呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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番外編:ブラコン劇場


西「……出来たーーー‼︎疲れたーーー‼︎」
三「…これが……私…?」
西「大変だったよ、ほんともう。霞ちゃん普段スカート履かないしアクセ付けないし。色々試行錯誤した結果最高の一品が出来たよ。」ツヤツヤ
三「わぁ…これなら奏君…」
西「よしっ、早速自撮りして写メ送れ‼︎」
三「はいっ‼︎」


真「…ねぇ、これでいい返事返ってこなかったら…」
西「やめて言わないで。最悪の事態を考えさせないで。」
真「サラシつけさせて、身長小さく見せるコーデさせたんでしょ?あの子足長くて胸大きいのに、わざわざその強み消してまでゆるふわにするのは……」
西「分かってる。私も本当なら別のファッションをさせてた。けどゆるふわにしないとダメだと思ってるんだもん。だからこれは賭けなんだよ。」
真「霞って奏君絡むと途端にバカになるわよね。」

三輪、突如鼻血を吹いて気絶。

西「⁉︎霞ちゃん⁉︎どうしたの霞ちゃん⁉︎」
真「…桃さん。このメール…」

奏『急にイメチェンなんてどうしたの?珍しいね(笑)。でも似合ってるよ。』

西・真「「……ちょっろ……」」


第33話:水泳の時間

片岡さんの様子が少し変だと感じた俺らは、後をつけてファミレスに来ていた。

そしてその片岡さんは友達らしき女子に勉強を教えている。

 

しかし途中から友達の方の様子がおかしくなった。

「私の事殺しかけたくせに」と言い、涙を流しながら片岡さんの手を舐める。会話は断片的にしか聞こえなかったが、それだけでも彼女が片岡さんにとても依存しているのはよく分かった。

 

やがて友達の方が席を立ち店から出て行くと、片岡さんがこっちを見てきた。…いや大して変装してないけど、気づいてたんかい。

 

「…で、そこの不審者3人組×2は何か御用?」

 

…ん?×2?

その言葉に疑問を感じて後ろを向くと、渚、茅野さん、殺せんせーが後ろの席にいた。俺らだけじゃなかったのね。

 

 

 

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帰り道、片岡さんはあの友人、多川と何があったのか説明してくれた。

去年の夏に片岡さんは多川から泳ぎを教えてくれと頼まれたらしい。何でも好きな男子含むグループで海に行く事になり、カッコ悪いところを見せたくないからだとか。

1回目のトレーニングで何とかプールで泳げるくらいには上達したが、反復練習が嫌いな彼女はそれで充分だと思って練習には来なくなった。

そして案の定、海流に流されて溺れて救助沙汰。

それ以来、今日のように片岡さんに償いとしてテストの度に勉強を教えるよう要求してきた。

片岡さんがE組に落ちたのは、多川に勉強をつきっきりで教えているうちに苦手科目をこじらせたからとのことだ。

 

「それは…片岡は悪くないだろ。」

「そうだよ。彼女、ちょっと片岡さんに甘えすぎじゃ?」

「いいよ。こういうのは慣れっこだから。」

 

磯貝と茅野さんの言葉に苦笑いで片岡さんは答える。

その時、殺せんせーが例の笛を吹いて割り込んできた。

 

「いけません、片岡さん。しがみつかれる事に慣れてしまうと…いつか一緒に溺れてしまいますよ。」

 

そう言いながら、殺せんせーは即席で紙芝居を作り見せてきた。

タイトルは『主婦の憂鬱』

自堕落な生活を送る夫とその妻の話で、夫はその生活を続けながら妻に依存し、妻もまた夫を支えようと依存してしまうというもの。

 

「いわゆる共依存というやつです。あなた自身も依存される事に依存してしまうのです。片岡さん、あなたの面倒見や責任感は本当に素晴らしい。ですが、時には相手の自立心を育てる事も必要です。『こいつならどんなにしがみついても沈まない。』そう思うと人は自力で泳ぐことを辞めてしまう。それは彼女の為にもなりません。」

「……どうすればいいのかな、殺せんせー。」

「決まっています。彼女が自力で泳げるようにすればいい。1人で背負わず先生に任せなさい。このタコが魚も真っ青のマッハスイミングを教えてあげます。」

 

は?泳ぎを教える⁉︎殺せんせーって泳げんの?あんなに水にびびってんのに?俺たちが不思議に思っていると、殺せんせーが振り向いた。

 

「君達にも協力してもらいます。乗りかかった舟ですからねぇ。」

 

 

 

===============

 

 

 

その夜

 

 

 

