この素晴らしいホグワーツに爆焔を!   作:里江勇二

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 だいぶ更新が遅くなってしまいました。すみません。ちょっと今受験勉強が佳境と言いますか、厳しい状況なので、今後もそう高頻度では投稿できなさそうです。ですがエタるつもりはないので、今後もよろしくお願いします。

 ではどうぞ。


この空飛ぶ自動車に登場を!

 

 

 マクゴナガル先生が儀式の開始を宣言すると、広間全体がシーンと静まり返った。そして組分け帽子が軽く咳払いをして一曲歌い、組分けの儀式が始まった。

 

「グリーングラス・アステリア」

「スリザリン!」

 

 ほう、アステリアはスリザリンですか。あの気質ですしグリフィンドールやハッフルパフなんかもあり得るかと思っていましたが、血は争えませんね。

 

「クリービー・コリン」

「グリフィンドール!」

 

「ラブグッド・ルーナ」

「レイブンクロー!」

 

 そして儀式は着々と進んでいき、最後にジニーが呼ばれた。

 

「ジニー・ウィーズリー」

「グリフィンドール!」

 

 そして帽子はもはや考える必要すらないとばかりにジニーの頭に接した瞬間にそう叫んだ。

 

「おめでとうございます、ジニー。ようこそグリフィンドールへ!」

「歓迎するわ!」

「さすがウィーズリー家ね、これで本当に一家全員グリフィンドールじゃない」

「ありがとう、みんな。まあ分かってたことだけどね」

 

 組分け帽子の宣告にまっすぐこちらのテーブルに来たジニーはみんなに一通り祝われたあと、そう言いながらもホッとしたようだった。

 

「ねえねえめぐみん。さっき聞いたんだけどさ、ハリーとロン、車で空を飛んで来たらしいよ」

 

 校長の去年と同じような気の抜ける掛け声のあとパーティーのご馳走を貪り食っていると、近くにいたネビルがやって来て言った。

 

「ふぇ!?ふぁふぃれふかふぉれ」

「めぐみん、行儀悪いし何言ってるか分からないからちゃんと飲み込んでから話しなさい。それでネビル、今なんて?」

 

 そんなことを言うハーマイオニーと私にネビルはもう一度言った。

 

「だからハリーとロンが空飛ぶ車で学校に来て、今マクゴナガル先生と処分について話してるって」

「え!?今なんて!?」

「あぁ、もう!ハリーとロンが車で空を飛んで学校に来て、今先生と処分のお話し中らしいよ!」

 

 そして今度はパーバティに聞かれ、ネビルはキレ気味にもう一度言った。

 

「ねえネビル、ごめん、聞いてなかったんだけどロンがなんて?」

「君たちはなぜそんなにも人の話を聞かないの!?ハリーとロンが、空飛ぶ車で登校して、今処分について話し合い中!」

 

 一息ついて私たちの机の席に座ろうとしたネビルだったが、ラベンダーにそう聞かれてキレる寸前といった感じで言った。

 

「ふぅ。しかしネビル、それって本当なんですか?」

「さあ?ただ、結構な数の人がそう噂してたよ。なんでも暴れ柳に衝突したって」

 

 私がそう聞くと、ネビルは少し疲れた様子で答えた。暴れ柳といえば、校庭にある近づくととんでもない力で吹き飛ばされることで有名な古木だ。あそこに突っ込んだとか、二人はバカなんでしょうか。

 

「全く、二人は何を考えてるのかしら。退学になったらとか考えなかったっていうの?」

「まあまあハーマイオニー、いいじゃないの。男の子はそんなもんだってうちの母さんも言ってたわ」

「ハリーのことだからって寛容にならないで欲しいんだけど」

「な、何のことかしら。というか何であなたが知ってるの?いつも聞いてなさそうだったのに」

 

 そんなことを考えてる横で、ハーマイオニーとパーバティがそんな話をしていた。すみませんパーバティ、私がバラしました。

 

「しかし二人もバカですよね。せっかく車で来たのに木にぶつかって終わりだなんて。どうせなら窓ガラスを突き破ってここに直接来ればよかったのに」

「めぐみん、あなたの方が100倍バカだと思うわ」

「あ、ジニー。聞いてたんですね」

 

