呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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奏・小夜「「あれ…もしかしてしばらく俺(うち)らの出番…少ない?」」

↑YES


第50話:引率の時間

侵入開始から10分経過 現在2F

 

「……さて、君らになるべく普段着のまま来させたのにも理由がある。入口の厳しいチェックさえ抜けてしまえば…ここからは客のフリができるのだ。」

 

烏間からの説明を聞いても皆はピンと来てなかった。

悪い連中が愛用するようなホテルに中学生の団体客なんているとは思えないからだ。

その疑問には小夜が答えた。

 

「普通はせな風に思いがちやけど、実際は結構おんねん。ほとんどはマスコミや政界人なんかのお金持ちの子供たち、後はその子達に誘われたお友達とかやな。そないな子達はちっちゃい頃からこないなとこに来とるんよ。悪い遊びに手を染めながらな。」

「そう。だから君達もそんな輩になったフリで…世の中をナメてる感じで歩いてみましょう。では奏君、お手本を!」

「えぇ…俺すか?」

 

奏は少し困った顔をしてからどうしようか考える。

 

そして「満面の笑み」を浮かべた。

 

(⌒▽⌒)←である。

 

「満面の笑み」(殺意マシマシ)である。

 

その笑顔から溢れ出る殺気は正面から歩いてきた一般客を震え上がらせ、彼らは何も言わずにガタガタ震えて道を開けた。

 

彼らから少し離れた後に奏は元の顔に戻して殺せんせーに尋ねた。

 

「…あんな感じで大丈夫ですか?」

「…いえ、全然違います…」

「ええっ⁉︎」

「むしろどこら辺がナメていたんどす?」

「え…『肩触れたら殺すゾ☆』みたいなところ…」

「「「ただのヤクザじゃねーか‼︎」」」

 

この後、奏は最後尾に(強制的に)回されて少し凹んでた。

 

 

一行は先を急いだ。

途中で先程の客以外にも遭遇したが何事もなく通り過ぎた。

だから最初に警戒しまくっていた分、皆油断してしまった。

 

3F・中広間を通過する際に寺坂と吉田が何の警戒もせずに走り抜けようとしたその時、

 

「寺坂君!吉田君‼︎そいつ危ない‼︎」

 

不破がそう叫び、名前を呼ばれた2人は振り返る。

そして同時に最前を歩いていた烏間、小夜、そして正面から歩いてきた帽子を被った男が動く。

 

烏間は2人の服の襟を掴み後ろへ投げ飛ばし、男はその手に持った噴出機から何かを噴出する。

2人を包み込むように煙が起きる。そしめ2人より一瞬遅れて、小夜が口元にハンカチを当てて煙の中に入っていく。

 

烏間はハイキックで男の手から噴出機を蹴り飛ばし、小夜はハンカチを抑える手とは別の手で持った担当で手首を狙って斬りかかる。

武器を蹴り飛ばされた段階で部が悪いと感じた男は即座に距離をとるが、小夜の刃には多少掠る。

 

 

「…何故分かった?殺気を見せずすれ違いざま殺る、俺の十八番だったんだかな、オカッパちゃん。」

 

男の質問に尋ねられた不破は「ボブだし。」と軽く返しながら解説する。

 

「だっておじさん、ホテルで最初にサービスドリンク配ってた人でしょ?」

 

それを聞き、皆は男の顔をじっと見る。その顔は確かにトロピカルジュースを配っていた男のと一致している。

 

「断定するには証拠が弱いぜ。ドリンクじゃなくても…ウイルスを盛る機会は沢山あるだろ。」

「皆が感染したのは飲食物に入ったウイルスから…そう竹林君言ってた。クラス全員が同じものを口にしたのは…あのドリンクと、船上でのディナーの時だけ。けどディナーを食べず映像編集をしてた三村君と岡島君も感染したことから、感染源は昼間のドリンクに限られる。従って犯人はあなたよ、おじさん君‼︎」

 

不破は自信満々で言い張り、犯行を見破られた男は厳しい顔になる。

 

「すごいよ不破さん‼︎」

「なんか探偵みたい‼︎」

「ふふふ、普段から少年漫画読んでるとね、普通じゃない状況が来ても素早く適応できるのよ。特に探偵物はマガジン・サンデー共にメガヒット揃い‼︎」

「いや、ジャンプは?」

「ん?ジャンプの探偵物?作者からしたら興味の範囲外だってさ。」

「色んな方面に喧嘩売りすぎだろ作者ぁ‼︎」

 

