この素晴らしいホグワーツに爆焔を!   作:里江勇二

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この騒がしい歓迎パーティーに組分けを!(1)

「めぐみん!」

 

 コンパートメントの入り口に立っていたのは、私の幼馴染であるゆんゆんだった。

 

「ゆんゆん!?なぜあなたがここに?」

「それはこっちのセリフよ!ひょいざぶろーさんもゆいゆいさんも魔法使いじゃなかったはずじゃない」

「ええ。でも私は魔法使いだったみたいです。そういうこともよくあるそうで……知らなかったんですか?」

「いや、確かにそうだけど、でも、まさかめぐみんがそうだなんて……」

「……知り合い?」

 

 私たちが言い合っていると、横からハリーが聞いてきた。

 

「ええ。遠い親戚の友達の遠い親戚です」

「それは他人じゃないの?」

「嘘言わないでよめぐみん!初めまして、私はめぐみんの幼馴染の紅魔ゆんゆんです」

 

 ゆんゆんがそう言うと、三人はゆんゆんの方をえっ、と言う顔で見た。

 

「あれ?めぐみん、私何かおかしなこと言っちゃった……?」

 

 そんなことを言って不安そうに三人を見るゆんゆんに、ハリーが言った。

 

「ゆんゆんはめぐみんみたいに「我が名はゆんゆん!」とか言わないの?」

「えぇ!?めぐみんあなた、あれやったの?外の人に?」

「当たり前じゃないですか。あれは紅魔の正式な名乗りです。むしろゆんゆんは何故やらなかったのですか」

「だって恥ずかしいし……」

 

 そんなことを言うゆんゆんに私は……

 

「もっと恥ずかしいところに刺青があるくせに」

 

 そんなことを言った。

 

「なんでそれを他の人の前で言うの!めぐみんのバカァァァ!」

 

 それを聞いてゆんゆんは顔を赤くして涙目になりながら走り去っていってしまった。

 

「……えっと、追いかけなくていいの?」

「割といつも通りなので大丈夫です」

 

 私の返事を聞いたハーマイオニーは何かを諦めたような顔になった。

 

「あ、そう言えばあの子も紅魔って言ってたけど、姉妹とかじゃないの?」

「いえ、どこかで繋がりはあるかもしれませんがそれこそ遠い親戚程度です。紅魔というのは普通の苗字……ファミリーネームではなくて、一族全体の言わばグループネームなんですよ」

 

 そんな私にロンが聞いてきたので、私はそう答えた。ちなみに山奥に紅魔の里というものがあり、紅魔はみんな年に一度そこに集まることになっている。

 

「紅魔の一族は裏ではそれなりに知られてましてね。その方がかっこいいからと時の天下人に反旗を翻したり、面白そうだからと国家転覆を図り、楽しいからと議員として自国や他国の元首の性癖を暴いて国会をめちゃくちゃに荒らしたりと、何者にも縛られない生き方で生を謳歌することを至上とする一族です」

「なんてはた迷惑な……」

 

 私の言葉に、ハリーはそう呟いた。当時の日本国民はそれを面白がって見てたらしいから意外と迷惑じゃなかったんじゃないかと私は思ってる。

 

「それと紅魔の者は基本的に何かの才能を持っています。例えば今知りましたがゆんゆんの家は魔法を、私の妹のこめっこは魔性とカリスマを、里の占い師のそけっとは未来を正確に知る力を、近所のニートのぶっころりーはネトゲの才を持っています」

「へー……いや、今最後なんて言ったの?」

「ネトゲの才です。彼はニートにも関わらずそれでお金を稼いでいます」

「……なんか納得いかないわ」

 

 そんなことを話しながら、私たちは初めてのホグワーツへの汽車旅行を楽しんでいた。

 

 

 

 

「着いたみたいね」

 

 汽車が止まったのを見て、ハーマイオニーがそう言った。

 

 コンパートメントのメンバーのうち三人が魔法界初体験なこともあり、汽車の中では色々なことがあった。

 

 車内販売で買ったカエルチョコなるお菓子が本物のカエルさながらの跳躍を見せたり、ハリーと私がダンブルドアのことをほとんど知らなかったことに驚かれたり、写真が動くどころか写真の中の人物がどこかへ行ってしまうことを知ったり、ネビルという子のカエル探しを手伝ったり。