 私の呟きに、ネビルと話していたジニーが呆れ顔で言ってきた。そしてその隣でネビルやラベンダーも私を見て苦笑いしていた。

 

「何ですか三人とも。いいですか、人生目立ってなんぼだという格言が私の里にはありましてね」

「グリフィンドール生は付いてきて!遅れたら今夜は寮に入れなくなるかもしれないから、気をつけて!」

 

 私がそんな三人に人生の何たるかを教授しようとすると、パーシーの声が聞こえてきた。どうやらパーティーはもうお開きらしい。

 

「めぐみん、君が目立ちたがりなのは知ってるから早く行こうよ。ハリーたちも話を終えて寮に向かってる頃だろうし」

「無事ならの話だけどね」

「ジニー、縁起でもないことは言うものじゃないよ」

 

 本当はかっこよくすることの素晴らしさを話すことから始めて紅魔に伝わる秘伝のポーズ100連発をしたかったのだが仕方ない。ハリーたちに噂が本当か聞く方が先決だ。そう思い、私たちはグリフィンドール生の集団に入っていった。

 

 

 

「ハリー、ロン、あなたたちはどうして空飛ぶ車で登校するなんてことしたの?バカなの?バカなのね?」

「ハーマイオニー、怖い。怖いよ。そんなに顔を近づけないでくれ」

 

 パーシーの後を付いていった先の寮の入り口でハリーもロンの二人を見つけるなり、ハーマイオニーはツカツカと二人に歩み寄って言った。

 

「そうですよ、なんで私に言ってくれなかったんですか。最高にクールな登校方法を考えていたなら私にも声くらいかけてくださいよ。私に言ってくれれば花火や号砲等の魔法くらい用意して」

「めぐみん、ちょっと黙ってて」

 

 私もハーマイオニーに続こうとしたが、ハーマイオニーに止められてしまった。なぜだ。ちゃんと次からは私にも計画を話すよう説得しようとしたと言うのに。

 

「それで、処分はどうだったの?停学?退学?逮捕?」

「罰則で済んだよ。それより君、もしかして怒ってる?」

「ええ、もちろん怒ってます。なぜこの私を誘わなかったのかじっくり」

「めぐみん、黙っててって言ったわよね?」

 

 ……………………。

 

「パーバティ、ハーマイオニーがいじめてきます」

「なぜそれを私に言ったの?言っておくけど、今のは誰がどう見てもあなたが悪いわよ」

 

 ハーマイオニーの冷たい言葉にパーバティに泣きつくも、パーバティにもそうあしらわれてしまった。私は悲しい。そんな私を見かねてか、ラベンダーがハーマイオニーに言った。

 

「まあまあ、ハーマイオニーもそれくらいにしときなよ。怒るとシワ増えちゃうよ」

「まだ私はそんな歳じゃありません!私が怒ってるのはあなたたちが別にいいじゃんみたいな態度だからよ。魔法界では犯罪ですらあるのに、あなたたちはどうしてそんなに反応が軽いの」

 

 ラベンダーの言葉に、ハーマイオニーはため息をつきながらそう言った。ハーマイオニーはもう少し規則を守ることに対して丸くなってもいいと思う。この調子だと、歩行者の信号無視すら危険な重犯罪だとか言い出しそうだ。

 

「とにかく、次からはこんなことしないでよね」

 

 私がそんなことを考えていると、ハーマイオニーはそう言い捨ててスタスタと寮の方へ歩いて行ってしまった。それを見て、私たちも立ち止まってないでそろそろ寮へ行こうとなった。

 

 

「それで結局、なんで空を飛んで登校なんていう快挙を成し遂げようとしたんですか?あなたたちはそういうことを無理にやろうとする人じゃないと思うんですが」

「実はさ、なぜか僕のカートが9と3/4番線の入口の壁を通らなくて、特急に間に合わなかったんだ。それでどうしようかって考えて、咄嗟にアーサーおじさんの空飛ぶ車のことを思い出したんだ」

 

 寮に着き、先に部屋に戻ったパーバティにラベンダーと別れて談話室に残った私は二人にそう聞いた。すると、ハリーからそんな答えが返ってきた。なるほど。

 

