呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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第51話:ぬの時間

潜入開始から23分経過

現在5F 展望回廊

 

壁に沿って注意深く進む一行は、少し先に高級そうな服を着た外国人風の男を見つける。

 

「……お、おいおい、めちゃくちゃ堂々と立ってやがる。」

「…あの雰囲気。」

「……ああ、いい加減見分けがつくようになった。どう見ても『殺る』側の人間だ。」

 

一行の持つ優位は当然ながら数の利である。烏間の動きが制限されているとはいえど、奏、小夜、三輪、カルマ、寺坂を前衛としてその空いた穴を他のメンバーが埋めるのが最も良い戦法。

しかしこの展望回廊は狭く見通しが良い為、奇襲すらできない。

 

烏間がどう仕掛けるか迷い兼ねてる中、男は背後のガラス窓に触れてヒビを入れる。

 

「…つまらぬ。足音を聞く限り…『手強い』と思える者がただ1人。精鋭部隊出身の引率の教師と呪術師で2人いるはずなのぬ…だ。どうやら…引率の方がスモッグのガスにやられたようだぬ。半ば相討ちぬといったところか。出てこい。」

 

皆は仕方なく恐る恐る出てくる。しかし恐怖・警戒とは他にある疑問を抱いていた。だが恐怖故に誰も言えない…はずだった。

 

「「「『ぬ』多くね(多すぎひん)、おじさん?」」」

 

((((言った‼︎良かった、カルマと奏と小夜がいて‼︎)))

 

「『ぬ』をつけるとサムライっぽい口調になると小耳に挟んだ。カッコよさそうだから試してみたぬ。間違ってるならそれでも良いぬ。この場の全員殺してから『ぬ』を取れば恥にもならぬ。」

「ふぅん…あんさんの武器は素手なんやな。」

「こう見えて需要があるぬ。身体検査に引っかからぬ利点は大きい。近づきざま頸椎をひとひねり。その気になれば頭蓋骨も握り潰せるが。」

 

手をゴキゴキ鳴らしながらそう語る男、『クリップ』に何人かは青ざめる。

 

「だが面白いものでぬ、人殺しのための力を鍛えるほど…暗殺以外にも試してみたくなる。すなわち闘い、強い敵との殺し合いだ。だががっかりぬ。お目当てがこのザマでは試す気も失せた。」

「へぇ…俺とはやらないの?」

「残念ながら『呪術師とやる時は専門家を呼べ。』と言われているぬ。ついでに雑魚ばかり殺るのも面倒だぬ。どちらにせよボスと仲間呼んで皆殺しぬ。」

 

クリップは冷めた顔をしながら連絡しようとするが、携帯の発信ボタンを押す直前、観葉植物の鉢植えをハンマーのようにカルマが振るい、後ろのガラス窓に叩きつける。

 

「ねぇ、おじさんぬ、意外とプロってフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ。ていうか速攻仲間呼んじゃうあたり、中坊とタイマン張るのも怖い人?」

 

あまりにも無謀な挑戦を烏間は止めようとするが、殺せんせーがあえて止めない。

理由は彼の態度にあった。

以前までは余裕をひけらかしてアゴを突き出した見下しスタイルだった。

しかし今は油断なく正面から相手の姿を観察しているのだ。

 

「奏、手ェ出さないでよ?」

「……死にそうだったら乱入するわ。」

 

先手を取ったのはカルマ、再び鉢植えを振り下ろすが、クリップは片手で掴んで握り潰す。

 

「柔い、もっと良い武器を探すべきだぬ。」

「必要ないね。」

 

攻守は逆転して武器を捨てたカルマにクリップが接近してくる。

頭や腕を狙い伸ばしてくるクリップの手を、カルマはギリギリのラインで捌くかいなす。

 

(一度掴まれたらゲームオーバー、普通に考えて無理ゲーだけど立場が逆なだけでいつもやってんだよね、その無理ゲー。)

 

カルマの動きを見て、殺せんせーや奏はそれが烏間の防御テクニックだと理解する。

 

(烏間先生は殺し屋にとって優先度が低い技術だから教える必要はあまりないって言ってたけど……目で見て盗んだわけか。)

 

しばらくクリップの一方的な攻撃ターンが続くが、途中でクリップの方が攻撃を止める。

 

「……どうした?攻撃しなくては永久にここを抜けられぬぞ。」

「どうかな〜?あんたを引きつけるだけ引きつけといて、そのスキに皆がちょっとずつ抜けるのもアリかと思って。」

 

一瞬クリップの目つきがキツくなるが、今度はカルマが手をバキボキ鳴らす。

 

「安心しなよ、そんなコスい事は無しだ。今度は俺から行くからさ。あんたに合わせて正々堂々、素手のタイマンで決着つけるよ。」

 

((((え、『正々堂々』?『素手のタイマン』?カルマが⁇))))

 

何人かがそのセリフに疑問を覚えるが、初対面のクリップがそんなことに気づくわけなくどこか楽しそうな顔をする。

 

「良い顔だぬ、少年戦士よ。おまえとならやれそうぬ、暗殺家業では味わえないフェアな闘いが。」

 

