呪われた少年の暗殺ライフ   作:楓/雪那

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昨日両手にナイフを持ったメンヘラ女子から殺されないように頑張る夢を見ました。
あの夢見た後に感じたのは、命の危機を感じた時逃げるより相手の獲物の動きを見るのが先であったことに少し驚きました。
みなさんも殺人鬼やメンヘラ少女に出会ったらまず手の動きを観察しましょうね。



ほんとどーでもいっすね。


第52話:女子の時間

潜入開始から35分経過

現在6階 テラスラウンジ

 

この先に行くには当然ここを通るしかないが、現在はパーティー会場と化している。勿論ただのパーティーではなくドラッグのだが。

別に敵が潜伏してなければただ抜けるだけなのだが、入口と7階以降のVIPフロアへ繋がる階段前には警備がいて、いかんせん男にはチェックが厳しい。

その為まずは女子達がパーティー会場を突っ切り何とかして階段前の警備をどかす。

そしてその隙にベランダ裏口に待機している男子達を誘導するという作戦にでた、のだが、

 

「ほら渚君!男でしょ‼︎ちゃんと前に立って守らないと‼︎」

「無理…前に立つとか絶対無理…」

「諦めなって、男手は欲しいけど男にはチェック厳しいんだもん。」

「ほら、奏君を見てみなよ。あれくらい吹っ切れないと!」

「不破さん、矢田さん。この姿の時は『ちゃん』か『さん』でお願いします。」

「…こっちはこっちで染まりすぎて怖い。」

 

足りない男手を女装男子で補う、という案をカルマが提案(しかも衣装を外のプールサイドから調達)し、当然ながら渚が餌食となった。

渚としてはもちろんやりたくないわけだから、「三輪さんや小夜さんがいるから大丈夫でしょ!」と抵抗していた。

しかしここでどこからか大きめのメイド服を仕入れてきた奏が着替えて、カルマや殺せんせーもびっくりの女装を見せつけて説得もとい言いくるめ、折れてしまった。

ちなみにこの女装直後、2名ほど瀕死になりかけたのはここだけの話である。

 

「…なんで奏く…さんは女装(それ)に躊躇がないのさ…」

「はて?何故と聞かれても?」

「奏ちゃんそういうところけっこーあるよね。」

 

ある種の羞恥心が欠如している奏に呆れていたとき、最後尾の渚の肩に手が置かれた。

 

「ね、どっから来たの君ら?そっちで俺と酒飲まねー?金あるから何でも奢ってやんよ。」

 

話しかけてきたのは見るからに軽薄そうな同年代らしき少年。しかも酒とかほざいている。

皆が不快、あるいはめんどくさそうな顔してるなか奏はニコニコ顔で渚の背を押す。

 

「というわけで渚さん、ご指名ですよ?」

「キャバ嬢じゃないんだからご指名とか言わないで‼︎」

「…多分コイツタメだし、この体格ならお前1人でも大丈夫だろ?」

「…急に素に戻るのやめて?」

 

泣く泣くユウジと名乗る少年の相手をさせられる渚を見送って先を目指す一行。

しかしあのユウジに限らずこんな場所で若い少女達が歩いていてナンパされない訳がなかった。

 

「ようお嬢達、女だけ?俺らとどーよ、今夜?」

 

今度は二、三十代の男3人が口説いてくる。時間が限られているためイラついた片岡が突っぱねようとするが、矢田がそれを止める。

 

「お兄さん達、カッコいいから遊びたいけど、あいにく今日はパパ同伴なの。うちのパパ、ちょっと怖いからやめとこ?」

 

そう言いながら男達にあるものを見せつける。

それは少人数だが凶悪で有名なヤクザのエンブレム。一応本物ではあるがイリーナからの借り物である事を知るのは今のところ矢田と陽菜乃くらいしかいない。

そしてここで陽菜乃が追撃をかける。

 

「あ、パパも怖いけど、今はそれよりも怖い人がいるんだけど…」

 

そう警告するよりも早く奏、小夜、三輪の3人が男達の首筋に刃物を突きつける。

 

「…って3人ともダメだよ〜!」

「しかしお嬢様、お嬢様とそのご友人がたに手出しをしようとする下賤な輩は1人残らず鮫の餌にしろと頭に言われており…」

「ここじゃダメだよ〜!お店に迷惑かかっちゃうでしょ!」

「……お優しいお嬢様。分かりました。ホテルに迷惑のかからない所でやりましょう。おい貴様ら、早く表に…って逃げ足の速い奴らめ。」

 

躊躇なく殺しにかかってくる奏達と、迷惑かけないのならゴーサインを出してくる陽菜乃に恐れをなしてナンパ男達は逃げていった。

3人が武器をそれぞれしまった時、今度は小さな拍手が聞こえてきた。

 

「ヒュー!なかなかやるじゃない、あなた達!ウチのお店にどう?」

 

