ぶく茶がエンリ? 作:嵐山
数日前にメールが送られてきた。
数年前に辞めてしまったゲーム『ユグドラシル』
ギルド・マスターの、モモンガさんから送られてきていた。
以前給料のほとんどを課金したり、寝る間も惜しんで夢中になっていたゲーム、
それが終わる知らせ。最終日、都合が合えばメンバーで集まらないかという内容だった。
何とかインしたい思いがあって、終了30分前だけどインできそうだった。
顔見世程度の挨拶ぐらいしか出来そうもないけど、懐かしいメンバーに会うのもいいと思った。
ずいぶん前の事でパスワードがわからない、時間も無い焦る‥‥
電話で、弟に急いで聞いてみたら覚えててくれた。
いけない事だけど、私より長くやっていて、私のIDでなりすまし悪戯をしていたらしい。
弟は行けそうもないからみんなに『ヨロシク言っといて』だってさ‥‥
IDは『分福茶釜』からモジったんだ、パスワードは本家だ。
九階層、円卓の間にインしたけど
「誰もいないじゃない・・」
(アバター冷静に今見ると卑猥すぎー)
こんなことしている場合じゃない、みんなどこにいるんだろう?
(解散しちゃったのかな?)
玉座の間に居るのかもしれない、場所覚えているか不安だけど。考えるより行動。
「わ~~もう時間が無いよ‥」
こんな時に限ってPCが落ちるとかありえない・・・
こんな事なら実家のゲーミングPC持って来ておけばよかった。
確かにスペックが少し足りないけど、話すぐらいは出来ると思っていたから。
間に合わないかもしれないけど、すぐにサーバーダウンにならない事を祈っている。
★
入れた、でもさっきと違う。光で何も見えない。
そばで女性の声が聞こえる。
「エンリ、ネムと一緒に水を汲んできてくれるかい?」
「は~い」
幼い声も聞こえた。辺りが見えるようになると、そこには見たことも無い人がいた。
(なにこれ?エンリ?ネム?水汲み?え!何の事?)
「エンリなに『ぼぉーっと』しているんだい」
私は自分を、指さして確認してみた。
「そうよ、あなたに決まってるじゃない」
「お姉ちゃんどうしたの?」
(えっえ~やっぱり私なの?何が何だかわからないよ!!)
訳が分からないまま、ちびっ子に手を引かれ井戸まで連れていかれてた。
「お姉ちゃん早く水くんでよ」
「え~~~」
(井戸なんて使ったこともないし、わからないよ。どうしよう・・)
行動に移さない私を見て、じれったくなったのか教えてくれた。
「お姉ちゃんは引き上げてよ」
「は・はい、このロープを引けばいいのね」
「今日のお姉ちゃん変なの~」
水を汲み終わると運ぶのだけど、水って重い、こんなのやった事無い。
いつもなら蛇口をひねれば水は出る。
戻る時、周りを見て見た。やっぱり見たことも無い場所。
リアルよりも、ユグドラシルよりも、ずっとずっと古い時代。
今までに把握した事、私は名がエンリ、ちびっ子は妹でネム、それと両親らしい人がいる事。
姿もリアルの私ではない、アバターぶくぶく茶釜でもない。
幼いがリアルの私より胸は大きい、凹む。
ゲームの中という感じはしない。つねってみると痛いし、おなかも減る。
ご飯は美味しいものではなかった。
(どうなってるんだろう‥‥いつ元に戻れるのかな‥‥ここはどこなのよ)
色々な可能性を考えたけど、思い当たることはない。
リアルの世界では考えられない、外に居ても平気、環境汚染とは無縁の世界。
昼間は太陽が出ていてポカポカする。夜には星も見えて綺麗。
この数日間は、おもに家の手伝いなどをしている、リアルでは出来ない畑仕事、太陽の下での作業、大変だけど新鮮でいい経験になる
あと忘れてはいけない、状況確認をしてた。