呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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ついに始まった本気の奏VS殺せんせー!

不破さんが大喜びしそうなバトルが行われます。


第25話:呪いの時間

毎日が非日常なE組にとってもその日は特に異常だった。

 

新任教師の鷹岡が明かした奏の正体と過去。

奏が見せた謎の力。

鷹岡によって射殺された奏。

その後平然と奏は生き返り、

止めに入った殺せんせーは何本も触手を失って、

今目の前には禍々しさを纏った奏がいる。

 

 

「漣君…君の力は、君のその姿は何なんですか⁉︎」

「呪い。人間の負の感情から生まれた力だよ。そしてこの姿は呪いの力を最大限に発揮するための、あんたを殺す為の本気の姿だよ、殺せんせー。」

 

触手を再生しながら殺せんせーは奏に問う。

蘇ってから誰からの言葉にも返事をしなかった奏が初めてまともな返事をする。

 

『闇より出でて闇より暗く、その穢れを禊ぎ祓え。』

 

隔離校舎のグラウンド一帯に『帳』が降ろされる。

 

「何だ⁉︎」

「夜になってく…」

「殺せんせーを逃がさない為の結界だよ。俺が解くまで内からは出られない。殺せんせーが生徒からの暗殺を断るわけは無いだろうけど念には念をってね。」

 

何人かが出ようと試みるが叩こうが体当たりしようが無駄だ。

 

「安心してよ、殺せんせー。クラスメイトに被害が及ばないよう攻撃範囲は調整するからさ。だから生徒たちの方に逃げる、なーんてしないでね?」

 

そう言った奏はいつのまにか殺せんせーの身体に手が届く位置に動いている。帳に動揺していた殺せんせーは奏の動きを捉えられず、右腕からの強烈な一薙ぎをもろに受ける。

 

「…ニュッ…‼︎」

 

奏は腰につけていた荒不舞雪を抜きながら、殺せんせーに追撃する。そして早くも再生したばかりの触手が切り落とされる。

 

「何…⁉︎」

 

触手が切り落とされたことより、対先生素材で作られていない短刀でダメージを受けたことに殺せんせーは更に動揺する。対して奏は呪力がしっかり効くことが分かり不敵に微笑む。

 

「よかった。しっかり俺の力は効くみたいだね。効かないならそれはそれで別の手を使ってたけど、こんな風に。」

 

奏は黒いコートとして身に纏っているオーラの内側から10本の対先生ナイフを取り出し、殺せんせー向けて一気に投擲する。動揺+触手数本欠けではあるものの殺せんせーは全てのナイフを躱しつつ奏の手元の荒不舞雪に警戒する。しかし奏の本命は荒不舞雪でも正面からの投擲でもない。

躱された10本のナイフが向きをグルリと変え、背後から殺せんせーの触手を5本切り落とす。

 

「「「ナイフの向きが曲がった⁉︎」」」

 

殺せんせーが態勢を崩したのを奏は見過ごさない。頭部目がけて荒不舞雪を振るう、が殺せんせーはすんでのところでマッハで動いて避ける。

 

(流石にこれだけじゃあ殺されてくれないよね。)

 

ナイフは奏の周りに集まり、奏は術式の情報開示をする。

 

「まず一つ目に『累乖呪法』、内容は領域…特定空間内の自分を含めた物体に働く重力の強さと向きを自在に操る術式だよ。発動条件は俺の手で触れた物体。解除するには領域の外に出る必要がある。」

「なるほど…鷹岡先生を空中で固定していたのもその力ですか。しかしペラペラと内容を教えてくれますねぇ。触れられたら事実上死亡の様な能力ですが、果たしてマッハ20の先生に触れられますか?」

「触れられるよ?既に数本触手落としてるから先生のスピードは落ちてるし、そもそもこの『帳』の中で先生は最高速度出せないでしょ?」

 

殺せんせーの煽るかの様な問いかけに奏は確信を持った答えを返す。そして殺せんせー自身も既に自分がかなり追い詰められてることに気づいている。

 

「それとこの術式、触れる以外にもう一つ使い方があるんだよね。」

『累乖呪法・無天召地(むてんしょうち)

