呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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作者はうちが誇るブラコン(キャラ崩壊)のポンコツ、三輪ちゃんに投票しました。


第35話:流される時間

翌日の昼休み

 

 

殺せんせーはお昼ご飯(菓子パンのみ)を食べながら、なぜか涙を流している。

 

「なによ、さっきから意味もなく涙流して。」

 

堪えきれずにイリーナが尋ねるが、殺せんせーは「いいえ」と否定する。

 

「鼻なので涙じゃなくて鼻水です。目はこっち。」

「「「まぎらわしい‼︎」」」

「どうも昨日から体の調子が少し変です。夏カゼですかねぇ…」

 

 

 

そしてもう一方では

 

 

「…かーくん、顔赤いよ?大丈夫?」

「ん〜〜?大丈夫〜…だと思う〜。」

「さっきからあんま箸進んでねーぞ?」

「マジで?ボーッとしてたわ。」

 

奏の体調も変だった。陽菜乃や前原の指摘した通りどことなく風邪のようだが、奏は大したことなさそうに振る舞う。

 

そんな中、朝から来ていなかった寺坂が教室に入ってくる。

と同時に、殺せんせーが泣きながら…いや、鼻水を撒き散らしながら寺坂の肩を掴む。

 

「おお、寺坂君‼︎今日は登校しないのかと心配でした‼︎昨日君がキレた事ならご心配なく‼︎もう皆気にしてませんよね?ね?」

「…う、うん…汁まみれになっていく寺坂の顔の方が気になる。」

 

昨日まで寺坂に飛び蹴りを見舞ってやろうと思っていた奏も、その気を失うレベルで粘液がものすごかった。半分は体調不良が原因だが。

 

「昨日1日考えましたが、やはり本人と話すべきです。悩みがあるなら後で聞かせてもらえませんか?」

 

寺坂は殺せんせーのネクタイで顔を拭き、ケンカを売る。

 

「おいタコ、そろそろ本気でブッ殺してやんよ。放課後プールへ来い。弱点なんだってな、水が。てめーらも全員手伝え‼︎俺がこいつを水ン中に叩き落としてやっからよ‼︎」

 

皆からの返答は来ない。やがて前原が代表して言う。

 

「…寺坂、おまえずっと皆の暗殺には協力してこなかったよな。それをいきなりお前の都合で命令されて…皆が皆ハイやりますって言うと思うか?」

「ケッ、別にいいぜ、来なくても。そん時ゃ俺が賞金百億独り占めだ。」

 

そう言って寺坂は教室から出て行き、その後を追って渚も出て行く。

 

「…なんなんだよあいつ…」

「もう正直ついてけねーわ。」

「私行かなーい。」

「同じく。」

「俺も今回はパスかな。」

 

今まで一緒に行動してきた吉田と村松が不参加の意思を示すと、陽菜乃、岡野、千葉が続けてパスする。クラス全員が不参加の姿勢を取るが、ただ一人だけは違った。

 

「皆行きましょうよぉ。」

 

誰であろう、殺せんせー(ターゲット)である。

 

「うわ⁉︎粘液に固められて逃げられねぇ‼︎」

 

杉野の叫んだ通り、殺せんせーの粘液が教室中に満たされて全員の足元を拘束していた。

 

「せっかく寺坂君が私を殺る気になったんです。皆で一緒に暗殺して気持ちよく仲直りです。」

「「「まずあんたが気持ち悪い‼︎」」」

「おい!奏と倉橋がいねぇぞ‼︎」

「あいつらさきに氷で足場作って逃げやがった‼︎」

 

 

 

===============

 

 

そして放課後

 

殺せんせーの泣き落としの結果、奏、陽菜乃、カルマの3人を除いて全員が渋々プールに入っている。

寺坂はシロから合図を送る発信機として渡されたピストルを持って、偉そうに指示している。

その様子を奏と陽菜乃は校舎の屋根上から『百々目鬼』を介して見ていた。

 

やがて殺せんせーがプールサイドに現れた。

寺坂は殺せんせーと対峙して銃口を向ける。

 

「…覚悟はできたか、モンスター。」

「もちろんできてます。鼻水も止まったし。」

「ずっとテメーが嫌いだったよ。消えて欲しくてしょうがなかった。」

「ええ、知ってます。暗殺(これ)の後でゆっくり2人で話しましょう。」

 

顔の模様を緑の縞々にした殺せんせーにイラついた寺坂が引き金を引く。

 

 

 

しかしイトナは現れない。

 

 

 

代わりにプールの反対側で爆発が起こり、水を堰き止めていた水門が破壊される。

水流の勢いは凄まじく、生徒たちは逆らえずに流されていく。

 

 