殺せんせーが多川に泳ぎを教えるためにとった計画。

それは夜な夜な、多川の寝ているうちに彼女をE組専用プールに運び、夢の中だと思わせながら泳ぎを教えるというものだ。

殺せんせー含め俺たちは身バレ防止の為に魚のようなコスプレをする。バレたら犯罪だもの。

 

 

「…どこ、ここ…?…ああ、夢か…」

 

あ、多川が起きた。

彼女のところに人魚のコスプレをした片岡さんが近づく。

 

「目覚めたみたいだね。えーと、こ、ここは魚の国!さぁ、私達と一緒に泳ごうよ!」

「…あんた、めぐめぐに似てない?」

「…違うし、めぐめぐとか知らないし。…魚々だし。」

「何その居酒屋みたいな名前⁉︎」

「(堂々と魚を演じなさい、片岡さん。夢の中だと思わせなければ我々の行為は拉致監禁です。)」

 

こっそりと殺せんせーが近づき、注意を促す。まぁあんたに至っては国家機密だし。

 

「僕の名前は魚太。」←渚

「私の名前は魚子だよ。」←茅野

「魚子は魚なのに浮き輪なの⁉︎」

「私の名前は魚美〜。好きな寿司ネタはカツオだよ〜。」←陽菜乃

「共食いじゃん‼︎」

「俺の名前は魚助。魚の国の板前見習いだ。」←磯貝

「お前が作るんかい‼︎」

「そして我は烏賊デビル。西洋では『悪魔の魚』と呼ばれ、東洋では『深海の三つ星シェフ』と呼ばれる者だ。」←奏

「イカが一流シェフなの⁉︎ってか魚の国じゃ共食いは当然なの⁉︎」

「そんでもって私が魚キング。川を海を自在に跳ねる水世界最強のタコです。」←殺せんせー

「タコかよ‼︎」

 

寝起きなのに元気なことで。

 

「素晴らしい連続ツッコミ。良い準備運動になってますね。」

 

ツッコミが準備運動かどうかは甚だ疑問なんだけど、スルーしていいかな。

 

「入念なストレッチ、早着替え、そして入水‼︎」

 

そのまま殺せんせーは多川をプールに突き落とす。

いきなりトラウマになっていた水中に入れられ多川はテンパっている。

 

「落ち着いて心菜!そこ浅いから!泳げるようになりたいでしょ?少しだけ頑張ってみよ‼︎」

「いっ、今更いいわよ泳げなくて‼︎それを逆手に愛されキャラで行く事にしたし‼︎泳げないって言っとけば…アンタに似てる友達が私の言うこと何でも聞くし‼︎」

 

その言葉にイラついた俺は、備え付けの水鉄砲(イカ墨に似せた黒い着色料を入れたやつ)を撃つ。

 

「ぎゃあ‼︎何すんのよ‼︎」

「うるせぇ、誰かに頼ることしか生きていけないコバンザメめ。貴様みたいな人間を見ていると沈めたくなる。」

「なっ、何よ!魚の分際で‼︎」

「我は軟体動物だ。魚ではない。魚々、そいつを無理矢理にでも泳がせろ。泳がざる者食うべからずだ。」

「はいはい…心菜、歩くよ!まずは体を温っためなくちゃ‼︎」

 

片岡さんが多川を泳がざる為に動き始めたのを見て、俺は舌打ちしながら板場(急造)に入る。あ、今日はカツオやサーモンに加えて、蜆とかいくらもある〜。海鮮丼作ろ〜。

 

「ところで殺…魚キングは水に入らないの?」

 

あ、そうだ忘れてた。渚の言葉で思い出したけど、俺らは多川に泳ぎを教える他に、殺せんせーが本当に泳げるのかどうかを確かめる必要があるんだった。

 

「い、いや。先生、今日のプールは肌焼いて、海鮮丼食べるだけのつもりだったし。」

「真夜中だよ、今。入らなきゃ彼女に泳ぎ教えらんないよ。」

「魚キング、泳がざる者食うべからずは貴様にも当てはまるぞ。」

「ニュヤッ⁉︎魚美さんは泳いでいないのに食べてるじゃないですか⁉︎」

「彼女は特別だ。」

「やった〜!」

「そ、そんなぁ⁉︎差別ですよ!」

 

泣きながら抗議してくるが知ったこっちゃねぇわ。

 

「(奏君って…最近さ…)」

「(ああ…倉橋にはめちゃくちゃ甘いな)」

 

殺殺せんせーは少し泣いた後、水中を眺め何か考える。

 

「…分かりました。君達の言うことももっともです。先生も海鮮丼食べたいので入るとしましょう。」

 

