この素晴らしいホグワーツに爆焔を!   作:里江勇二

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この勇気の寮に減点を!

 翌日、いつもより早く目が覚めた私は朝の散歩でもと廊下を歩いていた。五月の朝の涼しい空気が眠気の残る私の頭を覚醒させていく。たまにはこういうのもいいですね。今度ハーマイオニーたちを誘ってみましょうか。

 そういえば、ハーマイオニーといえば昨日のドラゴンの件はどうなったのでしょうか。無事に引き継げたといいのですが。

 

「……うん?」

 

 そんなことを考えながら歩いていた私は、ふと寮の得点表の前で足を止めた。

 

「グリフィンドールの点が大きく減ってますね。故障でしょうか」

 

 そう、グリフィンドールのみ昨日から点数が150点も引かれているのだ。スリザリンの悪質ないたずらだろうか。本当にあの人たちは……。

 

「おや、ミス紅魔。今日は随分と早いですね。実にけっこう。しかし得点板の前で突っ立って、一体どうしたのですか?」

 

 スリザリンへのヘイトをまた一段と高めていると、マクゴナガル先生が声をかけて来た。よかった、誰か先生を呼ぶ前に向こうから来てくれた。

 

「あ、丁度いいところに。おはようございますマクゴナガル先生。あの、得点表が故障してるようなので直していただきたいのですが」

 

 私がそう言うと、マクゴナガル先生はため息をついてこちらを見て来た。どうしたんだろうか。

 

「ミス紅魔、この得点で合っています。表示は正常です」

「…………え?」

 

 先生が得点表を直すのを待っていると、先生はそう言ってきた。

 

「驚くのも無理はありません。一晩に150点なんて前代未聞です」

「何があったんですか?」

 

 私が聞くと、マクゴナガル先生は何度もため息をつきながらハリーにハーマイオニー、そしてネビルの三人が昨日の夜に天文塔にいたことを話した。見つかってしまったにも関わらず先生が透明マントに言及しないあたり、脱げてしまったわけではないようだ。おそらく興奮のあまりマントを忘れてきたとかそのあたりだろう。先生は三人がドラコをおびき出して減点を狙っていたと言っていたが、どちらかと言うと狙ってたのはドラコだ。

 

「ひどい話です。ドラゴンなんて与太話を使って他寮の生徒を罠に嵌めるだなんて」

 

 そんなことを呟きながらマクゴナガル先生は去っていった。

 

 その日、ホグワーツに激震が走った。寮杯争いの首位を走っていたグリフィンドールが一気に最下位に落ちたのだ。みんなが噂話をしていた。ハリー・ポッターが、あの有名なハリー・ポッターが、クィディッチのヒーローハリー・ポッターが寮の点をこんなに減らしたらしい。何人かのバカな一年生と一緒に。

 

 学校で最も人気があり賞賛の的だったハリーは一夜にして一番の嫌われ者となった。レイブンクローやハッフルパフの生徒すらも敵となっていた。どうやらスリザリンが寮杯を失うのを楽しみにしていたらしい。どこに行ってもハリーは悪口を言われた。スリザリンだけはハリーに拍手をし、口笛を吹いて囃し立てていた。

 

「まあまあ二人とも、そんなに落ち込まないでくださいよ。今まであなたたちの獲得してきた点数を考えれば差し引きしてもまだプラスじゃないですか」

「そうそう。それに数週間もすればみんな忘れるよ。フレッドとジョージなんか、入寮してから毎日のように点を引かれっぱなしさ。それでもみんなに好かれてる」

「差し引きなんて誰も考えてないわ」

「フレッドたちだって一回で150点も引かれたりはしなかっただろう?」

 

 私とロンはひどく落ち込む二人を励ましたが、二人は意に介そうともしなかった。ネビルとも話そうとしているのだが、私を見るたびにネビルは逃げていった。私が怒ると思っているのなら甚だ遺憾なところだが、ネビルも色々あって混乱してるのだろう。落ち着いてから改めて話をしようと思う。

 

