この素晴らしいホグワーツに爆焔を!   作:里江勇二

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この石化事件に推測を!

「さて、事情聴取の時間です。昨夜、一体何があったのですか?」

 

 ハロウィンパーティーの日にミセス・ノリスが石になってから一日。私は、談話室の隅っこでハリーたち三人とティーテーブルを挟んで向かい合っていた。

 

「ごめん、でも」

「めぐみんに話せることは」

「何もないわ」

「ぶっ飛ばしますよ。何わざわざ腹の立つ返事してるんですか。さては練習しましたね?私に何を伝えるか決める会議で練習しましたね?」

 

 私の言葉にサッと顔を背ける三人。隠すにしても、もう少しやる気出したらどうなんですか。

 

「去年からその傾向はありましたが、なんで私に隠し事をするんですか!」

「だってめぐみん、君は話を聞いたら絶対暴走するだろう?」

 

 私が聞くと、ロンがそんなことを言ってきた。

 

「失礼ですね。石化事件の謎を暴いて真犯人をシバき上げ、魔女っ娘探偵めぐみんとして名を挙げる計画のどこが暴走だというんですか!」

「全部だよ」

 

 全否定されてしまった。ハリーとハーマイオニーの顔を見ても、二人とも頷くばかり。ひどくないですか。

 

「書籍化にコミックス、アニメ化やグッズ化による収益とかまで色々考えてたのに……」

「一日でそこまで発想が飛ぶの、ある意味すごいよね。妄想力がたくましいというか」

「うるさいですよハリー、自分は既にサイン入り写真なんていうものを配ってるくせに」

「配ってない!あれはせがまれただけだ!」

 

 どうやらハリーはせがまれるだけでも十分羨ましいということに気付いていないらしい。実に腹立たしいですね。

 

「で、あそこにあなたたちがいた理由は何なんですか?絶命日パーティーとかいうのに出席していたのは知っています。でもあそこ、食べられるものはロクに出ないそうじゃないですか。終わったらパーティー会場に直行しますよね、普通は。どうあっても犯行現場は通りません。……何かあったんですよね?」

 

 雑談もそこそこに、私は再び質問をした。話を逸らそうって魂胆だったんでしょうが、その手には乗りません。私は天才ですからね、ええ。まあ話がズレ始めたのは私からだった気もしますが。

 

 ……………………。

 

 気にしない方向でいきましょう。

 

「ねえねえ、やっぱりめぐみんには話しておかない?ここで何も言わないと変な妄想して被害が頓珍漢なことになりそうな気がするんだけど」

「うーん、そんな気もするよな。でも今の計画を聞くと言うに言えないよ」

「でも一応、去年僕たちが考えもしなかったクィレル犯人説にめぐみんは辿り着いてたし……」

 

 そうしていると、三人は顔を寄せ合って何やら相談を始めた。目の前に本人がいるのに、それで本当に聞こえないと思ってるのでしょうか。まあ褒められる分にはいいので放っておきますけど。

 

 そんなことを思っていると、三人の会話は過熱し始めた。

 

「だいたい、めぐみんが悪いよな。素直に頼らせてくれればいいのに、物事をぐちゃぐちゃにするから簡単に頼ろうとは思えないし」

「そうよね……私もこの前、めぐみんと校内を散歩してたらめぐみんが『こっちです!』って急に走り出して、付いて行ったら二人して迷子になってね。最終的に何か変な生き物を倒してここに帰ってくることになったのよ」

「うわぁ……そう言えば僕も、スキャバーズが体調悪いみたいだって相談したら三日ほど貸してくださいって言われて、そんで貸して返ってきたらムキムキになってたんだよ。そりゃムキムキなら体調も悪くならないだろうけどさ」

「あ、そういえば僕もこの前」

「何で私の悪口大会になってるんですか!私に昨日の事件について話すかどうかの相談だったんじゃなかったんですか!」

 

 どうなるかと思って聞いていれば、何ですか三人とも。私だけ除け者にして昨日の事件を経験した挙句、今度は私をダシに私なしで盛り上がるとは。

 

「え、めぐみん聞こえてたの?」

「ロン、あなたは私をバカにしてるんですか?私とあなたたちとの間に何メートルあると思ってるんですか?二メートルないんですよ」

「まあ、言われてみれば確かに」

 