そう言い殺せんせーは躊躇なく水に入った…えぇ⁉︎入りやがった‼︎

 

「さて、まずは基本のけのびから。」

 

 

なんと殺せんせーはまんま魚の形をした着ぐるみ(防水ヘルメット付き)を着て、プールなや入っていた。…ってか、けのびなのか、それは⁉︎

 

「この時のために開発した先生用水着です。完全防水でマッハ水泳にも耐えられます。」

 

何それセコッ。

 

「数々の秘泳法をご覧あれ。まずはバタ足。」

 

殺せんせーがマッハで尾びれを振ると、殺せんせーを中心とした渦潮が出来上がる。

 

「これがセルフ流れるプールです。」

「流れるプールの範疇超えてるわ‼︎」

 

セルフ流れるプールのおかげで絶賛流され中の多川は片岡さんから海での泳ぎ方を教わっている。

一方で俺たちは殺せんせーに文句を言っていた。

 

「水着とかズルいぞ、魚キング‼︎」

「そーだよ‼︎生身で水に入れるかどうか見たかったのに‼︎」

「入れますよ、生身でも。」

 

そう言って殺せんせーはこっちに水着を投げ捨ててくる。

 

「板場に汚ねぇ服を持ち込んで来るんじゃねぇ‼︎」

「ニュヤーーー‼︎⁉︎」

 

殺せんせーの水着が落ちてくる前に『氷淵呪法』で凍らせ、砕く。殺せんせーは泣き叫び、ひーちゃんや磯貝は哀れなものを見るような目をしている。

 

「ねぇ見て‼︎」

 

茅野さんの指差した方には、水面から顔だけ出している殺せんせーがいる。まさか本当に泳げんのか⁉︎…と思ったら

 

 

「…いや違う。マッハで周りの水を掻き出している‼︎」

 

殺せんせーは浮き輪の上に乗りながら、桶を使って全力で水を掻き出していた。

俺は無言で銃(対先生用BB弾入り)を取り出し、みんなに渡してく。

 

「…今がチャンスだ。殺るぞ。」

「「「「イエッサー」」」」

 

そして五人でプールを取り囲み、銃を撃つ。

 

「ニュヤッ⁉︎辞めて‼︎動けないから、やめてーーー‼︎」

 

悲鳴を上げながらもギリギリで殺せんせーは回避し続ける。

 

一方多川は波の発生源の方に引きずりこまれていた。

 

「落ち着いて‼︎泳ぐ方向こっちに変えて‼︎」

「…え⁉︎流れるの止まった…」

「それは離岸流だ。岸に反射して沖に出て行く流れで、たまに貴様みたいな無知な人間が流される原因となるものだ。」

「離岸流に流された時は無理に岸に向かわずに、岸と平行に泳いで流れから抜ける。とにかく絶対パニックにならないこと!」

「知識だけ身につけても…ニュヤッ…ダメですよ……って危ない!朝まで死ぬほど泳いで…ヒィッ!…魚のような流麗な泳ぎを…ちょっ待っ!…身につけましょう…今いい話してるんですから攻撃辞めて‼︎」

「みんな〜、全力で殺れば烏賊デビルがたこ焼きも追加で作ってくれるって〜。」

「「「殺るか‼︎」」」

「ニュヤーーー‼︎」

 

 

 

 

============

 

 

 

 

あの日から数日間、多川の水泳練習は続き、この前彼女が学校のプールで泳げてるのを片岡さんが確認したらしい。

これでめでたく片岡さんは解放されたというわけだ。

 

「これで彼女に責任は感じませんね、片岡さん。これからは手を取って泳がせるだけじゃなく…あえて厳しく手を離すべき時もあると覚えて下さい。」

「はい、殺せんせーも突き放す時あるもんね。」

 

片岡さんが笑顔で返事をしたのを見ると、殺せんせーはおもむろに水に触手を入れた。するとその触手はふやけて膨張していた。

 

「それと察しの通り、先生は泳げません。水を含むとほとんど身動きがとれなくなります。弱点としては最大級と言えるでしょう。とは言え、先生は大して警戒していない。落ちない自信がありますし、いかに水中でも片岡さん1人なら相手できます。ですから皆の自力も信じて、皆で泳ぎを鍛えて下さい。そのためにこのプールを作ったんです。」

 

 

 

…全てお見通しだったわけか。本当にこの先生には敵わないなぁ。でもいつかはしっかり殺すから、楽しみに待っとけよ。




ゆるふわコーデの三輪ちゃんのイラスト?作者は絵心がないので書けませんよ?皆さんでイマジンして下さい。むしろ誰か書いてきてください(無茶振り)

三「そんな⁉︎」

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