「ええ!?昨日四階の廊下で怪物を見た!?」
「ちょ、めぐみん声が大きいよ。静かに」
翌日の朝、今日も今日とて美味しいホグワーツの朝食を食べているとハリーたちが言った。
「マルフォイに嵌められたんだ。決闘だっていうから行ってやったのに」
「それは災難でしたね。でもフィルチさんに見つからなくてよかったです」
知ってたが、ドラコはよっぽど性根がねじ曲がってるようだ。まさか決闘をそんなことに使うとは。スリザリン生はみんなどこかで更生させたいとは思うが、どうすればいいだろうか。
しかし、そうですか。昨日はそれに着いて行くためにハーマイオニーは早く寝てたんですね。
「それより何で私を起こしてくれなかったんですか?ハーマイオニーも行ったのに私だけ仲間外れなんてひどいじゃないですか」
「いやでも、男子が女子寮に入るのは校則違反だし……」
「真夜中に校内を冒険してきて何を今更」
そんなことを話していると、六匹の大きなフクロウが細長い包みをハリーに向かって落としてきた。そしてそれに遅れて一匹のフクロウが包みの上に手紙を落とした。
ハリーは手紙を開くと、とても嬉しそうな顔で私たちにその手紙を見せてきた。
その手紙には、マクゴナガル先生の字で包みの中身はニンバス2000という箒だということとここで包みをあけないようにという注意、そしてクィディッチの練習の知らせが書いてあった。
「ニンバス2000だって!僕、触ったことさえないよ」
「いい箒なんですか?」
「他の箒とは格が違うって言われてるニンバスの最新型さ!あとで一緒に見ようよ」
一時間目が始まる前に三人で箒を見ようと急いで大広間を出ると、寮に上がる階段の前にドラコの子分二人が立ちふさがっていた。そして横から現れたドラコがハリーの包みをひったくり中身を確かめるように触った。
「ちょっとドラコ!中身が見たいなら一緒に来ればよかったのに、なんでそんなことするんですか」
「この僕がお前たちと一緒に仲良く包みを覗き込むわけないだろう。というかこの感触、やっぱり箒か」
私の言葉にそう答えたドラコは妬ましさと苦々しさの入り混じった表情でそう呟き、包みをハリーに投げ返した。
「今度こそおしまいだな、ポッター。一年生は箒を持っちゃいけないんだ」
「今度こそおしまいですね、ドラコ。ひったくりは犯罪なんです」
二人は吹き出した。そしてクラッブとゴイルも笑いをこらえた顔で体をプルプル震わせていた。
「笑うなポッターにウィーズリー!それに何でお前たちまで笑ってる!」
「わ、笑ってません。別にお頭が同級生の女の子に振り回されてるのは面白いな、なんて欠片も考えてません」
「考えてるじゃないか!」
なんかドラコ一味って意外と愉快ですね。
「君たち、言い争いじゃないだろうね」
ドラコが何か言おうと口を開いたとき、フリットウィック先生が現れてそう言った。
「先生、ポッターが箒を持ってます」
そしてドラコが流れるように告げ口をした。まあマクゴナガル先生から貰ったものだからお咎めがあるわけがないのだが。
「いやー、いやー、そうらしいね。マクゴナガル先生が特別措置について話してくれたよ。箒は何型かな?」
「ニンバス2000です」
ドラコの告げ口を聞いてもそんな風に気軽に対応するフリットウィック先生に、ドラコは顔を引きつらせた。
「実はマルフォイのおかげで買っていただきました」
ハリーはそれだけ言って、ロンと二人で笑いを堪えながら階段を上がっていった。私も悔しそうなドラコの顔をなんとなく眺めながら二人について行った。
「だって本当だもの。もしマルフォイがネビルの『思い出し玉』を掠め取ってなかったら僕はチームに入れなかったし」
「それじゃ、校則を破ってご褒美をもらったと思ってるのね」
ハリーの言葉に、背後からハーマイオニーの怒った声が聞こえてきた。彼女はけしからんと言わんばかりに包みを睨みつけながら階段を上がってきた。
「ハーマイオニー、そこまで言わなくても」
「校則を破ったのは事実よ」
ハーマイオニーはツンとそっぽを向きながらそのまま行ってしまった。
「あんな言い方しなくても」
「あんな奴放っておけよ。それよりさ、早く箒を見ようぜ」
誰もいない談話室で、ハリーは包みを開いた。
「おぉ」
「これはすごいですね……」