爆発を視認すると同時に奏はすぐに救助に動き出す。

少し遅れてプールサイドにいた殺せんせーも救助しに行く。

 

 

その様子を少し離れたところからシロ達は見ていた。

 

「マッハで助けては生徒の体が耐えられない。気遣って助けてる間に…奴の触手はどんどん水を吸っていく。」

「少しの水なら粘液を出せば防げるぞ。」

「そうだねイトナ。周囲の水を粘液で固めて浸透圧を調整できる。だが寺坂君が教室に撒いた薬剤の効果で…奴の粘液は出尽くしている。水を防ぐ手段は無く、生徒全員を助ける頃には…奴の触手は膨れ上がって自慢のスピードを失っているよ。」

 

 

 

============

 

不参加のカルマもまた爆発音を聞いてプールサイドに来ていた。

 

「…何これ?爆音がしたらプールが消えたんだけど。」

「…俺は…何もしてねぇ。話が違げーよ…イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに…」

「…なるほどねぇ…自分で立てた計画じゃなくて、まんまとあの二人に操られてた…ってわけ。」

「言っとくが俺のせいじゃねーぞ、カルマァ‼︎こんな計画やらす方が悪りーんだ‼︎皆が流されてったのも全部奴等が…」

 

そう必死で言い訳をする寺坂をカルマは殴り飛ばす。

 

標的(ターゲット)がマッハ20で良かったね。でなきゃお前、大量殺人の実行犯にされてるよ。流されたのは皆じゃなくて自分じゃん。人のせいにするヒマあったら…自分の頭で何したいか考えたら?」

 

そう言い去り、カルマは皆を追って下に降りていく。

 

 

 

============

 

 

シロは知らなかったが、スピードを出せないのは奏もだった。高速移動を可能にする『禍促術式』は他人にかける場合、成長速度を急速に上昇させるもので純粋なスピード向上は不可能。奏一人が高速化しても皆が追いつかないのだ。

 

(『氷淵呪法』で水を凍らす…いやダメだ、急速冷凍で皆の身体がもたない。かといって一人一人触れて『累乖呪法』で引き上げるのも今のコンディションじゃあキツい…なら!)

 

奏は『禍促』を使い自らのスピードを上げて、一気にまだ誰も流されてきていない下流まで降りる。そしてポケットから種を取り出し、両手でそれぞれ握りつぶす。

すると種から巨大な蔦がグングンと伸びていき、流されてきた生徒たちを安全に絡め取っていく。

 

「皆、無事か⁉︎」

「あ…あぁ、助かった…」

「サンキュー…奏。」

 

(上からは殺せんせーに任せてあるから大丈夫なはず…実際流れてこないし。問題は…誰が仕組んだか。寺坂にはそんなこと企む頭も、やる覚悟もねぇ…となると…)

 

そう考えていると、横からバシャン!と何かが水に落ちる音がする。

振り向くと全身びしょ濡れで触手が膨らんだ殺せんせーと頭に生えた触手を振り回しているイトナ、それを傍観するシロがいた。

 

 

(やっぱ…こいつらか。)

 

 

奏は殺せんせーの援護に入ろうとするが

 

 

 

「奏!後ろだ‼︎」

 

 

 

千葉の声に反応して後ろを向くと、眼前に鎌の刃が迫っていた。

 

 

 

奏は咄嗟に左に避け、そのままバックステップで距離をとる。

改めて前を見ると、鎌を持った知らない男がいる。

 

(こいつ…呪詛師か。しかも相当『できる』な…)

 

「初めまして、漣奏クン。そして八咫烏。僕は御堂葉月。初対面でなんだけど僕と一緒に来てくれない?」

「…何が狙い?」

「言ったらついてきてくれる?」

「ノーだな。」

「君のお友達の安全を保障したとしても?」

「信用できねーから却下だ。現に今殺されかけたんだからな。」

 

 

奏は葉月と名乗った男の飄々とした態度に五条を重ね合わせてイラッと来ていた。当の本人はにこやかに交渉してくるのがまた一層苛つかせる。

同時に冷静に状況を分析する。

 

(殺せんせーも気になるが…前回の暗殺から判断して割り込んでこない限りは外野を狙う可能性は無い。だがこいつは分からん。術式の範囲も分からない以上離れた場所に誘導するべきだな。…問題は俺の体調だな。二重の意味であまり時間はかけられない。)

 

 

皆は不安そうな顔で奏を見るが、奏は振り返らずに手を振る。

 

「巻き込まれないようにそこの岩場まで下がっとけ。こいつは俺が相手する。」

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、連れ帰るのは確定として……少しは楽しませてよ?」

「決めた。寺坂の代わりにお前をボコす。」

 

 

 

 

 

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