 

そう言いながら奏は右手を一回下に降る。すると殺せんせーは強力な重力に押し付けられ地面に這いつくばる態勢になる。

 

「動けないでしょ?領域内のさらに的を絞った底面の直径1mのポイントにかかる重力を無理矢理最大まで強めて下向きにかけることができるんだ。精密な調整ができない分、上空の戦闘機も墜落させられる。」

 

奏が右手を殺せんせーに向けると、宙にあるナイフが剣先を殺せんせーに再び向ける。

 

「さあ、避けられるかな?」

『累乖呪法・死葬乱舞(しそうらんぶ)

 

ナイフが踊るかのように動き、四方八方から殺せんせーを次々と斬りかかる。イトナの触手にも劣らないスピードを見て生徒たちは殺ったと思ったが、奏はナイフの動きを変え別の方向に向かわせる。その先には息切れした様子の殺せんせーがいる。さっきナイフが刺しかかった所には殺せんせーの脱け殻があった。脱皮を使ったのだ。殺せんせーは必死に服の裾やハンカチを使って触手がナイフに触れないよう弾く。

 

(弾いても弾いても戻って来る…厄介ですね。空間内から出れば解除されると漣君は言っていましたが、その範囲が分からない…大方この結界内全部が範囲でしょうか。何にせよこのままじゃ押し負けますね…!)

 

(先生はさ、皆の一挙一動を見てナイフの動きを予測しているから普段楽に避けられるはずだよね。でも『死葬乱舞』にはその挙動が見えない。対して俺は『百々目鬼』も使って先生の逃げる向きをあらゆる視点で追っている。脱皮も使わせたからこのまま触手を少しずつ落としていって逃げ道を塞ぐのが堅実だけど…こっちもこっちでタイムリミットが迫ってるんだよね。どんどん畳み掛けていこう。)

 

奏は今度は左手をナイフの舞に苦戦している殺せんせーに向け、呪いを篭める。呪いが篭るといくつもの氷柱が奏の周囲に出現する。奏は氷柱を殺せんせー目がけて放つ。更に増やされた攻撃を受け、殺せんせーの触手が3本破壊される。

 

「お次に『氷淵呪法(ひょうえんじゅほう)』。領域内の温度や圧力を原子単位で変えることで氷を生成する術式。今みたいに空気中からだったり、すこし集中すれば生物の体内からも生成できる。こんな感じに。」

 

説明をしながら再び殺せんせーに左手を向け意識を集中させる。奏が言い終える前に殺せんせーは動くが、触手の先端が凍りつきパリンと砕ける。

 

「それにしても随分触手失ったねぇ。脱皮もしたしスピードは今どれくらいなのかな?」

 

奏は楽しそうに尋ねる。殺せんせーはハァハァと呼吸をするだけだが、もうマッハ1も出せないだろうと考える。

 

「それじゃあそろそろ捕まって貰おうかな…!」

 

そう言いつつ奏は懐から何かを取り出す。それは植物の種の様なものだ。それを左手で握り潰すと、種の中から蔦が伸びる。蔦は異常な速度で伸び続け、殺せんせーの体を縛りつけようとする。

 

「これは…⁉︎」

「『禍促術式(かそくじゅつしき)』。触れた物体にかかる時間を強制的に早めることができる術式だよ。一方的に早めるしか出来ないから少し使い勝手は悪いけどね。」

 

(あの種の成長速度を上げているのですか‼︎この蔦で捕まえて凍らせるつもりですね‼︎ですがこれならナイフよりまだまし…)ニュヤッ⁉︎」

「蔦にばっか気を取られてると死んじゃうよ〜。」

 

蔦の動きに注意していた殺せんせーは滑って転ぶ。逃げた先の足場が凍っていたのだ。ナイフが3本襲いかかってくるが、胴体に当たる前に殺せんせーは触手を一本犠牲にすることで軌道を逸らし突破する。しかし

 

「その程度で抜け出せたなんて思わないでよ。」

 

