この素晴らしいホグワーツに爆焔を!   作:里江勇二

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この賢者の石の事件に終結を!

「待たせてしまいましたね、ハリー。でももう大丈夫です。私があのキモいのをけちょんけちょんにしてあげましょう」

 

 私は扉のところからハリーのいる場所への移動した。その間クィレル先生……いや、ヴォルデモートは私を警戒してか私を遠巻きにしたままだった。

 

「ハリー、『石』はどうなりましたか?」

「僕が持ってるよ。それよりめぐみん、今のは何?爆発(エクスプロージョン)と言ってたけど、もしかして事あるごとに言ってる爆裂魔法が完成したの?」

 

 私が石について聞くと、ハリーはそんな質問を返してきた。

 

「いえ、残念ながらあれはまだ完成していません。というかあの魔法の力は強大すぎるのでこんな室内じゃ撃てませんよ」

「じゃあさっきのは?」

 

 ハリーの問いに、私は腰につけたポーチに手を置いて答えようとした。しかしその時、ヴォルデモートが言ってきた。

 

「貴様……何故生きている。トロールは一人の一年生ごときに倒せる存在などではない。どんな手品を使った」

「今あなたを吹き飛ばしたのと同じ方法ですよ。それに私を普通の一年生と同じに見ないでほしいですね。さもなくば痛い目を見ますよ」

 

 まあ私は痛い目を思いっ切り見てほしいわけですが。

 

「それでめぐみん、さっきのは何だったの?」

「ああ、そうでしたね」

 

 ハリーにもう一度聞かれて、私はポーチから黒いボールのようなものを取り出した。

 

「それは?」

「よくぞ聞いてくれました!これこそは我が秘密兵器、『爆裂弾』。私の魔力に反応して爆発する爆弾です」

 

 冬休みに父親に製作を頼んでおいたのだが、やはり我が父、腕だけはいいのか半年以内で完成させて私に届けてくれた。

 

「ちなみに……」

「フハハ、抜かったな紅魔!それを私にも聞こえるように話すとは。アクシオ!

「これには紅魔謹製の『魔術師殺し』が使われているのでアクシオ等の魔法は効きません。なので抜かったのはおバカなクィレル先生……いえ、先生呼びはやめましょうか。とにかく間抜けだったのはクィレルの方だったわけです」

「クソが!」

 

 私の言葉に、ドヤ顔だったクィレルは顔を真っ赤にして床を蹴った。

 

「じゃあめぐみん、さっきの呪文はその『爆裂弾』の威力を上げるためのものなんだね」

 

 そうしていると、ハリーがそんなことを言ってきた。

 

「そんなわけないじゃないですか。そこまで魔法的に高性能なものをマグルのうちの父親が作れるわけないでしょう。呪文はかっこいいから言ってるだけです」

「…………」

 

 どうしよう、さっきまで私の登場に希望に輝いていたハリーの顔が曇ってしまった。心なしかヴォルデモートまで呆れてる気がする。

 

「……もういい。クィレル、さっさと殺せ」

「御意に。アバダ

「エクスプロージョン!」

「ガァァァ!!!」

 

 私が爆裂弾を投げつけると、クィレルは先ほどと同様に吹き飛んだ。あの二人は学習するということを知らないのだろうか。

 しかしあれですね。やっぱり爆裂弾だとあの爆裂魔法の夢の感覚とは雲泥の差ですね。パチモン感がすごいです。父には悪いですが、これは今後は封印ということにしますか。

 それにしても……。

 

「ハァ……何というか、少しガッカリですね。闇の帝王と言うくらいだからもっとかっこいい系のラスボスを予想してたのに、学習しない上にどちらかというとキモさ寄りのラスボスとか、本当にガッカリです」

「誰がキモい系ラスボスだ!俺様も学生時代はイケメンで通ってたんだぞ!」

「中年のおっさんはみんなそう言うんですよ」

 

 というか学習しないということよりそっちに突っかかってくるんですね。意外と今の容姿を気にしてるんでしょうか。

 

「紅魔、キモいというのはご主人様であって私ではないよな?私はまだ行けるよな?」

「……おい、クィレル」

「はっ!すみませんご主人様!ついうっかり」

「そもそもお前だって極端に頭が小さかったりハゲだったりするだろうが!その時点でアウトだバカが」

「……二つともご主人様のせいなんですが」

「何か言ったか?」

「いえ、何も」

 

 そして向こうの主従は何かコントのようなものをしていた。言った私が言うのも何ですが、仮にもイギリス魔法界最悪の主従がそんなことで口喧嘩していいのだろうか。……まあいい、何にせよ注意が逸れた。

 

(ハリー、私が次に爆裂弾を投げるタイミングであなたはホグワーツの方に逃げてください」

 

 私はすでに呪文による拘束が解けているハリーにそう囁いた。

 

(……君は?めぐみんはどうするの)

(もちろんここに残ってあのハゲ二人をぶっ飛ばします)

(それなら僕も残る。君だけを置いて逃げるなんて!)

