崖下の水場に叩き落とされた殺せんせーは膨張した触手でイトナの攻撃を防御するが、
(速い‼︎重い‼︎前よりもはるかに…‼︎)
以前は本数で攻めてきたイトナだが、今回の触手は威力・速度重視のものとなっている。パターンこそ単純化したものの使いやすさは向上している。
対して殺せんせーは全身が濡れて動きが鈍くなっている。更に寺坂が混入した薬剤の効果で触手自体が弱体化しており、殺せんせーは防戦一方である。
その様子を生徒たちは見ることしかできない。
「まじかよ…あの爆破はあの2人が仕組んでたとは。」
「でも押されすぎな気がする。あの程度の水のハンデはなんとかなるんじゃ?」
「水のせいだけじゃねー。」
「寺坂…!」
「力を発揮できねーのはお前らを助けたからだよ。見ろ、タコの頭上。」
そう言って皆は寺坂が指を指した方を見る。そこには崖や樹にしがみついている吉田と村松、原がいる。
「助け上げた場所が触手の射程圏内に‼︎」
「特に…ぽっちゃりが売りの原さんが今にも落ちそうだ‼︎」
「あいつらの安全に気を配るからなお一層集中できない。あのシロの奴ならそこまで計算してるだろうさ。恐ろしい奴だよ。」
「のんきに言ってんじゃねーよ、寺坂‼︎原たちあれマジで危険だぞ‼︎お前ひょっとして…今回の事全部奴等に操られてたのかよ⁉︎」
前原が突っかかってくると、寺坂は鼻で笑う。
「あーそうだよ。目標もビジョンも無ぇ短絡的な奴は…頭の良い奴に操られる運命なんだよ。だがよ、操られる相手くらいは選びてぇ。奴らはこりごりだ。賞金持って行かれんのもやっぱり気に入らねぇ。」
そしてカルマの胸をドンッと叩く。
「だからカルマ!テメーが俺を操ってみろや。その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ‼︎カンペキに実行してあそこにいるのを助けてやらァ‼︎」
「良いけど…実行できんの、俺の作戦?死ぬかもよ。」
「やってやんよ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ。」
そう言って寺坂は勇んで下に降りて行くが…
「え、まだ作戦考えてないけどもう行くの?」
「え、あ、うん、まだなの⁉︎」
カッコ悪かった。
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数分後
「思いついた!原さんは助けずに放っておこう‼︎」
カルマの提案した作戦に皆呆れと引きが混ざった表情をしていた。
「おいカルマ、ふざけてんのか?原が一番危ねーだろうが‼︎ふとましいから身動き取れねーし、ヘヴィだから枝も折れそうだ‼︎」
「…寺坂さぁ、昨日と同じシャツ着てんだろ。同じとこにシミあるし。ズボラだよなー。やっぱお前悪巧みとか向いてないわ。」
「あぁ⁉︎」
「でもな、頭はバカでも体力と実行力持ってるからお前を軸に作戦立てんの面白いんだ。俺を信じて動いてよ。悪いようにはならないから。」
「…バカは余計だ。いいから早く指示よこせ。」
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カルマが作戦を立てている間も殺せんせーは防ぐことしかできなかった。そして腕だけでなく足元の触手も水を吸って動かなくなってくる。
「とどめにかかろう、イトナ。邪魔な触手を全て落とし、その上で「心臓」を…」
イトナが触手の先端を刃の形に変化させた時、寺坂が叫ぶ。
「おいシロ‼︎イトナ‼︎」
「…寺坂君か、近くに来たら危ないよ?」
「よくも俺を騙してくれたな。」
「まぁそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組で浮いてた君にとっちゃ丁度良いだろ。」
「うるせぇ‼︎てめーらは許さねぇ‼︎」
そう言うと寺坂はシャツを脱ぎ、イトナの前に飛び降りる。そしてシャツを盾がわりとしてイトナに叫ぶ。
「イトナ‼︎テメェ俺とタイマン張れや‼︎」
「止めなさい、寺坂君‼︎君が勝てる相手じゃない‼︎」
「すっこんでろふくれタコ‼︎」
寺坂の無謀な挑戦を殺せんせーは止めさせようとし、イトナは冷ややかな目で見て、シロは可笑しそうに笑う。
「布切れ一枚でイトナの触手を防ごうとは健気だねぇ。黙らせろイトナ、殺せんせーに気をつけながらね。」
そしてイトナは触手を勢いよく振るう。
それを見て渚はカルマに心配そうに言う。
「カルマ君‼︎」
「いーんだよ、死にゃしない。あのシロは俺達生徒を殺すのが目的じゃない。生きてるからこそ殺せんせーの集中を削げるんだ。原さんも一見超危険だけど、イトナの子の的になる事はないだろう。たとえ下に落ちても殺せんせーは見捨てないのは体験済みだし。だから寺坂にも言っといたよ。気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言やスピードもパワーもその程度。死ぬ気で喰らいつけって。」
その言葉通り、寺坂は死にそうな勢いで触手を抑えつけていた。
「よく耐えたねぇ。ではイトナ、もう1発あげなさい。背後のタコに気をつけながら…」
その時、イトナの身体に異変が起こった。
急にクシャミをし出し、止まらない。
さらにシャツが触れた部分から、触手がドロドロと溶けていく。
「寺坂のシャツが昨日と同じって事は…昨日寺坂が教室に撒いた変なスプレー、アレの成分を至近距離でたっぷり浴びたシャツって事だ。それって殺せんせーの粘液ダダ漏れにした成分でしょ。イトナだってタダで済むはずがない。」
そしてイトナの後ろでバキッという音がする。
振り向くと落ちてきた原さんを殺せんせーが抱き抱えている。
カルマはみんなにハンドサインを出し、寺坂は崖と樹にしがみついている吉田と村松に声をかける。
「吉田!村松‼︎お前らは飛び降りれんだろ、そこから‼︎」
「「はァ⁉︎」」
「水だよ水‼︎デケーの頼むぜ‼︎」
寺坂の言いたいことを理解した2人は勢いよく飛び降りる。
一方でカルマもみんなに指示を出し、崖上に移動していた皆も飛び降りる。
イトナが気づいた時には既に遅く、皆が起こした水飛沫を浴びて触手が膨らむ。
「だいぶ水吸っちゃったね、殺せんせーと同じ水を。あんたらのハンデが少なくなった。で、どーすんの?俺らも賞金持ってかれんの嫌だし、そもそも皆あんたの作戦で死にかけてるし、ついでに寺坂もボコられてるし。まだ続けるなら、こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」
カルマの言う通り、皆それぞれ手やバケツ、ビニール袋で水をすくって構える。
イトナはたじろぐが、直後怒りの顔に変わりまだ戦おうとする。
その直後
イトナの横から何かが飛んできて、その衝撃でまたもや水飛沫を浴びることになる。
飛んできたものは
「痛ったぁ……君、体調悪いはずなのになんでそんなに動けんの…」
大鎌持ちの呪詛師、葉月だった。
それに続いて葉月が吹き飛んできた茂みの方から奏が出てくる。
次回、奏対葉月です。