この素晴らしいホグワーツに爆焔を!   作:里江勇二

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このいけすかない寮生に殴り合いを!

「ハァ……」

「めぐみんさん、どうされたのですか?随分と大きなため息を吐いたりして」

 

 始業式から一週間後の朝、私はアステリアに呼ばれて図書館で一緒に勉強をしていた。何でも、呪文学で分からないことがあったから教えてほしいとのこと。入学からまだ一週間だと言うのに、勉強熱心な後輩だ。

 

「いえ、別に何かあったわけではないのですけどね。いい加減、闇の魔術に対抗する防衛術の授業は何とかならないものかなと思ってしまって」

「ああ、なるほど」

 

 そんな後輩に、私は最近の悩みを打ち明けた。闇の魔術に対抗する防衛術というのは、名前の通り闇の魔術対策のための授業だ。去年受け持っていたクィレルがいなくなったため新任のギルデロイ・ロックハートという人物に私たちは教わっているわけだが……。

 

「あの人、ホグワーツが学校だってことを知らないんでしょうかね」

「確かに、あれを授業だとは思いたくないですね」

 

 何というか、ナルシストが過ぎる。私が聞きたいのはトロールの倒し方で、先生がどう美女を口説いたかはどうでもいいのに。

 

「生徒にもファンが多いせいで授業が肯定されてるってのも、また性質(たち)が悪いですよね。あ、そう言えばアステリアはあの人を見て何も思わないのですか?女子生徒の四割ほど……特に魔法界出身の人はあの先生のファンみたいなものだった気がするのですが」

「確かにイケメンな方だなとは思いますが、格と言いますか、雰囲気が軽薄ですから。ドラコ様には遠く及びませんよ。めぐみんさんもそう思いますよね」

「え、その振り方で私に振るんですか?前半は同意しますが、後半はちょっと……」

 

 というかドラコもけっこう雰囲気のない人間というか、小悪党臭がプンプンする人だと思うんですが。

 

「そうですか?めぐみんさんの感性は変わっていらっしゃるんですね」

「よく言われますが、これに関しては絶対に変わってるのはあなたの方ですからね」

 

 素で失礼なことを言ってくるアステリアに、私は言い返した。

 そう、今の会話から分かる通りアステリアは何とあのドラコ・マルフォイにお熱なのだ。どんな業を前世で積めばそうなるのか。見当もつかない。それ以外に関しては文句なしの清楚な深層の令嬢といった感じなだけに、余計にそう感じてしまうというか。

 

「まあでも、めぐみんさんがドラコ様の良さに気づいてなくてよかったです。もしライバルになってしまったら、なかなかの強敵でしたから」

「変な想像しないでください。怖気がします」

 

 考えただけでおぞましい。

 

「アハハ……それより、めぐみんさんはどうなんですか?ロックハート先生、見た目だけならかっこいいと思うんですけど」

 

 そうしていると、アステリアはそう聞き返してきた。アステリア、あなた何気にズバズバ言いますね。

 

「私のタイプは甲斐性のあるお金持ちで浮気もせず、常に上を目指して日々努力を怠らない誠実で真面目な人ですから。あんなの論外です」

「うわぁ……何というか、酷いです。コイバナしちゃいけないタイプの人間なんですね、めぐみんさん」

 

 なぜ私のタイプを聞いた人の反応は揃いも揃ってこうなのだろうか。

 

「そうでなくてもあんなの嫌ですよ。授業中にため息をついたら、『どうしたんだい?ああ、分かった。私に見惚れてしまったんだね?ほら、サインを上げるからこれで我慢しなさい』ですよ?どれだけタイプに合致してても引きます」

「あー、それは災難でしたね」

 

 なぜあれをハーマイオニーが羨ましがってきたのか、全くもって訳が分からない。

 

「そういえばめぐみんさん、そろそろ時間じゃないですか?」

 

 そんなことを話していると、アステリアは不意に時計を見てそう言ってきた。

 

「あ、本当ですね。ありがとうございます。ではとりあえず、今日はこれくらいで」

「ええ、ありがとうございました」

 

 私はアステリアにそう言って、図書館を出た。

 

 

 

 

 二年生になって、いくつかの変化が起きた。例えば、一部教師陣の入れ替わりだったり。あるいは、授業自体の難易度だったり。ただし、私に限って言えばもっと大きな変化があった。それは──

 

「新メンバーを紹介しよう。二年生の紅魔めぐみんだ!」

「紅魔めぐみんです。じゃんじゃん点を決めていくつもりなので、よろしくお願いします」

 

 ──クィデッチの新チームに入ることになったことだ。

 