移動した直後に再び『無天召地』が発動し、殺せんせーは地面に縫い付けられる。奏は蔦から手を放し、殺せんせーの真上の方に左手を上げ、殺せんせーの真上に氷柱を作る。

 

(これはまずい…‼︎)

 

抜け出せずに焦る殺せんせー目がけて氷柱が落ちてくる。しかし寸前で重力が弱まる。その隙に殺せんせーは脱出する。氷柱が落ちた後の余波で何本かの触手の先が凍るがもう気にしてる暇は無い。奏の様子がおかしいからだ。顔を抑えて片膝をついているのだ。ナイフを躱しながら殺せんせーは思考する。

 

(今までの漣君からの能力開示と挙動から少し情報をまとめましょう…まず「重力操作」、手で触れるか特定の箇所に強制のいずれかの使い方をして、右手で(・・・)操作していますね。最初辺りからのナイフの舞も指先を動かしていましたし、先程の蔦も手の動きを隠すという役割があったのでしょう。)

 

(次に「氷」、こちらは左手で(・・・)操作していますね。氷柱を落とす際に蔦を手放したのが何よりの証拠…ですが蔦を使っていた最中に足下が凍っていた…あらかじめ設置しておいたのか、あるいは足からでも(・・・・・)発動できるのか。後者の方が厄介ですが…あの様子、集中力をかなり使っていると見えます。)

 

(そして「蔦」、正確には名前からして「加速」。これは漣君の言った通り左右問わず手で触れたものにのみ発動するのでしょう。私に触れたらどうなるのかは分かりませんねぇ。)

 

(ここから推測できるのはどれもかなりの集中力を使うということ!おそらく今の漣君は集中力を使いすぎたのでしょう。その結果私にかかっていた重力が解除された。宙に浮いているナイフの性能も落ちてきている…問いかけるチャンスがあるなら今…!)

 

「漣君、そろそろ止めにしましょう!さっきの蘇生はどうやったか知りませんがあれもかなりの集中力が必要となるはずです!そうなら君の身体は限界に近づいているはずでしょう‼︎」

 

その言葉を聞いて、奏は不快そうな表情をする。

 

「余計なお世話だよ…!あんたを殺せるなら…俺は死んでもいい…いや…俺一人の命であんたが殺せるなら…ありがたい救いだ…!」

「救い…死ぬことが救いだと…そんなことを言うんじゃありません‼︎」

「ハハ…教師やってる殺せんせーがウザいと思ったの…初めてだよ。」

 

(しかしまあ殺せんせーの推測は合ってる…集中が途切れてきて累乖と氷淵の同時使用が厳しくなってきた…百々目鬼の数も減らしているのに、呪力の消耗が激しいな…反転術式の分に加えて二つも「拝借」した分の消耗も来てる…呪言も効きが浅いって呼んで弱めの言葉にしてたし…こうなったら気は乗らねぇが…)

 

突然殺せんせーを襲っていたナイフがポトポトと地面に落ちていく。

 

(漣君が術を解いた…?何故…?)

 

殺せんせーは不可解に感じつつも次の手を警戒する。だがもう遅かった。殺せんせーの触手が一気に(・・・)切り飛んだ。

 

(一度にほぼ全部の触手を⁉︎いったいどうやって⁉︎ここに飛ばされる前みたいに何か『命令』された様子も無かったのに‼︎)…え⁉︎」

 

触手を一度に失い膝(?)をつく殺せんせー、その向かいには同じく膝をつき、大量の血を吐いている奏の姿があった。奏は掠れた声で話す。

 

「『因果呪術』…ダメージ操作に関わる力…「回復」に限らず…「再発」も行わさせられる…その分…自分が過去に受けた分も…ぶり返すリスクもあるけど…けどこの痛みは…今は力だ…‼︎」

 

奏は血印台帳をまた取り出し、三度目の「拝借」を行う。憂太との特訓で蓄積した疲労、鷹岡から受けた分のダメージ、呪言と因果呪術の反動と相当危険な状態にさらに「拝借」による拒絶反応が生じる。

 

「ウ…グゥゥ……ウァァァアアア‼︎‼︎」

 