「ちなみに、ヘドウィグで先生方に連絡して迎えにきてもらうことは考えなかったんですか?」

「さっきマクゴナガル先生にも同じこと言われたよ。焦ってて思いつかなかったんだ。分かるだろ?僕は君たちほど頭良くないんだ」

 

 まあ突然ホームに出られなくなって、その解決手段があるって分かったらすぐに飛びついてしまうのも分からなくはない。頭は全く関係なさそうだが。

 

 ……もしかすると、ロンは兄弟が多くて親に何かを解決してもらったことが少なかったから、ハリーは育ての親があまりにあんまりだったから、緊急時に誰かを頼るという発想が出なかったのかもしれない。そう考えると、今回のも仕方ないのかもなと思った。

 

「君のその哀れむような目は何?すごい腹立つからやめてくれない?」

「はあ?無理やり納得してあげたのに何ですかその言い草は。ぶっ飛ばしますよ」

「ぶっ飛ばすまでの過程が理不尽すぎる……」

 

 せっかく脳内で無理のある理論を展開してお茶を濁してあげたというのに、ロンったら全く。

 

「まあいいです。しかし壁を通れなくなったのは気になりますね。二人とも、何か心当たりはありませんか?この夏休みにあった何か変わったこととか」

 

 私がそう言うと、またもやハリーが言ってきた。

 

「今回のとは関係ないと思うんだけど、実はこの夏、僕の家に屋敷しもべ妖精のドビーって言うのが来たんだ」

「え?確か君の家ってマグルの家じゃなかった?」

「うん。だから他の家の。なんか無断で抜け出してたみたいで、早く帰らなきゃお仕置きされるとか言ってた」

 

 ほほう。なるほどなるほど。

 

「分かりました。それで、そのドビーとやらはなぜあなたのところに?」

 

 そのままハリーに話の続きを促すと、ハリーは言った。

 

「えーっと、確かね……そうそう、僕にホグワーツに来ないように言いに来てたんだったかな」

「あなたはバカですか」

 

 何が今回のと関係なさそうですか。バリバリありそうじゃないですか。

 

「めぐみん。僕は確かに君ほど成績は良くないけど、君だってその成績の分頭がおかしいじゃないか」

「その認識については後でじっくり聞きたいと思いますが、今はスルーしてあげましょう。あのですねハリー、あなたはなぜかホームにたどり着けずにホグワーツ特急に乗れなかったんですよ?これがあなたにホグワーツに来て欲しくない者の仕業でなくてなんなんですか」

「あ、なるほど。めぐみんはやっぱり頭いいね」

 

 今回のことはどっちかと言えばハリーが気付かなすぎなような気がしますが、まあいいでしょう。それより今後に関してです。

 

「ハリー、あなたをホグワーツから遠ざけたということは、今年もホグワーツで何か起こる可能性があるということです」

「?どういうこと?」

「よく分からないや。説明してくれないかい?」

「いや、あの、できればノータイムで聞かないで少しは理解に努めてほしいのですが」

 

 私の言葉にすぐそう聞いてくるハリーにロン。そんな二人に私はそう言った。二人だって今年で十二歳。日本ならそろそろ電車が大人料金になる歳ですからね。つまり実質成人手前。自分で考えるということくらい、そろそろできないと。

 

「まあいいんですけどね、何でも。ホグワーツで何かあるって言ったのは、ハリーをホグワーツから遠ざける理由がそれくらいしかないからです。生徒のイタズラにしては精度が高すぎますから、ドラコみたいなのではないでしょう。教師たちは除外。となれば、外部の何者かがあなたを疎んで遠ざけたのでしょう。外部の何者かがここでやることなんてたかが知れてます。つまり去年の『石』イベントの再来です!今年は何が起こるんでしょう!楽しみですね!」

「やっぱりめぐみんはめぐみんだったな」

「うん、途中まで頭が良い人の話を聞いてるみたいで衝撃だったけど、最後にめぐみんに戻ってよかった」

「ぶっ飛ばしますよ」

 

 その日は結局、何かあったら私たちに伝えるようハリーに言って別れた。さて、今年は何があるんでしょう。やはりホグワーツというのはいいですね。退屈しません。

 

 そんなことを考えながら、私は寮の自室へと向かった。

 

 

 


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