「去年卒業したアーノルドの穴埋めを探していたところ、ハリーが推薦してくれた。二年生の中でも特に優秀な飛行術を持っており、勝負度胸や負けん気も十分とのことだ。期待してるぞ、めぐみん」

「フッフッフ、任せてください。紅魔族の力を見せてあげましょう」

「よろしくね、めぐみん。私はアンジェリーナよ」

「知っての通りフレッドと」

「ジョージだ」

「ケイティ・ベル、ケイティでいいわ」

 

 胸を張る私に、そう声を掛けてくる新しき仲間たち。スニッチ点が高すぎるためクィディッチに対してはあまりやる気にはならなかったのですが、聞くところによればチェイサーが160点差をつけて勝ちにつなげた試合もあるそうで。ならば私がと、グリフィンドールがキャプテン、オリバー・ウッドの打診に返事をしたのです。

 

「ふふん、私が入った以上、このチームの優勝は運命付けられたようなものです。みんな、張り切っていきましょう!」

「「「おー!!!」」」

「俺の仕事……まあいい、ミーティングにするから場所を移すぞ」

 

 そう言うオリバーに連れられ、私たちは更衣室へと向かった。

 

 

 

「ハリー、オリバーの演説っていつもあんなに長いのですか?」

 

 それから一時間後、私たちはようやく練習を始めようとしていた。眠い。眠すぎる。朝の一時間を、ウッドがミーティングという名の演説に費やすなんて。絶対に素直に練習した方が良かったと思う。みんな半分寝てたし。というか私も寝てたし。

 

「ここまでじゃないけど、いつもそれなりに長いよ」

「マジですか。分かってるなら先に言っておいて欲しかったです」

「ごめんごめん」

 

 競技場への道すがらハリーとそんな話をしていると、前の方から言い争っている声が聞こえてきた。小走りになりながら向かうと、そこにはなぜかスリザリンチームがいた。

 

「フレッド、どうして彼らがここにいるんですか?」

「さあ?今それを聞いてるところさ」

 

 その言葉にオリバーの方を向くと、丁度オリバーがスリザリンのキャプテンのフリントに向かって抗議をしているところだった。

 

「この競技場を予約してるのは僕で、今朝は我々の練習時間だ。そのために特別に早起きしたんだ!今すぐ立ち去ってもらおう!」

 

 特別に早起きして出来た時間を演説で潰した本人が何を言う。

 

 その後眠らないようにしつつ話を聞いていると、どうやらスリザリンの新シーカーの練習のためにスネイプ先生が特別にサインしてくれたことを根拠にスリザリンはここにいるようだ。管理体制ガバガバじゃないですかホグワーツ。スネイプ先生は予約の意味を理解してるのでしょうか。

 

「新しいシーカー?」

 

 しかしオリバーの、というかみんなの注意はそっちに傾いていたようで、オリバーは訝しむようにそう言った。そしてそれに応えるように、全体的に体格の大きいスリザリンチームのメンバーの後ろから、ドラコが得意げに出てきた。

 

「おっとこれはこれは」

「フォイフォイ卿のご子息ではありませんか」

 

 そんなドラコの登場に、フレッドとジョージは嫌悪感とからかいが同居するという大変器用な表情でそう言った。無駄な才能を見せないでほしい。

 

「我が家を侮辱するなよ、血を裏切る者(ウィーズリー)が」

 

 すごいブーメラン。本当に何でアステリアはこんなのを……まあ今はいいか。

 

「まあまあ、そうカッカするな。それより、その方がスリザリンチームに下さったありがたい贈り物を見せてやろうじゃないか」

 

 そう思っていると、フリントの言葉を合図にスリザリンチームの七人全員が揃って自分の箒を突き出した。どうやら新品らしきピカピカに光っているその柄には、金の文字で『ニンバス2001』と書いてあった。

 

「最新型だ。先月出たばかりさ」

 

 そこからしばらくは、自慢の嵐だった。どうやら相当いい箒らしく、旧型の2000に対して大きく水をあけるだの、クリーンスイープなんかでは勝負にもならなかっただの言っていた。ふーん、と空の雲を眺めながら聞いていると、ロンとハーマイオニーが何事かと様子を見るためか競技場の中に入ってきた。

 

「どうしたの?なんで練習しないのよ。というか、なんでマルフォイがこんな所にいるの?」

「スリザリンの新シーカーらしいですよ。グリフィンドールが予約していたのに、新シーカーの養成を理由にスネイプ先生がスリザリンにも許可を出してしまって、今それで揉めているところです」

「またスネイプかよ」

「困った先生ですよね」

 

 スリザリンチームと睨み合っているグリフィンドールチーム六人をよそにロンたち二人と話していると、マルフォイがニヤニヤしながらこっちにやって来た。

 

