轍(わだち)   作:yu-ro

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思春期

--ピピピ ピピピ--

聞きなれたうざったい音を聞くことから一日が始まる。気に入らなければメロディを変えればいいのにそれをしようとしない僕は非常に怠惰な人間だと思う。現に大学の課題などもいつも期日ギリギリで提出したりしなかったり。もう卒業はできることは確実なのだが父親がうるさい。

「起きたくねぇな・・・」

アラームを止めてから再び布団に包まる。目を閉じて一つ深呼吸をする、ガチャッと扉が開いた音がしたが無視する、「今日は行かないぞ・・・」と心の中で呟いてじっとする。シャーというカーテンが開けられた音がしてから優しい音が聞こえてきた

「もりのさん、朝ですよ、大学へ行かないと。」

思わず目が開いて布団を蹴飛ばし起き上がる。そこにはメイド服に身を包んだリリウムが微笑みながらこちらを見ている。

「おはようございます、ご子息様。」

リリウムは静かに一礼をした。

「お、おはようございます。」

思わず畏まってしまった。

「朝食の準備が出来てございます、ご主人様はすでに召し上がられております。」

「あいつに命令されたの?」

「いいえ、私はご子息様が心配で参りました。」

「ふーん。」

どうせ父親がガミガミ言ったに違いない、きっとそうだ。僕はベッドから降りてパジャマを脱ぐ。

「では、下でお待ちしておりますゆえ・・・」

リリウムは足音を立てずに部屋から出て行った。

「忍者かよ・・・」パジャマから着替えダイニングへ向かう、

「おはようございますご子息様」

何人かのメイドに声をかけられるが無視をする。ダイニングへ入るとそこにはリリウムと祖父しかおらず、父親はいなかった。

「もりの、おはよう。」

祖父は優しい笑顔で僕に言った

「おはようございます爺様」

挨拶をしながら席に座ると同時にリリウムが朝食を置いて後ろへ控えた。今日は和食だ、父親が好きなメニューだ。僕は洋食のほうが好きなのに・・・。黙って食事を始めるすると爺様が新聞を見ながらこう言った

「朝からくだらん言い争いは聞きたくないからのぉ。」

やはり爺様が父親を遠ざけてくれていた、昔から爺様は僕に甘い、父親はそこも気に入らないらしいが、爺様には頭が上がらないのかアイツはいつも反論もせず、黙って従う。

「お気遣い申し訳ありません爺様」

「はっはっはっ、気にするな、ワシが嫌なだけじゃ。」

そう言って新聞を読み終えたのかクルクル丸めてリリウムに手渡した。

「じゃがなもりの、いくらつまらんとはいえ義務は果たすべきじゃぞ?」

「・・・・・・・・はい。」

爺様に言われるとその通りだと思ってしまう。父親だといつも反論するのだが・・・やはり親子だと改めて認識した。

「では、ワシも先へ出るからな。」

「いってらっしゃいませ爺様。」

爺様は席を立ち、ダイニングから玄関へゆらりと向かった。僕も朝食を急いで食べ終え、カバンを持って玄関へ向かった。

「いってらっしゃいませご子息様」

後ろからリリウムの声が聞こえるが振り返らずに一言

「行ってくる。」

思春期はとうに終えているはずなのになぜか思春期の子供のような態度になってしまったが、これはこれでいいだろう。

 

大学に着いて今日は何をしようかと考えながら図書室へ向かっているといつもの音が聞こえる。

-おっボンボン様の登校だぜ・・・-

ー今日も高価なものを身にまとってらっしゃるわ(笑)近付けねぇなぁ(笑)ー

よく聞く音だ。入学してからずっとだ。僕の家系を妬んだり怨んだりしているやつは多いらしい。最初は慣れなかったが気付いたら慣れていた。聞きなれると環境音になるということを証明できたわけだ。我ながらいい課題を思い付いたものだ。心の中でほくそ笑みながら満足していたところにさっき聞いた音が聞こえた。

「もりのさん」

ハッとして後ろを振り返るとリリウムが居た。

「ど、どうしたんですか?」

「忘れ物を届けに参りました、どうぞ。」

そう言って僕の携帯を差し出した。ダイニングからそのまま玄関へ向かったから自室に忘れていたのだ。

「ごめんなさい、ありがとう。」

「どういたしまして、それではここで・・・」

軽く会釈をしてリリウムは帰って行った。別に携帯なんて持ってなくてもいいのだが・・・受け取った携帯をズボンのポケットにしまって図書室へ歩き出そうとしたところ変なノイズが聞こえた。

「すいませーん!おねぇさんっ!」

「可愛いっすねぇ!どうすか?遊びに行きませんか??」

いかにもチャラチャラした輩がリリウムを囲っていた。

「困ります、只今職務中でありますので、そのようなお誘いをお受けはできません。」

「いいじゃんいいじゃん!30分だけ!ね?ね!?」

チャラ男がリリウムの手首を掴んでいる。それを見た僕は気付いたら走っていた

「おい!人のメイドにちょっかい出すんじゃねぇ!消えろ!」

「ああん?誰に言ってんだボンボンよぉ!」

僕の胸倉を掴む、解こうとするが体格差あってか上手くいかない

「坊ちゃんはさっさと本とお友達になってなぁ!」

振り上げた拳が僕に襲い掛かるもそれをリリウムが止めた。

「おやめなさい、あなたは名家のご子息に危害を加えようとしています、それ以上は私が許しません。」

「なんですかぁ?おねぇ・・・いででで!」

チャラ男が振り上げた拳を収めた。

「ちっ・・・もりのぉ・・・命拾いしたなぁ・・・!」

捨てセリフを吐いてチャラ男達は去って行った。

「お怪我ありませんかもりのさん?」

リリウムが顔を近づけてくる

「だ、だ、大丈夫です・・・!」

僕は距離を取る、相変わらず至近距離は慣れない。

「なら良かったです、それでは私はこれで・・・」

リリウムは足早に去って行った。彼女が顔を近づけてきた時すごく良い匂いがした・・・香水ではない・・・リリウムの匂い・・・

一瞬動けなかったが我を取り戻して僕も足早に図書室へ向かった。

 

心臓の高鳴りがリリウムのせいか足早に歩いているせいかわからないまま・・・

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