痛みに悶え苦しむ。だが歯を食いしばり耐えて、ラストスパートに入る

 

『赤血操術・赤燐躍動(せきりんやくどう)

 

京都校2年 加茂憲紀の使う術式。自分の血液と血液が付着したものを操る能力。そして「赤燐躍動」は全身の血の流れを早めることによるパワーアップ、いわばドーピング。

 

さらに『禍促術式・時傀促(じかいそく)

時の流れを早める術式を使い、奏自身の時間を早める。

この時すでに奏の肉体は許容量を超えていた。吐血に加え、目からも血が涙のように流れている。

だが奏はもう止まろうとも戻ろうとも思っていない。超高速で殺せんせーを全方位から蹴りや殴りで攻撃する。

 

「アハハ!アハハハハ‼︎楽シイ!楽シイヨ殺センセー‼︎ズット忘レテタ…コノ痛ミダ‼︎」

 

今の奏は今の殺せんせーのスピードを優に越していた。殺せんせーはなすすべなく、痛めつけられる。

 

1分続いた近接攻撃によるラッシュが止まる。奏は殺せんせーと少し距離をとって立っている。

 

「ソロソロ痛ブルノハ終ワリ。最感謝ノ気持チヲ込メテ、最大威力ノ技デトドメヲ刺シテ上ゲル。」

 

『氷淵呪法 奥義・永槍氷斬(エイソウヒョウザン)

 

奏の周囲の空気が一気に冷え、やがて小さな氷の破片が生成されそれらが一つの巨大な氷の槍の形を造る。

 

(これほどまで…‼︎下手に逃げたら余波が生徒たちを襲いかねない‼︎確実に戦力を削ぎ、最後に力を振り絞り広範囲技を使うと表明しつつ、心理戦を持ち出してくる…単純に見栄えなんかで大技を撃たない、あっぱれな作戦…‼︎)

 

殺せんせーは槍ではなく奏を見る。とても苦しいはずなのに、立ってもいられないはずなのに、その顔は穏やかで、しっかりと大地を踏みしめて、奏はニコッと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今マデアリガトウ、殺センセー。バイバイ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう告げて奏は左手を振り下ろす。

 

槍は殺せんせー目がけて地面に突き刺さる。

 

その威力は凄まじく、半径1メートル程のブリザードを巻き起こす。

 

奏はその光景を眺めながらゆっくりと倒れていく。

 

 

 




誰か、誰か私に語彙力を頂戴…
書いてて「あれ、また同じ言葉使ってない⁉︎」ってしょっちゅうおもうのです…



話は変わりますが、龍星雨さんから早速「募集企画」の案を頂きましたのでこのスペースを借りてコメントさせてもらいます。

一つ目の動物園デートは私も陽菜乃ヒロインものにおいて鉄板ネタだと思っています。これはまあやりますね、確実に。奏をあっと言わせる展開になるかは分かりませんが。

二つ目の高専招待は微妙なんですよね。本編でE組の前に何人か出す予定なので、その前に陽菜乃だけ先に行くのかどうか。ただもし行くんだとしたら多分彼が活躍します。彼ですよ、彼。黒と白の人気投票5位の彼。

三つ目のダブル散歩は「それがあったか‼︎」と思いました。実のところ、リズはフラグ立ての要素として出したので本編にどう絡ませるかは作者はあまり考えていなかったのです。これがこの作品を書き終わるまでの作者の汚点トップ3に入るでしょう。(今はそれなりに考えてます。)なのでこの案は有効に使わせてもらいます!

四つ目の倉橋家ご招待も入れる予定ではありますが(逆パターンも然り)問題が一つ。公式キャラクターブックの「名簿の時間」には「男兄弟に挟まれて育った」とあるのですが、イラストファンブックの「卒業アルバムの時間」では「一人っ子で飼い犬のドーベルマンを兄がわりに育つ」とあるのです。いったいどっちを信じればいいのでしょうね…。まあどっちを取るかは作者の気分次第です。



こんな感じに番外編のアイデアを活動報告のところで募集しています!安定ネタから意外性のあるものまでどんどん送って来てください‼︎
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