呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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今回も三人称視点でやっていきます。

それとタグのオリキャラをオリキャラ多数に変えます。


第34話:ビジョンの時間

(このE組(クラス)は大したクラスだ。

 

成績最下層の掃き溜めと言われながら、中間テストじゃ妨害にも負けず平均点を大きく上げた。

 

球技大会じゃ暗殺を通じて養った力で野球部に勝っちまった。

 

環境も向上してる。最近じゃE組専用のプールなんてのが出来る有様。

 

大したクラスだ。だから…

 

 

だからこのクラスは居心地が悪い。)

 

 

 

「おい皆、来てくれ‼︎プールが大変だぞ‼︎」

 

岡島の焦った様子を見て、寺坂はニヤリと笑う。

 

 

 

 

「…ッ!メチャクチャじゃねーか…」

 

プールは酷い有り様だった。

木製のデッキチェアや飛び込み台はバラバラにされてプールに放り込まれており、ペットボトルや空き缶なんかも捨てられている。

 

「ビッチ先生がセクシー水着を披露する機会を逃した‼︎」

「知るか、そんなこと。」

「ちょっと奏‼︎後で覚えておきなさい‼︎」

 

一部がそんなやり取りをしている時、渚は寺坂、村松、吉田の3人がニヤニヤ笑っているのに気がついた。

寺坂は渚の視線に気づき、上から降りてくる。

 

「ンだよ、渚。何見てんだよ。まさか…俺らが犯人とか疑ってんのか?くだらねーぞ、その考え。」

「そーだよ、渚。疑う必要なんて無いよ〜。」

 

渚の首根っこを掴む寺坂の腕を抑えながら、奏が言う。

 

「あ…?」

「どこのどいつがやったのか知らないけどさー、俺らへの嫌がらせのつもりなら意味ないんだから。ね、殺せんせー?」

「全くです。犯人探しなどくだらないからやらなくていい。」

 

そう言うと殺せんせーはマッハでプールを元の状態に戻す。

 

「はい、これでもとどおり!いつも通り遊んで下さい。」

 

皆が元気よく返事するのに対して、寺坂は不愉快な様子で去っていく。

 

 

 

 

 

プールの時間中、奏は木陰で昼寝をしていた。

どうも今日は気分が乗らずプールに入らなかったのだ。

目が覚めた時には誰もいなくて、時間を見ると昼休みの途中だった。

多分気を遣って皆起こさないでくれたんだろうと思い教室に戻ろうとすると、ドン!と何かが木にぶつかる音がした。

少し気になって音のした方へ行くと、村松が倒れていた。

奏は手を差し出しながら、問いかける。

 

「大丈夫か?」

「あっ、あぁ…奏か。すまねぇ。」

「いったい何があったのさ。」

「それがよぉ…この前の模試の直前にあのタコが放課後ヌルヌル強化学習開いたろ。」

「ああ、あれか。何故か俺が教えるの三分の一くらいやらされたやつ。…そういえば村松も受けてたな。」

「おう。そしたら模試の結果が過去最高でよ。」

「へぇ…それで?」

「けどよ、俺と吉田と狭間は寺坂から「全員でバックレようぜ。」って言われててだな…」

 

そこまで聞いて奏は寺坂が村松を突き飛ばしたのだと理解した。

 

「…プール壊したのもお前らだろ?」

「あぁ…タコに嫌がらせのつもりでやろうって寺坂が提案してきてな…お前の言うように嫌がらせにならなかったけどな。」

 

そんな事を話していると、教室の窓から煙が上がっていた。

 

「……何やってんだ、アイツ。」

 

 

 

 

奏と村松がヌルヌルの話をしていた頃、教室に入ってきた寺坂は吉田と殺せんせーがバイクの話題で意気投合しているのを見てイラついていた。

そのまま怒りに任せて、殺せんせー手作りの木製バイクを蹴り倒した。

吉田を始めとして皆が寺坂を責めるが、寺坂は詫びることなく机の中から殺虫剤を取り出しぶちまけた。

 

「寺坂君‼︎ヤンチャするにも限度ってものが…」

「触んじゃねーよ、モンスター。」

 

殺せんせーは寺坂の肩を触手で掴むが、寺坂はそれを払いのける。

 

「気持ちわりーんだよ。テメーも、モンスターに操られて仲良しこよしのE組(テメーら)も。」

 

皆が黙る中、カルマがいつもの調子で煽りだす。

 

「何がそんなに嫌なのかねぇ…。気に入らないなら殺しゃいいじゃん。せっかくそれが許可されてる教室なのに。」

「何だカルマ、テメー俺にケンカ売ってんのか。上等だよ。だいたいテメーは最初から…」

 

カルマの挑発に乗せられた寺坂だが、そこまで言いかけると口元がカルマに押さえつけられてた。

 

「ダメだってば。ケンカするなら口より先に手ェ出さなきゃ。」

「…ッ‼︎放せ‼︎くだら…「セイハー‼︎」ヘブゥ⁉︎」

 

カルマの手を振りほどいた瞬間、寺坂の顔面に奏の飛び蹴りが炸裂した。

寺坂は教室の端の方に吹っ飛ばされ、カルマ含め全員が軽く引いていた。

 

「よしっ。」

「よしっ、じゃねーよ‼︎何すんだ奏テメー‼︎」

「え…さっきの煙起こしたのお前だろ?ムカついたからカルマの言うように先手必勝で…」

「くそっ…やってられっか!」

 

