この素晴らしいホグワーツに爆焔を!   作:里江勇二

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このハロウィンのホグワーツにトロールを!(2)

 

 

 女子トイレの中を覗き込むトロールに、ハーマイオニーはあわあわしながら言った。

 

「何でトロールが校内にいるのよ!先生たちは気付いてるのかしら」

「シーッ!静かに出て行くのを待ちましょう。幸いあのトロールは私たちにあまり注視していません、視力が悪いのでしょ──」

 

 そのとき、ガチャリという音を立てて鍵が閉まった。

 

「「……え?」」

 

 そしてその直後、トロールの小さな目が私たちをはっきりと捉えた。

 

「「キャーーーー!!!」」

 

 今日二回目の絶叫。こちらにゆっくり近づいてくるトロールにパニックになりながらも、私はトロールに杖を向けた。

 

「ハーマイオニー!何かトロールの弱点を!」

 

 私が言うと、ハーマイオニーはハッとしたような顔になった。

 

「ええっと、そう、火よ!トロールは火に弱いわ!見た目以上に肌が燃えやすいの!」

 

 ほとんどの生物の肌は燃えやすいのだからそれは弱点とは言わないんじゃないかと思いつつ、私は叫んだ。

 

インセ

 

 そしてそこで、トロールの棍棒が私の杖を捉えて弾き飛ばした。カランコロンと床を転がる杖。

 

「「「………………」」」

 

 少しの間見つめ合う私たち二人と一匹。

 

「……ハーマイオニー、バック!」

 

 ふと我に返って私がそう言うも、ハーマイオニーはトロールが間近に迫ったことの衝撃でか立ちすくんだまま動かなかった。

 

「ええい、仕方がないですね!」

 

 できるだけトロールから離れるべく、私はハーマイオニーを抱きかかえて壁際まで下がって行った。それでもトロールはゆっくりと近づき迫ってくる。覚悟を決めたとき、部屋の扉が開いて二人の人影が入ってきた。私は思わず叫んだ。

 

「ハリー!ロン!」

 

 そう、その二人はパーティーを楽しんでいたはずのハリーとロンだった。

 

 二人はトロールに向かって罵倒を上げながら、床に散らばっている蛇口やらを壁に投げつけて自分たちに注意を向けようとした。その甲斐あって、トロールは私たちの1メートル手前で止まった。しかしそちらをちらりと振り返っただけで、トロールはまたこちらに歩き出した。

 

「このウスノロ!」

 

 反応の薄いトロールに、ロンは足元に転がっていた金属パイプを拾い上げてトロールに直接叩きつけた。流石に痛みを感じたのか、トロールはロンの方に歩き始めた。

 

「へへっ、この脳足りん……あ、逃げ道が!」

 

 それを見てロンは逃げ出そうとしたが、周りが瓦礫で囲まれていて逃げ道が見つからなかった。そんなロンを見て、ハリーは思い切った行動をした。トロールの首筋に向かって全力で飛びつき、杖を鼻に突き刺したのだ。

 

「グォォォ!」

 

 鼻に感じる痛みに、トロールは叫びを上げてハリーを振り落とそうと体を捻り棍棒を振り回した。頑としてしがみついたままのハリーに棍棒が当たろうとしたちょうどその時、私はさっき吹き飛ばされた杖の元に辿り着いた。私は杖を掲げて告げた。

 

インセディオ!

 

 呪文は成功し、棍棒を持っていたトロールの腕全体が燃え上がった。思わず棍棒を落とし暴れ回るトロールに対して、ロンが無我夢中といった様子で叫んだ。

 

ウィンガーディアム・レヴィオーサ!