 そんな試験まで一週間のある日、罰則から帰ってきたハリーが大事な話があると言って私たちを談話室に集めた。談話室で大丈夫かと思ったが、誰もハリーの近くに寄ろうとすらしなかった。あれから少し経っていたが、まだ歴史的な大減点の影響は大きいらしい。

 

 ……みんなは寮杯に命でもかけてるんだろうか。

 

「必要なことだけ話す。僕は森でヴォルデモートと会った」

 

 そんなぼんやりとした考えごとはハリーのセリフで吹き飛んだ。

 

「ハリー!それはどういう」

「めぐみん、静かに。僕はずっとスネイプがお金のために石を手に入れようとしてると思ってたんだけど、違った。スネイプはヴォルデモートのために石が欲しかったんだ……」

「頼むからその名前を言わないでくれ!」

 

 ロンの嘆願はハリーの耳に入らなかったようで、ハリーは話を続けた。

 

「フィレンツェは僕を助けてくれた。だけどそれはいけないことで、ベインがものすごく怒ってた。惑星が予言した出来事に干渉するなって。惑星はヴォルデモートの復活と僕が殺されることを予言してたのに、それを邪魔するのはダメだってベインは思ったんだ」

「いや本当に、頼むから『例のあの人』の名前をいうのだけはやめてくれ」

 

 ロンの再びの嘆願はやはり今度もハリーの耳に入らなかった。

 

「それじゃ僕は、スネイプが石を盗むのをただ待ってればいいんだ。そしてヴォルデモートが僕の息の根を止めて、ベインは満足するんだろう」

「ハリー、ダンブルドアは『あの人』が恐れる唯一の人だってみんな言ってるじゃない。ダンブルドアが側にいる限り、ここは安全よ。それに占いなんて当たらないものよ」

 

 熱に浮かされたようなハリーに、ハーマイオニーはそう声をかけた。どうしよう、うちの里に百発百中の占い師がいるだなんて言えない。

 

「大丈夫ですよ、ハリー。ヴォルデモートなんてただの死に損ないじゃないですか。そんなに怯える必要はないですよ」

 

 私たちはそれ以降もいくつかの声をかけたが、ハリーはまだ不安そうな顔のままだった。

 

 

 

「へー、あの減点の真相はそういうことだったのね」

 

 それから数日後、いよいよ学年末テストまで三日と迫り私はゆんゆんと図書館で試験勉強をしていた。

 

「まさかドラゴンなんて違法なもの……めぐみん、あなたの規則は破るものっていう意識がみんなに移っちゃったんじゃないの?そうなら謝っときなさいよ」

「勝手なことを言わないでください。怒りますよ。というかみんなも薄情ですよね。今まで散々チヤホヤしておいて減点されたら急に手のひらクルーだなんて」

「そういうものなんじゃない?まあ私はうちの寮までブーブー言うのはおかしいと思うけどね。スリザリンに寮杯を取られたくないなら自分たちで取ればいいだけなのに」

 

 それに関しては私も同感だ。望みを他の寮にかけておいてダメになったら怒るとか情けないにも程がある。

 

「それにしても意外ね」

 

 そんなことを考えていると、ゆんゆんが口を開いた。

 

「何がですか?」

「めぐみんってすごい負けず嫌いじゃない。だから150点も減点されて真っ先にその三人を責め立てるかと思ってたから」

 

 感心したわ、と言うゆんゆん。そんなことで感心されましても。

 

「確かに最初はドラゴンの件で仲間外れにされたことに関して数日ほど拗ねてましたが、点数の件では責めてませんよ。というかあそこまで他の人に責められてなお何か言えるほど私は鬼畜ではありません」

 

 あんなに周りにビクビクしてるハリーたちは初めて見ましたよ、本当に。

 私がそう言うと、ゆんゆんは「よかった、めぐみんにも人の心があったのね」と言って勉強に戻った。その言葉の意味をゆんゆんの無駄に育った忌々しい乳を引きちぎろうとしながら問い詰めていると、ゆんゆんが思い出したように言った。

 