「僕の父上がチーム全員に買ってくださって箒を、みんなで賞賛していたところさ。ほら、これだよ。君らにも良さがわかるだろう?ま、君らの収入じゃ、人生をもう一回やっても買えないだろうけどね」

 

 こちらに、というより主にロンに向かってそう言うドラコ。よほど箒が嬉しかったのか、言葉の端々からウキウキしているのが見て取れる。自慢したいお年頃なんでしょうね。

 

「とまあ、親からの贈り物をドラコが無邪気に喜んでいるのを見てみんなでほっこりしていたところです」

「マルフォイ、本当なのか?」

「そうなの?」

「違うに決まってるだろうが!変な嘘をつくな紅魔ァ!というかお前、僕でほっこりしてたのか!?」

「ええ、少し。純真なところもあるんだなと思ってました」

 

 私がそう言うとドラコはぐぬぬと唸り、ハーマイオニーとロンは「絶対に違うわよね……」「うん、めぐみんの頭のおかしさが再認識できたな」とヒソヒソ声で言い合っていた。ロンは後でお仕置きすることにしましょう。

 

 そうしていると、ドラコは私に向かって言ってきた。

 

「というかお前!僕たちがニンバス2001を持っているのを見て何か思わないのか!」

「いえ、別に。というより、自慢できるのが装備だけだなんて可哀想だなと思ってました」

「お前は僕をバカにしてるのか!?」

「ふあ〜。いえ、特にそんな意図はないのですが」

「あるだろ絶対!今のあくび、確実に僕をバカにするためのものじゃないか!」

 

 勉強してから来たクィディッチ練習でバカみたいに長い演説を聞いて眠たいだけなのに。というか眠気のせいでさっきからテンションが低い。

 

「すみません、ちょっと眠いので叫ぶのはやめてもらえませんか?頭に響くんですよ」

「お前はどこまで僕を舐め腐れば気が済むんだ!このッ……この、生まれそこないの穢れた血が!」

 

 ドラコがそう言った瞬間、その場が静まり返った。そして次の瞬間、轟々と声が上がった。主にグリフィンドールチームがマルフォイに飛びかかろうとし、そしてスリザリンチームがそれを止めようとする声だった。

 

「今度こそ許さない!」

 

 ロンはそう叫び、杖を取り出してドラコに向けた。収拾がつかなくなると感じた私は杖を出し、誰よりも早く魔法を発動させた。

 

フラッシュ!

 

 私がそう叫ぶと、上空で大きな光と音を出す閃光が弾けた。驚いてみんなの動きが止まったのを見て、私は言った。

 

「グリフィンドールのみなさん、私は今の全然気にしてないんでそんなに怒らなくても大丈夫です。というかうるさいだけです。もうスリザリンなんて放っておいて練習に行きませんか?そろそろ本格的に寝ちゃいそうなんですが」

「お、おう」

 

 私がそう言うと、オリバーは拍子抜けと言った様子で答えた。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!今の言葉に腹も立てないなんておかしいだろ!少しは反応しろよ!」

 

 そんな私に、それまで言ってやったとドヤ顔だったドラコはそんなことを言ってきた。

 

「いやあの、忘れたんですか?私、初めて会った時もそれを言われて喜んでるんですよ?今日はあまり元気がないのではしゃぎませんが、少なくともダメージにはなりませんよ」

「ああ、そうだった……クソッ、どうすればいいんだ!このバカ!アホ!えーっと、穢れた血はダメなんだろ……この、バカが!」

 

 ふっ、勝った。そもそも私、紅魔族というマグルというにはちょっと普通じゃない一族ですしね。恐らく穢れた血という蔑称は当てはまらないでしょう。というかドラコの語彙力はどうなってるんでしょうか。

 

 眠いながらも勝利を確信しながら釈然としない様子のグリフィンドールチームと場所を移動していると、ドラコがふと思いついたように言ってきた。

 

「あー、このチビ!」

 

 なるほど。

 

 ピクリと止まる私に、何事かと顔を覗き込んでくるチームの面々。そんなみんなに、私はカッと顔を上げて叫んだ。

 

「みなさん、戦争です!憎っくきスリザリンをやっつけましょう!誰がチビですかこの薄ら金髪が!」

「「「よっしゃ来た!!!」」」

 

 チビの言葉一つで眠気が覚めてドラコに殴りかかった私をきっかけに、結局その場は殴り合いの乱闘となり、それは先生たちが止めに来るまで続いた。感想ですか?肉体言語が意外と楽しかったです。

 

 

 




 出てきたアーノルドというのは、めぐみんにクィディッチさせるためのオリジナルです。他に意味はありません。
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