呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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第48話:異変の時間

奏、陽菜乃、小夜、三輪、千葉、速水の6人がホテルに最後に戻ってきた。

6人は真っ先に異変に気がついた。

 

前原は呼吸が荒く、身体は震えている。

三村は腹を抑えながら机に突っ伏し、コップを落としている。

狭間や村松、中村はそれぞれ机と壁にもたれかかり、神崎も吐き気を抑えるかのようにうずくまる。

岡島は何故か鼻血が止まらず必死に塞ごうとし、杉野と原は苦しそうに喉元を抑えて俯いている。

どれも明らかに疲労から来るものではない。

 

「どうなってるんだ…?」

 

奏は烏間の姿を探す。

ちょうど彼はフロントと話をしていた。

恐らく病院がどこにあるのか聞いているのだろうが、こういう小さな島では小さな診療所しかなく、医者もずっと島にはいない。

時間ももう遅く、最終便は既に出てしまっている。

 

その時、烏間の携帯に電話がかかってくる。

発信者は変声期を使っていた。

 

『…やぁ、先生。可愛い生徒がずいぶん苦しそうだねぇ。』

「何者だ。まさかこれはお前の仕業か?」

『ククク、最近の先生は察しがいいな。人工的に作り出したウイルスだ。感染力はやや低いが、一度感染したら最後…潜伏期間や初期症状に個人差はあれ、1週間もすれば全身の細胞がグズグズになって死に至る。治療薬も一種のみの独自開発(オリジナル)でね、あいにくこちらにしか手持ちがない。渡すのが面倒だから…直接取りに来てくれないか?』

 

 


 

 

謎の人物は一方的に話を進め、一方的に切り上げた。

 

その内容は殺せんせーを1時間以内に山頂の『普久間島殿上ホテル』の最上階に、1時間に持ってくること。

運び屋は最も背の低い男女2人、すなわち渚と茅野を指定し、外部と連絡を取ったり少しでも遅れた場合、薬は即爆破するとのこと。

 

そしてそのホテルというのがこれまた厄介な存在だった。

 

『伏魔島』の別名を持つこの島のあのホテルは国内外のマフィア勢力や、それらと繋がる財界人が出入りしているらしい。

私兵の警備、違法な商談、ドラッグパーティー……などなど黒い話ばかりで警察も迂闊に手を出さないとのこと。

 

 

そこまで聞いて、奏は無言で立ち上がった。

 

「奏君、どうした?」

「俺が1人で行ってきます。」

「「「「え⁉︎」」」」

「それは認められない。危険過ぎる。」

「じゃあ素直に渚と茅野さんに行かせます?それこそ誘拐されて逃げられたら終わりですよ。」

「シカトすりゃいーだろ!今すぐ都会の病院に…」

「それはダメだ、寺坂。向こうはオリジナルのウイルスで1週間あれば死ぬと言っていた。となると抗ウイルス薬は製作者以外持ってない。例えあったとしても製作に1週間以上かかるのなら詰みだ。」

 

もし仮に殺せんせーが動けていたら、まだ手の打ちようはあっただろう。

しかし殺せんせーは24時間身動きができない。

 

「流石に1人はあかんとちゃいます?ウチも行きます。」

「私もです。奏君の友達がここまでされて見過ごすわけにはいきません。」

 

小夜と三輪も付いて行こうとするが、殺せんせーが三人を呼び止める。

 

「待ってください。まだ良い方法がありますよ。律さんに頼んだ下調べも終わったようですし、元気な人は来て下さい。汚れてもいい格好でね。」

 

 

 

 

 

殺せんせーが指示したのはホテルの裏手の崖だ。

 

『あのホテルのコンピュータに侵入して、内部の図面を入手しました。警備の配置図も。正面玄関と敷地一帯には大量の警備が置かれています。フロントを通らずホテルに入るのはまず不可能。ただ一つ、この崖を登ったところに通用口がひとつあります。まず侵入不可能な地形ゆえ…警備も配置されていないようです。』

 

「敵の意のままになりたくないなら手段は一つ、患者9人と看病に残した2人を除き、動ける人員全員でここから侵入し、最上階を奇襲して、治療薬を奪い取る‼︎」

 

殺せんせーの提案に全員が息を飲む。

目に見えて危険なのはもちろん、やり口からして相手は確実にプロだろう。

加えて殺せんせーは生徒たちの安全を守れない。

 

「どうしますか?全ては君達と…指揮官の烏間先生次第です。」

 

「…それは……ちょっと…難しいだろ。」

「そーよ、無理に決まってるわ‼︎第一この崖よ、この崖‼︎ホテルに辿り着く前に転落死よ‼︎」

 

烏間もイリーナと同意見だった。申し訳ないと思いながらも奏に頼もうとして顔を上げた時、そこには誰もいなかった。なんと既に皆、崖を軽々と登っていた。

 

「いやまぁ…崖だけなら楽勝だけどさ。」

「いつもの訓練に比べたらね。」

「ねー♪」

 

一度全員が止まって、烏間の方を見下ろす。

 

「でも未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてないから、烏間先生、難しいけどしっかり指揮を頼みますよ。」

「おお、ふざけたマネした奴等に…キッチリ落とし前つけてやる。」

「今俺が1人で行ったら漏れなく皆殺しになるので、ブレーキお願いしまっす。」

 

「見ての通り彼等は只の生徒ではない。貴方の元には17人の特殊部隊と協力者が1人いるんですよ。さぁ、時間は無いですよ?」

 

烏間は覚悟を決めて、本来の職業である軍人らしい指令を皆にかける。

 

「注目‼︎目標、山頂ホテル最上階‼︎隠密作戦から奇襲への連続ミッション‼︎ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う‼︎いつもと違うのはターゲットのみ‼︎3分でマップを叩き込め‼︎19時50分作戦開始‼︎」

 

「「「「「応‼︎」」」」」




少し補足

奏たちだけで行った方が良かったんじゃないのと思うでしょうが、ガチギレしてた奏は正面から皆殺しするはずです。
となると黒幕がそれに気づき薬を破壊するでしょう。
それを考慮して殺せんせーは本編のを提案しました。

洞窟肝試し、奏のパートナーは誰?

  • ど安定の陽菜乃
  • 大穴狙いで小夜
  • あえての三輪
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