箒のことはあんまり分からないが、この箒が素晴らしいということは分かった。スラリとして艶のあるマホガニーの柄や、その先にすっきりと束ねられている真っ直ぐな小枝。柄の先端近くに刻まれた金文字のニンバス2000という銘はとても輝いて見えた。
「ハリー、頑張ってくださいね。これだけの箒をもらったんですから活躍しなければいけませんよ」
「うん、頑張るよ」
「ハリーなら大丈夫さ。めぐみんは見れなかったけど、ハリーの飛びようは本当にすごかったんだ」
その日の夜、私は談話室でパーバティとラベンダーの二人に少し気になっていたことについて聞いてみた。
「あの、二人とも。ちょっと聞きたいのですがクィディッチってどんなスポーツなんですか?」
「「知らないの!?」」
私がそう聞くと、二人は驚いたような声でそう言った。
「ええ。私はマグル生まれですし、これまでクィディッチなんて単語は聞いたこともありませんでした」
「そう。マグルはクィディッチを楽しめないのね……いいわ、教えてあげる」
パーバティはそう言ってクィディッチの説明を始めた。
「ルールはけっこう簡単よ。両チームのプレイヤーは七人ずつ。そのうち三人はチェイサーと言って、クアッフルというボールを三つあるゴールの輪のうちどれかに入れるの。一回ごとに10点」
なるほど。ゴールが三つあるのは点数が入りやすいようにですかね。サッカーみたいに点が入らないと盛り上がりにくいですし。
「ゴールの多いバスケみたいなものですか」
「バスケ?」
「いえ、気にしないでください」
私がそう言うと、そう、と言ってパーバティが続けた。
「各チームにはキーパーが一人いて、味方の輪の周りを飛んで敵が点を入れないようにしてるの。グリフィンドールはキャプテンがキーパーをやってるわ。これは典型的な例で、試合全体を俯瞰できるキーパーがキャプテンをやることも多いのよ」
今度はサッカーですか。バスケほど点が入らないと。
「それと、ブラッジャーっていうボールが二つあってね」
私が頷いていると、今度はラベンダーが話し始めた。
「ブラッジャーは真っ黒いボールで、すごい勢いで暴れて無差別にプレイヤーに襲いかかるの。それを敵の陣地に打ち返すのがビーターよ。点には直接絡まないけど、重要な役目なの」
これに類似するような球技はマグル界にはない。強いて言えばドッジボールだが、それも全然違うし。どうやらこれは魔法界独自のものらしい。
「そして、最後に最も重要な役割。シーカーよ。シーカーというのは『金のスニッチ』を捕まえるプレイヤーのこと。スニッチはゴルフボール大で小さいし、とにかく速くて見えにくいから捕まえるのがとても難しいの。スニッチは一試合につき一個で、捕まると試合が終わるわ」
なるほど、スニッチを捕まえるのが試合終了の合図になるわけか。
「それで、スニッチは何点分なんですか?」
私がラベンダーに聞くと、ラベンダーはふふんと胸を張って言った。
「聞いて驚きなさい──150点よ」
「クソゲーじゃないですか!」
ラベンダーの言葉を聞いて、私は叫んだ。
「150点て。舐めてるんですか?どう考えても試合はシーカーで終わりじゃないですか。最悪シーカーだけで全部決まっちゃうじゃないですか」
「何言ってるのよ。チェイサーたちがいればね、めぐみん」
パーバティはそう言って言葉を溜めた。もしかしたら私は何か見落としてたんだろうか。あ、スニッチを見つけるのは本当に難しくてチェイサーも意外と試合を決められるのかもしれない。そんなことを考えていると、パーバティが言った。
「チェイサーが点を決めれば得失点差で順位が上がるかもしれないのよ!」
「試合の勝敗に絡む気ゼロですか。もっと勝敗に対してガツガツしてくださいよ!」
途中までは面白そうだったのに、なぜ急にスニッチなんかを出してクィディッチをクソゲーにしたんだ。
「まあまあめぐみん、実際面白いのよ?見ればそれが分かるから。そうだ、今度のクィディッチの試合、一緒に観に行かない?どうせ寮生総出で見に行くだろうし」
そんな私に、ラベンダーがそう言った。
「……そうですね。見る前からクソゲー呼ばわりは軽率でした。一緒に行きましょうか」
そうして、私は三人で一緒にクィディッチの試合を観に行く約束を取り付けた。ハリーが出るし、どうせ観に行くのは決まってましたしね。