でも実際書いてあるから…。」

「けどまあ確かに、俺らにはもっとデカい目標(ターゲット)がいるんだ。奴等程度に勝てなきゃあの先生は殺せないな。」

「…よっしゃ、殺るか‼︎」

「「「おう‼︎」」」

 

そして試合開始

 

先行はE組で、一番打者は木村。

 

「やだやだ、どアウェイで学校のスター相手に先頭打者かよ。」

 

木村はそうぼやきつつバッターボックスに入っていく。

 

進藤が1球目を投げるが、木村はバットを振れずストライク。実況のメガネ…荒木とやらも煽ってくるが、1球目は様子見が定石だから気にしない。

そして2球目、殺監督のサインを見た木村はバントをする。転がした球はピッチャーとファーストの間に行き、内野を迷わせる。

バントで意表を突き、E組きっての俊足の木村がセーフにする。まず第1段階クリア。

 

続いて二番打者に渚。

今度は三塁線に強く当て、前に出てきたサードの脇を抜きセーフ。

 

さらに三番打者の磯貝。

これもサードとキャッチャーの間を抜け、セーフ。満塁となる。

 

(こいつらなんでこんなにバントが出来る⁉︎進藤級の速球を狙った場所に転がすのは至難の業だぞ!あの遅球の杉野では練習台にもなるまいに‼︎)

 

とか思ってるんだろうなぁ。それは間違えてはないよ、杉野だったらね。

 

 

球技大会に向けて俺らが殺監督から受けたトレーニング、それは…

 

 

「フンニュワァァァァ!!!!」

 

投手(ピッチャー)は300kmの球を投げ

 

「そちらがどうぞ。」

「いえいえ、どうぞそちらがお捕りになって?」

「間に合うかな〜〜?」

 

殺内野手は分身で鉄壁の守備を敷き

 

「校舎裏でこっそりエアギターやってましたね。ノリノリでしたねぇ、三村君。」

 

捕手(キャッチャー)はささやき戦術で集中を乱す。

 

この人間の領域を超えたマッハ野球に付き合わされた後、急速140.5kmの進藤と同じフォームと球種で投げてきた。そのストレートを見極め、徹底してバントのみを練習してきたんだ。殺投手の半分以下の球なんて止まって見えるんだよ。

 

そして四番打者、杉野。進藤との因縁の対決だ。

先の3人同様バントの構えをする。進藤は内角高めのストレートを投げるが、待っていたように杉野は持ち方を変えバットを振る。

杉野が打った球は深々と外野を抜け、スリーベースヒットとなる。

さあ、俺も行きますか。

 

俺はバッターボックスに立ち、バットをバックグラウンド向けて掲げる。ホームラン宣言というやつだ。

これにはE組の皆も驚いている。まあ俺も野球未経験みたいなものだしね。…けどね、人外野球をやれるのは殺せんせーだけじゃないんだよ。

 

進藤はよく見たことのあるフォームで球を投げる。ど真ん中最速のストレート、けど死ぬほど打ってるんだよね、その球は‼︎

カキンッと音がして、俺が打った球は予告通りスタンドに入っていく。敵味方問わずポカンとした表情をしているね、ウケる。

 

「ほら杉野!走った走った!」

「…ッ!おう‼︎」

 

内野を一周する際、進藤めがけて一言言ってやった。

 

「やっぱ遅いね、君の球。」

「なっ…‼︎」

 

これで5点先取。滑り出しとしては良すぎるくらいだ。

 

ベンチに戻って来るとまだ皆唖然としてる。そんなにか?そろそろ傷ついてやろうか?

え、俺がどんな特訓してたって?

なんてことないよ、高専で悟さん&呪骸ズ メイドバイ父さんと野球トレーニングしてただけ。

ただそれは地獄みたいだったよ、いやマジで。

悟さんは無下限呪術で余裕で300km越した異常なスピードの球投げてくるわ、呪骸の守備が鉄壁過ぎるわ、終いには途中で悟さんファーストに入って、一塁踏もうとしても無限発動させて近づけないわ、代わりにピッチャーやりだしたパンダの球はバット10本くらい折るわ、目隠しが腹立つ顔で「早く早く〜」とか言ってくるわ。

頼んだのは俺だけどもう二度とやらんわ、あんな苦行。

 

 

「杉野、ナイス。」

「…‼︎おうよ‼︎」

 

杉野に向かって片手を上げると、意図を理解した杉野も手のひらを上げ満面の笑みでハイタッチをする。

その後ようやく現実に戻ってきた仲間たちにもみくちゃにされたのだが、

 

敵さんのベンチを見ると

 

あ、理事長が入ってきた。

 

あ、理事長が野球場顧問のデコにデコを当ててる。

 

あ、顧問が倒れた。

 

あ、顧問が医務室に運ばれてった。

 

あ、理事長がタイムとった。

 

あ、監督代わりやがった。

 

ええ…もうラスボス降臨かよ…

 

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