 確かにじゃないですよ。もっと考えて欲しいです。まあ私には去年開発した盗聴魔法があるので意味ないですけど。

 

 ちなみにこの魔法、防音魔法のかかった壁には無力だったりあまり遠くの音は拾えないだったり、ちょっと効果が弱いんですよね。どこかで改良したいんですが、自作魔法は黙認気味とは言え一応まだ三年生ではない私は禁止されてますから先生たちに相談とかはできませんし、パーシーも権威側。

 

 うーむ……

 

 今度フレッドたちか、あるいはセドリックあたりにでも相談してみましょうか。

 

「ハリー、ロン、やっぱりめぐみんには話しておきましょう」

 

 そんなことを考えていると、ハーマイオニーが口を開いた。

 

「いいの?君が一番話すのに反対してたと思うんだけど」

「ええ、そうね。話したら暴走すると思ったし、心配だったから。でも今話して分かったけど、私たちが何をしようがこの子は暴走するし、なら正しいことを言っておいた方がまだ安心よ」

「あの、ハーマイオニーの中で私は狂犬か何かですか?」

「間違ってないでしょ?」

 

 間違ってると思いたい。が、横で力強く頷く二人がそれを許してくれない。

 

 そんなことを考えていると、ハーマイオニーがハリーに振った。

 

「というわけでハリー、お願い」

「そういうことなら、うん。分かったよ。じゃあ話すよ、めぐみん。昨日僕たちはね」

 

 そうして、ハリーは昨日起こった出来事を話し始めた。

 

 

 

「……って感じで。あとはめぐみんも知っての通りだよ」

「なるほど。ありがとうございます」

 

 ハリーの話には、大雑把に二つのことが含まれていた。まずは謎の声。ハーマイオニーとロンには聞こえずハリーだけに聞こえていたようで、その声がハリーを例の場所へと誘導したらしい。これは事件との関連性大ですね。真相に最も近い手掛かりでしょう。頭がおかしくなったと思われないようにハリーたちは誰にも言ってないそうですが。

 

 それともう一つ、その声が聞こえ始めた辺りから一緒に聞こえ始めたシュルシュルという音。これはハリーだけでなくロンとハーマイオニーにも聞こえていたらしい。これはよく分かりませんが、声と同時に聞こえ始めたというのは気になりますね。頭の片隅に置いとく程度はしておいた方がいいでしょう。

 

「しかし、ハリーにしか聞こえない声ですか」

 

 そこまで考えをまとめた私は軽く呟き、ハリーを見つめた。

 

 ハリー・ポッター。赤子時代に当時絶大な勢力を誇っていたヴォルデモートを打ち破った、生まれながらの英雄。しかし打ち出した実績を裏付けるような、絶対的な魔法能力は今のところ見られない。そんなハリーだけが聞こえる声。

 

 ……………………。

 

「ハリー、紅魔族というのはあらゆるエキスパートが集まった集団でして、その中には日本でも最高峰の医者がいます。さすがに精神科は専門外ですが、少なくとも診てもらわないよりはマシでしょう。今度紹介しますね」

「めぐみんすら信じないなんて!そんなに僕の言ってることはおかしいのか!?もしそうならおかしいのは僕じゃなくて世界だ!世界が悪いんだ!」

「あの、冗談なんで落ち着いてください」

 

 私の一言でそんなに取り乱さないでくださいよ。あと一つ言っておくと、ハリーが言ってることはおかしいです。間違いなく。

 

「ハーマイオニーにロン、二人とも本当に聞いてないんですね?その声みたいなのを」

 

 話を頭の中で整理した私は、とりあえずと二人に確認することにした。

 

「うん、間違いなく」

「ハリーは声は小さかったけどはっきり聞こえたって言うし、聞き漏らしとかじゃないわ」

「なるほど」

 

 となるとハリーの資質でしょうね、その声をハリーが聞けた理由は。ハーマイオニー、ロンが特別聞こえないとかではないでしょう。マグル生まれと昔からの名家、優等生と一般生徒、女子と男子。ある程度の条件は二人のどちらかでクリアできますし、これで二人が聞けないのならやはりハリーが特別ということのはず。

