大学にて忘れ物を届けた後の帰り道はなんだかフワフワしていた。
変な輩に絡まれた時真っ先にもりのさんが助けに来てくれたのだ、嬉しい以外の感想は無い。あんな輩は力でねじ伏せることなど容易いのだが、名家のメイドである以上そのようなことは出来ない。
優しいもりのさんだからこそあの行動に移れたのだろう。なんだか少し意識してしまい、顔が高揚しているようだ。
「いけない、私はメイド。ご子息様に仕える身・・・」
「でも、仮に私がメイドでは無く、普通の一般人でもりのさんと同じ大学へ行っていたとしたら…。」
「図書室で一緒に勉強したり、お昼ごはんをご一緒したり、帰りに寄り道をしたり…。」
「休日には二人でどこか出かけたり、お弁当作って公園でピクニックしたり、もりのさんの後ろに乗って二輪で風と共に走ったり…。」
妄想がとめどなく出てくる、妄想している時間はあっという間に過ぎていくから楽しい。脳内が楽しいことで一杯になるのだ、幸せに決まっている。
仕事で”たられば理論”はもってのほかだが、プライベートでは全くの別物になる。妄想していることが現実に起こったりすることもたまにはある、その時に非常に役に立つので時間があれば考える、妄想する。きっともりのさんも同じようなことをしているに違いない。じゃないと今のもりのさんがいる証明が出来ない。彼は自ら考え、行動している。それに結果が出ている。私が彼に惹かれているのはそこなのかもしれない。でも、今は主従関係、絶対に覆らないし、今後も死ぬまで一生そうに違いない。
だけど、今日みたいな日はまた訪れるかもしれない。その日を楽しみにこれから頑張って行こう。
ぶつぶつ呟きながら屋敷に帰ってきた、門扉を開けようとした時、目の前に高級車が止まった。重厚なドアが運転手の手によって開けられ中からすらっと背の高い爽やかな出で立ちの男性が降りてきた。当主様が帰ってこられた。当主様は私に気付くとキッと睨みつけ、「おい、なぜ貴様が外に出ている?」と仰られた。私が外へ出ていることに当主様は大変お怒りのようだ…。
「申し訳ございません、ご子息様のお忘れ物を届けに大学へ外出させて頂きました。」
「そんな許可は誰が出した?峨朗か?」
「左様でございます。」
「峨朗め…貴様が外に出ることも無かろう、他のメイドになぜ行かせなかった?」
「申し訳ございません…。」
「お前は容姿が他と違う故、この屋敷から出てはならんと初めに言ったはずだが?」
「申し訳…」
パァーンっと乾いた音がした少し後に頬に痛みが走った。
「中で”教育”する、入れ。」
「……かしこまりました。」
またあの”痛み”に耐えねばならないのか…。