翌日の朝、喫茶店でゆんゆんに朝食をたかっていると聞き覚えのある二人の声が聞こえてきた。
「めぐみんにゆんゆんじゃない。来てたのね」
「めぐみん、またゆんゆんから食べ物巻き上げてるの?程々にしておきなさいよ」
振り向くと、そこには私たちと同い年であるふにふら、どどんこの二人組が立っていた。
「どどんこにふにふらですか。久しぶりですね」
「こ、これは巻き上げられたんじゃなくて私が奢ってるの!奢り……友達に奢り……ふへへ」
「ちょっとめぐみん!ゆんゆんのぼっち、この一年で悪化してない!?」
「あなたたち海外の同じ学校行ってたんでしょ?なんでこうなるまで放っておいたの!」
ゆんゆんの様子を見て、二人は慌てた様子で私に言ってきた。なんで私がこんなに責められなければならないのか。
「そんなこと私に言われましても。だいたい私とゆんゆんは寮が違うのであまりゆんゆんの交友関係を把握できてないのです」
「え?同じ出身地で同じ性別なのに?」
「私たちの学校ではそういったものじゃなくて、本人の資質で寮が決められるんですよ。全部で四つの寮があるのですが、私はグリフィンドールと言って勇気の寮と呼ばれる寮に入りました。ゆんゆんはレイブンクロー、知性の寮です」
私がそう言うと、二人はふーんと声を上げて納得したような納得してないような顔になった。
「まあでも確かにゆんゆんは真面目だし、知性があるって言われるのも分かる気がするわ」
「めぐみんの勇気も、何も考えないで突っ走ることを考えると蛮勇って意味じゃ合ってるし」
「ふにふら、喧嘩を売ってるなら買いますよ。というか私には四つ全部の寮に入る資質があると言われたので知性云々はゆんゆんだけじゃないのです」
私が胸を張りながらそう言うと、二人は一気に胡散臭そうな目になった。
「めぐみんに知性?その判定ガバガバじゃない?」
「めぐみんにあるのは知識であって知性じゃないでしょ。気も短いし」
そして二人で顔を突き合わせてヒソヒソとそんなことを言って……。
「ほう、私の気が短いとは分かってるじゃないですか。そのままそんなことを言えば私と喧嘩になることも分かればよかったんですがね。……さあ、表に出てもらおうか」
「ちょっと、本当になんでめぐみんはそんなに短気なのよ!分かったわよ、悪かったからその目やめて!」
私たちが三人でそんなことを言い合っていると、ゆんゆんが腑抜けたニヤケ顔をやめて言ってきた。
「あ、そういえばめぐみん、寮のことでちょっと相談があるんだけど」
「なんですか?すみませんが私にはあなたの寮での孤独を癒すことはできませんよ」
「なんで私が相談するって聞いてすぐにそっちに話が行くの?いやまあ、解決できるなら解決してほしいけど、まだ大丈夫よ。一応私にも同じ部屋の友達くらいいるし」
私の言葉に、ゆんゆんはため息をつきながらそんなことを言った。
「「「嘘!?」」」
「三人してなんでそんな反応なの!?いや、今は相談よ。実は私、組分けの時にスリザリンの素質もあるって言われたの。それでグリフィンドールはダメですかって聞いたらスリザリンは嫌なんだね、ならレイブンクロー!って言われたんだけど。それで聞きたいんだけど、めぐみんから見て私、スリザリンっぽいかな……いや、別にスリザリンが嫌ってわけじゃないのよ?でも、その、何というかね?」
ゆんゆんは少し俯きがちにそう言ってきた。なるほど、スリザリンの素質ですか。この様子だと多分、周りにスリザリンの評判を聞いたんでしょうね。別に私はあの寮自体はいいと思うんですが、生徒たちがあまりに何というか、陰湿ですからね。
「スリザリンってどんな寮なの?」
「野心深く、どんな手段を使ってでも目的を達成しようとする人たちの寮とされています。実際はそんな大物っぽい人間はおらず、小悪党ばかりですが」
ふにふらが聞いてきたので、私はそう答えた。もちろんスリザリン生全員を知ってるわけじゃないが、ドラコが旗頭になってるところを見る限り基本小悪党だろう。ドラコ自身だって、私に掻き回されて部下にも笑われてしまうあたり、ただ家の色に染まってるだけのようだし。
「ゆんゆんに全く似つかわしくない嫌な寮じゃない」
「そうそう。ゆんゆんは人に話しかける時点で緊張しちゃう弱いメンタルの持ち主だし、そんな陰湿な寮の素質があるわけないわよ」
「ありがとう、どどんこにふにふら……ちょっと待って、ふにふらのそれって私のこと貶してない?」
まあふにふらの言うことも分からなくはない。いい意味でも悪い意味でも、ゆんゆんはスリザリンには合わないだろう。
「でも、それじゃあなんで私はスリザリンの素質があるなんて言われたんだろう?」
「多分血筋ですよ」
なおも疑問を漏らすゆんゆんに私はそう言った。