 

「じゃ、行きましょうか。あ、荷物は持って行かなくていいみたいですね」

 

 そう言って四人でプラットフォームに出て行くと、そこはまさに魔法の国というか、駅以外に現代の文明を感じさせない景色が広がっていた。

 

 周囲には山や森。遠くにはおそらくホグワーツであろう巨大な古城がその中にそびえ立っていた。そしてその頭上には都会暮らしでは一生見ることができないような満天の星が広がっており、足元には大きな黒い湖が横たわっていた。

 

「ここがホグワーツ……」

「すごいわね、こんなところがイギリスにあっただなんて」

「ああ、すごいや」

「僕たちはこれから、ここで」

 

 少しの間そうして突っ立っていると、夜の冷たい空気を割くような大きな声が聞こえてきた。

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!ハリー、元気か?もう友達ができたのか、そりゃいい」

 

 そちらを見ると、ひげ面の大男がハリーに笑いかけてるのが見えた。

 

「知り合いですか?」

「うん。ハグリッドって言うんだ。僕に入学許可を知らせてくれた人。ホグワーツの森の番人をやってるんだって」

 

 そのハグリッドという大男の案内についていくと、さっき見えた湖に着いた。四人乗りのボートに乗り込み、星空の下、威厳ある古城に向かって進む。

 

 そうして────

 

「イッチ年生!ここがホグワーツだ!」

 

 私たちは、ホグワーツに到着した。

 

 

 

 

「ホグワーツ入学おめでとう」

 

 大きな木製の扉から中に入ると、そこからはマクゴナガル先生の先導だった。少し歩き、ホールの脇にある小さな空き部屋に一年生を案内すると、マクゴナガル先生はそう言って話し始めた。

 

「新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります」

 

「グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンの四つの寮があり、それぞれに輝かしい歴史があって、偉大な魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんの行いは自らの寮の点に繋がります。良い行いならば加点、規則違反などの悪い行いならば減点。学年末には最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入っても、皆さんが寮にとって誇りとなるよう望みます」

 

「まもなく全校列席の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておきなさい」

 

 マクゴナガル先生は準備ができたら戻ると言って部屋を出て行った。

 

「どうやって寮を決めるんですか?」

「兄さんたちに聞いてみたけど、みんな違うこと言ってた。もしかしたら学年によって違うのかもしれないけど、多分からかってるだけだと思う」

 

 なんだろう、呪文の試験かも、そんなの入学前にやらせるもんか、じゃあ筆記試験かも、いやそれもないんじゃないか。そんなことを話していると、扉が開いた。

 

「さあ行きますよ。組分けの儀式がまもなく始まります」

 

 マクゴナガル先生の言葉に、私たちはパーティー会場の中へと入っていった。

「わぁ……」

 

 会場に足を踏み入れると、私の口から自然にそんな声が漏れた。

 

 大きな広間を埋め尽くすほどの生徒に、机の上にはキラキラ輝く金色のお皿とゴブレット。宙には何千というロウソクが浮かんでいて、その間を飛ぶゴーストは銀色に光る霞のように見えた。そして上を見上げれば、そこには満点の星空が。

 

「本当の空が見える魔法がかけてあるそうよ。『ホグワーツの歴史』にあったわ」

 

 横でハーマイオニーがそう言ったのが聞こえた。

 

 しばらく天井を見上げていると、マクゴナガル先生が黙って新入生の前に四本足の椅子を置いたので、私は視線を戻した。椅子の上にはいかにも魔法使いがかぶりそうな背高帽子が鎮座していた。継ぎ接ぎだらけでボロボロだったが、なぜか私はそこから力を感じていた。

 

「帽子からウサギでも出すのかな」

「そんなわけないでしょう。おそらくあの帽子は失われし古代技術で作られたアーティファクトで、実は製作者の血を引いていた私に反応して人型になるのだと思います」

「そっちの方が無いと思う」

 

 そんなことをハリーと言い合ってると、唐突にその帽子が動き出した。そしてつばのヘリの破れ目が口のように開き、なんと帽子が歌い出した。

 

 

世界に帽子は数あれど

歌う帽子はそうはいない

山高帽子は真っ黒だ、シルクハットはすらりと高い

私はホグワーツの組分け帽子、彼らの上を行く帽子

君の隠れた才能も、組分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールは勇気の寮

勇猛果敢な騎士道で、他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフは誠の寮

忍耐強く真実で、苦労を厭わぬハッフルパフ

 

レイブンクローは賢者の寮

機知と学びの友人を、何より欲するレイブンクロー

 

スリザリンは野望の寮

狡猾にして抜け目なく、目的遂げるスリザリン

 

かぶってごらん!恐れずに!