カルマは勢いよく踏み出し、回し蹴りを放つ。

クリップはこれを左手でガードし、すかさず手刀と見せかけた目潰しをかわす。

だがカルマも怯むことなくもう一回回し蹴りを繰り出す。しかし今度は頭部を狙ったものでなく、脚を狙う。

右脚に命中して自分に背を向け痛みを抑えるクリップをカルマが見逃すわけなく、一気に詰め寄って殴りかかる。

 

しかし背を向けたすきに取り出したスモッグ作のガスをカルマはもろに受けてしまう。

 

「一丁あがりぬ。長引きそうだったんで、スモッグの麻酔ガスを試してみることにしたぬ。」

「き…汚ねぇ、そんなモン隠し持っといてどこがフェアだよ。」

「俺は一度も素手だけとは言ってないぬ。拘ることに拘りすぎない、それもまたこの仕事を長くやってく秘訣だぬ。」

 

吉田の批判も気にすることなくカルマの顔を掴むクリップ。

それを見て陽菜乃は奏に助けないのかと問う。

 

「かーくん、もうヤバイよ!助けてあげて!」

「……皆さ、まじでカルマがピンチだと思ってる?」

「どう見てもそうだろ!あの手に捕まってるんだぞ!」

「なんと、本気でそう思ってるのか。ほら、アイツの手をよく見ろよ。」

 

奏がその言葉が気になり、クリップもつい振り向いてカルマの手を見てしまった。そして同時にガスが噴出される。

カルマもクリップが持っていたのと同型のガスを所持していたのだ。

 

「奇遇だね、2人とも同じこと考えてた。」

 

脚をガクガクと震わせながらも服の中からナイフを出して突進してくるクリップ。しかしカルマをそれを片手でいなして、サブミッションをかけながら地面に叩き伏せる。

 

「ほら寺坂、早く早く。ガムテと人数使わないとこんな化けもん勝てないって。」

「へーへー、テメーが素手でタイマンの約束とかもっと(・・・)無いわな。」

 

ガスと関節技で身動きが取れないクリップに追い討ちをかけるかのように生徒たち全員が上にのしかかっていく。

 

すぐにガムテープで全身を拘束されたクリップを見ながら、満足そうにカルマはガスの噴出機を弄ぶ。

 

「毒使いのオッさんが未使用だったのくすねたんだよ。使い捨てなのがもったいない位便利だね。あ、あと誘導サンキュー、奏。」

「おう。にしても案外舐められてたぞお前。」

「え、まじで?仕方ない、腹いせに後で毒使いのオッさんから色々奪って寺坂で実験しよう。」

「何でだよ‼︎」

 

他愛無い話をしている中、クリップは先程の不意打ちについて尋ねる。

 

「何故だ…俺のガス攻撃…お前は読んでいたから吸わなかった…俺は素手しか見せてなかったのに…何故…」

「とーぜんっしよ、素手以外(・・・・)の全部を警戒してたよ。あんたが素手の闘いをしたかったのはホントだろうけど、この状況で素手に固執し続けるようじゃプロじゃない。俺らをここで止めるにはどんな手段でも使うべきだし、俺でもそっちの立場ならそうしてる。あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから警戒した。」

 

期末テストで大敗するまで、カルマは大して負けを知らなかった。だが、それ以降「敗者だって自分と同じ人間なんだから、色々考えて生きている」ということを知った。

だから勝負の場で敵を見くびらなくなる、相手に対して敬意を払える。

そんな風に成長できると信じたから、殺せんせーは今回の危険な闘いを一任できたのだった。

 

「…大した奴だ、少年戦士よ。負けはしたが楽しい時間を過ごせたぬ。」

 

 

 

 

 

「え、何言ってんの?楽しいのこれからじゃん。」

 

笑顔でワサビと辛子のチューブを取り出したのを見てE組メンバーは確信する。

 

((((あ、これヤバイ時のカルマの流れだ。))))

 

と。

 

「…なんだぬ、それは?」

 

何か分からなくてもヤバイモンだと直感的に理解したクリップは既に冷や汗をかいている。

 

「ワサビ&辛子、おじさんぬの鼻の穴にねじ込むの。」

「何ぬ⁉︎」

「さっきまではきっちり警戒してたけど、こんだけ拘束したら警戒もクソもないよね。これ入れたら専用クリップで鼻塞いでぇ、口の中にトウガラシの千倍辛いブート・ジョロキアぶち込んで、その上から猿轡して処置完了。さぁおじさんぬ、今こそプロの意地を見せる時だよ。」

 

満面の笑みで鼻にワサビ&辛子を打ち込まれたクリップの顔と断末魔が廊下に響き渡り、誰もが目をそらす。

 

普段から気持ち悪いモンを散々見てる奏や小夜、三輪ですら、である。

 

 

 

 

 




投稿期間が空くたび文才が落ちてるように感じる今日この頃。

前から大してあったモンじゃ無いけどさ。

洞窟肝試し、奏のパートナーは誰?

  • ど安定の陽菜乃
  • 大穴狙いで小夜
  • あえての三輪
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