 

「あ、そのシュルシュルっていうのもハリーにしか聞こえなかったんですか?それと、どんな音だったんですか?大きさだとか、あとは何かが擦れた音だったのか、声だったのか、息漏れみたいなものだったのか」

「いや、そっちの方は二人とも聞こえてたみたい」

「ええ、聞いたわ。普通にしてたら違和感程度だったけど、少し息を止めたら普通に聞こえるくらいの音だったわ」

「どんな音だったかっていうと、うーん……その中だと息漏れだったと思うんだけど、絶対にそうかと言われれば分かんないや。でも、少なくとも声じゃなかったよ」

 

 こっちは特別な音ではなかった、と。そんでもって、息漏れに近い音だったわけですか。周りに誰かいたっていうのが自然な考えなんでしょうが、となるとその誰かは透明になっていたはずです。息漏れの音が壁を越えるはずありませんし。となると目くらましの術でも使ってたんでしょう。

 

 そして動機ですが、これは明白でしょう。犯行はすでに為されていて、わざわざハリーたちを現場に向かわせる必要はなかったはず。目撃者なら、パーティー会場から出てきた人たちで十分ですから。

 

 すると考えられるのは犯人をハリーに見せかけることですが、これもないでしょう。ハリーに……というか二年生の生徒にあんな完璧なレベルの石化なんてできないのは誰の目にも明らかですし。

 

 というわけで、動機はそれ以外でありそうなもの。つまりハリーへの挑戦というか、挑発のようなものです。そしてそんなことをするような派手好きで、かつ挑発の相手に校長のダンブルドア先生や猫の飼い主のフィルチではなくハリーを選ぶ人物。

 

「つまり今回の事件の犯人は、ヴォルデモート(死の飛翔)なんていうあからさまな偽名……というかペンネームみたいなものを平気で本名のように使い、そしてハリーに恨みがあるヴォルデモートで決定ですね!盛り上がってきましたよ!」

「ハーマイオニー、やっぱり話したのって失敗だったんじゃない?」

「私が間違ってたかも……」

「どうしよう、このままじゃ収拾つかなくなっちゃうよ」

「何ですか三人とも!」

 

 今回はふざけてるわけじゃないのに!

 

「だいたい、ヴォルデモートは依り代なしじゃ行動できない状態なんでしょ?クィレルの事件があってまたすぐに依り代が見つかるわけも、その依り代がホグワーツに入れるわけもないじゃない」

「それはまあ、そうですが」

 

 となると、他の闇の魔法使い……さすがに絞れませんね。ヴォルデモート傘下だった人なんでしょうが、そもそも私、ろくに魔法使いの勢力図とか知りませんし。

 

「あとはそう、動機だよね。あそこまでの石化はとても高度な闇の魔術でなければできないって、ダンブルドアが言ってた。そんなものを、なんでわざわざミセス・ノリスなんかにかけたんだろう」

「ま、僕たちとしてはちょっと鬱憤が晴れたけどね。あの忌々しい猫が消えてくれて」

 

 動機ですか……宣戦布告とか?いや、それにしてはメッセージが奇怪ですね。やはり挑発ですか。でもなぜミセス・ノリス……

 

「案外誰でもよかったんじゃない?たまたま最初に出会った生き物が猫だっただけとかさ」

「そんなわけないじゃない、ロン。ホグワーツのセキュリティを掻い潜ってしたことなんだから、何か意味があるに違いないわ」

 

 私が考えていると、ロンとハーマイオニーがそんな会話を交わした。クィレル関連とか、ロックハートみたいなのが先生をやれてるとことか、ホグワーツのセキュリティって結構ザルだと思うんですけど。

 

「三人とも、とりあえず今日はここまでにしない?先生たちが調べてるはずだし、また何か分かるはずだよ。それまでは結論は保留っていうかさ。先生たちが犯人を捕まえてくれるかもしれないし」

 

 そうしていると、ハリーがそう言った。犯人は私が捕まえたいんで先生たちに先越されるのはちょっと……まあでも、今考えても仕方ないのは事実ですかね。これ以上は続報を待たないとどうしようもないのも確かですし。

 

 そうして、石化事件について考えるのはまた今後にしようということになった。

 

 

 

 

 

 

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