興奮せずに、お任せを!

君を私の手に委ね、考える帽子にお任せを!

 

 

 歌が終わると、会場からは大きな拍手が上がった。四つのテーブルにそれぞれお辞儀をして、帽子は再び静かになった。

 

「帽子をかぶるだけだったわね」

「うん。試験がなくて良かったよ」

「本当に。僕、もしかしたら試験で落第して追い返されるんじゃないかって思ってた」

 

 今の帽子の歌を聞いて、横で三人がそんな話をしていた。全く、なんてことを言ってるんですか。

 

「私は別に試験でもよかったんですが。魔法の勉強はまだですが私は天才なのでトップ通過でしょうし、みなさんだってそれぞれ突破できる理由は持ってるじゃないですか。全く、志が低いですね。悪いことばかり考えても仕方ないですよ」

「めぐみんは少しは悪いことを考えたほうがいいと思う」

 

 私の言葉に、ハリーがそう言ってきた。他の人から聞いた話を考えるとハリーは本当に悪いことばかり考えすぎだと思うんですけどね。魔法界の英雄ならもっと堂々としててもいいと思います。

 

「アボット・ハンナ」

「ハッフルパフ!」

 

 そんなことを考えていると、組分けの儀式が始まっていた。儀式は本当に帽子をかぶるだけだった。帽子が大声で寮を宣言するのは思った以上にシュールだった。

 

「グレンジャー・ハーマイオニー」

「グリフィンドール!」

 

 そのまま儀式を眺めていると、ハーマイオニーがグリフィンドールと宣告されテーブルで歓迎されるのが見えた。彼女はG、私はK。そろそろですね。

 

「紅魔めぐみん」

 

 出て行く準備を整えていると、思ったよりも早めに呼ばれて私は椅子に座り組分け帽子を被った。

 

 

──やあ、私は組分け帽子。よろしく。

 

 帽子を被ると、頭の中に声が響いてきた。どうやら挨拶のようだったので、私も自己紹介を返した。

 

(我が名は紅魔めぐみん!紅魔家一の天才魔法使いにして、いずれ爆裂魔法の使い手となる者!どうぞよろしくお願いします)

 

 脳内でマントを翻しながらそう言うと、帽子はしばらく沈黙した。

 

(帽子さん?組分け帽子?……返事しないと燃やしますよ)

──はっ!いや、失礼。自己紹介を返してくれる生徒は少ない上に、個性的な自己紹介だったものでね。だから燃やすのは少し待ってくれないかな?私はまた来年もこのパーティーに出て上級生のパイ乙を眺めたいんでね。

 

 組分け帽子の欲望は思ったよりも俗っぽかった。

 

(冗談ですし、別に燃やしたりしません。話を聞いて少し燃やしたくなりましたが、あなたは貴重なようですし。それより早く私の寮を宣告してください。次がつっかえてます)

──いや、この会話は脳内で非常に早い速さで行われてるからそれは問題じゃないさ。問題は寮の決定そのものでね。

 

 私の要求に組分け帽子はそんな言葉を零してきて……

 

(なるほど、今までの既存の枠では収まりきらないほど私の器が大きかったんですね。なら仕方ないです。エクスプロージョン寮と宣告してください)

──君の自己評価の大きさと発想の奇想天外さは確かに既存の枠じゃ収まらないけどね。四つのうちどれかの寮に入れる素質はちゃんとあるから安心していい。ただ、困ってるのはね……

 

 そこで組分け帽子は一息置いて言った。

 

──君には四つの寮全ての素質が同じくらい大きくあるんだ。

 

 

 

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