「血筋?お母さんはグリフィンドールだったし、お父さんは魔法使いじゃないわよ」
「いえ、そういうことではなくてですね。さっき言われた通り私もスリザリンの素質があると言われたんですが、他の三つの寮の素質と違ってなんでかは分からないが成功するとだけ言われたんです。なので、あなた個人がどうこうではなく紅魔にスリザリン適性があるのかと」
ゆんゆんのお母さんに関しては私やゆんゆんと同じように他の寮にも適性があってそっちを選んだのでしょう。
「いや、めぐみんがそのスリザリンって寮の適性があるのは明らかでしょ」
「野心云々は紅魔族のほとんどに合致するし、めぐみんは天才天才言いつつ意外と狡っからい手も使うしね」
「一々茶々を入れないでください」
それに天才が狡っからい手を使わないというのはバカの発想です。天才は天才ゆえに卑怯汚いは敗者の戯言と分かっているので。
「そうそう、ゆんゆんの寮の話で忘れてたけど、私たちはあなたに聞きたいことがあったのよ」
そんなことを考えていると、ふにふらがこっちを向いてそんなことを言ってきた。
「私にですか?爆裂魔法に関してはまだ鋭意制作中でして、まだ教えることはできませんよ」
「誰もあなたの妄想魔法についてなんて聞いてないわよ!」
「そうじゃなくて、あなたの向こうでの交友関係よ。ゆんゆんほどじゃないとは思うけど、あなたもけっこうぼっちなんじゃないの?流石にゆんゆんほどじゃないとは思うけど」
「なんで二回も言ったの!?そんなに大事なことなの!?」
なるほど、そう来ましたか。確かに私は天才なので孤高な人生を送っていると思われても仕方ありませんね。
「だってめぐみんって紅魔の中でも頭おかし痛い痛いごめんってば私の二の腕にかじりつかないで!」
「もうどどんこったら、余計なこと言うから」
そんなこと言ってますがふにふら、あなたもさっきから大概ですからね?
「それで、正直なところどうなの?」
「ぶっちゃけると、いるなら男友達とか紹介して欲しいのよ」
「だいぶぶっちゃけましたね」
「あ、でも私もめぐみんの交友関係は気になるかな。男の子といることも結構あるし、あの中に誰か、その、気になる人とかっているの?」
「「え!?」」
ゆんゆんが何となく言ったその言葉に、二人は食い付いた。
「嘘よね?花より団子を体現してたあのめぐみんにまさか男なんて、いるはずないわよね?」
「めぐみんに男ができて私たちにできないわけがないし、そんなことありえないわよ。……ないわよね?」
そんなことを言いながらも不安そうにこちらをチラチラと見てくる二人。別に彼らとはそんな関係ではないですが、少し使わせてもらいましょうか。
「そうですね、それなりに親しい人ならいますよ」
私がそう言うと、二人はビクッと体を震わせた。そしてふにふらは、どこか縋るような顔で聞いてきた。
「で、でも、めぐみんの相手なんだからその人も頭おかしかったりするんでしょ?」
それはどういう意味だ。……まあいいです。ここは二人に勝つことを優先しましょう。
「そうですね、別に特定の相手とどうこうしてるわけではないのです一人ずつ言っていきましょうか。まずはそうですね、イギリス魔法界の英雄と呼ばれている子に、出来る兄たちにコンプレックスを抱いている名家の子、少し卑屈ですが努力家で真面目な子、あからさまに俺様系な金髪の子……まだ何人かいますが、紹介しましょうか?」
私がそう言うと、二人はプルプル震えた後に「逆ハーの主なんてズルじゃない!」と泣きながら店から駆け足で出ていった。
「ふっ、勝った」
「え、今の勝ちなの?私にはめぐみんの爛れた関係が暴露されたようにしか思えなかったんだけど」
二人が出て行った方を眺めて私がそう言うと、ゆんゆんがそんなことを言ってきた。
「私はそれなりに親しい仲としか言っていません。それなのに爛れた関係とか言うなんて、脳内ピンク色のゆんゆんは何を想像したんですか?」
「ピ、ピンクじゃないもん!」
「……あれ?というかなんでゆんゆんは私がハリーたちとよくいることを知ってたのですか?レイブンクローの寮はグリフィンドールとは離れていますし、先学期は合同授業もありませんでしたよね」
私がゆんゆんにそう聞くと、ゆんゆんは恥ずかしそうにしながら言った。
「その……めぐみんに会いたいけど行っても迷惑かもしれないから偶然会うためにめぐみんがよく居るところを探そうと思って。それで同室の友達にめぐみんについてちょっと聞いてもらってたから……」
「あの、ゆんゆん?会いたいなら訪ねてくればいいんですよ」
そんなことを言いながら、来学期は私から会いに行こうと心に決めた。本当に、この子はどこまでぼっちを拗らせてるんでしょう。寮に紅魔以外の友達が出来たとは言え、性格は変わらないようですね。