そう言い捨てて寺坂は去っていった。

 

「いやー、まさか奏が乱入してくるとはねー。」

「?何か不都合あった?」

「別に〜。」

 

カルマは楽しそうにケタケタ笑うが、奏は不思議そうな顔をする。

それを見てE組メンバーは「奏はカルマとは別ベクトルでヤバくなってる。」と再認識した。

 

そんな事を思われてるとはつゆ知らず、奏は陽菜乃のところに行く。

 

「ひーちゃん、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ〜。けどちょっと意外だった。」

「ん?さっきの飛び蹴りのこと?」

「ううん。そっちはむしろやるんじゃないかなって思ってた。」

「え。」

「かーくんはすごく友達思いだから、プール壊されたの見たら寺りんを真っ先にボコボコにすると思ってたよ〜。」

「え〜…そんな風に思われてたんか…。けどあの時はさ、少し頭がボーッとしてたんだよね。めんどくさかったから殺せんせーに振ったけど…思い出したらムカついてきたわ。また明日飛び蹴りしたろ。」

「結局やるんだね…」

((((ドンマイ寺坂、けど仕方ないな。))))

 

 

 

 

==================

 

 

 

深夜

 

 

寺坂はプールに通じる川に何かの薬剤を流し込んでいた。

その様子を見ていた白装束の男、シロが拍手をしながら現れた。

 

「ご苦労様。プールの破壊、薬剤散布、薬剤混入、君のおかげで効率よく準備ができた。はい、報酬の10万円。また次も頼むよ。」

 

シロが寺坂に金を手渡すと、イトナも姿を現わす。

 

「外部の者が動き回ればあの鼻の利くタコはすぐ察知してしまう。だから寺坂君、君のような内部の人間に頼んだのさ。イトナの性能をフルに活かす舞台作りをね。」

 

イトナの姿を見て、寺坂はあることに気づく。

 

「…なんか変わったな。…目と髪型か?」

「その通りさ。意外と繊細な所に目が行くね。髪型が変わった。それはつまり触手が変わったことを意味している。前回の反省を活かし、綿密な育成計画を立てて、より強力に調整したんだ。」

 

寺坂の疑問に答えた後、シロは彼の心を誘惑するような言葉を続ける。

 

「寺坂竜馬、私には君の気持ちはよく分かるよ。あのタコにイラつくあまり…君はクラスで孤立を深めている。だから君に声をかけ協力を頼んだ。安心しなさい。私の計画通り動いてくれれば…すぐにでも奴を殺し、奴が来る前のE組に戻してあげよう。その上お小遣いも貰える。良い話だろ?」

 

その時、イトナが寺坂に顔を近づける。

 

「お前は…あのクラスの赤髪の奴や銀髪の奴より弱い。何故か分かるか?お前の目にはビジョンが無い。勝利への意志も手段も情熱も無い。目の前の草を漠然と喰ってるノロマな牛は…牛を殺すビジョンを持った狼には勝てない。」

「んだとテメー‼︎俺がノロマな牛だって言いたいのか⁉︎脳ミソまで触手か⁉︎」

 

イトナの毒舌にキレた寺坂が殴りかかろうとする。

イトナも触手を出して返り討ちにしようとした時、

 

「はーい、ストップ。仲間内で潰し合わないの。」

 

二人の間に金髪の青年が割って入ってくる。

金髪の青年の左頬には風を模したようなタトゥーが描かれ、左目の黒目と白目の部分が逆転している。

寺坂の拳を片手で押さえ、イトナの首筋には手刀が寸止めされていた。

イトナは何も言わず、触手を戻して去っていく。

 

「…誰だ、あんた?」

「あぁ、すまないね。まだ紹介していなかったね。彼は御堂 葉月(ミドウ ハヅキ)。君のクラスのもう一人の化け物、漣奏を相手してもらう呪詛師だ。」

「よろしくねー、寺坂クン。」

 

寺坂は葉月の戯けた態度にカルマを重ね合わせた。もっともカルマとは比べ物にならないほどの邪気を放っているのだが。

 

「イトナへの躾が行き届いてなかったことは謝る。だが彼とも仲良くしてやってくれ。我々は戦略的チームなんだから。クラスで浮きかけている今の君なら…不自然な行動も自然にできる。我々の計画を実行するのに適任なんだ。決着は…今日の放課後だ。」

 

 

それを聞いて寺坂はニヤリと笑い、イトナとは別方向に帰っていく。

 

 

寺坂がいなくなった後、葉月はシロに問いかける。

 

 

「ねぇねぇ、彼に本来の作戦伝えてないけどいいのー?」

「伝えると彼はNoと言うだろ?」

「そりゃそうだけどさー…」

「君たちにとっても好都合だろう?寺坂君は後悔して、タコや漣君や生き残った生徒たちは絶望する。強力な呪いを生むならもってこいだろう。」

「まぁ確かにね〜。」

 

 

そう言うと葉月はフワリと木の枝の上に立ち、三日月に自分の愛用する大鎌の形を重ね合わせる。

そしてボソリとシロに聞こえないように呟く。

 

 

「…神無様から頼まれたけど、失敗しないかな〜…」

 

…と。

 

 

 

 

 

 

 




寺坂編は結構区切る(当社比)つもりです。
よっていつもより1話が短くなるはずです。
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