「そうだ!ちょっとめぐみん、実はあなたに話があるの。だからその手を離して!痛い、痛いから!……全く、なんでめぐみんったらそんなに短気なの」

「紅魔族とはそういうものです。それより話って何ですか?」

 

 私が聞くと、ゆんゆんは懐からメモ帳を取り出した。

 

「ほら、あなたクィレル先生のことを疑ってたじゃない?だから私なりに調べてみたのよ。そしたらいくつか興味深い噂が出てきたの。私の胸を抓ったのを謝ってくれたら教えてあげてもいいわよ」

 

 そしてドヤ顔でそんなことを言ってきて……。

 

「あ、その話なら大丈夫です。ゆんゆんが知れそうな話は全部セドリックから聞いたので。話はそれだけですか?それじゃ」

「待って!もしかしたら少し違うかも知れないじゃない!お願いだから行かないで!見捨てないでよおぉぉぉ!」

「ちょっと、図書館で人聞きの悪いことを言わないでくださいよ!というかどいてください。別にどこも行きませんから。今のはあなたにイラっときたからやっただけのポーズです」

 

 私がそう言うと、立ち上がっていた私の腰にしがみついていたゆんゆんは素直に席に戻った。

 

「それで、あなたが集めてくれた話を聞かせてくれますか?あなたが言った通り私が聞いたのとは別の話もあるかも知れませんしね」

「分かったわ。ええっと……私が聞いたのはクィレル先生が一人でいるはずなのに他の人の声が聞こえたってことと、誰にもターバンを触らせないってことなんだけど。知ってる?」

「ええ。逆に私が知ってるのはそれだけですが」

 

 どうやらゆんゆんが私の知らない噂話をゲットしたことはなさそうだ。残念ですが、その二つを知れただけ褒めるべきですかね。なんせ私が聞いたのは如何にも人気で話が集まってきそうなセドリック。対してゆんゆんは交友関係が狭いですからね。どうやら図書館での過ごし方のお陰で知名度と人気は意外とありそうですが、話を集めることに役に立ちそうな人気の出方じゃありませんし。ゆんゆんにしては頑張ったと思います。

 

「あ、でもそれだけじゃなくてね。パドマ──ほら、パーバティの妹の──にクィレル先生のターバンについて聞いてみたのよ。そしたらいくつか分かったことがあって」

「ほう。詳しく」

 

 ゆんゆんの健闘を内心で褒めていると、ゆんゆんはそう言ってきた。なるほど、そう言えばインドにもターバンの文化はある。私もパーバティに聞いてみればよかったかも知れない。

 

「あのね、クィレル先生のターバンって相当高級品みたいなの。装着者の魔力が漏れ出ないような魔法がかかってて、しかも認識阻害の魔法もかけられてるみたい。本来王家とかが着けるようなものなんだってパドマは言ってたわ」

「なるほど……ゆんゆん、よくその話を聞き出してくれました。ありがとうございます。素晴らしい情報です」

 

 魔力が漏れ出ないようにしてある上に認識阻害の魔法……これは明らかにターバンの中に何かありますね。魔術的な通信装置、或いは怪物でも体内に宿しているか。いずれにせよ、推理はこの話で大きく前進した。

 

「めぐみんが手放しで褒めるなんて……そんなに重要な話だったの?」

「ええ、非常に大事な話でした。ゆんゆん、よくやりました。今度からあなたのことを心の中で万年ぼっちの寂しんぼ娘と呼ぶのをやめてあげましょう」

「それは今回の関係なしに普通にやめてよ!」

 

 ゆんゆんが何か言ってるが気にしない。何にせよ、賢者の石に関してはだいぶ大詰めに来ている。あとは何かあればすぐに対応できるように準備するだけだ。となると、ハグリッドのところへ行くことになりますか。もう黒幕撃退用の攻撃に関しては準備万端ですし、あと出来ることはハグリッドに聞けるだけ聞くだけでしょう。

 

 賢者の石について頭の隅っこでそんなことを考えながら、私は試験勉強をしていた。

 

 

 

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