 

 するとトロールが落とした棍棒がそろそろと宙に浮かび、回転しながら持ち主だったトロールの脳天に直撃した。さしものトロールもそれに耐えられず、女子トイレ全体を揺らしながら床に倒れ込んだ。

 

 後には、息も絶え絶えの私たち四人だけが残った。

 

「これ、死んだの?」

「いや、伸びてるだけでしょうね」

 

 ようやく立ち直ったハーマイオニーに私がそう言った。

 

 急にバタンという音がして、マクゴナガル先生が飛び込んできた。そしてその後にスネイプ先生、クィレル先生がやってきた。マクゴナガル先生は、今まで見たことがないほどに怒っていた。

 

「いったい全体、あなた方はどういうつもりなんですか」

 

 そう言ったマクゴナガル先生の声は冷静だったが、怒りに満ちていた。

 

「殺されなかったのは運が良かった。寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか?」

 

 マクゴナガル先生ガチギレモードだ。どうしよう。私とハーマイオニーは言い訳が効くが、それだとハリーとロンは言い逃れができない。しかし二人が助けてくれたのに処罰されるというのは嫌だ。

 そんなことを考えていると、ハーマイオニーが立ち上がって言った。

 

「先生、聞いてください。全部私のせいなんです。私がトロールを探しに来たんです。私……私一人でやっつけられると思って。あの、本で読んでトロールについては知ってたので」

 

 私は愕然とした。ハーマイオニーが先生に嘘を、それも自分が規則を破ったという旨の嘘をついた。二人を庇うために。

 

「三人は私を探しにきて、助けてくれたんです。三人がいなかったら私は今頃死んでいました。ハリーがトロールの鼻に杖を差し込んでくれて、めぐみんは魔法でトロールにダメージを与えてくれて、ロンはトロールの棍棒でノックアウトしてくれました。三人は誰かを呼びに行く時間がなくて、それで自分たちでトロールを」

 

 私たちは、さもそれが事実であるかのように装った。

 

「そういうことでしたか」

 

 マクゴナガル先生は四人をじっと見ながらそう言った。

 

「ミス・グレンジャー、なんと愚かしいことを。たった一人で野生のトロールを捕まえようとするなんて。あなたには失望しました。グリフィンドールから5点減点。怪我がないようなら寮に帰りなさい。生徒たちが、さっき中断したパーティーの続きを談話室でやっています」

 

 それに黙って頷いて、ハーマイオニーは帰っていった。マクゴナガル先生は、今度は私たち三人の方を向いた。

 

「先ほども言いましたが、あなたたちは運が良かった。大人の野生トロールと対決できる一年生はそうはいません。一人5点ずつあげましょう。ダンブルドア先生にこのことをご報告しておきます。帰ってよろしい」

 

 私たちは急いで部屋を出た。しばらく私たちは黙って寮に向かった。

 

「二人とも、助けてくれてありがとうございました」

 

 トロールの臭いがしなくなったあたりで私はようやく口を開き、二人にそう言った。

 

「それとロン、さっきはがっかりだとか言ってすみませんでした」

「……別に、めぐみんが謝ることじゃない。確かにあの言い方はマズかったかもしれない」

 

 ロンはそっぽを向きながらぶつぶつとそう言った。

 

「まあ、何はともあれ無事に済んでよかった」

 

 ハリーは疲れたようにそう言った。

 

 寮の談話室へ行くと、そこは人がいっぱいでガヤガヤしていた。みんなが談話室に運ばれてきた食べ物を食べていた。私はそれを見て、それまでの出来事が一瞬で吹き飛んだ。

 

「そう言えば昼から何も食べていませんでしたね。二食分平らげてしまいましょう!」

 

 私はそう言って、後ろでハーマイオニー、ハリー、ロンが互いに「ありがとう」と言っているのを聞きながら、パーティーの輪の中に入っていった。

 

「……アレのあとによく食べられるわね」

「いや、あの図太さがめぐみんさ」

 

 聞こえてくる会話を聞く限り、三人はちゃんと仲良くなることができたようだった。よかったよかった。雨降って地固まるってやつですかね。

 

「めぐみん、どこ行ってたの?」

「ああ、パーバティにラベンダーですか。ちょっとした冒険ですよ」

「え?なになに?どんなの?」

 

 何があったのか聞いてくる二人を誤魔化しながら、私はそう思った。

 

 

 

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