(ハリー、冷静になって客観的に考えてください。今回の目標はヴォルデモートに『石』を与えないことです。そのためにはハリー、あなたがここにいてはいけません)

(それは……そうだけど)

 

 そしてハリーは考え込んだ。しかしそれも一瞬だった。

 

(うん。分かったよ。悔しいけど、ここにいても僕にできる事はなさそうだし。その代わりめぐみんは絶対に死んじゃダメだからな。ダンブルドアが来るまで絶対に持ってくれよ)

(だからあの二人を倒すと言っているでしょう。持つも何もありませんよ)

 

 そんな私の言葉に、ハリーはじっと私を見つめた。そしてもう一言を口にした。

 

(うん、そうだね。めぐみんなら大丈夫だ)

 

 私たちは互いに頷き合った。

 

「さてブ男二人、喧嘩は終わりましたか?」

「「ブ男じゃない!」」

 

 私がそう言葉をかけると、二人は息の合った声を返してきた。何というか、一人の頭で喧嘩したり声を揃えたり面白いことをしてますね。

 

「喧嘩が終わったなら我が爆裂魔法を食らって仲良く逝くがいいです。エクスプロージョン!」

「魔法じゃないだろうが!」

プロテゴ!……ご主人様、魔法を撃つ時くらい静かにしてくださいませんか?」

「黙れ!少しくらいストレスを発散させろ!この娘のせいで俺様の頭は今グチャグチャなんだ」

 

 私の投げた爆裂弾は、そんなことを言い合っているクィレルの防護呪文によって止められた。流石にホグワーツに認められる魔法使いにしてヴォルデモートの宿主を務める人間の防護呪文には止められますか。実は最後の弾だったので少しくらいはダメージを与えたかったのねすが、仕方ありません。しかしこれで狙いは果たせました。

 

「……おい。ポッターはどこへ行った」

 

 ハリーが逃げたことに最初に気づいたのはヴォルデモートだった。

 

「答えろ、紅魔とやら。ポッターはどこへ行った!!!」

 

 ヴォルデモートは私に向かってそう叫んだ。さすがは闇の帝王、出そうと思えば風格が出せるじゃないですか。

 

「彼なら行きましたよ。仲間がダンブルドアを呼びに行ってますし、すぐに保護されるでしょう。もちろん『石』は彼が持っています……今どんな気持ちですか?何十才も年下のまだ一年生の私たちに出し抜かれた闇の帝王さん?どんな気持ちですか?」

 

 私がそう言うと、クィレルの頭からブチリという音が聞こえてきた。最も嫌な類の悪寒が背筋を襲い、ゾッとするような空気が私を包んだ。あ、これはヤバいやつだ。

 

「……クィレル。もう『石』を用いての復活は叶わない。ダンブルドアにポッターが保護されるという事はつまりそういうことだ。だがな」

 

 そこでヴォルデモートの声が強まった。

 

「この俺様を散々コケにしてくれたこの小娘を無視しておめおめと逃げる気は無い。俺様がどうなろうが、こいつには絶対に苦しんで苦しんで苦しみ抜いた上で死んでもらう。分かったらクィレル、まずは磔の呪文をかけろ」

「はっ、了解しました」

 

 ヴォルデモートの声にクィレルが答えた。クィレルの杖がこちらを向く。

 

「いいんですか?また爆裂弾で吹き飛ばされますよ?」

 

 私がそう言うと、ヴォルデモートは何ともないように答えた。

 

「俺様はとある経験から魔法具の目利きができる。俺様がその忌々しい弾とポーチを見たところ、お前の持てる弾の限界は四つ。トロールも含めて全て使ったはずだ」

 

 ……ば、バレてる。ブラフでできるだけ乗り切ろうと思ってたのに、そのブラフの筆頭にして切り札が真っ先に消された。

 

「クィレル、やれ」

クルーシオ!

 

 ヴォルデモートな命じられるままに、クィレルは静かな声で呪文を唱えた。杖の先から閃光が迸り、私の体を貫いた。

 その途端、この世のものとは思えない痛みが全身を走った。磔の呪文。確か死ぬほうがマシと思わせるほどの苦痛を味わわせる、許されざる呪文の一つ。ヴォルデモートの手下たちが拷問によく用いたものだったらしいが……。

 

「グッ……グァッ……ハァッ……ゲホッ!」

 

 噂通りだ。確かにこれは辛い。

 それでも、耐えられないほどじゃない。天才の呼び声は伊達じゃない。私の魔法力が呪文の効果を弱めたんだ。

 私はできるだけ苦しい素振りを見せないようにしてクィレルの方を向いた。

 

「何てものを……見せてくれるんですか……貧乳かつ爆裂魔法を使えない未来なんてッ……」

「掛かってるんだよな!?本当に磔の呪文は掛かってるんだよな!?」

「ご主人様、落ち着いてください。しっかりと掛かったところを見ましたでしょう。おそらく今のはただの強がりのはずです。……ですが、念のためにもう一度掛けておきます」

「おう、そうしろ。もう本当にこの小娘やだ……」

クルーシオ!

 

 そんなやり取りを経て、再びクィレルは私に向かって磔の呪文を唱えた。痛みはさらに激しくなり、いよいよ隠せるものではなくなってきた。その苦痛はあまりに大きく、私の感覚は徐々に現実から離れていく。

 

「……確かに掛かっているな。ハァ、なんかもうさっさと殺したほうがいい気がしてきた。苦しませたい感情よりホッとしたい感情の方が強い」

「どうします?もう殺してしまいますか、ご主人様?」

「ああ、そうしよう。もう本当に今日は疲れた……ゲッ、貴様は!」

 

 そんなヴォルデモートとクィレルの主従の声をどこか遠くの出来事のような感覚で聞きながら、私の意識は霧散していった。

 

 

 

 

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