若干場違いな漫才が繰り広げられてる中、男は正体を見破られたにも関わらず不敵な笑みを浮かべる。

対する烏間は突然床に膝をつく。

 

「あんた…毒物使いか。」

「その通り。俺のコードネームは『スモッグ』。そして今のは俺特製の室内用麻酔ガスだ。一瞬吸えば象すら気絶(オト)すし、外気に触れればすぐ分解して証拠も残らん。」

「ウイルスの開発者もあなたですね。無駄に感染を広げない。取引向きでこれまた実用的だ。」

「さぁね。ただお前たちに取引の意思がない事はよく分かった。交渉決裂、ボスに報告するか。」

 

そう言い来た方向から戻ろうとするスモッグだが、それは叶わなかった。

 

廊下と広間の間に氷の壁が出来上がっていたからだ。

 

さらにすかさず他の生徒たちが椅子や机、花瓶に壁にかかっていた槍を手に持ちスモッグを囲む。

 

「敵と遭遇した場合即座に退路を塞ぎ連絡を断つ。あらかじめそう指示を受けていたんでね。」

「あんさんはウチらを見た瞬間に引き返すべきだったんよ?」

 

正面にはそれぞれ愛刀を構えた戦闘ガチ勢×3が臨戦モードに入る。

 

が、なんと烏間がフラフラと立ち上がり、無言で「任せろ。」と合図を送る。

 

「…フン、まだ動けるとは驚きだ。だが所詮他はガキの集まり、お前が死ねば統制が取れずに逃げ出すだろうさ。」

 

この時スモッグは先程小夜が言った判断ミス以外にも2つの間違いを犯していた。

 

1つは、たとえ烏間が死んだとしても-さらに言えば、それが原因で皆が逃げ出したとしても-約数名、頂上まで行く者たちがいるということに気づかなかったこと。

 

そしてもう1つは、烏間は立ち上がるのが精一杯だと思っていたこと。

 

 

勝負は一瞬で終わった。

 

スモッグがポケットから噴出機を取り出すよりも早く、烏間の高速膝蹴りが顔面に炸裂した。

 

 

(…強え……人間の速さじゃねぇ…だがな…おっそろしい先生よ。お前の引率も…ここまで…だ。)

 

薄れゆく意識の中でスモッグは再び倒れ伏す烏間を見た。

 

 


 

 

「…ダメだ。普通に歩くフリをするので精一杯だ…戦闘ができる状態まで…30分で戻るかどうか…」

 

磯貝の肩を借りつつ、烏間は再び前に進む。

しかしハッキリ言って象すら気絶するガス吸って、歩けて、1時間かからず復活するアンタは人間なのか、というのがクラス全員の疑問であるのは言うまでもない。

 

烏間への呆れ(?)と畏怖の感情と共に、生徒たちは不安を感じていた。

 

目標は10階、なのに3階の時点で三人の先生に頼ることが出来なくなったからだ。

 

奏、小夜、三輪といったプロはいれど、大人(プロ)は彼らよりさらに経験と知識は豊富である。(単純な戦闘力については考えてはいけない。)

そんな大人(プロ)達がこの先に待ち構えているのだ。

果たして自分達だけで勝てるのか、そう考えていると…

 

「いやぁ、いよいよ『夏休み』って感じですねぇ」

 

 

「何をお気楽な‼︎」

「1人だけ絶対安全な形態のくせに‼︎」

「渚、振り回して酔わせろ‼︎」

「にゅやーっ‼︎‼︎」

 

「よし寺坂、これねじ込むからパンツ下ろしてケツ開いて。」

「死ぬわ‼︎」

 

皆のリクエスト通り、殺せんせーを酔わせた渚は今の言葉の意味を聞く。

 

「先生と生徒は馴れ合いではありません。そして夏休みとは先生の保護が及ばない所で自立性を養う場でもあります。大丈夫、普段の体育で学んだ事をしっかりやれば…そうそう恐れる敵はいない。君達ならクリアできます、この暗殺夏休みを。」

 

 

残り時間 後40分

 

もう後戻りはできない。

 

 

 

洞窟肝試し、奏のパートナーは誰?

  • ど安定の陽菜乃
  • 大穴狙いで小夜
  • あえての三輪
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