声をかけて来たのは男ではなく女。イリーナが着ていたようなドレスを着ており、バーの調理場の方で頬杖をつきながらこちらを見ている。

今時珍しいキセルを吸いながら、酒を飲んでいる。

 

「申し訳ありません。お嬢様達はまだ未成年なので…」

「お嬢ちゃん達だけじゃなくて、あなたもでしょ?」

「…!」

「ああ、別にだから何ってわけじゃないわよ。ここらでは面白そうな子たちだからお話したいだけ。私の奢りだから一杯だけでも、ね?」

 

奏も皆もあまり猶予がないからこんなところで時間を失いたくない。しかし何故かこの女の誘いは蹴ってはいけないという気がしてならない。バー特有の魅了とかとは違う、不思議な感じ。

結局警戒しつつも誘いに乗ることにした。

女はオレンジジュースを差し出した。

 

「はい、ドーゾ。…別にそんな警戒しなくても怪しいクスリとか入れてないわよ。」

「「「「…頂きます。」」」」

 

念には念をと最初に奏と小夜の2人が毒味係として動くが、問題無いと判断して残りの女子達も飲む。

バーのマスターの女は空気を読んでかキセルを吸うのをやめている。

 

「それであなた達はここに何しに来たのかしら?」

「遊びにですけど…」

「ホント?」

 

いきなり片岡の嘘を見破ってくる女。鎌かけなのか本当に確信しているのかが読めない。

 

「そもそもこんな所に来てお酒もクスリもやらず、ナンパにも乗らない健全な子なんて来ないわよ。」

「ああいう人はみんなタイプじゃ無いんですよ。」

「確かに〜。私もアレは無いわー」

 

ケタケタ笑う女に一層警戒を強める奏。本当に話術が巧いというべきなのだが、底が知れない所が怪しい。というかただのバーの女相手に底が知れないと思ってしまうのがそもそもおかしいのである。

 

「それで結局何目的なのかな?」

「……最上階に用があるんですよ。」

「「「奏ちゃん⁉︎」」」

「あら、ずいぶんあっさりと教えてくれるわね。」

「…今の私達じゃああなたを出し抜くことが出来そうにないので。」

「嬉しい評価ね。その判断に免じて誰かにチクるのは控えてあげるわ。」

 

自分達の行動をバラさない。

こう言い張る女が何を考えているのか、余計に想像がつかなくなった。

しかし奏は何故かこうなるのではないかと直感していた。

 

「…ありがとうございます。ところであなた、一体何者なんですか?これでただのバーのオーナーなんて言われても納得できないんですが。」

「納得してもらう必要は無いんだけどなー。うん、実際ただのオーナーなんだけど、まああれね、少しばかり治安が悪い所で店開いてたのよ。」

 

少し照れくさそうに話す女を見て、奏は「やっぱりか。」と感じた。

先程までの観察眼と殺気の隠し方、今の格好でどれくらい動けるかは知らないがまさに隙のない人物に思えてしまう。

 

「で、この後はどうするのかな?」

 

この質問をするということは女子だけの潜入じゃないことを理解しているということだ。

女子だけの潜入なら警備を気にする必要がほとんど無いからだ。

 

「何かしらしてあの警備を退かした後、上に行きます。」

「ふーん、まあがんばれ。」

 

とりあえず茅野が渚を連れ戻してきたが、渚を諦めきれないユウジまで付いてきてその場で踊り始めたのだが、

 

((((邪魔…))))

 

が共通の感想であった。

必死に渚を魅了しようとするユウジだったが、その手が酒を持って通りかかった男に当たってしまい、その酒は男の服にかかってしまった。

 

「こらガキ、いい度胸だ、ちっと来い。」

「あ、いや…今のはわざとじゃ…」

「百万する上着だぞ、弁償しろや‼︎」

 

正直自業自得だからほっときたいのが本心だったが、矢田はこの状況を利用する策を思いつき、岡野に合図した。

男の意識がユウジの方に向いているすきに、そっと回り込み男の顎に下回し蹴りを繰り出した。

一撃で気絶した男を片岡が支え、矢田が階段前の警備を呼ぶ。

 

「すいませーん、店の人〜。あの人急に倒れたみたいで…運び出して看てあげてよ。」

「は、はい。まったく、ドラッグのキメすぎか…?」

 

警備が階段前から退いたすきに裏口を開けて男子達を入れ、上へ上っていく。

渚はユウジと少し話して、奏はバーのマスターと話している。

 

「いやぁ、なかなか面白いね、君達。」

「それはどうも…」

「……もしかしてバラされるの恐れてる?気にしないで、私口は堅いから。」

 

そう言ってマスターは名刺を渡した。

名刺には名前は書いてないが、こことは別の住所が書いてある。

 

「それ、東京の方のお店。よかったらおいで。」

 

奏は一瞥して皆の後についていった。

洞窟肝試し、奏のパートナーは誰?

  • ど安定の陽菜乃
  • 大穴狙いで小夜
  • あえての三輪

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